2009.02.20 (シャニム26号掲載)
賢い節税対策にもつながる 「万が一」の貸倒対策
中小企業のための節税基礎講座
賢い節税対策にもつながる
「万が一」の貸倒対策
日新税理士事務所所長
税理士・行政書士・大阪工業大学非常勤講師(会計学)
桐元久佳
http://www.ns-1.biz/
K税理士「帝国データバンク2008年度11月の情報によると倒産件数は1010件、6カ月連続で1000件台の高水準となっており、負債総額は5411億6500万円、3カ月連続で前年同月比増加となっています(http://www.tdb.co.jp/report/tosan/syukei/0811.html)。社長のお取引先の中にも、不安なところはありませんか?」
O社長「幸いなことにまだ1件も引っかかっていないけど、支払い条件を変更してほしいといってきている取引先があるのですが…」
K税理士「取引条件変更依頼のお客様は、のちの営業会議で意思決定するとして、まずは決算対策を優先しましょう。今回は、お金のかからないものを優先していきます」
貸倒引当金(個別評価債権)について
売掛金、貸付金等の金銭債権については、将来の貸し倒れリスクに備えて一定金額の損金算入が認められています。
損金算入できる繰入額には、
①個別評価債権に係るもの
②一括評価債権に係るもの
この2つがあります。
貸倒引当金繰入の対象となる債権は次のものです。
1)売掛金、受取手形、貸付金
2)未収譲渡代金、未収加工料、未収手数料、未収地代家賃など
3)貸付金の未収利子、割賦未収金
4)売掛金、貸付金などの既存債権に係る裏書手形、割引手形
仕事がら、これまで多くの決算書を見てきましたが、不渡手形を計上しながら、個別評価債権の貸倒引当金を計上していない場合が多いので、基準について解説します。
個別評価債権の貸倒引当金繰入は、ある特定の事由により貸倒懸念の高い債権について、個別に一定の金額の損金算入を認めるものです。債務者に次の事実が発生した場合に、対象債権金額の50%繰入が可能となります。
1)会社更生法等による更生手続の開始の申し立て
2)民事再生法による再生手続開始の申し立て
3)破産法による破産の申し立て
4)会社法による整理開始、または特別清算開始の申し立て
5)手形交換所の取引停止処分があったこと
注意点としては、その債務者に対する買掛金、借入金などの「実質的に債権と見られない部分」や担保権実行により取立て見込みのある金額は除かれます。
また、債権額を証する資料、特定事由を証する資料を保存しておくことで税務調査に備えましょう。
K税理士「通常の貸倒引当金よりも要件は厳しいですが、計上できる金額は多くなるので、個別債権に対しても十分に計上しましょう」
O社長「計上するということは、費用化しても資金支出が伴わないのですね」
K税理士「その通りです。さらに、次のような事実が生じた場合には、【貸倒損失】として損金の額に算入できます。債権一覧表で確認しましょう」
貸倒損失について
万が一、金銭債権が貸倒れとなった場合には、その貸倒れによる損失を損金とすることができます。
債権が回収不能で資金回収できていないのに、税金ばかり納めていては資金繰りに苦慮します。貸倒損失の税務要件は厳しいですが、要件を把握した上で、該当するものについては正しく損失計上し、税金の負担を和らげましょう。
貸倒損失の要件ポイントをまとめてみましょう。
1)法律的な債権の消滅
①会社更生法の更生計画の認可決定
②特別清算の協定認可、整理計画の決定
③民事再生法による再生計画の認可決定
④債権者集会等で合理的な基準により債務切捨てが決定したとき
⑤債務超過が相当期間継続している債務者に対して、書面により債務免除したとき
貸倒損失として計上できる金額は、①〜④は決定により切り捨てられた額、そして⑤は免除した額となっています。
2)回収不能と認識されるもの
債務者の資産状況、支払能力からみて、全額回収できないことが明らかとなったもの
3)売掛債権の特例
①継続的な取引先との取引停止後1年以上経過したとき
②同一地域内の売掛債権総額が、取り立てに要する旅費等に満たない上、督促にもかかわらず弁済されない場合
実際に計上する上での注意点は以下の通りです。
1)回収不能と認識される貸倒損失の注意点
①要件は「全額」計上です。一部の損失計上は認めらません。
②経費処理が要件です。明らかとなった年度での処理が必要です。
③担保がある場合、その処分後でないと計上できません。
2)売掛債権の特例の注意点
①備忘価額として1円を残さないといけません。
②支払いの督促努力、資産状況・支払能力の把握が重要となります。
③担保がある場合は適用できません。
経営セーフティ共催について
K税理士「今回は資金が出ていかない経理・税務処理を中心に紹介しました。実際に取引先に万が一があった場合を中心としました。
しかし、企業を守る上では、取引先に万が一があった場合でも、企業を存続させることが重要ですよね。そのためにおすすめなのが『経営セーフティネット/倒産防止共済』です」
O社長「倒産防止共済? 何ですかそれ?」
貸倒引当金を個別計上したり、貸倒損失を計上して、きっちり節税することも大切ですが、会社を存続させ続けるために必要なことは「資金」の確保です。商売によって必要な運転資金は異なりますが、取引先に万が一のことがあった場合にお勧めなのが「経営セーフティ共済」です。 これは、中小企業基盤整備機構が運営する制度で、商工会議所や中小企業組合が窓口となって加入できます。お勧めのポイントは次の4つあります。
①全額損金算入
②最高3200万円の共済金の貸付けが受けられる
③共済金の貸付けは無担保・無保証人
④加入後40カ月経過後、満額返済される
また、経理処理を全額資産計上して、法人税の申告で調整すると、貸借対照表の資産が増加するので自己資本比率 を上げることができます。そして、税務で別表調整できる(損金算入できる)ので節税効果が高いです。
税務処理の方法については、顧問税理士にご相談の上、適切に処理してください。倒産防止共済(経営セーフティネット)に関する情報は、独立行政法人中小企業基盤整備機構でご確認ください。
今回は、取引先に信用不安があった場合を中心に節税対策を実施しましたが、貸倒れ対策は定期的な与信の見直しがポイントです。与信情報会社やライバル会社の動向・情報を定期的に仕入れて、連鎖倒産などとばっちりを受けないように十分に対策を打ってください。

ビジネス円滑化のためには様々な対策が不可欠だ。
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