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2009.05.20 (シャニム27号掲載)

IT活用事例|自治体編~ネット放送局にYouTube活用し 低コストで効果的な地域PRを実現

IT活用事例|自治体編
和歌山県

ネット放送局にYouTube活用し
低コストで効果的な地域PRを実現

広報PRツールとして急増する自治体のインターネット放送局
和歌山県は「斬新」「高視聴率」「低コスト」の観点から YouTubeを活用
YouTubeの特性に合わ せたコンテンツ配信で効果倍増
サーバー管理などラ ンニングコストの負担も大幅に軽減

 

 ブロードバンド環境の普及により動画コンテンツを、広報PRツールとして導入する自治 体が急増。その代表例が行政によるインターネット放送局の開局である。
 インターネット放送局とは、ネット回線を利用して独自の動画コンテンツを 配信するサービスだ。コンテンツ作成や運用に費用はかかるが、パソコンとネット環境があれば誰でも低コストでサービスを提供できる。これに着目した自治体 が、観光客誘致や行政広報などを目的に同放送局を開設しているというわけだ。
 一説によれば、「インターネット放送局に準ずるような動画コンテン ツを利用してPRに取り組む自治体は全体の半数を超える」とされ、もはや行政にとって必須のツールといえる。

 そうした中、和歌山県は無 料の動画共有サイト「YouTube(ユーチューブ)」を活用したインターネット放送局を開設。都道府県レベルでユーチューブの活用は全国初の試みで、県 内外から注目を集め、高い視聴率を実現している。
 和歌山県インターネット放送局の概要は以下の通り。制作した動画コンテンツをユーチューブのサ イトにアップロード(転送)し、リンクを張ることで県のインターネット放送局の専用ページ(画面1)でも視聴することが可能だ。

 

画面1:和歌山県インターネット放送局の専用サイト。△画面1:和歌山県インターネッ ト放送局の専用サイト。
下記アドレスの他、和歌山県ホームページからもアクセスが可能

●和歌山県インターネット放送局
http://www.pref.wakayama.lg.jp/nettv/index.html

 

   「ディスカバー和歌山」「知事記者会見」「ものしり映像館」など全8チャンネルで構成(表参照)。新たに制作すると共に、庁内に存在する既存動画を集約 した結果、08年8月の開局当初から約250本もの充実したコンテンツを揃えている。
 このうちユーチューブを利用して配信されている動画数は約 150本に及ぶ。10分間を超える動画は転送できないというユーチューブ側の制約から、100コンテンツについては庁内サーバー経由で配信している。
  また、放送局の専用ページではグーグルマップ(*1)を利用して地 図から関連動画を視聴可能としたり、ユーチューブ内に「和歌山チャンネル」を開設(*2)するなど、視 聴機会を拡大するアプローチにも取り組む。

視聴機会の拡大に効果絶大

  ユーチューブ着目の理由は、「斬新な手法」により「高視聴率」を「低コスト」で実現できることだ。開局に携わった広報室広報班の湯川知行副主査は、「すで に多くの自治体が放送局を立ち上げている中、和歌山県は後発組となる。全国から注目を集めるような手法として、当時は都道府県で活用がなかったユーチュー ブを利用することでニュースバリューが高まると期待した」と話す。

 そして、ユーチューブを活用した最大の狙いが高視聴率の実現。「とに かく動画を見てもらい、和歌山県の魅力を伝えることが観光客増加など地域活性化につながる。できるだけ多くの人に視聴してもらうことが重要」(湯川副主 査)との考えに、ユーチューブは最適だった。
 ユーチューブ利用者は国内だけでも月1000万人以上といわれ、これを活用するだけで同規模の人々 が動画を見てくれる機会が生まれる。「新たに立ち上げる放送局の利用者を一から開拓するより、ユーチューブの力を借りた方が、効率がいい」(同前)。

  成果は和歌山県の思惑通り。開局当初、インターネット放送局へのアクセス数(視聴数)は、月5万ページビュー(PV)を超えた。旧ネット放送として配信し ていた知事記者会見や広報番組のそれが同2000PV足らずであったことを考えれば、飛躍的な視聴率アップといえるだろう。
 開局以来、人気動画 は累計3万8000回以上も再生されている他、ユーチューブ内の検索ランキングで「和歌山県」というキーワードが2位にランクされたこともある。「和歌山 のインターネット放送局サイトだけで取り組んでいたらここまでいかなかった。まず和歌山県を知ってもらうという狙いとしては大成功」と湯川副主査は満足そ うに語る。

 とはいえ、ユーチューブの活用が即座に高視聴率につながるわけではない。魅力的なコンテンツを配信する努力が不可欠だ。実 際、和歌山県もユーチューブ活用を決めてから、「ユーチューブありき」で掲載コンテンツを検討。高野山や熊野三山、地元の歴史や文化といった地域をアピー ルする基本動画に加え、「ユーチューブ内ではマニアックな歴史や文化が好評」といわれていることから、和歌山ならではの話題性が高いコンテンツを揃えた。

  例えば、「ものしり映像館(5ch)」だ。これは和歌山県の博物館などが所有する珍しい展示物や、県内の歴史と文化など文字や写真だけでは分かりにくいこ とを映像化したチャンネルである。
 尾びれを欠きながらも懸命に生きる魚を取り上げた「ど根性アオバスズメダイ」や、「寄生虫・ハリガネムシの生 態観察」といったコンテンツが人気で、いずれも実際には県立自然博物館でしか見られないもの。動画を通じて、同博物館のPRにもつながるというわけだ。

 

画面2:YouTubeでのコンテンツ再生画面の一例△画面2:YouTubeでのコンテンツ再生画 面の一例。
「寄生虫・ハリガネムシの生態観察」は4月上旬時点で6700回以上も再生されている

  この他にも、猫のたまが駅長を務めることで人気となった和歌山電鉄の貴志駅、日本一のパンダ飼育頭数を誇る南紀白浜アドベンチャーワールドなど、動画によ る訴求力が高いコンテンツの配信で視聴率アップに取り組んでいる。


サーバー管理の負担を軽減

  ユーチューブを活用したもう1つの狙いが、前述の「低コスト化」の実現だ。和歌山県がインターネット放送局の開設に要したコストは初期投資の270万円 (動画編集委託/HP制作委託/撮影機材購入など)ほど。
 アカウントを取得すれば無料で動画を投稿できるユーチューブでは、毎月のランニングコ スト負担も発生しない。しかも、投稿動画はユーチューブ側のサーバーに蓄積されるため、コンテンツ数が増加しても県としてのサーバー管理やメンテナンスな どに要する負担は軽減される。

 撮影自体は県職員が担当。完成度の高いコンテンツとしてアップするために、動画編集のみ業者に委託してい る。これも、開局時に一気にコンテンツを揃えたため、今後はそれほど大きな負担とはならないという。
 メリットの多いユーチューブ活用だが、自治 体にとっては懸念事項もある。自治体としてのイメージダウンにつながる可能性を完全には否定できないことだ。

 自由に動画を投稿できるだ けに同サイトには有象無象のコンテンツが集まる。和歌山県も「公的な動画の横に怪しいコンテンツが並ぶような状況を懸念した」という。自治体としてのイ メージを損なうような取り組みは避けたいと、ユーチューブ活用に懐疑的な意見もあったようだ。

 だが、多くの人に見てもらえる波及効果の 方が、懸念材料よりもはるかに大きいと判断。専用サイトでクローズドにするのではなく、ユーチューブという開かれた環境で視聴率を高めることを選んだとい う。
  「全国へ和歌山県をPRするという目的は果たせた」と湯川副主査。今後は「質重視でコンテンツを増やしPR効果をさらに高めると共に、和 歌山の行政活動をもっと知ってもらえるツールとして活用していきたい」と続ける。これからの取り組みにも注目していきたい。

 

表  「和歌山県インターネット放送局」のチャンネル構成と概要

「和歌山県インターネット放送局」のチャンネル構成と概要


(*1)グーグルが提供するオンライン 地図情報サービス。様々な情報とリンクさせることで、目的の場所付近の情報を検索したり近辺の様子を確認できる
(*2)ユーチューブのアカウント 取得者は、投稿動画を一括した専用チャンネルをサイト内に設けることが可能

 

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