必読!これがホントの“節税”講座「節税」と「租税回避行為」の違い
税務調査を乗り切るキーワードとは?

寄稿:梅川 貢一郎(有限会社トライアングル 代表取締役・税理士・公認会計士)

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ここ10年ぐらい、会社の社長から節税のアドバイスを求められる機会がめっきり減りました。仕方のないことです。何しろ中小企業の8割が赤字なのですから。

税理士さんの中には、節税アドバイスをすることを好まない方も多くいます。税理士は税理士法という法律上、「中立公平」の立場を要請されているからです。

節税プランには「グレー」なものも多く、税務署とトラブルになった時に税理士は立場が危うくなる。最悪、「脱税」と判断されると税理士資格をはく奪される恐れすらあるのです(税理士の資格は国税庁から与えられています)。

しかし、誰しもできれば無駄な税金は払いたくありません。「脱税」は犯罪ですが、あくまでも「適正な金額の税金」を支払うべきであり、余分に税金を支払う必要はまったくありません。そういう意味で「節税」のための正しい知識は重要です。

節税を考える上で最大のポイントは、実は「長期的な視点」です。多くの中小企業では、その場限りの節税に走ります。3月決算の会社が、3月を迎えて初めて想像以上の利益に気が付き、あわてて節税に走ります。しかし、日本の税制は非常に緻密にできており、その場しのぎの節税策は数が限られています。

それでも無理に節税を行おうとすると、無駄なキャッシュアウトを招いて結局損をしたり、節税を飛び越して「脱税」を行い、税務調査で痛い目に遭う羽目になります。

繰り返し強調しますが、税金は営業活動を行う企業にとって最も重要かつ大きなコストであり、新しい期がはじまる前、期末時点で翌期の利益を計画すると共に税金対策を考えるのが基本です。経営者は税金を研究することがマストです。できれば社長自身が税務を研究し、節税プランをご自身で作るのがベストです。

事前の周到な準備

多くの同族の中小企業にとって節税策の王道は「役員報酬」です。人件費は節税の宝庫です。人件費をうまくコントロールできれば間違いなく税金は最小化できます。

なぜならば、役員報酬も「給与所得」であり、金額に応じて税率が段階的に上がる「累進課税」の仕組みがあり、さらに「給与所得控除」を大きくとることができることから、一定金額までは会社の利益を法人税で支払うより、所得税を通じて支払った方が安くすむからです。

しかしこれは税務署も百も承知です。役員報酬で利益を調整して節税するのはリスクも伴います。軽々に対策をしても、税務署から否認されて余分な税金を支払う羽目になる会社が多く存在するのも現実です。

期末にあわてないためにも、事前の周到な準備が不可欠

最悪なのは、決算期になって思った以上に利益が出ていることが判明し、「期をさかのぼって役員報酬を増額」すること。帳簿の改ざんは簡単ですが、税務調査が入れば一発でバレます。「脱税」ですから、35%の重加算税がペナルティで課されます。十分な利益計画と事前の周到な準備なくして、適法かつ適切な節税はあり得ません。

まず、多くの経営者がご存意のように、役員報酬は、「定期同額」な支給でなければ経費として処理できません。決算前になって思っていたよりも利益が出る見込みだからといって、期の途中で役員報酬を増やすことは許されません。役員報酬の金額を変更するには、原則として決算期末から3か月以内に開催する株主総会での決議が必要です。

ただし例外的に役員報酬を期の途中でも減額できる場合があります。それは業績が著しく悪化して支払いが困難になった場合です。「著しい悪化」とは、税務署の指導では取引先への支払いや銀行への返済が滞るような状態としています。もちろん形式的には臨時株主総会を開催し役員報酬の減額決議を行っておく必要もあります(株主が一人であっても)。

事前確定届出給与とは?

役員報酬は期の途中で減額するのが難しいので、できれば役員報酬は高めに設定しておくことをお勧めします。「著しい業績の悪化」までいかなくとも支払いが苦しくなったら「未払金」あるいは「一部未払」にして決められた役員報酬の全額を支払うことなく、その一部を支払うことが可能です。帳簿上は、役員報酬が毎月同額計上されますから何ら問題ありません。

後ほど財務上の余裕ができたら「未払金」を取り崩してそこから支払えばよいわけです。未払金が大きい場合は、翌期の役員報酬を大幅に減額して、未払金から毎月の報酬相当分を支払うのも可能です。この場合、所得税や住民税、社会保険料も節約できます。

役員報酬は節税の宝庫であると書いてきました。実は役員ボーナスも節税に使えます。役員賞与は原則税務上の経費になりません。役員報酬は、毎月同額を1年間持続しなければならないからです。それよりも多く支払うと、その多い部分の金額が税務上の経費から省かれます。

上場企業は役員にも賞与を支払っていますが、これは経費になっていません。これを中小企業がマネするわけにはいきません。100万円キャッシュアウトするのに、その分がまったく経費として認められないのですから。

そこでできたのが「事前確定届出給与」という制度です。まだあまり利用している会社は少ないようです。しかしこれはかなりお勧めです。決算後に開かれる(形式上であっても)定時株主総会で、あらかじめ一定の日に一定の金額を役員賞与として支払うことを決めておきます。そのように株主総会で決められた役員賞与は例外的に税務上も経費として扱われます。

これはもちろん利益調整に使えます。支払い時期を年度末に設定しておけばいいのです。もし予定通りの利益が出たら社長にもボーナスを支払うことができます。そこで有効に節税できます。

ここでミソなのが、思った通りの利益が出なかった時です。その場合、社長に支払うボーナスを減額できるのです。場合によっては支払わないという選択もありです。その場合、事前に税務署に減額の届出を提出すればよいだけです。月額報酬を期の途中で減額するのは結構ハードルが高いのですが、賞与の場合は、「業績が悪くて支払う余裕資金がない」でOKです。期末になってあわててバックデートで役員報酬を減額するのは明らかな脱税ですが、「事前確定届出給与」は国が認めた節税制度です。利用しない手はありません。

家族への給与支払い

さらに応用編が家族への給与の支払いです。日本の税制では、給与所得にかかる所得税は累進課税。5%から50%までその人の所得に応じて高い税率が適用されます。そこで、社長が2000万円の役員報酬を受け取るよりも、奥様を役員か従業員にして、社長1500万円、奥様500万円にした方が明らかに税金のトータルは安くなります。

ただし注意しなければならない点が2点あります。一つは、勤務実態があるかどうか。奥様が専業主婦でまったく会社の仕事を手伝っていないのであれば給与の支払いは難しくなります。しかし、家で、社長が使った経費の領収書を整理したり、出張の手配や会計ソフトへの伝票入力もありです。

ただし、給与の金額には注意が必要です。社長が1000万円で奥様が手伝い程度で同じ1000万円は明らかにおかしい。残念ながら税務調査で否認を受ける可能性が高いです。せいぜい200〜300万円というところでしょうか。

もう一つは、奥様が一定額以上(おおむね130万円以上)の給料を受け取ると、社長の扶養家族から外れ、社会保険の扶養家族からも外れることです。しっかりシミュレーションして、本当にお得かどうかを検証する必要があります。

よく質問を受けるのが、奥様を役員にして役員報酬を支払った方がいいのか、従業員として給与を支払った方がいいのか。

どちらでもいいと思います。役員報酬の場合、当然毎月同額である必要があります。それに対して従業員給与であれば、増減が可能です。そこで調整の余地が生まれます。従業員であればボーナスを支給することもできます。

また役員の場合、たとえ非常勤役員といえども取締役会議事録を備え、奥様がどのような発言をして会社に貢献したかという証拠を作っておかなければなりません。

一方、従業員であれば、他に「本当の」従業員がいればその方たちとの金額、仕事内容の比較が問題になります。週に1日しか仕事しないのに、フルタイムで働いている従業員と同じ給料というのは明らかにおかしい、という指摘になります。役員か従業員か、また仕事の内容と支払う報酬の金額。しっかりと準備する必要があります。