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2010.05.31 (シャニム31号掲載)

地方発!世界で活躍する会社

MoMA(ニューヨーク近代美術館)の
学芸員も大絶賛!
山村が生んだ「木のバッグ」

編集工房リテラ◎田中浩之
エコアス馬路村  【高知県】

 (株)エコアス馬路村
高知県馬路村馬路1464-3
代表取締役:上治堂司(馬路村長)
TEL.0887-44-2535
http://www.ecoasu.co.jp/


▲左から「ishikoro」「postman」「maruta」。
Webからも購入できる(価格は3万円前後)

ニューヨーク近代美術館で販売

 人口わずか1040人の高知県馬路村。この山村生まれの不思議な商品が、2006年、ニューヨーク近代美術館(MoMA)のショップに並んで、アートを愛するニューヨーカーたちの度肝を抜いた。

 絵に描いたような山村から世界に発信されたのは、美しい杉板が柔らかな曲線を描く木のバッグ「monacca(モナッカ)」。自然素材をそのまま生かしたエコ商品で、ファスナーを開けると、中から爽やかな森の風が吹いてきそうだ。

 1つひとつが木目の異なるオンリーワンで、使い込んでいくうちに風合いが変わっていくことも面白い。
 monaccaは間伐材製品の製造販売を主に行なう第三セクター「エコアス馬路村」によって作り出された。

 馬路村の基幹産業は柚加工品の製造販売だが、将来を考えると柚だけでは心もとない。では、何を売り出せばいいのか? 村人たちが導き出した結論が、村の96%を覆う豊かな森林を利用することだった。

 新たなやり方で木を売り出せ!と、エコアス馬路村が設立されたのは2000年。「今年でちょうど10年。この間、商品の種類や販路がかなり変わってきました」と総務企画課の山田佳行係長は語る。

 最初に展開したのは木のトレイだった。食品やパン、銀行窓口で扱われる現金、さらに高知名物の皿鉢料理などを載せるために開発されたが……。「残念ながら浸透させるのは難しかった。単価が高く、匂いが移りやすいという問題もあって敬遠されました」と山田係長は振り返る。

 次に売り出そうとしたのが木のうちわだ。仰ぐたびに木の香りがすると評判はよく、なかなかの売り上げを計上した。だが、販促用のノベルティグッズとして使われることが多いため、毎年、新たな顧客を開拓しなければならない。しかも、商品の性質上、夏しか売れない季節商品だ。これも事業の柱とするには弱かった。

 村に豊富にある木を何とかして売り出したい。会社が命運を託せるようなメイン商品がほしい……。エコアス馬路村は手探りで動き続ける。そうした中、遠く離れた東京でmonaccaの雛形を発想した人物がいた。


完成までは試行錯誤の連続…

 monaccaのプロジェクトがスタートしたのは2002年。高知県出身のインダストリアルデザイナー・島村卓美氏が、吉祥寺にある高知県アンテナショップで木のトレイを見つけたのが発端だ。このユニークなトレイをうまく使えば、今までにない新商品ができるのではないか……。ふとインスピレーションが湧いたのだという。

 その後、縁あってエコアス馬路村は島村氏と出会い、monacca誕生に向けて歩んでいく。山田係長は最初のラフスケッチを見た時のことをはっきり覚えている。

 「ああ、カッコいいなと感じました。同時に技術的に製作が可能なのだろうか、という不安も覚えました」。直感は2つとも正しかった。monaccaはその斬新なスタイルによって支持を得ていく。一方、満足できる出来栄えになるまでの間、想像以上の苦労が待っていた。

 monaccaは厚さ0.5ミリの杉板をプレス機で曲げて、縦横交互の6層に貼り合わせて製作する。思わぬ苦労の1つ目はプレス段階で生じた。
 トレイの場合、へこんだ方が人の目にふれる表面で、出っ張った方が裏面になる。ところが、バッグではその逆なのだ。従来、裏面ならヒビが多少入っても良しとしていたが、これからはそうはいかない。いきなり正反対の技術が必要になり、加工を担当する現場が混乱した。

 2つ目の苦労は塗装だ。作業を任せる村の森林組合の塗装場では、それまでツヤをしっかり出す木工品ばかりを手がけていた。試しに同じように塗装してみたところ、自然の木目ではなく、つまらない人工的な木目調に見えてしまった。

 かといって、無塗装では汚れが目立ち、防水面でも問題がある。そこで何度も試した末、ツヤ消しをたっぷり加えて塗装することにした。

 塗装後の工程にも大きな苦労が待っていた。薄いといえども板なので、通常の針では縫製できない。ミシンも極厚仕様が必要となる。ゴルフカバーを縫うタイプを使用したり、厚手のデニムを扱うミシンをベースにしたりと、いろいろな工夫が求められた。
 製作は試行錯誤の連続だったが、問題点をクリアするごとにmonaccaは一歩一歩完成へと近づいていった。

欧米の見本市に次々出展!

 2003年、村の期待を込めた試作品がついに完成した。ターゲットは都会の人々。「木の風合いを感じない環境で暮らし、他人とは違うものを身につけたい人。こうした人々なら、monaccaを受け入れてくれると思いました」と山田係長が明かす。

 デビューの場は、青山や表参道などの街が丸ごと新作の展示会場になる東京デザイナーズブロック。初めてmonaccaを見た多くの人が「木がバッグになるの?」と驚きの声をあげた。エコアス馬路村にすれば「してやったり」というところだ。
 バイヤーからは「環境に対する意識の高いヨーロッパで受けるのでは?」という意見も出た。

 当初、「まず国内でしっかりした販路を築きたかった」(山田係長)ことから、海外進出については慎重だった。しかし、商品の特徴からいって海外に目を向けるのは自然の成り行きだ。初めて進出したのは2005年、イタリア・ミラノサローネの市内展示。これを皮切りに、スイスやドイツ、フランスなどの国際見本市に立て続けに出展。毎回、ヨーロッパの人々の目を丸くさせた。

 MoMAのショップへの出品が決まったのは、東京で行なわれた見本市会場に学芸員が来場し、ひと目で気に入ってくれたのがきっかけだ。「すごくラッキーでした。あれからマスコミにも取り上げられるようになりました」と山田係長。MoMAに出品するようになった2006年度、monaccaはグッドデザイン賞も受賞した。

 今、エコアス馬路村の視線が向けられているのはアメリカだ。「これまでの実績はヨーロッパよりもアメリカの方が多かった。今後、アメリカを重視してさらに売り上げを伸ばしていきたい」(山田係長)と夢が膨らむ。

 注目すべきなのはmonaccaだけではない。エコアス馬路村は昨年度、「新しい木のカタチ」をテーマにデザインコンテストを行ない、優秀作品の商品化に向けて準備を進めているのだ。monaccaに負けないほどインパクトのある商品を発表し、世界を再び驚かせる日は近い。


▲こんなに薄いスライス板の6層がバッグに!


▲2009年、パリの国際見本市メゾン・エ・オブジェにて

 

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