2006.10.20
サイゼリヤ~「企業理念」で差別化する外食サバイバル時代の優等生Page2

企業研究--サイゼリヤ
サイゼリヤ会計学
景気に左右されない
3つの必勝方程式
(株)経営サポートステーション代表取締役 税理士・行政書士
井上一生
本誌で「税金コラム」を連載中の井上一生税理士は「サイゼリヤ正垣泰彦社長の一番弟子」を自負する経営者でもある。18年前に会計事務所を開業し、現在では900件以上の顧客を抱えるまでに成長した。そして自社がここまで大きく伸びた要因を「正垣社長に学んだ経営学を自ら租借し、実践してきたから」だという。その基本的な考え方や手法を「サイゼリヤの会計学」としてまとめてもらった。
必勝方程式とは「歯止め」
サイゼリヤの正垣社長には、さまざまなことを教えていただいた。それを通じてサイゼリヤがここまで成長してきた要因を自分なりに分析すると、以下の3点を鉄則とし、徹底追求してきたことが重要ではないかと考えている。
①1店舗ごとにROI(※1)20%を達成すること。
②1店舗ごとの営業利益率10%を達成する店舗運営を確立すること。
③出店の可否判断は売上高1億円を基準とすること。
つまり、サイゼリヤには店舗単位の鉄則といえるビジネスモデル(フォーマット)があり、1店舗の段階から、これをトータルシステムとすべく徹底してきたわけだ。私はこれこそが「サイゼリヤ流 3つの必勝方程式」だと考えている。これをいい換えれば「歯止め」である。このモデルを出店という形でコピーし、店舗数のかけ算で、売上と利益を出しているわけだ。
ここで皆さんには「自分はチェーンストアじゃないから関係ない」と考えないでほしい。事実、私の仕事はチェーンストアではないが、この方程式を私なりに実践したことで、成長することができた。チェーンストア理論は、単店のビジネスでも十分有効である。なぜなら単店でもトータルシステムができていないケースが圧倒的だからだ。
ROI20%を徹底
開業の際、ほとんどの人は投資をする。中には体一つのビジネスもあるが、商品や店舗、営業車の取得、工場や製造機械の取得など、多くの場合、何らかの投資をともなう。投資は、ほとんどの場合が銀行などから借りて、金利と元本を返さなければならない。例えばパソコン。何年使いますか? 3年? 5年? ここでは、パソコンやプリンター一式で50万円を投資して、5年使ったとしよう。
「50万円÷5年=10万円(金利は考慮しない)」
50万円を投資したら、年間10万円の回収をしなければいけない。逆にいえば、10万円の経営的なメリットが計上できるもの以外、投資をしてはいけないということである。
店舗や商品などに対する全体投資が1年で、どのぐらい銀行金利よりも、多く利益を出したかを計る。つまり投資をすべて利回りで見る。この視点が日本の経営者に欠落した最悪のポイントなのだ。
当然のことだが、「市場の借入金利<会社の利回り(利益)」でなければ生き残れない。
現在が低金利でも、将来は必ず上がる局面がくる。店舗や商品に投資する以上、利益が銀行金利の3倍から4倍はあげられなければ、リスクを含んだビジネスに投資する意味はない。その投資利回りの生命線をサイゼリヤではどう見るか?
それが①の「ROI20%以上」なのである。1000万円を投資したら200万円の利益をあげられる投資以外してはならない。これがサイゼリヤ第一の必勝方程式「ROI20%以上」だ。
こんな低金利時代に20%もの利回りの商売があるか! と考えた人がいたら、その人は社長業失格、落第なのだ。この厳しい基準(歯止め)をクリアできる商売以外はするなということが必勝方程式なのだから。
昔、正垣社長によくいわれたものである。「店舗? 工場? ROI20%回るのか? 回らない? じゃあ中古にしろ。それでもダメなら、屋根つけるな」と。だから、私は仕事で新車は買えない。ROI20%の教えがあるからだ。
必要利益率を最初に決定
②の「1店舗ごとの営業利益率10%を達成する店舗運営」も極めてシンプルだ。まず最初に、売上高に対する営業利益率を10%と決めることからスタートするのである(図3)。
■図3 サイゼリヤの店舗における収益分配黄金律
そこから他の費用を逆算する。つまり、図3の下から決めて、そこから逆算する。これはまさに社長の仕事である。商品単位、顧客単位、担当単位、店舗単位なんでも。あなたの商売の管理単位で決めるのである。
厳しい。できない。無理。だったら商売をやめるか、商品やマーケットを変えるか、いうことを聞かない社員をクビにするかをお勧めする。「やめること」「捨てること」「代えること」は大事なマネージメントである。サイゼリヤは、単店で図3のような単純なレシピが決まっており、その上で各種の経費を配分している。
その際、利益率の次のポイントになるのは原価率であろう。サイゼリヤの1店舗の原価率基準は約40%だ。これは他のレストランチェーンなどと比べても高い。低価格の商売の場合、普通は原価率をいかに引き下げるかがポイントだが、サイゼリヤの場合はここが異なる。単純にいえば、高く仕入れたものを安く売っていることになるわけだ。
正垣社長は「いいものを安く売るのがビジネスのポイント」と語っているが、そのことは原価率を見ても明らかである。
その一方で前述のように利益率を10%と決めている。そこで残りの50%をいかに有効活用する仕組みを構築するか
が、「いいものを安く売って、しかも利益を出すポイント」ということになる。
例えば人件費率は25%と低い。サイゼリヤでは、提供商品の品質向上と店舗人時数の削減のためにカミッサリー(食品加工工場。フードサービス業には不可欠の施設だがセントラルキッチンとは全く異質な施設である)を設置。店舗での生産性向上に貢献して全社での人件費が25%に納まっている。
③の売上高1億円の方程式も極めてシンプルだ。図4のように1店舗当たりの出店投資額は基本的に5000万円としている。そして出店の可否判断は、その店で1億円の売上が達成できるか、どうかだ。だから事前の出店調査が大事だろう。
5000万円を投資して、1億円の売上ができる。利益は10%に決めているから1000万円だ。つまり、5000万円の投資で1000万円の利益が得られ、まさに「ROI20%の達成」が達成されるわけである。
もちろん現実のサイゼリヤはここまで単純ではない。本稿はあくまでも、正垣社長に学んだサイゼリヤ流の経営を私なりに咀しゃくし、その基本的な考え方をまとめたものである。だが、こうした考え方を徹底し、大量に出店。750店舗の直営店を持つ、年商750億円のレストランチェーンとなったことは確かである。
関連記事がありません。














コメント
コメント