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2008.05.20 (シャニム23号掲載)

事業承継円滑化に向けた「相続税の納税猶予制度」

中小企業のための節税基礎講座

 事業承継円滑化に向けた
「相続税の納税猶予制度」

日 新税理士事務所所長 桐元久佳

 

 国税 庁のレポートによると平成17年度の死亡者数は108万3796人。これに対して被相続人(課税対象者)は、4万5152人と実に4.2%の人しか相続税 を負担していないことになっています
(国税庁  http://www.nta.go.jp/kohyo/katsudou/report/2007.pdf)。

  わずか5%未満の方々しか相続税を負担していない状況ですが、にもかかわらず相続税の負担に苦しんでいるのが中小企業の事業承継者です。なぜでしょうか?  まずは、そこを解説しましょう。
 中小企業は、その大株主が代表者として経営に従事し、会社の資産だけでなく、個人の不動産や預貯金などの資産 を担保に提供していることが少なくありません。
 中小企業の株式である非上場株式は、事業承継者(相続人)が他に売却できないのが一般的です。売 却する場合には、経営権の問題から過半数を売却し、事業承継者の地位も一緒に譲り渡さなければならないからです。
 このような状況では、事業承継 人は、相続税の納税資金が必要となりますが、個人資産も担保にいれているために、その株式も資金化できないという状況に追いやられてしまいます。

 

「相 続税の納税猶予制度」の概要

 わが国経済の基盤となる中小企業の事業承継は、雇用の確保や地域経済 活力の維持・発展からも極めて重要な問題です。自己資本の充実を図って経営を安定化させたのに、株式の評価が高くなると相続税の納税によって、会社の経営 を不安定にさせることにもつながります。
 そこで、中小企業の重要問題の1つである事業承継を円滑に行なうために、新たに「相続税の納税猶予制 度」が創設されました。
 事業の後継者がその会社の株式等を相続し一定の要件を満たした場合には、本来、株式等を相続したことにより課税される相 続税の一部の納税を猶予することにより、相続における税負担の軽減し、事業承継を円滑に行なうことを目的としています。
 制度の概要は次の通りで す。
 ・現行の10%減額という制度を廃止し、事業継続を前提として、自社株式にかかる相続税が80%納税猶予になる。
 ・中小企業法上 の中小企業を対象とし、株式総額20億円未満といった対象会社の用件や軽減対象10億円などの限度額は撤廃。
 ・平成21年度の改正で、事業承継 新法施行の日(平成20年10月の予定)にさかのぼって適用予定。

 

具体的な適用要件

  ①非上場会社を経営していた被相続人から、
 ②事業承継相続人が、
 ③一定の中小企業会社株式を相続し、その会社を経営していく場合に は、
 ④発行済議決権株式総数の3分の2までを限度として、
 ⑤相続した議決権株式の課税価格の80%に対応する相続税を、
 ⑥ 対象株式の担保提供を条件に納税猶予する。
 ただし、⑦非上場会社を経営していた被相続人も、事業承継相続人も、同族関係者と合わせて発行済株式 総数の過半数の株式を保有し、かつ
 ⑧同族内の筆頭株主で、会社の代表者であった(ある)ことが必要とされています。
 つまり、非上場同 族オーナー経営者からの後継者相続人だけが、今回の改正の恩恵を受けることができます。
 なお、納税猶予を受ける場合には、「円滑化法の認定」を 受ける必要があり、個人資産管理会社は租税回避防止の観点から適用が認められません。ただ、資産管理会社としての区分基準は、現時点では明らかとなってお りません。さらに、
 ⑨相続税の法定申告期限から5年間について代表者であること。
 ⑩この期間について雇用の8割以上を維持することが 要件であり、
 ⑪事業承継相続人の相続開始まで、相続した株式を保有し続ける必要があります。
 なお、企業経営は、資金繰りや景気の浮き 沈みなど不確定要素があることから、5年間の雇用の継続を要件としていますが、パート社員や社員の自発的な退社の場合など雇用継続条件の具体的なことは、 現状では不明確となっています。

 

 

相続の図

 ※説明を簡略化するため、未成年者控除等や非課税財産は含めず計算。 現行の相続税法を前提にしている。 

 

 

納税猶予額等

  ・相続等より取得した株式等のうち、相続等の結果、その会社の発行済議決権株式の総数の3分の2に達するまでの部分にかかる課税価格の80%に対応する相 続税額の納税を猶予する。
 ・事業承継相続人が納税猶予の対象となった株式等を死亡時まで保有していた場合には、猶予税額を免除する。
  ・相続税の法定申告期限から5年の間に、代表者でなくなる等、事業を承継していないと認められる場合には、その時点で、猶予税額の全額を納付する。
  ・事業承継相続人が納税猶予の対象となった株式等を譲渡した場合には、譲渡割合に応じた猶予税額を納付する。対象となる企業は中小企業基本法に規定する中 小企業です(図2参照)。
 ただし、5年を経過すれば事業の縮小は認められること(雇用継続も不要)や、会社資産の継続保有は要件とされていない ため、租税回避となる抜け道が、個人的には出てきそうな気がしております。

相続の図

 ※説明を簡略化するため、未成年者控除等や非課税財産は含めず計算。 現行の相続税法を前提にしている。 

 

相続税の課税方式の検討

  平成20年度自民党税制改正大綱では,事業承継税制の見直しにあわせて、相続税の課税方式を現行の「法定相続分課税方式」から「遺産取得課税方式」に改め ることについて検討を行なうこととなっています。遺産分割の方法で相続税が異なるため、うまく遺産分割をする必要性が出てきます。
 (1)現在の 課税方法(法定相続分課税方式)
 ①実際の遺産分割に関わらず、法定相続分にて相続したと仮定して、相続税額の総額を計算し、実際の相続分に応じ て相続税額を納税する方法
 ②相続割合により、相続人間の納税額に変動は生じるが、相続税総額については、変わらない。
 (2) 遺産取得課税方式
 ①まず、遺産分割により各相続人の課税価格を決定する
 ②各人の課税価格に一定の累進税率を乗じて各人の相続税額を計 算する
 ③累進課税を採用した場合には、遺産分割の方法により相続税額の合計額が増減することになります(図1、図2参照)。
 最後に私 見ですが、世界的には相続税は廃止の方向に動いております。理由は、EUのように国境が取り払われてきている国々では資産の海外流出を防ぎたいからです。 日本でも海外投資ブームのようなので将来的には相続税の廃止も議論になると思います(税制改正の詳細については、弊所のHPをご覧ください)

 

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