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2010.05.31 (シャニム31号掲載)

本田雅一の“先取り”家電インフォ!

3Dコンテンツの制作・販売に
本腰入れるハリウッド

フリージャーナリスト
本田雅一
http://blogs.itmedia.co.jp/honda

 「今年は3Dテレビの年だ!」と、昨年からずっといわれ続けてきた。

 “本当にそうなるのだろうか?”とやや疑問を持ちながらも、テレビメーカー各社が矢継ぎ早に繰り返す新3D技術のオンパレード。それに3D映画のプロモーションに、もしかすると“そうかもしれないな”と思いつつ、でも心のどこかで引っかかりを感じている読者も多いのではないだろうか。

 その“引っかかり”とは、おそらくコンテンツが滞りなく提供されるのだろうか? という疑問ではないかと思う。

 あまり思い出したくない記憶だが、過去に“次はハイビジョンだ”といわれ、新しい規格は市販ソフトが登場したものの、ひっそりと姿を消した技術も少なくない。

 ハイビジョン技術が“モノになる”まで要した時間は、なんと30年だ!

 実際にソフトが登場するまでは、どんなにメーカーが声を大きくしても聞こえづらいと思うのは当然のことだろう。

 「だってソフトが出てこなきゃ、意味ないじゃん!」

 まったくその通り。では、実際のところソフトの状況はどうなっているのだろうか?

 

 

地上波は望み薄だが……

 3Dの放送に関しては、前回のコラムでお伝えしたようにスカバー!が3D放送のチャンネルを追加する他、CATVのジュピターテレコムが3D映像のオンデマンド配信を行なうと発表している(従来のBS11も継続)。

 ただし地上波での放送の目処は立っていない。3D放送の規格が定まっていないからだ。現在使われている方式は、ハイビジョン放送の高解像度を利用し、左右に画面を2分割して映像を搬送。テレビ側でステレオに変換するサイドバイサイド(SBS)という手法だ。

 この手法はとても簡単に3D放送を実現できるので、3Dテレビの初期に様々な放送局で採用される予定だ。

 特にチャンネル数が数多く取れるデジタルCATVや衛星放送では主流になる。米国や欧州で行なわれる3D放送も、すべてSBSでのものだ。簡単なことが利点だが、3D放送非対応のテレビで見ると、左右に分割されたおかしな映像しか見られなくなる。

 もっともチャンネル数が十分にあれば、2Dと3Dを異なるチャンネルで放送すれば問題ない。衛星放送やCATVが主流の海外なら問題ないのだが、日本は地上波の視聴者が圧倒的に多い。地上波はチャンネル数に限りがあり、2Dと3Dの同時放送は難しい。地上デジタル放送が3Dに対応するのは、まだ先のことになるだろう。

 ただし、地上波の3D対応が難しいということは、多チャンネル放送に対応しやすい衛星やケーブルの放送局にとっては、地上波から視聴者を奪う絶好のチャンスでもある。

 パナソニックがフジテレビNEXTと提携し、アリスのコンサートを3D放送する際、業界初の3Dコマーシャルを放送したように、3Dを軸とした新たなスポンサーシップが成立している。

 地上波以外の放送局では3D対応が、少しずつ活発化していくはずだ。

 

映画スタジオの思惑

 市販の3Dソフトはどうだろう。ビデオレンタルに3Dソフトが並ぶ日はくるのだろうか。

 もちろん、これはイエスだ。3Dテレビをすでに販売し始めているパナソニックは、同社のすべての3Dテレビ、Blu-ray製品に20世紀フォックスの「アイスエイジ3」の3D対応版をバンドルしており、ソニーもソニーピクチャーエンターテイメントの「曇り時々ミートボール」を添付する(この件は北米での契約だが日本でも同様のプロモーションが行なわれるだろう)。

 海外ではサムスンがドリームワークスアニメーションズの「モンスターズV.S.エイリアンズ」をバンドルすると発表している。

 このようにバンドル用ソフトばかりなのは、まだ市場が立ち上げの時期だからだ。おそらく年末商戦までは、バンドルで出荷されるソフトを中心に、ユーザーへの「顔見せ」的な販売が行なわれることになる。

 この秋までにはパナソニック、ソニーに加えて東芝、シャープも国内の3Dテレビ市場に参入する。当然、何らかのソフトが添付されることになるはずだ。

 このような状況の中で、本当に年末に3D映画ソフトが登場するのだろうかと、いぶかしむ声が出てくるのも無理はない。しかし3D映画ソフトは確実に増えるだろう。理由は二つ。

 まず、3Dソフトを出せば2Dの映像も見ることができる。3D Blu-rayソフトを従来のBDプレーヤーで再生すれば2D再生されるので、映画会社は3D映画を販売する際、3D版に統一して制作することが、将来的には多くなるだろう。

 当初は別々のパッケージで、少しだけ3D版が高くなるとのことだが、そのうち統一されるようになる。

 そうなれば、3Dソフトはグングンとその数を増やしていく。なにしろ昨年16本の公開に留まったハリウッドの3D映画は今年、50本以上にまで増えるといわれている。せっかく3Dで制作したならば、それをそのままパッケージにした方が、より高い付加価値を与えることができる。

 次に3Dソフトの発売は、ソフト会社、すなわちハリウッド映画スタジオ自身が望んでいることだからだ。今や映画産業にとってDVDの売り上げは無視できないものになっている。ところが、その売り上げ金額は2007年以降、明確な落ち込みを示しており、Blu-rayの売り上げだけではカバーできていない。

 “高画質になる”だけでなく、プラスアルファの要素として3Dを加えることで映画ソフトの売り上げ減少に歯止めをかけたいわけだ。

 そのためには、魅力的な3D映画を可能な限り多く速やかに市場に投入していかなければならない。

 

 

映画スタジオがDVDで学んだこと

 つまり、より大きな市場を作っていくために、映画スタジオ自身が市場開発に深く関わる必要があると、DVDやBlu-rayの立ち上げで学んだのである。

 それまで、映画スタジオは「家電メーカーが機器を売りたいのであれば、俺たちのソフトに金を出してもらおう」と、どちらかといえば直接的な金銭でソフトの権利を販売していた。しかし、大上段に構えるのではなく、自ら積極的に市場を作ることが、自分たちの利益にもなると気付いた。

 3Dテレビが面白い放送をし始めるのは、まだ先のことかもしれない。しかし、それは映画スタジオにとってもチャンスだ。魅力的な3Dソフトを出せば、3Dテレビを持っている人たちは、きっと何か3D映画を見たいと思うはずだからだ。

 業界ではよく“タイレシオ”という言葉を使う。これは対応機器1台あたり、何本のソフトが売れたかを示す数値。たとえば3Dテレビ1台に対して、何本の3Dソフトが売れたのか? といった数値だ。

 この値は最初のうちは高く、みんなが3D機能を試したくてソフトを買う。しかし、徐々に価格が下がってくると、3Dに対する熱意がさほど強くない人も買い始めるようになるので、タイレシオは下がっていく

 普及する前であっても、タイレシオが高いのであれば、そのうちに確実に売れるソフトを販売し、市場を立ち上げてたくさん売れる環境を作るというのが、映画スタジオと家電メーカーの新しい協業スタイルとして確立し始めている。

 この年末、日本で何本のソフトが発売されるか。筆者は正確な数字を答えることができない。しかし将来、確実にその数は増えていくだろう。何よりそれは映画スタジオ自身にとって、とても重要なことなのだ。

表1) 「AVATAR」だけじゃない! 2009年3D映画は軒並み高収益

表2) 2010年に米国で公開の3D大作

 

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