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2009.05.20 (シャニム27号掲載)

「詐欺被害防止」実践講座 中小企業を狙う振り込め詐欺

「詐欺被害防止」実践講座

資金繰りに悩む経営者がターゲット
中小企業を狙う「振り込め詐欺」

詐 欺の代名詞といえば、今や「振り込め詐欺」。
ただ、狙われているのは個人だけと安心していないだろうか。
実は、中小企業を狙った事案も数 多く報告されているのだ。
振り込め詐欺の最新事情を追った。

 

□1.振り込め詐欺の現状

  図1/表1は、過去5年間の「振り込め詐欺(恐喝)」の被害件数と被害総額をまとめたものだ。この統計を見て驚くのは、被害額の多さである。

図1)過去5年間(04-08年)の   「振り込め詐欺」被害総額の推移

  マスコミ報道や警察の注意喚起により、振り込め詐欺の認知は大きく進んだはず。それにも関わらず、毎年250億円以上もの金額がだまし取られている。「組 織化され複数の犯罪者が詐欺に関わるなど、以前よりも手口が巧妙化してきた」(警視庁生活安全部管理官生活安全総務課課長代理の中島政彦警視)からだ。
  しかも、その矛先は個人のみならず企業、特に中小事業者にも向く。そこで、「企業」と「個人」の両面から振り込め詐欺の最新事情を見ていきたい。その前に 振り込め詐欺の全体傾向を確認しておこう。

表1)過去5年間(04年〜08年)の「振り込め詐欺」被害状況

再び被害増に転じた08年

  過去5年間の比較では、04年をピークに認知件数(*1)/被害総額 とも減少していた。だが、08年上期は過去最高といわれるほどのペースで被害が増加。下期は警察による重点介入などにより沈静化する兆しを見せたが、最終 的には04年の水準に迫る認知件数2万481件、被害総額275億9438万円となった。
 振り込め詐欺とはいくつかの犯行パターンを総称したも のであり、具体的には①オレオレ詐欺、②架空請求詐欺、③融資保証金詐欺、④還付金等詐欺——の4つだ。

表2) 過去5年間(04年〜08年)の「オレオレ詐欺」被害状況

 このうち、認知件数/被害総額とも最大の詐欺が①オレ オレ詐欺。過去5年間の被害状況は表2の通りで、08年は認知件数7615件、被害総額155億1928万円と04年に次ぐ被害を記録した。被害世代は高 齢者層が圧倒的で65歳以上が全体の65%、女性の被害率が高く7割強にも達する。
 一時期、オレオレ詐欺以上に話題を集めたのが②架空請求詐 欺。過去5年間では05年をピークに減少傾向にあり、08年は認知件数3253件、被害総額35億8712万円(表3)。認知件数では前年を越えたが、被 害総額は5年間で最低となった。

表3)過去5年間(04年〜08年)の「架空請求詐欺」被害状況

 架空請求では、若者世代に被害が集中する。20歳代 以下が男女とも最も多く(男18%/女19%)、30歳代以下で全体の約62%を占める。
 ③融資保証金詐欺の過去5年間の被害状況は表4の通 り。05年の認知件数9932件/被害総額66億8393万円をピークに減少傾向にあり、08年も同5074件/37億4794万円と前年を下回りそう だ。ただ、1件当たりの被害額は年々高くなっている。

表4)過去5年間(04年〜08年)の「融資保証金詐欺」被害状況

 年齢別の被害者構成では全世代に被害が分布している 中、40-50歳代の男性比率が27%と最も高い。4つの手口で唯一、男性被害者の割合が女性を上回っていることも特徴的だ。
 ここ最近、急増し た手口が④還付金等詐欺である。過去3年の被害状況を見ると、08年は認知件数4539件/被害総額47億4004万円と、前年を大きく上回った(表 5)。オレオレ詐欺と同様に高齢者、特に女性の被害比率が高い。60歳代以上の女性で全体の53%超という状況である。

表5)過去3年間(06年〜08年)の「還付金等詐欺」被害状況

 

□2.中小企業を狙う振り込め詐欺

  こうした統計やマスコミ報道などから、被害者の多くは個人だと思われているようだが、中小企業をターゲットにした事案も増加。その中心的なパターンが③融 資保証金詐欺と「国際的振り込め詐欺」の2つだ。
 まず、融資保証金詐欺とは「融資を申し込んできた企業に保証金などの名目で現金を振り込ませ、 実際には融資せずに金銭をだましとる」こと。特に資金繰りに悩む中小企業の経営者が狙われている。

 金融機関をかたる架空融資が一般的だ が、中小企業倒産防止共済制度や緊急保証制度など政府系支援の勧誘や斡旋を装い、年会費などをだまし取る事案も増加。中小企業基盤整備機構や全国信用保証 協会など公的機関と提携していると欺くケースもあり、政府系だからと気を緩めず詐欺事案として気に留めておきたい。
 詐欺犯が事業者にアプローチ する手段は主に2つ。金融機関などを装ってDMやFAX、電子メールを経営者に直接送りつけるダイレクトアプローチと、雑誌や新聞広告、折り込みチラシで 融資希望者を勧誘する方法だ。いずれも融資条件には、「長期無利息」「超低金利」「高額融資」「無担保」など、金策に悩む経営者を心理的にくすぐる文言が 踊る。

 そして、これに釣られ連絡をとった経営者から、「保証金」や「保証協会費」、「融資手数料」「利息先払い」「返済能力の確認」な ど様々な名目で金銭をだまし取るわけだ。
 経営者が罠にはまりやすいのはダイレクトアプローチだという。「資金繰りに苦しむ企業の名簿が出回って いる」(中島警視)だけに、詐欺犯がピンポイントで狙ってくるからだ。小切手の決済や給与支払いなど、金策のタイムリミットを目前に控える状況では正常な 判断力を欠く。そこに中小企業支援などを謳い、さらに前述のような融資条件を見てしまうと飛びつきたくなるのも無理はない。

 だが、「必 ず事実確認を行なうことがだまされないための最大のポイント」(中島警視)なのだ。追い詰められている時ほど、「話がうま過ぎないか」「取引におかしな点 はないか」など、業者情報も含めて必ず事実を確認するのである。

 特に、銀行で融資を受けられない経営者はノンバンク系に救いを求めがち だ。そもそも、資本力の大きい銀行系ノンバンクでも無担保での下限利息は8%前後、さらに初回融資は数百万円から、最大でも1000万円程度が限度とい う。それもリスクの少ない融資先に対する条件だ。まったく面識のない企業に、いきなり優遇利息や大口融資すること自体を疑ってかかるべきではないだろう か。

海外からも忍び寄る魔の手

 企業を狙う振り込め詐欺 は、これだけではない。前述の①-④は基本的に国内に限定されている。だが、今やグローバルで展開されるビジネスでは、詐欺の魔の手は海外からも忍び寄っ てくる。その1つが、「国際的振り込め詐欺」と呼ばれるもの。08年から日本でも激増しているだけに、ここで解説しておこう。
 国際的振り込め詐 欺は、通称「419詐欺事件」のこと。先進国の企業などをターゲットに、前渡し金などをだましとる国際的な詐欺犯罪だ。

 419詐欺その ものはすでに80年代に欧米諸国で確認されており、日本でも80年代後半に被害が報告されている。ナイジェリアをはじめとするアフリカ地域を中心に、東南 アジアなどを発信源とした犯罪だ。通称は、詐欺行為を罰するナイジェリア刑法第419条に由来している。
 日本貿易振興機構(JETRO)による と、国内の419詐欺被害は相談件数ベースで02年は20件程度だったものが、07年は177件、08年には9月末時点で264件と急増。しかも、「被害 の多くは中小企業」(JETRO)とされており、被害額は1件当たり200万〜300万円に達するという。

 基本的な手口はこうだ。まっ たく面識のない海外企業や政府関係者などから、突然に電子メールやFAXで仕事の誘いがくる。「ホームページで会社概要や製品を見た」「人から評判を聞い た」「コンサルティング会社に紹介された」など、通常のビジネスや貿易取引を装っている。
 これらは一般的に419詐欺の「貿易取引型」と呼ば れ、相手国の政府や官庁高官を装ったビジネスオファーや入札への参加を勧誘してくる「政府調達型」といった手口もある(*2)

 もちろ ん、これらはすべて架空の商談だ。例えば大型商談であることをエサに、輸入手続きや決済外貨の準備、契約書作成時の印紙代といった手数料などを前渡し金と してだまし取ろうとする。政府調達型では入札手数料を要求されるケースや、実際に現地に赴いた担当者から金品強奪、さらに誘拐して企業から身代金を奪う事 案も報告されている。

 金銭だけではない。詐欺グループ側国内の政府為替規制を理由に、現金後払いを要求し大量の商品を狙ってくるケース がある。日本国内や欧米系大手銀行の小切手が使われることもあるが、これらは決済不能な偽造や盗難小切手だ。いずれの場合も商品だけをだましとられるわけ だ。
 融資保証金詐欺はもちろん、国際的振り込め詐欺にしても被害にあわないためには何よりも「自己防衛」が不可欠。徹底した事実確認が、自社を 救うことになる。経済環境は悪化するばかりだが、経営難から詐欺犯の甘言に乗ってしまわないよう対策を講じておきたい。

 

□3. 巧妙化が進むオレオレ詐欺

 一方、「個人」を狙った振り込め詐欺については、①〜④の最新事情を見て いこう。
 ①オレオレ詐欺は、電話を利用して家族や警官、弁護士などを装い示談金などの名目(ストーリー)で口座に現金を振り込ませ金銭をだまし 取る手口であることは周知の通り。「会社でのトラブルや横領などの補填」「交通事故の示談金」「サラ金などの借金返済」など様々なストーリーで被害者の心 理を突く。
 しかも、電話口での詐欺犯の演技が手の込んだものになっていることは以前から指摘されているが、最近はそれがさらに巧妙化。「自宅に 押し入る侵入盗との複合型」や「警察の偽装捜査をかたる手口」といった事案が報告されている。

 前者の複合型とは、用意させた現金を自宅 に置かせたまま被害者を外へおびき出し、その隙に金銭を奪う方法だ。まず、「実際に会って現金を受け取る」という言葉で被害者を安心させて現金を用意させ る。その上で、詐欺犯は「持ち歩くと危ないからお金は家に置いて駅まで迎えに来て」などの文言で呼び出し、留守となった被害者宅から現金を盗むというわけ だ。
 最近は、詐欺に気づいた被害者がおとりとなり詐欺犯に接触し、その現場を警察が押さえることで逮捕につがなるケースが増えている。だが、こ うした振り込め詐欺の撲滅に本腰を入れる警察の取り組みを悪用したのが後者の手口である。

 まず、電話で家族をかたって金銭を要求してく るところは従来通り。異なる点は、間髪を入れず警察から詐欺犯逮捕に協力してほしいという電話がかかってくることだ。もちろん、これは偽警官。「現金を渡 した瞬間に捕まえたいので犯人が言うとおりに現金を用意して渡してほしい」など、言葉巧みに被害者を信用させ、まんまと金銭をだまし取っていくという。
  今後も、巧妙化すること必至のオレオレ詐欺。被害にあわないためには電話を切った後に落ち着いて考えること。「相手の動揺を誘い冷静な判断を奪うこと」 が、この手口の特徴だけに家族や関係機関に事実確認を取ることが不可欠といえる。

 架空契約や取引を口実に、郵便や電子メールを介して金 銭をだましとるパターンが②架空請求詐欺だ。「有料サイト利用料金」や「債権回収」などの名目が一般的で、最近では総務省やNHKといった公的機関を名乗 り、「地上デジタル放送移行に伴うアンテナ切り替え工事費用」を請求する事案などが増加。もちろん、これは事実無根なので気をつけたい。

  詐欺犯が架空請求で狙ってくるのは「不安感」だ。様々な話術でプレッシャーを与え、最後には「揉め事に巻き込まれることを防いでくれる善意の第三者」と被 害者に思わせてしまうのである。基本的な対策は、とにかく無視すること。電話などで接触してしまった場合、会話の中に「退会手続き代行」「長期滞納」「裁 判」などのキーワードが出てくる。心当たりがあっても、これらが頻出するなら、詐欺だと疑ってまず間違いないだろう。

 無視が最善策とは いえ、注意が必要なケースが1つ。簡易裁判所から督促状が届いた場合だ。これは、同裁判所が債権者に代わり債務者に支払いを命じる制度で、手続きが簡単な ことから悪用する詐欺犯もいる。2週間以内に異議申し立てをしないと、内容が確定するため期間内に裁判所に連絡を取ることが不可欠である。
 ③融 資保証金詐欺については、企業向けで述べた通り。個人では多重債務者を狙って詐欺グループがアプローチしてくる。借金問題の解決は、まず消費者センターや 弁護士に相談することが先決だと肝に銘じよう。

 被害者の「知識不足」を悪用したパターンが、④還付金等詐欺だ。税務署や社会保険事務所 などの職員をかたり、還付手続きと称して金銭をだましとるもの。主に、携帯電話で誘導してATMを操作させ、被害者の預金口座から架空口座へ現金を振り込 ませる手口が主流となっている。
 社会保険関連などを口実にした還付名目が5割以上を占め、今は「定額給付金」に絡んだ事案が急増。手口の認知向 上で被害は大幅に減少しつつあるが、新たな還付や支援制度などが話題となった場合には注意を促すことが大事だ。

 

□4. 振り込め詐欺の対策

 また、振り込め詐欺の由来にもなっているように、口座に現金を振り込ませること が特徴だが、最近はバイク便や友人、宅急便などを装って自宅まで受け取りにくるといったもの、エクスパック(*3)やポスパ ケット(*4)で 郵送させるなど様々な手段が悪用されている。
 日々、複雑・巧妙化する振り込め詐欺に対しては別手段により家族や第三者に事実確認することが最大 の防止策といえるだろう。

 では、万一にも自分や家族が被害にあってしまった場合はどうすればいいのか。まず、「詐欺だと気付いた時点で すぐに警察に連絡する」(中島警視)ことだ。
 組織化され役割分担が進む振り込め詐欺では入金後、「出し子」と呼ばれる担当がすぐに現金を引き出 してしまう事案も増えている。だが、警察に連絡すれば数分で口座の凍結が可能なだけに、「迅速な通報で被害額が戻った例も少なくない」(同前)。

  以前は、被害額を取り戻すには裁判に訴える必要があったが、08年6月に「振り込め詐欺被害金救済法」(図2)が施行。被害額の範囲内で凍結口座の残金か ら、スムーズに被害者に分配できる仕組みとなった。
  「不景気には犯罪が増える」といわれていることに加え、犯罪者は捕まる危険が少なく儲けの 大きい詐欺に流れている。この意味で、詐欺にあうリスクは決して低くはない。「自分は大丈夫と思っている人ほど、だまされて被害にあっている」(中島警 視)というだけに、いかなる時も冷静沈着な対応を心がけたいものだ。

図2) 振り込め詐欺被害金救済法の概要

図2)振り込め詐欺被害金救済法の概要①凍結:警察からの通報を受け、金融機関は詐欺 に使われた思われる口座を凍結する
②掲載:金融機関は凍結した犯罪口座を一覧として掲載。各金融機関のホームページ
 などで確認できる
③ 確認:被害者は犯罪口座一覧を確認する
④申請:被害者は振込記録などをもとに、救済を金融機関に対して申請する
⑤救済:金融機関は口座残 金を被害にあった金額の範囲内で被害者に対して配分する
 ことで救済措置を行なう

 


(*1)警察などの捜査機関により犯罪が発生したとして認められた件数のこと。実際の発生件数とは異なり、例え ば金銭的被害などを伴う実際の発生件数を「既遂」という
(*2)海外送金のために口座を貸してほしいと勧誘してくる「マネーロンダリング型」をは じめ、「遺産相続型」や「不正取得財産返還型」などいくつかのパターンがある。また、ネット利用者からの任意抽選で高額くじに当選したという名目の「イン ターネット宝くじ型」など個人を狙ったものも報告されている
(*3)500円の専用封筒を購入することで、郵便ポストから全国へ発送できる配達 サービス
(*4)重さ1kg(定型)/長辺34×短辺25×暑さ3.5cm以内なら、全国どこでも一律400円で届けられる配達サービス

 

 

○ ケース1
融資保証金詐欺
ワラにもすがる焦燥感が裏目に

 都内 で町工場を経営するA社長は会社に送られてきた融資斡旋のFAXチラシを目にした。取引銀行からは追加融資、別の銀行からは新規融資を断られたばかりで、 資金繰りに苦慮していたこともあり即座に飛びついてしまったという。
 融資担当者によれば、「必要経費10万円と保証委託金40万円を先に振り込 めば1000万円の融資が可能」とのこと。仕入れ代金の決済日が迫っていたこと、担当者の人柄が良さそうなことから指示通りに手数料などを振り込む。する と翌日に、担当者から電話が入った。「振込人と融資申込人(会社名義でなく個人名義になっている)が違うので再度振り込んでほしい」と。
 A社長 は「少し変だな」と感じつつも、説明ミスだと謝罪する担当者の人柄や先に支払った分は融資と共に返金するとの言葉を信じて、再び50万円を振り込んだ。
  だが、融資はされず。それどころか「貸し倒れの保険金も必要」と、さらに金銭を要求されるに至って、初めて詐欺だと確信したという。結局、100万円をだ まし取られてしまった。

 

○ケース2
国際的振り込め詐欺
現地に呼び 出され拉致・監禁

 都内の貿易会社B社が、中古資材の仕入先を海外に探していた。たまたま日本の仲介 者からアプローチがあって、南アフリカの企業を紹介された。
 早速、B社の代表取締役は資材買い付け交渉を行なうため、社員のC氏を出張させた。 ところが、ヨハネスブルグの空港に到着した直後に、C氏は誘拐されてしまう。
 詐欺グループからB社へは、50万ドル(約5000万円)の身代金 が要求された。社長は警察に相談するも「社員の命には代えられない」と、指定された口座に現金を振り込むことに。
 C氏は無事に救出されたが、紹 介された南アフリカの企業は実際には存在せず、日本の仲介者とも連絡が取れなくなったということだ。

 

 

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