太陽光発電のトレンドを追え!「1000Vソリューション」とは!?

概要

相変わらずの旺盛な需要が続く国内太陽光発電市場。

太陽光発電パネル国内出荷は2012年が3.8GW、前年比2.7倍と急成長したが、2013年はさらなる急成長が確実視されている。

そして、太陽光発電システムの革新もまた、急ピッチで進んでいる。

今回は「1000Vソリューション」や「セルフクリーンソーラー」など、市場の行方を左右する最新トレンドを解説しよう。

1000Vソリューションの3大特徴

 メガソーラーの発電効率を高める手法として今、大きく注目されているのが「DC1000Vソリューション」だ。太陽光発電パネルが発電した電力について、接続箱や集電箱、パワーコンディショナなどによる後処理行程を、すべて1000Vの電圧で行うもの。

欧米では主流のソリューションだが、国内ではまだ少なく、現状は600Vソリューションが主流である。

 600Vと比較した場合、1000Vソリューションのユーザーメリットは大きく次の三つである。

①発電効率の向上による「売電収入のアップ」

②並列回路の削減による「イニシャル&ランニング・コストのダウン」

③機器等の「選択肢の広がり」

 つまりは、パネル以下のシステムを1000Vソリューションで組み上げることにより、600Vよりも投資回収期間の短縮が確実に実現することになる。

 ある関係者は「回収に10年かかる600Vソリューションの場合、1000Vで組み上げれば回収期間を2年は早められる」と話す。これは聞き捨てならないだろう。

 以下、1000Vソリューションの特徴を詳細に見てみよう。

電気を理解する2つの公式

 売電収入のアップだが、これは次の二つの公式を理解すれば誰にでも納得できるだろう。

 A)出力=電圧×電流

 B)送電ロス=(電流)2×抵抗

 公式Aは、出力が同じ場合、電圧を高めれば電流を減らせることを意味する。そして公式Bは、送電ロスとは、電流の二乗に抵抗を掛け合わせることで算出されることを示している。

 つまりシステム内の処理電圧を600Vから1000Vに高めることで、電流が減り、電流による送電ロスを確実に減らすことが可能なわけだ。メガソーラーの場合、600Vを1000Vにすることで電流を約60%に抑えることができ、送電ロスの確実な低減が実現する。

 前出関係者の試算では「1000Vソリューションの導入により、発電効率は発電システム全体で3%アップ可能」だという。仮に年間7500万円の収入が見込める出力2メガのソーラーがあったとしよう。その発電効率が3%向上すれば、年間225万円もの収入アップとなる計算だ。

確実なコストカットを実現

 イニシャル&ランニング・コストのダウンも1000Vソリューションの大きな特徴だ。

 図は同出力の太陽光発電システムを600Vと1000Vで組んだ際のシステム構成の違いを示している。

 最も顕著な点は、ストリング数の違いだ。ストリングとは直列接続した太陽光発電パネルのグループのこと(各ストリングを並列接続し、ストリング個々に発電した直流電力をパワーコンディショナに集約。交流電力に変換することで太陽光発電システムは成り立っている)。

 600Vでは5ストリング(1ストリング当たり太陽光パネル3枚)だが、1000Vでは3ストリング(同5枚)になっている。つまり並列回路数が減少でき、システム全体がシンプル化できるわけだ。

これによる主なメリットを示しているのが表1だ。接続箱や接続ケーブルなどの周辺機器や部材が減り、さらには敷設作業工程も簡素化できるなど、イニシャル・コストの大幅カットが実現する。

 しかも、システムがシンプル化することで、メンテナンス工数の削減や遠隔監視の容易化なども実現。万が一のトラブルでも復旧スピードのアップが期待でき、売電ロスを最小化できるなど、ランニング・コストの大幅削減が可能である。

 前出関係者が試算した約2年という投資回収期間の短縮試算は、これらのコストをトータルで比較したもの。600Vソリューションとの違いは明らかではないだろうか。

■図  600Vと1000Vのシステム構成

■表1 1000Vによるコスト削減効果

効果の対象 削減効果
接続箱~パワコンのケーブル数 40%
電流の減少によるケーブル径、重量 50%以上
並列回路の減少に伴う接続箱数 40%
上記による施設工数の減少と工事費 40%程度
接続箱削減によるメンテナンスコスト 40%程度

(出展:ABBカタログより抜粋)

なぜ国内は600Vが主流なのか?

 他にも看過できない1000Vソリューションのメリットとして、機器の選択肢の広がりや納期の短縮、グローバル価格の享受などがあげられるだろう。

 600Vソリューションは国内のみの規格であり、海外では1000Vが主流だ。グローバルでいえば1000Vソリューションを手がけるメーカー数の方が圧倒的に多く、彼らが本格的に国内市場に参入すれば、日本のユーザーの選択肢は大きく広がることになる。しかも、グローバル水準の価格も期待できるなど、国内市場の様相が一変する可能性を否定できないのである。

 ここまで見たように1000Vソリューションには明らかに優位性がある。にもかかわらず国内市場はなぜこれまで、600Vソリューションが主流だったのだろうか。

 それは国内の電圧区分がベースになっていたからだという。表2は「電気設備技術基準(電技)省令第3条」による電圧区分をまとめたもの。これによれば国内では低圧を直流750Vまでと定めている。このため日本のメーカーは低圧の範囲に収まるソリューションとして600Vを主流としてきたのだ。

 だが、IEC(国際電気技術委員会)では低圧を直流1500V以下と規定しており、世界の潮流は1000Vソリューションが常識となっている。国内市場はある意味、ガラパゴス化しているわけだが、2012年6月に太陽光発電に関する電技解釈が改正され、日本でも1000Vソリューションの施工が容易となったのである。

 実際、国内大手メーカーも日本市場向けに1000Vソリューションの商品化を相次ぎスタートしている。そしてABB社など海外大手メーカーの、日本市場参入が加速するなど、国内メガソーラー市場では新たな局面を迎えている。

 ヤマダ電機もこうした世界の動きをいち早くキャッチし、ABB社製1000Vソリューションの販売を開始。数百キロから2メガ・クラスの大型案件に対する提案を強化している。今後のメガソーラーにおけるトレンドが「1000Vソリューション」となることは、まず間違いないだろう。

 

■表2  国内の電圧区分

区分
交流 直流
低 圧 600V以下のもの 750V以下のもの
高 圧 600Vをこえ7,000V以下のもの 750V をこえ 7,000V以下のもの
特別高圧 7,000V を超えるのもの

電気設備技術基準省令第3条

 

パワコン製造 欧州の雄「ABB」
日本市場での事業展開を本格化

世界有数の重電メーカー

ABB──。一般的な日本人には、あまり聞き慣れない会社かもしれない。スイスに本拠をおく世界有数の重電メーカーだ。創業は1883年。産業用インバーターや産業用ロボットの分野で、世界トップのシェアを誇る。

そして、これらの技術を応用した大型パワーコンディショナでも世界トップ3の一角を占めている。さらにいえば、日本のメガソーラー市場に1000Vソリューションを提案したイノベーターでもある。

ABBのパワコン「PVS800」シリーズは出力100kWから1000kWまで7モデルを用意するきめ細かいラインアップが特徴だ。すべて1000Vソリューションに対応。しかも変換効率は全モデルが98%以上、1000kWモデルは98.8%という優れた効率性を備えている。

国内製パワコンの変換効率は96%前後が一般的だけに、その実力がうかがいしれよう。要因の1つは1000Vで変換処理行うために電流が低く抑えられ、送電ロスが低減できていること。さらには、同社がインバーターや半導体メーカーとして培ってきた高い技術力によるものだ。

ABBの電力設備開発に共通するポリシーは「電力設備は必ず発熱する」(=電気が熱に変換されて送電ロスが生じる)ということ。そこで発熱することを前提に、いかに発熱量を低く抑えるかや、いかに冷却するのかが独自ノウハウとなっており、これがパワコンにも生かされている。

出力100kWから1000kWまで7モデルを用意するきめ細かいラインアップ
ABB PVS800シリーズ

いつか必ず故障する

同様に興味深いポリシーが「モノはいつか必ず故障する」ということ。これを前提に、いかに早く修復できるかや、いかに早く交換できるか、故障時のシステム損失を最小限に止めるかがノウハウとなっている。

この考え方をパワコンで具現した技術が「モジュール方式」である。

パワコンの心臓部をモジュール化し、これを500kWと630kWには2台、875kWと1000kWには3台搭載している。この方式であれば1台のモジュール(心臓部)が故障しても、残りのモジュールは稼働を続けるため、故障の損失を最小限に止めることが可能だ。しかも、修理はモジュールを交換するだけ。早期復旧も実現するわけである。

パワコン選定ではこれまで、例えば500kWのシステムの場合、リスク分散のためコストアップを覚悟で250kWを2台にするか、コストを優先して500kWを1台にするかという議論がなされてきた。しかし、1台分のコストでリスク分散を可能にしたPVS8800シリーズが、この議論を過去のものにしたといえる。

ABBの設計思想がモジュール方式に至った背景には、各種システムの基幹設備を、地球規模でビジネス展開してきたことがあげられる。僻地の砂漠や草原などに設置した太陽光発電所の場合、故障しても部品調達や修理に出向くのは簡単でない。

しかし、いつかは必ず故障することを前提とするならば、損失を最小限とし、早期に復旧可能な方式を開発する以外になかったわけである。

こうした独自の設計思想は、太陽光の周辺機器として欠かせない接続箱にも生かされている。「PVmax」シリーズは筐体にポリプロピレン樹脂を採用。金属筐体が主流の国内市場にあって異彩を放っている。

樹脂筐体を採用した理由は、軽くて強く、長期耐久性に優れるからだ。一般的な金属製に比べて重量は50%以下。一人でも持ち運びでき、工数の削減やコストが抑制できる。

しかも無塗装でも耐防塵性や防滴性、耐紫外線や耐塩害に優れ、耐衝撃性は最高ランクIK10を取得。20年間の確実な信頼性を、低コストで確保可能なのである。

もちろん全モデルが1000V対応で、上位機PV max+はストリング監視機能を搭載する。トレンドの1000Vソリューションの効果を最大限に引き出す必須アイテムである。

トレンドの1000Vソリューションの効果を最大限に引き出す
ABB PV max/PV max+

設計思想の根底にあるのは
「いかに早く交換できるか」

写真◎深田勉

ABB(株)
パワーエレクトロニクス・プロダクツ部
森本 茂義 部長

──まず御社の概要からご紹介ください。

森本当社はスイスに本社を置く、世界100カ国で展開している重電メーカーです。事業規模は約4兆円で、生産・販売している商品は、必ず世界シェアの3位以内に入っていることが特徴です。例えば産業用インバーターの生産規模ですと、国内全メーカーの総生産量の約3倍。これを1社で生産しています。

また、オートメーションにも非常に強く、世界的にメジャーな産業用ロボットメーカーでもあります。電力とオートメーションの両分野で、効率化を目指しています。そして、この技術をパワコンにも踏襲しています。日本市場へのパワコン供給実績は現状で100MWです。

──日本市場での1000Vソリューション提案は当初、難しかったのではないですか。

森本我われはオーナー様に情報を伝えました。「世界市場で証明された技術で、より高効率な発電が可能です」と。600Vと1000Vではこれだけ違うということをアナウンスし続けたことで、市場にご理解いただけたのだと思います。

──御社の「モジュール方式」はユーザーにとってメリットの多い技術だと感じました。

森本ありがとうございます。1台が333kWのモジュールになりますが、これを量産することで品質が安定します。しかも、複数搭載しますから万が一のトラブルでも発電は止まりません。これはオートメーション設備の考え方です。1台が動かなくなっても、少し力を落としながらも生産を維持する。製鉄のラインなどでは非常に重要な考え方で、これをパワコンに応用しました。しかも、モジュールを在庫していますから、代品をすぐに送ることができ、早期復旧できます。

──合理的な設計思想ですね。

森本「モノはいつか故障する」ことを前提とすれば、「いかに早く交換できるか」がポイントになります。日本の文化は壊れないように品質を高めることですが、それではコストも上がります。そのバランスをどう考えるか、だと思います。

──一般には見落としがちな接続箱も独自思想を貫いていますね。

森本接続箱にはシステム保護という重要な役割があります。例えば不安定になった時に流れ込む電流から、パネルやパワコン、ケーブルを保護しなければいけない。その役割を20年以上、きちんと果たせる接続箱を商品化しており、世界中で高い評価をいただいています。

──パワコンの場合、納期はどれぐらいかかるのでしょうか?

森本現状ですと最短で2.5カ月とお話しさせていただいています。オーダーいただいてから完成までが2カ月、空輸が2週間ですね。モジュール方式ですので、製造時間を短縮できることも、当社の大きな特徴になっています。(敬称略)

ソプレイソーラー

光触媒を太陽光発電パネルと一体加工
汚れに強い「セルフクリーンソーラー」

ソーラーパネルは汚れます–。こうはっきり公言したメーカーは、ソプレイソーラーが初めてだろう。

一般に太陽光発電パネルはメンテナンスフリーとされ、パネル表面の汚れ等は雨水で流れると解説されている。だが、現実には排気ガスや花粉、鳥の糞などは雨水だけでは落ちにくい。放置すれば太陽光線の透過率低下を招き、発電効率ダウンの要因となる。定期洗浄は発電量最大化に不可欠といえるだろう。

ソプレイソーラーの「セルフクリーンソーラー」は、この問題に真正面から取り組んだ独自技術だ。光触媒を、パネルに2度の行程で焼き付け塗装し、表面ガラスと一体化することで、「親水性」による汚れの付きにくさや汚れを洗い流す効果、「分解力」による汚れの付きにくさなどの効果が発揮される。SR156P-250など同社製パネルであれば、どのモデルでも加工可能だ。

光触媒による防汚技術には、これまで多くのメーカーが取り組んできた。だが、接着剤を使用したものが主流で剤の劣化が避けられず、耐久性をクリアできなかった。

そこで、ソプレイソーラーは非接着剤方式の研究に着手。ガラス工場の段階で表面ガラスに光触媒を焼き付け塗装し、さらにパネルの組み立て行程で2度目の焼き付けを行う技術を開発。洗浄効果と耐久性の、高次元の融合に成功したのである。

同技術には、もう1つのポイントとして「汚れの落としやすさ」がある。セルフクリーンといえども、まったくのメンテナンスフリーではなく、適宜の洗浄を推奨している。

その際、排気ガスや鳥の糞、黄砂やPM2.5などの一際頑固な汚れを、簡単に落としやすくする効果があるのだ。洗浄作業の効率化や洗浄時間の短縮などが実現する。

右ページの表はソプレイソーラーが実験した「太陽光発電パネル洗浄前後での発電量比較」だ。例えば最上段のケースでは、7年間無洗浄だったパネルを洗浄しただけで、発電量が40%以上アップしている。セルフクリーンソーラーは、こうした実験結果と同等の効果を期待できる技術だ。しかも効果の耐久性は「パネル本体の耐久性と同等以上」(ソプレイソーラー・山中好一副社長)だという。

太陽光発電は20年以上にわたって安定稼働させるシステム。これを実現するためのパネルには、優れたメンテナンス性が求められることは間違いないだろう。

独自の「セルフクリーン」機能で脚光
ソプレイソーラー SR156P-250

セルフクリーン加工した多結晶モジュール
商品スペックなどの情報はこちら

 

SOPRAYグループ

トワダソーラーの新製品
落雪しやすい降雪地域モデル

ソプレイ・グループの国内パネル製造会社「トワダソーラー」から降雪地域向け新製品「TS-240M30」が登場した。

最大の特徴は、パネル表面ガラスと周囲のフレームとの段差“0mm”を実現したこと。

積もった雪が落雪しやすい構造となっており、発電効率の低下を、最小限に留めることが可能だ。

一般のパネルは表面ガラスとフレームの接点部は内部への浸水防止のためにシーリングされ、それが段差になる。

だが、TS-240M30は内部に吸水性のないアイオノマー封止材を使用しており、シーリングは不要だ。しかも同材は耐PID性能に優れるという副次効果も持つ。

過去の降雪地向けパネルは積雪耐荷重の大きさだけで競われてきた。

だが、トワダソーラーは5400Paもの耐荷重を実現しつつ、「落雪のしやすさ」という実用性を加味した点で画期的だ。

雪深い秋田県に本社を構える同社が、国内で設計・製造したからこそ実現した技術といえる。

(図)段差ゼロミリを実現した「TS-240M30」
(公称最大出力:240W、積雪耐荷重:5400PA)