2008.08.20 (シャニム24号掲載)
デジタルAVネットワーク時代の幕開け
デジタルAVネットワーク時代の幕開け
テレビが実現する
「いつでも」「どこでも」「誰にでも」
「テ レビは放送を受信するだけの道具ではない!」 メーカー各社の鼻息が荒くなってきた。デジタルAVネットワークが本格普及しようとしているからだ。イン ターネットなどのIT技術をテレビと融合させる試みは、これまでにも数多くあった。しかし、これから始まる新AV時代は、もっと簡単で、もっと楽しく、 もっと便利だ。その中身を検証してみよう!!
デ ジタルAVネットワーク
3つのキーワード
テレビのデジタル化–。その最大のメリットは、手軽に高画質・高音質の動画を、大画面で見られることだろう。
2011年のアナログ地上波放送 中止を待つまでもなく、すでに地デジの高画質・高音質放送を楽しむユーザーは相当数にのぼっている。民放連によれば地デジ対応受信機(テレビ、チュー ナー、レコーダー等)の世帯普及率は43.3%に達し(08年3月末現在)、今年度末には6割に達すると予測している。
また、テレビの大画面化 についても08年のテレビ市場の主流は、37V型以上へのシフトが鮮明だ。JEITAの発表によれば、液晶テレビに占める37V型以上の構成比は27%を 突破(08年1月~5月)。しかも、対前年伸び率150%以上(同)と、37V型以上が最も活況を呈している。
ブラウン管時代の 主流は28型以下であり、36型以上の構成比はわずかだったことを考えれば、大画面テレビの普及は、やはりデジタル化・薄型化による大きな恩恵といえる。
そして今、デジタル化による新たなメリットが普及しつつある。薄型大画面テレビを基軸にした「デジタルAVネットワーク・システム」だ。カタカナでこう書 くと、「難しそう」や「面倒くさそう」というイメージを持つユーザーも少なくないだろう。
だが、そのメリットひと言でいえば、 「いつでも」「どこでも」「誰にでも簡単」という、テレビをもっと楽しくするための3つのキーワードが、一般家庭で手軽に実現することだ。いわゆる「ユビ キタス環境の実現」である。
ユビキタスとは簡単にいえばインターネットなどの情報ネットワークに、いつでも、どこからでもアクセスできる環境の こと。今は主にコンピューターや通信の世界で注目されている。だが、実はこれまでのテレビ開発の歴史もまた、ユビキタス環境を目指した歴史なのである。
日本のテレビ文化が実質的にスタートしたのは1953年のこと。この年、シャープが国産第1号の白黒テレビを発売開始し、NHKと日本テレビが放送を開始 した。これにより動画像が、一般家庭でも簡単に見られる時代が到来したわけである。
この時代、3つのキーワードのうち、「誰にでも」はテレビを セッティングさえすれば、スイッチとチャンネルを操作するだけという意味で実現していた。だが、「いつでも」には放送時間の制約があり(時間の制約)、 「どこでも」についてもテレビ受像器の前という制約(場所の制約)があった。
ここからユビキタスに一歩近づいたのは家庭用VTR が登場してからだ。番組を録画し、後から好きな時間に再生できるようになる。時間の制約から解放されたわけだ。また、録画テープを持ち運ぶだけで、TVと VTRのセットがある場所でなら再生可能となり、場所の制約も緩和されたといえる。
ただし、このシステムには課題もあった。VTRの予約録画設 定が難しいという不満が多く出され「誰にでも簡単」というわけにはいかなかったのである。Gコードなどの新たな予約方法なども生まれたが、大きく普及する までには至らなかった。ここまでが、アナログの限界だったといえるかもしれない。
そこで「デジタルAVネットワーク・システム」 である。「いつでも」「どこでも」「誰にでも」というユビキタスのキーワードを抜本から見直し、デジタル技術・IT技術を用いて実現しようというものだ。 以下、3つのキーワードを軸にテレビのユビキタスを見てみよう。
「いつでも」を実現
インター ネット
まず「いつでも」というキーワードだが、これはインターネットを介したVOD(ビデオ・オ ン・デマンド)サービスで実現する動きが顕著である。すでに「アクトビラ ビデオ・フル」「ギャオネクスト」そして「ひかりTV」などのサービスが始まっ ている。
いずれも有料で見たい映画やドラマなどを高画質で、いつでも見ることが可能だ。テレビ放送のように放送時間に制約されることがなく、レ ンタルビデオのようにショップを行き来する煩わしさもないという意味で「テレビのユビキタス化によるメリットが、最も分かりやすいサービス」(メーカー関 係者)という声が多い。
実際、テレビ放送局やレンタルビデオ会社もこのサービスに着目しており、レンタル最大手TSUTAYAは アクトビラの中で「TSUTAYA TV」をスタート。ハリウッドメジャー4社の映画を含む各種映像をフルハイビジョン画質中心で配信している。
また、この12月からはNHKもアクトビラで「NHKオンデマンド」サービスを開始する予定だ。「大河ドラマ」や「朝の連続テレビ小説」「映像の世紀」な ど過去の名作や、放送後1週間程度の番組もオンデマンド配信する計画だ。今後、VODコンテンツへ参入する企業が増加するとの予測が多く、「VODはイン ターネット・テレビの切り札」という声が支配的である。
その一方で動画だけでなく、静止画や文字情報を、インターネットでテレビ に配信するサービスも増加している。ヤフーなどの大手ポータル会社がテレビ向けのWebコンテンツを拡充しており、ニュースや天気予報、占いや地図情報な どをテレビで簡単に引き出すことが可能だ。
これらはパソコンでは当たり前のサービス。だが、パソコンとは異なり、テレビは起動時間が短く、リモ コン1つで操作が可能など、「誰でも簡単」という特性を持つ。ちょっとした情報を、いつでも手軽に入手するためのツールとして、今後の普及が期待されてい る。
動画も静止画も、コンテンツがますます充実する方向にあるだけに、「今後のテレビ選びでは、インターネット接続機能だけは絶 対にはずせない」という声が多い。ぜひとも、注目すべき機能といえるだろう。
なお、VODサービスやWebサービスの詳細、及び対応機種などに ついてはサービス会社やメーカー各社のホームページ等で確認してほしい。
■表1
薄型大画面テレビを基軸にした主なデジタルAVネットワーク
1.= ネットワーク
2.= ユビキタスのキーワード
3.= ネットワークでできること
4.= 代表的な用途
5.= 必要な回線(メディア)
1. インターネット
2.いつでも
3.インターネット上にある情報・コンテンツ等の視聴・閲覧
4.VOD(「ア クトビラ ビデオ・フル」「ギャオネクスト」等)の視聴
ニュース、天気予報、占い等の閲覧
5.ブロードバンド回線
1.DLNA (Digital Living Network Alliance)
2.(家の中)ど こでも
3.家の中にあるデジタルAV機器、パソコン等の連携利用
4.リビングのレコーダーに録画した映画を寝室のテレビで視聴する
自室のパソコンに保存したデジカメ画像を居間のテレビで閲覧する
5. 家庭内LAN(ホームネットワーク)等
1.HDMIコントロール (各社リンク機能)
2. 誰にでも
3.テレビに接続したレコーダー、シアターラック、ムービー等の統一操作
4.1つのリモコンによるテレビ、レコーダーや シアターラック等の電源オン・オフ、音量調整等
1つのリモコンによる簡単操作の録画予約
5.HDMIケーブルでの接続
1.ブリッジメディア
2.誰にでも
3.テレビとパーソナルAV機器との連携
4.SD カード等に保存したデジカメ画像のテレビでの再生
SDカード等に保存したムービー動画のテレビでの再生
5.SDカード等
※ 各ネットワークに接続する機器はすべて対応機種であることが前提。対応機器の詳細についてはメーカー各社のカタログ、ホームページまで。
「どこでも」を実現
DLNAネットワーク
一方「どこでも」 は、DLNAで実現されつつある。DLNAは家庭内LANを介したAV&情報機器のネットワーク・システムで「場所の制約」から大きく解放され、家の中で あればどこでも視聴可能なAV環境が実現する。例えば居間のレコーダーに保存した映画を寝室のテレビで再生したり、自室のパソコンに保存してあるデジカメ 画像を居間の大画面テレビで、家族全員で鑑賞することなどが可能である。
DLNAとはDigital Living Network Allianceの略。AV機器とコンピューターの間でデータを相互にやり取りするため、その仕様策定を目的に設立された業界団体のこと。
家電 メーカーやパソコンメーカーの大半が参加しており、ホームネットワーク環境(家庭内LAN)で静止画や音楽、動画をやり取りできるようにファイルフォー マットを規定し、家庭内のどこからでもアクセスできるように技術ガイドラインを定めている。このためDLNA対応機種機器であれば、メーカーを問わずシス テム化可能なことが大きな特徴である。
「ソニールームリンク」などのように個有名称をつけているケースもあるが、基本的には DLNAであり、他社対応機器との接続は可能である。
さらには「どこでも」をより便利に実現する機能として、テレビと携帯電話との連携も充実し つつある。
例えば東芝はHDD内蔵レグザにワンセグ録画した番組を、SDカードへダビングし、これをレグザケータイなどワンセグ対応のSDカー ドスロット付き携帯電話で再生できる機能を持っている。
これなどは映像を外に持ち出し、電波の届かない場所でも再生可能という意 味で、場所の制約から大きく解放される機能といえるだろう。今後、携帯電話やゲーム機などのポータブル機器とテレビの連携機能は、より充実しそうである。
「誰にでも簡単」を実現①
HDMI コントロール
「誰にでも簡単」についてはHDMIコントロールが有効だ。
HDMIコン トロールはパナソニックのビエラリンクやシャープのAQUOSファミリンクが先行し、今では主要メーカー各社が同機能を採用。薄型大画面テレビでは当たり 前の機能になりつつある。テレビとレコーダー、シアターラックなどとをHDMIケーブルで接続し、リモコン1つで操作可能にするものだ。
例えば VTRの時代には大きな課題だった予約録画の設定も、HDMIコントロールではテレビのEPG(電子番組表)を呼び出し、録画予約をクリックするだけで、 その情報が自動的にレコーダーに送られ、レコーダーを操作することなく予約設定が完了する。
他にも数多くの連携機能を有してお り、AVネットワークシステムの使い勝手を大幅に向上。「誰にでも簡単」を実現している。
HDMIコントロールは本誌22号でも詳細をレポートしたが、メー カー間で統一された「共通コマンド」と、メーカーが個々に開発した「メーカー個有コマンド」の2規格を共有している。主な共通コマンドとしては
○ ワンタッチプレイ(レコーダーの再生ボタンをオンにするだけで、テレビの電源がオンになり、入力がレコーダーに切り替わって映像を再生する)
○ワ ンタッチレコード(録画ボタンをオンにすると現在テレビで視聴中の番組が自動的に録画される)
○システムスタンバイ(テレビの電源をオフにする と、レコーダーや接続機器も連動して電源オフになる)
これらの機能はHDMI対応機器であれば、メーカーを問わずに連動させることが可能だ。
また、メーカー個有コマンドでは、例えばシャー プがテレビのリモコンに録画&再生ボタンを付けワンタッチレコードの操作をより扱いやすくしている。また、東芝はノートPCコスミオとの接続機能を持って おり、Win Vista搭載のAV機能の大半をテレビのリモコンで操作可能にしている。
いずれにしても「誰にでも簡単」の実現に向け、デジタ ル技術を駆使していることは確かだ。共通コマンドと個有コマンドをチェックし、自分の使い勝手に応じたメーカーのものを選びたい。
「誰にでも簡単」を実現②
ブリッジメディア
一方、ブリッジメ ディアも「誰にでも簡単」を実現するデジタル技術である。これはSDカードなどのブリッジメディアを介して、テレビと周辺機器をネットワークするもの。
例えばパナソニックの場合、SDカードムービーで撮影したフルハイビジョン動画をSDカードに保存し、そのカードをビエラのカードスロットに差し代えるだ けで動画を再生することができる。フルハイビジョン動画のやり取りをパソコンなしに「誰にでも簡単」にしたわけである。
同様の画 像データのやり取りはデジタルカメラでも行なわれており、ブリッジメディアに保存した静止画データを、そのまま再生できるカードスロットを持ったテレビが 各社から発売されている。
変わったところではシャープのAQUOSが、携帯電話やデジカメに保存した静止画データをIrSS(片方向赤外線通 信)転送により、液晶AQUOSに大画面表示できる機能を持っている。
デジタルムービーやデジタルカメラなどの画像処理は、これ までパソコンで行なうことが主流だった。しかし、ブリッジメディア対応テレビの拡充で、今後はパソコンレスで誰でも簡単に行なえるようになる。そして薄型 大画面テレビを基軸としたユビキタス・システムは今後、さらに使いやすく、便利になるはずだ。
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