2008.11.10 (シャニム25号掲載)
災害時に飲料水を迅速供給、世界初の自転車型浄水器
ビジネスチャレンジャー
日本ベーシック(株)
勝浦雄一社長
災害時に飲料水を迅速供給
世界初の自転車型浄水器
日本ベーシック(株)
設立:2005年5月
事業内容:災害時用浄水器の製造販売
本社:神奈川県川崎市中原区新丸子町767番地2 氏橋ビル2階
連絡先:TEL 044-738-2215
URL:http://www.nipponbasic.ecnet.jp/index.html

生命維持に欠かせないものは「水」だ。特に災害時にライフラインが寸断された場合など、飲み水の確保を優先しなければならず、手洗いなどで衛生を保つためにも安全な水が大量に必要である。
大規模災害で水道が壊滅すると、数日は復旧しないケースが多い。国・自治体で非常時体制を整備しているとはいえ、きめ細かな対応は望めない。個人でペットボトル水を常備するにも量に限度がある。
そんな時に、河川やプールの水、風呂水、雨水などを飲み水に変えられたら−−。日本ベーシックは、それを可能にする災害時用浄水器を製造販売している。同社の勝浦雄一社長は「大規模災害では、コミュニティーや家庭での共助、自助が大切。どんな状況になっても、3日分ぐらいの飲み水は、自分たちで確保できるのが理想」が持論である。
同社の主力製品が「モバイルウォーター」だ。自転車を漕ぐことで荷台に搭載したポンプが作動。水をくみ上げ、後輪サイドに取り付けたフィルターで濾過する。毎分5Lの給水を行なう。
浄水器の動力に自転車を使うというアイデアはおそらく世界で初めて(日米中台で特許取得)。自転車なら水源までの移動も簡単だ。災害時でも動力に困ることもなく、手動式に比べれば浄化効率がよい。
本当に河川の水などを飲み水に変えられるのかと、いぶかしむかもしれないが、3段階フィルター(標準構成)で強力に不純物を濾過する。
1次フィルターでゴミを取り除き、活性炭とセラミック材を使った2次フィルターでニオイやニゴリを取る。最後は表面に多数の微細な穴(直径0.1ミクロン)を持つストロー状の糸を寄り合わせた中空糸膜フィルターで細菌の透過を防ぐ。構造としては家庭用浄水器と同じだが、家庭用が水道水の塩素を取り除くのに対し、モバイルウォーターは安全性をより高めるため塩素を自動注入している。
「海水や化学物質で汚染された水には使えないが、それ以外なら、どんな泥水であっても飲み水を生み出せる」(勝浦社長)
モバイルウォーターからの派生商品として、トランクケースにポンプ、フィルターを収納した手回しタイプも発売されている。普段は水道に直結する家庭用浄水器として使用し、災害時には水源まで運んで飲料水を作り出すのだ。累計で100台以上を自治体やマンション管理組合、個人などへ販売している。
[ 写真 ]
プールの水も簡単に飲料水に変えられる(「リフレッシュプラザ柏」にて撮影)
安全な水にアクセスできない
勝浦社長が水にこだわるのには理由がある。途上国の人々に安全な水を提供したいという思いだ。
日本にいると想像できないが、世界には安全な水にアクセスできない人は大勢おり、アジア、アフリカだけで10億人ともいわれる。飲み水がままならなければ、衛生面で安全な水を使うのも難しい。それもあって、世界では毎年350万人以上の子供(5歳未満)が感染症や下痢で死亡している。
実は勝浦社長、三菱レイヨンで浄水器事業を立ち上げ、責任者を努めた人物。途上国への「自転車搭載型浄水器の供給」という企画が外部から持ち込まれ、検討している最中に定年を迎えた。後に同社が事業化を断念したと聞き、「それならば自分たちで」と05年に日本ベーシックを立ち上げたのだ。
「自分は競争に明け暮れた団塊世代。残りの人生は社会の役に立つことがしたい。やはり自分がよって立つのは水だと思った」と勝浦社長は振り返る。
この思いに、古巣の三菱レイヨンはもとより、サラリーマン時代に付き合いのあった企業が素材供給や製品開発で協力してくれた。例えば、ニオイと共にニゴリも取り除くフィルターは、高価な中空糸膜フィルターの目詰まりを防ぎ、長持ちさせるために素材メーカーと共同開発したもの。メインテナンスが難しい途上国での使用を想定したものだ。
モバイルウォーターにはNPOも関心を示し、ミャンマーやバングラデッシュへ数台ずつ持ち込んでいる(特にバングラデッシュでは3000万人がヒ素混じりの井戸水を飲んでいるといわれる)。
また、この夏にはアフリカにも持ち込まれた。天理大学がウガンダのある村に寄贈したのだ。現地の飲料水は、湖水や溝に貯まった泥水を煮沸したものが多い。だがモバイルウォーターを使えば瞬く間に安全な水に変わる。現地の人は驚き、喜んだ。
勝浦社長は「アフリカでは、片道何時間もかけて水くみをしている子どもが多い。援助で学校を建設する際、浄水器も設置すれば、子どもたちは学校に通いながら水くみも果たせるのだが」と話す。
モバイルウォーターはギリギリまでコストダウンして50万円台。ボランティアベースでは、途上国へ持ち出せる台数が限られる。大型インフラにあてられるODAも期待できず、今はスポンサー探しの日々でもある。
家庭用にニーズを開拓する
一方、理想を追求するためには、国内でビジネスを軌道に乗せる必要がある。異業種との協業と個人ニーズ開拓に活路を見出した。
異業種との協業では、日本コカ・コーラグループの自動販売機運営会社、エフ・ヴィセントラルとの協業が今夏から始まった。トランクケース型浄水器を内蔵した自販機を、プールのある学校や公共施設などに設置するというもの。川崎市の市民プールに1号機が設置された。災害時、自販機の飲料水はすぐに底をつく。その際、プールの水を飲み水に変えて市民に提供するのだ。
自販機業界は市場が飽和する中、飲料自販機の公共インフラとして価値を高めるために、AED(自動体外 式除細動器)を設置するなど差別化を図っており、浄水器付きもその一貫だ。日本ベーシックにとってコカ・コーラグループと提携できたことの意味は大きい。
個人向けには、家庭用と災害用に兼用できる普及モデルを発売する。25万円ほどの現行品に対し、普及モデルは5〜6万円を予定。「既に製品はできており、OEM先との調整を進めている」(勝浦社長)という。
普段は水道水をおいしくする浄水器が、いざという時に風呂水や雨水を飲み水に変える。それも5〜6万円なら“お得感”はあるだろう。
国内においては「災害時」、途上国では「日常」と位相は違えど、どちらも水で人の命を支えるもの。水にかける勝浦社長の熱意は、いっこうに衰えを見せない。

[ 写真 ]
左:ウガンダでは泥水を煮沸しただけの飲料水が多い
中央:モバイルウォーターを寄贈され、ウガンダの人たちには笑顔が!
右:日本ベーシックの勝浦雄一社長
![]()
関連記事がありません。














コメント
コメント