2008.08.20 (シャニム24号掲載)
ちょっとした工夫で すぐにも節税できる3つの手法/中小企業のための節税基礎講座

ちょっとした工夫で
すぐにも節税できる3つの手法
日新税理士事務所所長
税 理士・行政書士・大阪工業大学非常勤講師(会計学)
桐元久佳
今回は多くの 会社が使えるちょっとした節税ネタを3本ご紹介します。ぜひ自社で使えるネタがないか確認してください。
●その 1/出張が多い会社で使える節税テクニック
K税理士「S社長は、よく出張にいかれますよね」
S社長「そうやなあ〜。お客様が全国にいらっしゃるけど、開業間もないから営業所ないもんなあ」
K税理士「社長の会社は、開業して間もないの で、いろんな規定が整備されていませんね」
S社長「確かに、規定は何も作ってないな〜。規定作ったら何かいいことあるん? 縛られて面倒なだけ やろ?」
K税理士「それが、社長。旅費規程を作って、きっちり精算すれば、節税できますよ!」
S社長「旅費規程? そういえば、サラ リーマンしていた時あったな〜。でも、規定の内容知らんから、作り方教えて」
K税理士「分かりました。早速、旅費規程を作って節税しましょう」
ということで作成することになった「旅費規程」。なぜ、節税することができるのか?
旅費規程に基づいて支払われた日当は、所得税がかからないか らです。例えば、日当5000円として毎月10回出張にいくと、
5000円×10回=5万円
この5万円に所得税はもちろんかかりませ ん。さらに社会保険料もかからないのです。しかも、消費税も節税することが、可能なんです(ただし本則課税の方だけですが)。さあ、あなたも旅費規程を 作って「上手な節税」をやりましょう!
●その2/お金を出さず社会保険料を使う節税方法
I社長「前払費用を計上する節税策(お金を使う節税)はほとんどやりましたけど、お金を使わない方法、何かありませんか?」
K税理士「I社長の 会社で使えるのは、未払いの社会保険料を計上することです」
I社長「そうか! 社会保険料は、4月分を5月の末日に引き落とされるからなあ」
K税理士「毎月、50万円ほどの社会保険料を引き落としされていますよね。そのうち、従業員様の負担分が約半分なので、25万円を未払い社会保険料として 計上することができます」
I社長「計上するってことは、経理処理だけの問題ですな?」
K税理士「そうです。だから、お金を1円も支出 することなく節税できるのです。」
ということで未払い社会保険料を計上することにしました。なぜ、節税することができるのか?
社会保 険料は、前月末日に在社している従業員(役員も含む)を基準に保険料を計算します。だから、債務の支払いは確定しているのです。
社会保険料のう ち、約半分は給料から『預かり金』として従業員から預かっています。だから会社負担分は、約半分なので、その金額を未払い計上します。
まさに 「お金を使わず節税」できるのです。さあ、あなたも未払い社会保険料を計上して「上手な節税」をやりましょう
これと同じ考え方で、給料の締め日 と決算日が異なっている場合には、未払給料を経費とすることも可能です。これも経理処理だけでできる節税ですから、お金は1円も出ていきません。
●その 3/退職金を積み立てて節税するテクニック
K税理士「M社長、ご勇退の時期が3年後に控えていま すが、退職金はいくらぐらいほしいと思っていらっしゃいますか?」
M社長「わが社の現状を考えると…、あまりのぞめないよね」
K税理 士「では生命保険を使って、退職金準備をしながら節税しましょう」
M社長「生命保険で節税?」
なぜ生命保険を使うと節 税できるのか?
個人の所得税の計算は、所得の種類に応じて計算式が異なります。多くの方々にとって退職金は何度ももらえるものではないため、控 除額が多くなっております。
退職金にかかる税金の公式は、
(退職慰労金−退職所得控除額)÷2×税率 で導き出します。
特徴①退職所得控除があること(表1、表2参照)。
■表1)退職 所得控除の計算式
勤務年数 20年以下⇒40万円x勤続年数 ※最低控除額は80万円
勤務年数 20年超⇒70万円×(勤続年数−20年)+800万円
■表2)各勤続年数を表1 の式で計算した場合
勤続年数⇒退職所得控除額
・15年⇒600万円
・20年⇒800万円
・25年⇒1,150万円
・ 30年⇒1,500万円
・35年⇒1,850万円
例えば勤続年数25年で退職金が1000万の場合、
1000万円−1150万円(退職所得控除額)=▲150万円 となるため税金がかかりません。
また勤続年数を計算する際に、11年2カ月在職 した場合は、12年と繰り上げられます。
特徴②÷2=半分 であること。
退職所得控除額を超える部分についても全額が税金の 対象とならず、半分だけに対して税金がかかります。
例えば、勤続年数25年で退職金が1500万円の場合
(1500万円−1150万 円)÷2=175万円
この175万円に対して税金がかかります。
特徴③税率(分離課税)。分離課税といって他の所得と 一緒に課税されません。しかも税率が非常に低いです。所得5%、住民税10%の9割(特例措置)。
例えば、勤続35年で2000 万円の退職金を受け取った場合
(2000万円−1850万円※退職控除額)÷2=75万円
所得税は、75万円×5%(税率)=3.75 万円
住民税は、75万円×10%×9/10(特例措置)=6.75万円
税金合計=10.5万円
受取金額=1989.5 万円
もし給料で2000万円受け取った場合に配偶者のみを扶養控除とし、社会保険料控除を無視して計算すると
【所得 税】
2,000万円−384万円(所得控除)×33%−153.6万円=379.68万円
【住民税】
2000万円−369万円 (所得控除)×10%=163.1万円
税金合計542.78万円
退職金で受け取った方が約530万円も税金を低くすることができま す。
さらに会社としては、給料で支払うと社会保険料の会社負担分がかかりますが、退職金には社会保険料がかからないため、経費も削減できるので す。
具体的な節税方法は、まず、毎月の給料を退職金積立分として削減します。そして削減した金額と社会保険料の削減で浮いた金額 の一部を加算して、生命保険や、従業員の場合は「中小企業退職金共済(略称:中退共)http://chutaikyo.taisyokukin.go.jp/index.html 」に加入して退職金を積み立てていきます。
なお、上記の税率で受給するためには「退職所得の受給に関する申告書」の提出が必要となります。
※ 1)平成20年4月現在の税制に基づき資料を作成しております。今後、税制が変更される場合もありますので、記載内容について将来にわたって保証されるも のではありません。
※2)税制改正については、弊所のホームページでご確認ください。
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