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2009.09.08 (シャニム28号掲載)

熟年起業の実現に没頭 念願の新会社をスタート!

元航空機機長が綴る「熟年起業奮戦記」

返済迫る銀行と粘り強く交渉
その合間に起業の勉強を本格化

㈱ 竹資源開発 会長
田中一男
 

眠れぬ夜

  サラリーマン時代の多額の銀行ローンに対する自己破産勧告を、事業計画で乗り切った私は、いよいよ熟年起業にのめり込みました。

 熟年起 業では、ありきたりのビジネスモデルでは成功できません。オンリーワン企業を目指すべきとの考えのもと、中国の工場で竹フローリングをOEM製造し、日本 国内で販売するという事業計画を立てました。

 赤字経営の竹資源開発株式会社の社長と「株式譲渡契約書」を取り交わし公正証書にした上 で、私が代表取締役に就任したのは02年3月のことです。

 といっても、もともと従業員ゼロ、社長一人のベンチャー企業でしたから、社長 が私に交代し、前社長が引退したというだけです。竹フローリングの知識とノウハウは前社長から継承できたのですが、中国との交渉については、中国語ができ ませんので自信がありません。

 そこで中国企業に就職していた長男を呼び寄せ、新しいビジネスに協力してくれるように依頼しました。

  そして竹の専門家としての研鑽を積むため、日本竹協会に入会。中国福建省で開催された国際会議(中国林業局及び世界竹藤組織が主催)に日本代表団の一員と して参加し、竹産業の世界的な動向や竹工場、竹林などを視察して見聞を広めました。

 また、建材の主管庁は農林省と目星をつけ、本省に乗 り込み、JAS(日本農林規格)の認定についての指導を補佐官にお願いしました。

 ところが「木材にはJASの認定制度がありますが、竹 は木材ではないので所管外。当局の関知するところではありません」とそっけないのです。

 それならと、その足で建設省(現・国土交通省) 住宅局へ乗り込み、担当者へ竹フローリングのサンプルを見せて住宅建材として認定してほしいと交渉しました。

 すると「これが竹フローリ ングですか。噂には聞いていましたが現物を見たのは初めてです。きれいなものですね。残念ながら認定制度はありません。ご自由に販売して問題ありません」 とのこと。これで自信を持って竹フローリングの販売に取り組みました。

 しかし、実績も知名度もないベンチャー企業が、新しい建材の売り 上げを上げるのは極めて困難なこと。わずかな元手で起業したので、資金も潤沢ではありません。広告宣伝費に回す資金がありませんので、最小の資金で最大の 効果がある方策を模索しました。会社の知名度を上げる手段を考えたのです。

銀座に進出

  まず、東京の中心地、銀座六丁目にある銀座ビジネスセンターに本社所在地を登記しました。

 ここは地方の中小企業の東京事務所やベン チャー企業が、本社を登記するために利用するレンタルオフイスです。自社専用の部屋や家具があるわけではなく、多数の小部屋やセミナールームがあり、他の 企業とはタイムシェアリングをして必要な時間だけインターネットや接客のために部屋を利用するシステムです。

 そのため常駐しているわけ ではありませんが、受け付けシステムがしっかりしており、自社専用電話には元客室乗務員など洗練された女性受け付けスタッフが丁寧に対応してくれるので す。

 さらに、次のステップとしてインターネットのホームページを開設しました。

 友人知人に「地球環境を守る竹フロー リングのビジネスを銀座で始めた」と口コミで宣伝を始めたところ、効果はてき面。本社は銀座であり、電話をかければ洗練された応対をするので、「きっと、 すばらしい会社であろう」と実力以上に評価されました。

 関心をそそられたのか、マスコミの取材の申し込みも飛び込んできました。神奈川 テレビで「熟年起業」として15分番組で放送されたのは02年冬のことです。その後、夕刊紙や住宅専門誌に写真入りで紹介されるようになり、竹フローリン グの売り上げも徐々に伸びてきました。日本経済新聞などのマスコミ取材には銀座で対応しました。

 電話で会社へ問い合わせがあると、女性 受け付けスタッフがあたかも社員のように対応して、すぐに携帯電話へ連絡してくれます。私は銀座に常駐することなく、カットサンプルを持って工務店や設計 事務所、時には個人ユーザーを回る外回りに専念できました。知名度を上げるために銀座の一等地に本社所在地を登記するという作戦は成功しました。

商標登録

 竹フローリングを販売する同業他社は何社もあり、競争が激しいことがわかっていました。竹フ ローリングは建材ですから、どれも同じ様な形状です。そこで商標登録をして差別化を考えました。

 いくつかの商品名を考えましたが、日曜 大工でも施工可能な竹フローリングをアピールするため「置く竹」というネーミングで商標登録をしました。普通なら弁理士などの専門家に依頼するのでしょう が、経費節減のため、自分で申請することにしました。特許庁に出向き、申請の要領を聞き出して、自分で申請書を書き提出しました。

 しば らくして特許庁から書留郵便が届きました。内容は申請を拒絶する通知書です。やはり素人では無理かなと弱気になりましたが、すでに申請のための印紙代や時 間を投資していますので、このままでは諦めることができません。

 そこで特許庁へ出向き拒絶通知書を出した審査官に面会を求め、直接ご指 導をお願いしてみました。審査官は手ごわい相手かと想像していましたが案外親切。細かい指導を得ることができましたので、すぐに申請書を書き換えて再提出 したところ、審査が行なわれ、商標登録証が送られてきました。

 

洗練された銀座ビジネスセンターの受付

洗練された銀座ビジネスセンターの受付。
興味のある方は「SHANIMUで見た」と申 し込むと優遇されます(℡0120-264-661)。

新会社設立

  03年7月、新事業創出促進法を利用して新会社を設立しました。私が社長に就任してから、わずか1年4カ月後のことです。

 新会社は、私 が社長をしていた竹資源開発株式会社から営業譲渡し、在庫品などを現物出資するなどして資本金500万円で、長男を代表取締役として鎌倉市に設立しまし た。社名は旧会社と区別するために前株の「株式会社竹資源開発」としました。

 なぜ、このような面倒なことが必要であったかといえば、銀 行からの融資を受けるためです。

 旧会社はもとも短期間で前社長から譲り受けたため、調査が不十分でした。財務状況は多額の累積赤字が計 上されていたのです。債権放棄の念書を取り交わしていたので赤字の補填はありませんでしたが、そのままの財務諸表では金融機関からの借り入れが不可能だっ たのです。

 起業した当初は自己資金でビジネスを進めており、気になりませんでしたが、これまで以上に事業を拡大するには、やはり資金繰 りが必要です。そこで事業を拡大するために、そしてまた、長男を独立させることが私の使命との思いもあったことから、思い切って新会社を設立したわけで す。

 そして私は、当初の動機だった自己破産の危機回避ができ、ローン返済の目途がたったこともあって、一線から身を引くことにしまし た。

 自由になった時間で、長男の新会社のセールスを担当したり、「竹は地球を救う」とのテーマで雑誌に寄稿したり、講演をしたり、同業 他社の技術顧問を引き受けたり。退職後からずっと続いていた超多忙な日々からは解放されるはずでした。

 しかし、そう簡単ではないのが熟 年起業の難しいところです。(続く)

 

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