2010.05.31 (シャニム31号掲載)
ビエラだけでは終わらない!パナソニック「3Dワールド構想」
3Dテレビの開拓者たち
ビエラだけでは終わらない!
パナソニック「3Dワールド構想」

▲パナソニック(株)デジタルAVCマーケティング本部◎酒本俊雄主事
「自分の役割は3Dワールドの楽しさや可能性を、1人でも多くの方に実感いただくこと」。
こう語るのはパナソニック・デジタルAVCマーケティング本部商品グループの酒本俊雄主事だ。昨年8月から3Dテレビの担当となり、マーケティングの実務に奔走している。
酒本主事が初めて本格的な3Dコンテンツを目の当たりにしたのは昨年の夏。ディズニー映画『BOLT』だった。その際「面白い」と感じたのは、見終わった後の親子連れの会話だったという。
「子どもがお母さんに目を輝かせながら、『あの犬、触れそうだったね』とか『うちでワンちゃんを買っても、あいいうふうになるのかな』って。ものすごく会話が弾んでいて、親子で楽しそうでした。こういう情景は3Dならでは。これが3Dの魅力だと確信しました」。
パナソニックはもともと、テレビを『デジタル囲炉裏』と表現。家族みんなが集まって団らんするための中心ツールと位置づけてきた。
これまで実現してきたテレビの大画面化や高画質・高音質化、簡単な操作性や利便性などはすべて、このキーワードを具現化するためのもの。そこに3D機能を加えることで、囲炉裏としての魅力を「一気に高められる」。酒本主事は親子の会話を聞いて、そう確信したという。
パナソニックが3Dテレビの商品化に、本腰を入れ始めたのは2008年の秋だった。その年の9月に開催されたCEATEC2008で、世界初の103V型3Dプラズマ・シアターを公開したのだ。

▲パナソニック・デジタルACVマーケティング本部の酒本俊雄主事
フルハイビジョン画質の家庭用3Dシステムは、まだ世界のどのメーカーも開発できていなかった。そこに大きく近づいたパナソニックへの注目度は抜群であり、あまりの反響の大きさに「これはイケル」との確かな手応えを感じたという。
同時に市販に向けた課題も明確になった。その最たるものはプラズマパネルの発光効率だ。時代はテレビにも省エネ性能を厳しく求め始めており、新機能の3Dといえども、無視できるテーマではなかった。
家庭用フルハイビジョン3D技術の開発と発光効率アップによる省エネの推進。二律背反するテーマを同時にクリアすることが市販3Dテレビの絶対条件だった。パナソニック技術陣のチャレンジは続いた。
その成果が具現化されたのは2009年、米国で開催された2009 International CESだった。ここでパナソニックは「Neo PDP」を発表。これは発光効率を3倍に高め、従来比で1/3の消費電力を実現した次世代プラズマ・パネルである。
「プラズマ革命」と呼ばれ、低消費電力の次世代プラズマとして紹介されたが、パナソニックにとっては3Dテレビの商品化に向けた、大きな前進でもあった。
「プラズマにとって発光効率のアップは永遠の課題のようなもの。ずっと取り組んできました。しかし、Neo PDPの誕生は飛躍的な前進。これが3D商品化への、大きな弾みになったことは確かです」(酒本主事)。
ムービーで広がる3Dワールド
パナソニックが3Dビエラの国内モデルを正式発表したのは2010年2月9日だった。発売開始日は4月23日。これには多くの業界関係者が「そんなに早いのか」との感想を漏らした。さらには発表された価格(市場想定売価)にも驚きの声があがった。
50V型で約43万円、54V型で約53万円という設定は、大方の予想を裏切るリーズナブルなもの。3Dというテレビのまったく新たな機能だけに、過去の流れから考えれば、商品は特別グレードの最上級品であり、価格も想定売価の倍ぐらいを設定しても不思議ではなかったからだ。
しかし、50V型で43万円という想定売価は、テレビ普及の第1条件とされる1インチ1万円を最初から切っている。グレードもビエラ・シリーズのフラッグシップではあるが、通常シリーズの中に収められていた。
「3Dといっても我われは、特別な機能というイメージは持っていません。あくまでも従来の2Dテレビに、新たな付加機能を付けました、という位置づけ。
テレビはこれまでも進化してきましたが、3Dもその延長線上にある進化。近い将来は当たり前の機能になるはず」(酒本主事)。
3Dビエラ第1号機のメインターゲットは、2004年頃に42V型クラスの薄型テレビを購入した層だという。この年、価格が1インチ1万円を切り、アテネオリンピックなどのイベントにも支えられて、薄型大画面テレビの普及に弾みがつき始めたのだ。
マーケティング用語でいえば、イノベーター(革新的採用者)の時代からオピニオンリーダー(初期少数採用者)の時代へと、マーケットが変化し始めた時期といえるだろう。彼らは新しいものが好きで、気に入ったものならある程度の支出は厭わない。そして、一定のボリュームが見込める層でもある。
「そういうユーザーに、次に買う普通のテレビとして3Dビエラを選んでいただきたい」(酒本主事)。

▲2009CESで大きく飛躍したプラズマの発光効率
50V型と54V型でスタートした3Dビエラは4月末に58V型と65V型を加え、早くも4機種態勢となった。そして、そう遠くない将来に3D機能は、より小型のモデルや普及グレードのモデルなどへ搭載されるはずである。
3Dビエラの店頭デモが全国各地で行なわれている今、酒本主事には次なる課題が目白押しだ。中でも重要なことは、より多くの機器を使った「3Dワールド」の紹介であり、これを実体験できる場作りである。
現状の3Dは、システムとしては「テレビ+レコーダー(プレイヤー)+シアターラック」がメインだ。そしてコンテンツは映画やテレビ放送、ゲームなどが主流である。これはある意味、ユーザーが受け身の3Dワールドといえよう。
しかし、3Dの可能性はこれだけではない。ムービー、デジカメ、携帯電話、パソコン、そしてインターネットなど、今後3Dシステムに加わる機器や技術は数多く、そのすべてをパナソニックは手がけている。これらが加われば3D映像はより身近で日常的、かつプライベートなものへと変化してくるはずである。
例えば子どもの運動会を3Dムービーで撮影し、その映像を携帯電話やインターネットを通して田舎の両親にリアルタイムで送るといったことも、決して遠い話ではない。少なくともパナソニックの各事業部では、その実現に向けた3D商品の開発に、拍車がかかっていることは確かだ。
「そういう3Dワールドを多くの方に気軽に体験いただくことが、次の重要なミッション」と語る酒本主事。彼が超多忙な日常から開放されることは、まだ当分なさそうである。
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