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2007.07.20 (シャニム20号掲載)

IT活用事例/三重県 県民の信頼深める新広聴事業をスタート

IT活用事例(自治体編)
三重県

課題山積 みの電子会議室を廃止
新たな広聴事業をスタート

相次ぐ自治体「電子会議室」の休止や廃止
注目を集めた三重県も会議室を廃止し、新たな広聴ツールを構築
電子会議室で経験した課題を反省材料にシンプルな仕組み
行政側から県民に歩み寄り、親近感と信頼関係を強化

  ITに先進的な三重県は、全国の自治体から注目されていた県民参加型電子会議室「e-デモ会議室」を、06年3月末で廃止。同年5月に新たなIT広聴事業 をスタートさせた。

it_jichi1.jpg△三重県の新広聴ツール「e-コメント」のトッ プページ。同県のホームページからアクセス可能

 

 電子会議室は、時間や場所を問わず自由に意見交換ができる ツール。広聴ツールや市民交流の場として、期待が寄せられた。多くの自治体がこぞって会議室を立ち上げたが、アクセスや登録者数が伸びず開店休業という状 態で休止や廃止も相次いでいる。
 三重県のe-デモ会議室は、神奈川県藤沢市や大和市などが運営する電子会議室と共に数少ない成功事例。それにも 関わらず廃止して新たな仕組みを導入した理由は、様々な課題から電子会議室が広聴ツールとしては制約があると判断したからだ。

 新しい広 聴事業は、「県民の声を広く行政に反映し行政参画を進める」という狙いや、システムとして電子掲示板を活用している点ではe-デモ会議室と変わらないが、 アプローチ方法や仕組みは大きく異なる。
 これまでのe-デモ会議室は、「県民の幅広い参加をベースにした自由な議論」が基本的なアプローチ。こ れを前提に、「県民の行政参画を促進すること」と「地域の課題に主体的に取り組み自ら解決できる県民自治力を高めること」を目的とした。これを実現するた めに、ネット上で誰でも自由に議論できる電子会議室の仕組みを活用したわけだ。

 これに対して、新広聴事業のコンセプトは「身近なところ から県民との信頼関係をさらに強め、少しでも多くの県民意見を行政に生かす」こと。これを実現する広聴ツールとして「e-コメント」を新たに導入した。
  新旧広聴事業の仕組みを表に示したので比較してほしい。大きく方針転換したポイントは、①コミュニケーション手法と、②テーマ設定だ。新事業では、県民の テーマ発案や県民同士の議論ができない。この点、「自由に議論を尽くす」という従来の考え方からは後退した感がある。
 だが、これはe-デモ会議 室で経験した課題を克服し、県民の行政参画をより一層進めることを狙った変更なのである。

 


一部 参加者による寡占状態

 まず、①の県民とのコミュニケーション手法は、議論型から対話型へと変更さ れた。その狙いは、行政と関わろうとする県民との関係づくりをこれまで以上に大事にすること。「県民からより多く語りかけてもらいたい」という考え方だ。 これはe-デモ会議室では「有意義な議論が困難であったこと」などの反省にもとづく。

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 もともと三重県が議論型のコミュニケーションを採用した理由は、電子会議室 の特性を生かし、幅広く県民に行政参画してもらうこと。積極的なPR活動もあり、e-デモ会議室はアクセス数と投稿数を着実に増やした。

  だが、「数は増えたが本当に幅広く県民が参加してくれているのか」(政策部広聴広報室広報グループ・辻日出男副室長)との疑問がわく。そこで電子会議室の 実態を検証した結果、一部の参加者による寡占化が起きている事実が判明した。

 例えば、寡占化の低い会議室でも数人の参加者で発言の約 40%を占めるような状況で、極端な例では寡占状態が90%を超えていた。数人の参加者が会議室上で仲良くなり、彼らの雑談の場と化したこともあったとい う。盛況に見えて、実は「会議室が十分に機能している」といえるほど参加者は多くなかったわけだ。
 また、中身についても意見を主張するだけで議 論の方向性がまとまらなかったり、あるいは表面だけの議論に終始している会議室が多く、広聴ツールとして県政に役立てるには量的にも質的にも物足りないと いう課題も残った。

 この事実は、職員アンケートの「電子会議室は広聴ツールとして有益だったか」との質問に対して、否定的な意見が7割 を超えたことからも明らかとなった。
 実際、e-デモ会議室における県側からの発言数は全体の5%に満たず、県民と双方向の議論が尽くされていた とはいえない。
 また、電子会議室はリアルタイムに近い環境で議論できることがメリットだが、行政という立場上、これを十分に生かすことができな かった。
 テキストで議論を交わす電子会議室では、文字情報から相手の反応や感情を読み取るしかない。公的立場にある県が情報発信や意見する場 合、すべての参加者に誤解のないように意味を伝えることが特に重要となる。

 誤解を恐れるあまり無味乾燥な文章となっては、県民に行政の 熱意は伝わりにくい。加えて、公的立場からの意見となるため、担当者は職務上の決裁を仰ぐ必要もあって、行政側のレスポンスが遅くなる事態が生じた。この 結果、「味気ない」「情報を隠しているのではないか」など、県民の不信感につながる可能性もある。
 さらに、参加者同士の関係で議論が先鋭的とな り、議論そのものに勝とうとして相手をキズつけ、あるいは枝葉末節にこだわりテーマの本旨から外れる会議室もあったという。

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身近なテー マからスタート

 こうした課題を解決するため、三重県は積極的に参加してくれる個々の県民と、「議 論」ではなく「対話」をしようと考えた。
 この実現のためe-コメントでは、従来は外部エディター(会議室の論点整理などを行なう管理人)任せで あったテーマ運営、情報提供や投稿への回答などを、個々のテーマを扱う県の各部局が直接担当することで、双方向性を強化したのである。

  ②テーマ設定は、前述の通り県側からの発案のみとなった。これは、県が主体的に対話を進めることで意欲的に県民の意見を取り入れていきたいというのが大き な理由だ。
 このため、県が提案するテーマも大きく変わった。以前は政策的で理念的なテーマが大半を占めたが、新広聴事業では実務的で身近な話題 がテーマの中心である。

 県主導ながら、身近なテーマを発案することで投稿の垣根を下げ、県政に親近感や興味を持ってもらうことが狙い。 そこから徐々にハードルを上げていこうとの考え方だ。「まずは身近な話題から始めて知恵や情報の共有に慣れてもらい、県を身近に感じてもらえるきっかけに したい」という。

 辻副室長は、「電子会議室上の議論を通じて県民の課題解決力や行政への参画力を高めることは、現時点では簡単ではな い」といい、「例え少人数でも、まずは前向きに行政へ興味を持ってくれる県民と信頼関係を築いていきたい。できるところから着実に取り組んでいく」と話 す。
 三重県の方針転換が成果につながるかどうかは今後の努力次第。「周知活動もままならず、アクセスや投稿数はまだ少ない。これから本腰を入れ て地道に取り組んでいきたい」というだけに、今後の動向に注目したい。

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