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2010.05.31 (シャニム31号掲載)

資産リスクや生命リスクに備えつつ 共済&保険を活用して賢く節税!

新連載
知ってて損なし!節税テクニック

フリージャーナリスト
長谷川丈一

 節税として一般的に取り組まれている対策には、「設備投資」や「従業員への決算賞与」などがある。こうした方法も効果的だが、計画的でない節税目的だけのムダな投資は生産性アップにはつながらず、減価償却が終われば資産価値はないに等しい。

 決算賞与による節税策は一時的には従業員のモチベーションアップとなるが、継続して出せないと逆にトーンダウンしてしまう諸刃の剣的な要素を持つ。

 そこで、注目の節税対策が「共済や保険」を活用した手法である。抵抗感を示す経営者も依然として多いというが、税法上で損金や経費化が認められる上に簿外資産(含み益)として内部留保も可能。さらに、流動性資産として必要な時に現金化できる唯一の対策だ。

 しかも、本来の目的として事業保障など様々なリスクに備えることができる。例えば、中小企業の経営者は銀行融資などで会社の連帯保証人となり、自宅を担保にしているケースも多い。不慮の事故や病気などにより信用不安で経営状況が悪化し、会社や残された家族が破綻するといった事例が報告されている。それを避けるためにも、保険は重要な意味を持つことはいうまでもない。

 


▲「小規模企業共済制度」「経営セーフティ共済」とも
中小企業基盤整備機構のHP(http://www.smrj.go.jp/)で
詳細情報を確認可能

 また、資金繰りが困難となり銀行からの融資がままならない場合、保険を取り崩して解約返戻金を使うことが可能。契約者貸付制度により資金を作れば、保証を残したまま資金リスクを乗り越えることもできる。

 さらに、解約返戻金や満期保険金を退職金に当てられるなど“共済や保険”はリスクに備えつつ、節税効果が期待できる経営ツールなのだ。

 

共済は個人事業主も使いやすい

 個人事業主や中小企業が節税策として活用できる共済や保険には様々な種類がある。ここでは①小規模企業共済制度、②中小企業倒産防止共済制度(経営セーフティ共済)、③法人契約生命保険——を取り上げたい。

 まず、個人事業主や小規模事業者向けに適した制度が、①小規模企業共済制度。これは、個人事業主などの退職金制度ともいわれており、積み立てた掛金を事業廃止時などに共済金として受け取れる。掛金は、全額を所得控除可能だ。

 加入対象は、常時雇用する従業員が20人以下(商業やサービス業は同5人以下)の個人事業主や会社役員。さらに、10年度税制改正で加入対象者が拡大され、事業主に加えて配偶者や後継者などの共同経営者も同共済に加入可能となった。

 掛金は1人当たり月額1000円〜7万円までの範囲(500円刻み)で自由に設定できる。例えば、個人事業主と配偶者で加入した場合、最大で年間168万円(84万円×2)を所得控除でき、課税所得の圧縮につながるというわけだ。

 しかも、掛金は一般の預貯金より高い利回りで運用されていることも魅力。中小企業基盤整備機構HP内の「加入シミュレーション」で将来に受け取れる共済金額と節税額を試算できる(*1)。例えば、掛金2万円で20年間加入した場合の共済額は557万2800円。総掛金額480万円に対する実質返戻率は138%にもなる。

 解約手当金として受け取る共済金は税法上、「退職所得」や「公的年金等の雑所得扱い」として処理(*2)できるので、単なる利益の繰り延べにもならない。任意解約に加え、契約者貸付制度を利用することも可能。節税としてだけではなく、資金リスクへの備えなど様々な面で個人事業主にメリットの多い対策だろう。

 なお、従業員向けとして中小企業退職金共済(中退共)も注目だ。独立行政法人の勤労者退職金共済機構が運営している制度で、中小企業(*3)と個人事業所の従業員が対象。掛金は5000円から3万円(16種類から任意選択)で、福利厚生費などとして全額を法人は損金に、個人事業主は経費として処理できるが、基本的に全従業員の加入が要件となる。

 ②中小企業倒産防止共済制度(経営セーフティ共済)とは、取引先企業が倒産した影響により中小企業が連鎖倒産や経営難に陥ることを防ぐための制度だ。やはり掛金は全額を損金に算入できる他、12カ月以上の払い込みがあれば解約手当金も受け取ることが可能。資金リスクに備えつつ、簿外資産を蓄積できる。

 加入対象は、1年以上継続して事業を営んでいる中小企業(*3)や個人事業所。取引先が倒産した場合、契約者が払う掛金を原資に、積み立て掛金総額の10倍を上限に無利子で貸し付けを受けられる。10年度税制改正で積み立て掛金の上限が800万円(月額最大20万円)に引き上げられ、最高で8000万円を借りることが可能だ。

 解約手当金は、40カ月以上の払い込みがあれば100%戻る(12カ月では80%)。解約金は税法上、法人は益金、個人は雑収入として扱われる。

 

節税では損金算入割合が重要

 一方、③法人契約生命保険を活用する最大のメリットは、前述したように経営者の不慮の事故や病気などに備えての企業防衛である。これに加えて、解約返戻金や満期保険金を役員や従業員の退職金の原資として積み立てられること。それも死亡/生存退職のいずれにも対応可能だ。

 しかも法人契約は、所得控除として最大5万円の生命保険料控除があるだけの個人契約と違い、支払った保険料の全額または一部を損金として処理できる。生命保険を節税策に活用する際、重要となるポイントが損金算入割合だ。保険の種類や契約形態(被保険者の設定など)/期間など諸条件により保険料の扱いが異なることが理由である。

 一般に生命保険は「養老保険」「定期保険」「終身保険」にカテゴライズされる他、貯蓄型(養老保険/終身保険など)と掛け捨て型(定期保険/逓減定期保険など)、中間的な特色を持つ折衷型(長期平準定期保険/逓増定期保険など)などに分類される(表参照)。

 節税と資金リスクヘッジを目的に活用を考えるなら貯蓄型、もしくは折衷型が選択肢となろう。例えば、保険料は高額ながら満期保険金と契約期間中の保障額がほぼ同額で、掛け捨て部分がないことから、従業員の退職金準備などに活用されているのが「養老保険」だ。

 ただ、貯蓄性が高いため税務上は基本的に全額が資産計上となってしまう。そこで「契約者:会社/被保険者:従業員・役員/満期保険金受取人:会社/死亡保険金受取人:従業員・役員の遺族」という契約形態により、保険料の2分の1を福利厚生費として損金算入できる。留意点は基本的に全従業員や役員を加入させること。予定退職時期に合わせた期間設定も必要となる。

 いずれの生命保険を活用するにせよ、ただ加入しただけでは節税とはならず利益の繰り延べになるだけ。退職金や大型修繕費など損金性のものに当てられるよう計画するなど、目的に応じて保険を選び運用していくことが欠かせない。

 さらには、諸条件が複雑に絡み合うため税理士や専門家のアドバイスが不可欠だ。「解約返戻金に課税されない保険活用の方法もある」と語る専門家もいる。上手に活用してほしい。

(*1)http://www.smrj.go.jp/skyosai/
(*2)解約手当金は受け取る際の年齢や受け取り方法(一括/分割など)により税法上の扱いが異なる
(*3)中小企業基本法ベース

■表) 主な生命保険の種類と概要/税務上の取り扱い

【貯蓄型】
●養老保険
掛け捨てがない生命保険。保険料は高い。貯蓄性が高く基本的には全額資産(保険積立金)計上されるが、被保険者を従業員・役員/死亡保険金受取:被保険者の遺族/満期保険金受取:法人という契約形態により2分の1を損金算入可能。また、満期保険金受取を被保険者とすると給与課税となり企業は損金処理できる

●終身保険
死ぬまで保障が続く保険。税務上は全額資産(保険積立金)計上(死亡保険金受取:法人とした場合)されるが、受取を被保険者の遺族とした場合は給与課税となり企業は損金算入が可能となる。解約返戻金と支払い保険料の総額がほぼ同額となるのは払い込みが満了して以降となるため、途中解約は元本割れにつながる

 

【掛け捨て型】
●定期保険
保険期間が短い典型的な掛け捨て保険。保険料を払っている保険期間だけ保証される。税務上、死亡保険金受取りが法人の場合は全額を損金処理可能。受取が役員や従業員の遺族の場合、加入者が全員なら福利厚生費、特定者だけなら給与課税となる。解約返戻金はわずかで、ないことも多い

 

【折衷型】
●長期平準定期保険
定期保険の一種で保険期間が非常に長いもの。保険料は高額だが、通常の定期保険と違い解約返戻金が多い。返戻金額のピークがあり、それを過ぎると減少して最終的に満了時でゼロとなる。税務上、全額を損金処理できる。だが、保険期間が長くなるほど返戻金が高額になるため一定の要件(*1)により当初60%に相当する期間は2分の1が資産計上となる

●逓増定期保険
保険期間の経過と共に死亡保険金が増加する。長期平準定期保険と同じく期間前半の保険料に将来保証分の前払い分が含まれており、途中解約時にはこれが返戻金として支払われるが、満了日にはゼロとなる。税務上、損金算入できる保険料の割合が要件(*2)により保険開始時から60%に当たる部分で2分の1から4分の1まで制限されている

※諸条件や加入形態など、さらなる詳細については専門書を参考にしたり、税理士などに相談してほしい       
(*1)保険期間満了時の被保険者の年齢が70歳超/加入時の被保険者の年齢+保険期間×2>105       
(*2)保険期間満了時の被保険者の年齢が45歳超→2分の1が損金       
     保険期間満了時の被保険者の年齢が70歳超/加入時の被保険者の年齢+保険期間×2>95→3分の1が損金
     同80歳以上/同>120→4分の1が損金

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