2007.10.20 (シャニム21号掲載)
子供を守るための地域住民連携型システム
IT活用事例 東京都品川区
ITと地域住民の力が一体化
有事には現場へ駆けつけ子供を守る
●2年間で子供を狙った12件の犯罪を阻止
●多くの自治体が注目する品川区「近隣セキュリティシステム」
●緊急通報で地域協力者が迅速に現場へ駆けつける
●体制づくりに区全体で取り組んだことが成功の秘訣

地域の安全、とりわけ子供を犯罪から守ることは多くの自治体にとっての課題だ。様々な取り組みが見られるが、注目度の高さでは東京都品川区の地域一体型防犯体制「近隣セキュリティシステム」が突出している。
これは、「地域住民の支え合いや相互扶助を通じた安全な町づくりを実現する」(区民生活事業部地域活動課・生活安全担当の羽田正一主査)ことが狙いであり、まずは子供を守るシステムとしてスタートした。
詳しくは後述するが、その仕組みは子供たちが携帯する発報装置からの緊急通報を受け、地域の協力者がすぐに現場へ駆けつけるというものだ。
05年6月のモデル実施を経て同年9月に導入を開始。同じ年の12月には区内全40の小学校に発報装置の配布が終了し、システムが本格稼動している。現在、区内外の私立・国立小学校への通学者も含めて、1万3000名近い子供たちを守っている。
成果は上々。2年間(05年9月〜07年8月末)の運用で12件の緊急通報があったが、いずれも迅速な対応で大事に至らなかった。
システムの認知度アップもあり、犯罪抑止効果も大きい。例えば、警察への不審者通報では、05年度の60件から07年度は上半期で5件と、大幅に減少しているという。「12人の子供たちを守れたことは大きな成果。このシステムが地域の防犯に貢献しているのは間違いない」(羽田主査)。
※写真 : 品川区の子供たちが、首から下げている発報装置「まもるっち」
GPSで犯罪発生現場を特定
では、近隣セキュリティシステムの詳細を見ていこう。全体像は図に示した通りだ。防犯ブザーを搭載した発報装置は、携帯電話の通信網やインターネット回線によりセキュリティセンター、協力者などとネットワーク化されている。個々の子供が所持する発報装置「まるもっち」からの緊急通報をセンターで受け、有事にはオペレーターが警察や地域の協力者へ連絡し、現場へ迅速に駆けつけるという体制が整う。
犯罪対策では①防犯、②犯罪発生、③対処——この3つが重要となる。品川区のシステムでは、ITと人的パワーの融合によりに、これら3ポイントが効果的に網羅されているのだ。
まず、①防犯では、基本的に子供たちが最も犯罪に巻き込まれやすい登下校と放課後の安全確保が主眼。このため同システムの稼働時間は平日と土曜日の7:30〜20:00である。この時間帯は、緊急通報がセキュリティセンターを介して警察や協力者などへ届く。夜間と日曜、休日は保護者のみに通報される。
最近は、「見せる防犯」の重要性が指摘されており、品川区では発報装置を首から下げるスタイルを採用している。不審者へのけん制となる他、いざという時に即座に発報を行なえるからだ。
発報装置は携帯電話の機能を有しており、通話料を自己負担すれば通話先限定(2カ所)の電話として利用できる。保護者が子供の安全確認に使うなど、単なる防犯ブザーのように忘れ去られてしまうこともない。
もちろんシステムに頼るだけではなく、人的防犯活動にも取り組む。登下校時には通学路にボランティアが立って見守り、警察OBで構成される生活安全サポート隊が裏道など警察の目が届きにくい場所のパトロールを日々行なっている。
安全対策で最も重要なことは防犯だが、それでも犯罪は起こる。事件を重大化させないためには、②犯罪発生時と犯罪への③対処が重要だ。
これに関しては、②犯罪発生事に子供が発報装置を作動させることで、約97dbの防犯ブザーが鳴ると共に区役所内にあるセキュリティセンターへと通報される。
発報装置は所有している子供の名前や通学小学校、自宅連絡先といった基本データと連携しており、誰からの通報かがセンター側で即座に把握できる。さらに、GPSシステムにより発生現場を瞬時に特定可能だ。
稼動開始時はPHS通信網のマイクロセル(*1)を使って位置情報を取得していたが、精度向上と全国カバーを目的にGPS方式へと変更した。
セキュリティセンターには、2人のオペレーターが常駐。受けた通報の犯罪性を判断し、危険な状況と見なした場合には警察や学校、保護者、協力者へ即座に通報する。
実は、オペレーターが介在するのは誤報対策なのだ。スタート当初は、子供からの発報はセンターを経由して直接協力者などへ通報されるリアルタイム性を保持していた。だが、モデル実施で誤報があまりにも多いことが明らかとなる。
そのままでは地域の協力も得られなくなると、若干のタイムラグは生じるもののオペレーターが緊急性を判断する仕組みとしたのだ。
具体的には、発報があると携帯電話機能を使ってセンターから子供の発報装置へ連絡。子供との会話や、周囲の状況など様々な観点から犯罪性を疑い最終的な判断を下す。ただし、「協力者への誤報をためらうあまり対応が遅れては意味がない。犯罪の可能性が少しでも見てとれれば迷わず関係各位へ通報するようにしている」(羽田主査)。
(*1)アンテナ方式の1つ。電波の伝送距離が短いので、エリアをカバーするには多くのアンテナが必要だが、逆に狭い分だけ端末の位置特定に威力を発揮した
地域が警察へ最大限の協力
そして、犯罪への③対処として、緊急通報を受けた地域の協力者や保護者、警察が現場へと向かう。
このシステムでのポイントは、基本的に警察の役割である犯罪対処に地域住民が協力していること。逮捕などはできなくとも、現場に駆けつけるだけでも重大事件へと発展する可能性を抑止することができる。
発生現場に近い地域から登録協力
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