2008.02.20 (シャニム22号掲載)
ブログと手紙による情報発信で保護者との信頼関係を強化
IT活用事例|学校編 野田市立二ツ塚小学校(千葉県野田市)
ブログと手紙による情報発信で
保護者との信頼関係を強化
●保護者と双方向の情報交換を実現し強い信頼関係を構 築
●ブログと学年だよりを通じて日々の学校の様子を 公開
●行事/学校評価など様々なアンケートで保護者 から情報収集
●積極的な情報発信は地域ぐるみの教育 活動にも貢献
学力向上のみならず、いじめや学級崩壊、児童の防犯対策など教育現場が抱えている課題は山積み。これらを解 決していくには、学校と保護者がしっかりと信頼関係を築きお互いに協力し合うことが不可欠だ。
野田市立二ツ塚小学校(千葉県野田市)では、学校 だよりなど従来の配布物に加え、ブログやアンケートなどを活用した情報交換型のコミュニケーションにより、学校と保護者の信頼関係を深めている。
佐原紀雄校長は、「徹底した情報提供に加え、保護者から意見を吸い上げることが大事。さらに、それに対して学校側がどう考えているかを示すことから信頼関 係は生まれるもの」と語る。学校から保護者への情報提供は一方的であることが多い。同校では双方向の情報交換を通じ、学校と保護者の接点を増やし信頼関係 を築いた。
情報交換型コミュニケーションの仕組みは図の通り。情報発信ツールとして①ブログ、②学校だよりを通じて情報を提供すると共 に、③行事アンケートや④学校評価アンケートで保護者からの意見や要望を収集。その回答をフィードバックするというサイクルを繰り返すことで、関係強化を 図っている。詳細を見ていこう。
ブログで日々の状況を発信
まず、ITを使った情報発信ツールである①ブログ(*1)は、日々の情報 を提供することが狙い。月に1回発行する②学校だよりだけでは不足する保護者との接点を、ブログの活用により補足しているのだ。05年10月に導入して以 来、学校内での教育活動や児童の様子、行事や配布物の連絡、不審者情報などを発信している。
児童が登校する日には毎日ブログを更新。後述するよ うに修学旅行などの校外学習では、時間経過に合わせてリアルタイムに情報配信を行なう。
保護者の評判は上々だ。「子供が学校のことを話 してくれなくても、ブログを見れば学校の様子が分かる」「ブログのおかげで子供と会話ができるようになった」という声が多い。家庭で学校の様子を話すこと は良好な親子関係構築やいじめ問題の早期発見に効果的なだけに、ブログの効用はかなり大きいといえそうだ。
修学旅行などでは、引率教諭 から連絡を受け、リアルタイムに旅行の様子をブログに配信。旅行中でも子供たちの状況を把握できると保護者に好評だ。特に、ぜんそくなど持病を持つ子供の 親は心配するもの。「今日は具合の悪くなった子は誰もいません」といったことが分かるだけでも安心するという。
学校への正確な到着時間 が分かることも利点だ。交通機関を使う校外学習では学校への到着時間が予定通りにならないことも多い。だが、刻々と道中の状況をアップすることで保護者は 的確な時間に迎えにくることができ、学校で長い時間待たされるといった不満解消にも役立っている。
利用率が8割にも達する 同校のブログ。これだけの成果を上げているポイントは、「毎日の更新」と「テキストだけの構成」にある。
アクセス数アップには、毎日の 更新が欠かせない。保護者がアクセスした際に話題が同じでは、面白味がなく閲覧率は低下する。行事や学校の様子に変化がない場合などネタ探しにも苦労しそ うだが、「そんな時は季節の変化や学校周辺の様子に触れる」と更新担当の塩入千裕教務主任。それでも保護者からは「面白かった」と声をかけられるというだ けに、とにかく毎日更新することが重要だろう。
また、ブログは携帯電話の画面で見ることを前提に、テキストだけで構成されている。これ は、パソコンよりも携帯電話の普及率が高いことが理由だ。画像などを使えば楽しさは増すかも知れないが、データが重くなり保護者側のコスト負担が増え利便 性も低下する。気軽に利用してもらうことを考慮して、テキストだけのブログとしているわけだ。
[ 写真 ]
ブログといえば、閲覧者 がコメントを書き込むことも可能だが、同校では情報モラル対策として非対応。情報の吸い上げはアンケートに集約させている
(*1) 日々更新される日記的なウエブサイトの総称。個人や数人のグループで運営できる手軽さが受け、個人や企 業などに利用されている
アン ケート通じて情報収集
②学校だよりは、紙ベースの一般的な情報発信ツールだ。月1度の発行など基 本的なスタンスは他校と同じであり、学校のことを保護者に知ってもらうことを狙っている。
二ツ塚小学校の学校だよりが他校と異なる点は、行事案 内や連絡事項などの基本情報に加え、保護者から寄せられた要望などに対する回答を掲載していること。「保護者からの意見に対して学校がどう考えているか を、伝えることが信頼につながる」(佐原校長)と半分近いスペースを割く。
そして、保護者からの要望など様々な声を集める手法として活 用しているのが、③行事アンケートと④学校評価アンケートだ。いずれも紙ベースの情報収集ツールである。
③行事アンケートの狙いは、学 校に対する保護者からの意見を直接吸い上げること。行事に関することはもちろんだが、行事に関係なく自由に意見を書き込めるフリーアンサーのスペースを設 けることで、様々な注文や要望、アイデアなどが集まる。
保護者との接点をでき得る限り増やすため、運動会や音楽会はもちろん避難訓練や 引渡し訓練(*2)といった小さな行事でも同アンケートを実施しており、その機会は年間10回を超える。そして、ここで寄せられた意見に対する学校の考え を②学校だよりに掲載。学校の方向性を示すことで信頼関係を築いているのだ。
④学校評価アンケートは、学力なども含めたトータルの教育 活動に関して、保護者から意見を募ることが目的だ。2学期制の同校では前後期に実施し、集計結果や学校側の意見を載せた回答集を保護者へ配布している。
アンケートを通じて見えてきた課題については、保護者や教諭による話し合いの場を設ける。例えば、学力向上も同校の大きな課題であり、「明日の教育活動を 語る会」の開催など、保護者の協力を得ながら問題解決に取り組む。
(*2)緊急時に連絡を受けた保護者などが学校に児童を迎え(引き取り) に来ること。そのための訓練を引き取り訓練という
地域連携の促進にも効果
こうした試みは保護者との関係強化のみならず、「地域連携の促進」にも役立つ。同校ではブログを地域住民にも公開すると共に、回覧板を通じて前述の学内情 報を地域の老人会などへ発信。「地域に開かれた信頼される学校づくり」を理念に地域ぐるみの教育活動を展開している。
実際、同校では稲 刈りやお茶摘み体験、ホタル鑑賞会、星空観察会など様々な体験学習や催しが開かれている。全校児童約280人ながら、ホタル鑑賞会には地域から300人以 上が集まり、稲刈りなどには老人会のお年寄りが次々と参加。様々な体験学習では地域の協力者が講師に立つ。
もともと野田市では「地域連 携による特色ある学校づくり」を促進しており、「地域人材や資源を積極的に活用した特色ある教育活動を通じて、地域の子供は地域で育てる」(同市教育委員 会)との教育方針を掲げる。
これをどう実現するかは各学校の裁量に任されており、二ツ塚小学校は自然豊かな地域環境を生かした体験学習を教育に 取り込んでいる。このためには地元住民の協力が不可欠であり、信頼関係を築くため情報発信によるコミュニケーションを行なっているわけだ。
「当校の行事には地域から発案された取り組みや、保護者や地元の人たちからの協力なくしては実施が難しいものが多い。今後も、地道なコミュニケーション を通じて保護者や地域に信頼される学校づくりを進めたい」と佐原校長。保護者の学校に対する信頼が揺らいでいる中、同校の取り組みは参考となることだろ う。
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稲刈り体験やエコ教室、ホタル鑑賞会、星空観察会、水泳教室、小麦まんじゅう作り等々——二ツ塚小学校の体験型学習は多岐にわたる。写 真左は田植え体験。同右は校内で飼育しているホタルの幼虫だ
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