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2008.08.20 (シャニム24号掲載)

「セカンドライフ」活用し観光客拡大にチャレンジ

IT事例[自治体編]
三重県伊賀市

仮想空間「セカンドライフ」活用し
若者や外国人観光客の
誘致に着手

観光客の増加には若者と外国人の取り込みが不可欠に
伊賀市はウエブ2.0関連媒体を使ったプロモーション事業 に乗り出す
セカンドライフ上で忍術修行が可能な体験型テーマパーク開 設
仮想空間を実験の場に、成功事例のリアル展開を目指す

観光を収入源としている自治体にとって、旅行客の減少を食い止め客足を増やすことは大きな課題だ。各自治体は、地元に足を運んでもらえるよう様々な 工夫をこらす。

その中、伊賀上野観光協会(三重県伊賀市)はセカンドライフ、動画配信サービスやブログといったユーザー参加(コミュニティー)型の「ウエブ 2.0」関連媒体を活用した観光客の増加策に乗り出している。

伊賀上野で最も有名な“忍者”をキーワードに、取り組みの第1弾として08年2月にセカンドライフ内に体験型テーマパーク「伊賀流忍者の里」をス タートさせた。

 

it-jichi1.jpgセカンドライフ「伊賀流忍者の里」の入り口(http://www.iganinja.net/)。
英語版も用意されている

it-jichi2.jpg伊賀市内の「伊賀流忍者博物館」。
バーチャルとリアルが、いかにつがっていくのか。
今後の取り組みに注目だ

 

セカンドライフ活用の狙いは、「ネット上のコミュニティーで伊賀市のファンを作る」(伊賀上野観光協会の稲垣八尺事務局長)こと。「ネット 上のコミュニティーをリアルの観光行動につなげると共に、リピーターを獲得したい」(同前)という。

伊賀市では、ターゲットとなる観光客をファミリー層と若者層にセグメントしている。特に、「マニア的な忍者ファンともなれば伊賀に足を運んでくれる 可能性が高まる上、将来的に家庭を持てば旅行地として伊賀を選択肢に入れてくれる潜在観光客となる」(稲垣事務局長)ことから、若者層の開拓に注力。そこ で、この年齢層が中心ユーザーであるセカンドライフを選んだ。

さらに、「少子高齢化が進む中では外国にも観光客を求めることが不可欠」と稲垣事務局長。台湾や韓国などアジア圏については、認知アップを目指して 宣伝活動で訪問しているが、米国や欧州は未開拓という。この点でも、欧米で立ち上がったセカンドライフは有効だと見ている。

セカンドライフで忍術修行

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具体的な伊賀市の取り組みを見ていく前に、セカンドライフについて確認しておこう。
セカンドライフとは、欧米で急成長したネット上の3次元仮想空間のことで、日本国内では07年7月にサービスがスタートしている。

参加者はセカンドライフ内に自分の分身(アバター)を作り、SIMと呼ばれる仮想の街や土地などを往来することで人との交流を楽しむ。チャット機能 により、参加者同士で会話もできる。有料で土地を借り(*1)、 構造物や店などを作って独自SIMの開設も可能だ。
空間内では商品やサービスが流通し、創作アイテムなどの著作権は作成者本人に帰属するためアイテム売買により利益を得ることもできる。

ロールプレイングゲームにも似ているが、セカンドライフは純粋にコミュニケーションの場という点でゲームとは異なる。実際、「単なるゲームではなく 電子メールに匹敵する新次元のコミュニケーション手段」といわれ、ユーザーを結びつける強力なツールとして期待されている。
すでに、世界90カ国で1000万人以上が登録。アイデア次第では、実際のビジネスとリンクさせることもできるだけに、この市場を狙って企業などはセカン ドライフを広告ツールとして活用している。

伊賀上野観光協会も、セカンドライフ内に忍者をキーワードにしたSIMを開設し、そこで生まれたコミュニティーを現実の観光へとつなげていこうとい うわけだ。

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屋敷や自然描写などSIM内の構造物が精細で、ゲームソフトの描写に勝るとも劣らない美しさも特徴だ。他のSIMとの差別化を図ることで、参加者を 増やすことが狙いである。やや操作が難しいセカンドライフでは、ネットに慣れ親しんだユーザーが多い。初心者向けに基本操作方法を教える忍者道場を設ける など、利用増への取り組みにも余念がない。

スタートから約6カ月。すでにSIM内にはいくつかのコミュニティーが出来上がっており、「他のSIMに比べても参加者は多い」と、コミュニティー を構築してファンを作るという点では効果が表れている。

(*1)セカンドライフへ進出するにはSIMと呼ぶ土地の購入が必要。初期費用20万円、月額約3万 5000円のコストがかかる

SIM上の人気店舗を現実でも
だが、それをリアルの観光、つまりビジネスにつなげられるかどうかは未知数だ。実際、一時は続々と参入した企業が、効果が上がらないと撤退するケースも増 えてきている。これに対して、伊賀上野観光協会は、「効果を出すことももちろんだが活用法を探る実験的な意味合いを持つ」(稲垣事務局長)と話す。

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同観光協会が視野に入れているのは、2011年の地上波放送のデジタル化だ。ネット上では3Dグラフィックが増えているが、放送のデジタル化を機に 「ネットでの情報配信も3D映像を中心としたものに大きくシフトしていく」と見る。この時に、どのようなPR活動ができるかを今から探っていこうという狙 いがあるのだ。

 この2〜3年で何らかの結果を出したいと、伊賀流忍者の里で様々な取り組みを試みる予定という。
 例え ば、商品やサービスの流通が可能なセカンドライフのSIM上にいくつかの仮想ショップを展開。人気の高い店舗やサービスを実際に伊賀市内に建設して、仮想 空間から現実の世界へつなげていこうと模索する。また、SIM内からホームページなどにリンクできる機能を利用して、伊賀忍者グッズや地域物産のネット通 販なども始める予定だ。

 このため、現在のSIM上には忍者屋敷しかないが、近く城下町を隣接地に設けて様々な商業活動を展開しつつリア ルとの連動を探っていく。
 セカンドライフを中核に、他のウエブ2.0関連媒体との連携でコミュニティー構築も推進する。すでに、伊賀流忍者の里 の映像は画像配信・共有サービス「You Tube(ユーチューブ)」を通じて全世界へ発信。オンライン写真アルバムサービスなどにSIM内でのイベント画像などを公開し、一部は著作権フリーで自 由に使えるようにするなど伊賀流忍者の里に関する情報共有を促す。

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 こうした伊賀上野環観光協会の取り組みは話題を呼び、セカンドライフ の伊賀流忍者の里をはじめ同協会が手がけるウエブ2.0関連媒体に人が集まってきていることは確か。
 それが、実際の観光客増加につながるかどう かは、これからの取り組み次第だ。地域活性化の先進事例として今後も注目しておきたい。

[ 写真 ]
多くのSIMの中で もグラフィックは群を抜く美しさ。一見の価値はある

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