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2009.09.09 (シャニム28号掲載)

今、注目されている新キーワード 「クラウドコンピューティング」とは?

目からウロコ!IT使い倒し術
今、注目されている新キーワード
「クラウドコンピューティング」とは?

フ リージャーナリスト
高田伸一郎


サーバー・クライアント型の
現在進行形

  これまでの連載で、Googleのサービスを紹介してきました。Gmail、Googleカレンダー、Google Map、Google ドキュメントといったサービスです。

 これらのサービスを利用するには、インターネットブラウザを使っていたわけですが、このようにソフ トウェアを、インターネット上で利用する形態を「クラウドコンピューティング」というようになりました(注1)。インターネットは、データが行き来する経 路を特定するのが難しく、よく雲(cloud)で図示されています。これが「クラウド」と名付けられた理由です。

 この形態でソフトウェ アを利用する考え方は、古くからあり、以前からいう「サーバー・クライアント型」という形式の一つであることは間違いありません。「サーバー」と呼ばれる コンピューターを、「端末」と呼ばれる画面とキーボードを使って操作するといったコンピューターの利用形態です。

 以前は「サーバー」と 「端末」の間は、社内ネットワークだったものが、今は「サーバー」にインターネット経由で接続していて、それぞれのパソコンが「端末」の役割を果たしてい ると考えれば、おおよそ間違いはありません。

 もちろん、昔のイメージの「端末」よりも高機能・高性能のパソコンは、単体で計算をした り、画像を処理したりすることができますが、サーバーをインターネット越しに利用する、ということで、個々のパソコンにソフトウェアをインストールして使 うという利用法とは異なる利点が生まれてくるところに、「クラウドコンピューティング」と呼ばれるようになった理由があります。

 

● 図 「クライアントサーバー」と「クラウドコンピューティング」

「クライアントサーバー」と「クラウドコンピューティング」

 

クラウド コンピューティングの
利点と問題点

  「クラウドコンピューティング」を利用した場合の利 点は、大きく2つあります。「利用時点で最新の技術が使えること」「柔軟なスケーラビリティでコストの固定化を防げること」です。これらを詳しく説明しま しょう。

 ソフトウェアが各パソコンにインストールされているのであれば、そのインストール時期や、アップデートをしたか、しなかったか ということに起因して、ソフトウェアのバージョンが個々に変わることが多いものです。

 Microsoft Officeのバージョンが個々のパソコンごとに異なっているということが、御社でもよくありませんか?

 しかし、クラウドコンピュー ティングでは常に、利用時点で最新版を利用することになりますから、どのパソコンからでも、どのユーザーでも、同じ環境を提供することが可能になります。

  例えば顧客管理ソフトウェアなどを利用する場合、購入(納品)時点が一番新しく、その償却期間中、技術の陳腐化がどんどん進んでしまうのが、これまでの IT利用の問題点でした。クラウドコンピューティングを利用すると、利用時点で最新技術を享受できるメリットが生まれます。

 また、自社 サーバーを利用するシステムでは、そのサーバー導入コストがかかるのはもちろん、運用コストも必要になってきます。しかも利用ユーザー数や利用頻度・デー タ量などにより増設を必要とします。

 ところがクラウドコンピューティングを利用することで、自社に今必要なユーザー数だけ契約すれば良 いことになり、その増減への対応はメール一通で可能な場合も少なくありません。これにより、サーバー運用といった固定コストから、利用ユーザー数に応じ た、あるいは、利用頻度やデータ量といった従量課金に移行でき、変動コストに移行できます。

 もちろん、従量課金の単価によっては、コス トが高くなる場合もあるかもしれません。ただ、固定コストしか選択できなかった状況から変動化する手法もある、ということがクラウドコンピューティングの 大きな利点です。

 もちろん、これまで紹介したGoogleのサービスは無料で利用できます。またGoogle Appsという、自社ブランドでGoogleを利用できるサービスでも、1ユーザーあたり年間50ドルで利用することも可能です(注2)

  すでにGoogleドキュメントでは、Microsoft OfficeのWord、Excel、Power Pointに相当する機能が利用できますし、Googleカレンダーと同等の機能をオリジナルで作り上げようとしても、何百万円といった導入コストを必要 とすることでしょう。

 こういった利点がある上で、問題点もあります。まず、クラウド(雲)の名の通り、データの送信経路が分からないど ころか、データが保存されるサーバーが世界中のどこのサーバーなのかさえ分からないということがおこります(これはデータの盗難に対して、「木の葉を隠す なら森の中へ」という意味で、他者が探し出すのが非常に困難でもあります)。

 また万が一、大規模な天災が日本ではない遠く離れた国で発 生したときに、一時的であるにせよ、データが取り出せない、という事態が発生するリスクとなります。

 また、クラウドコンピューティング 利用契約した会社が倒産した場合に、データが保全されない可能性もあります。もちろん、これまでにこういった事例はあるものの、そもそもサービス会社を変 更することに、大変な労力を必要とする場合が多いことが報告されています。

 ただ、一度サービスを開始してしまうと、他社サービスに変更 しづらいという問題は、これまでのITベンダーによる囲い込みとあまり変わりはないかもしれません。


開 発プラットフォームとしての
クラウドコンピューティング

 単純にソフトウェア利用としての クラウドコンピューティングではなく、開発プラットフォームとしてのクラウドコンピューティングの事例を紹介しましょう。

  「2008 年、ワシントンポスト社は17,481ページに及ぶ政府から公開された資料をOCR処理することで、画像からテキストに変換して、内容を検索できるように した。通常であれば、多くの時間とPCを必要とする処理だったが、Amazonが提供するクラウドコンピューティングサービスを利用することで、およそ9 時間で全部の資料を処理することができた。このときのPC利用費用はたったの144ドル62セント」(注3)

 必要なときに必要な分だ け、コンピューター資源を利用するというのは、なかなか難しいものです。特にピーク時に合わせた設備投資を行なってしまうと、平常時には余剰資源が多く発 生してしまうことになり、非常にもったいないのは誰もが分かっていることです。

 実はAmazonも、こういった問題を抱えていました。 クリスマスシーズンには平常時の何十倍、一時的には何百倍ものアクセスを受け入れる必要があり、それに応じた設備投資を行なうと、平常時は稼働しないサー バーばかりになってしまいます。

 この非稼働時のコンピューター資源を開発プラットフォームとして他社に貸し出すことにしたわけです。
Amazon の場合には他社のサービスが見あたらなかったので、自社資源の貸し出しという形になりましたが、この結果、他の企業はAmazonのコンピューター資源を 一時的に借りて利用できるようになったわけです。

 まだ、日本では一般的ではありませんが、サービスは開始されてきています。もし御社が ECビジネスで季節変動が大きく発生する場合や一時的にアクセスが集中するサービスを行ないたいときは、クラウドコンピューティング上にサービスを用意す ることで、サーバー設備の投資問題を一気に解決できるかもしれません。ぜひ選択肢の一つとしてお考えになったらいかがでしょうか。

 大き な話にはなってしまいましたが、まずは、Googleで実際にGmailやGoogleカレンダー、Googleドキュメントを使ってみてください。これ らを使うことで、クラウドコンピューティングが新しいPCの利用法として定着する。そう確信するはずです。

注1)このような形態は「ASP モデル」や「SaaS」と呼ぶこともあります。
注2)詳しくは「Google Apps」で検索して確認してください。
注3)http://aws.amazon.com/solutions/case-studies/washington-post/

 

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