必読!これがホントの“節税”講座歴史の長い会社の決算書は
見方を変えれば「節税の宝庫」!?

寄稿:梅川 貢一郎(有限会社トライアングル 代表取締役・税理士・公認会計士)

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個人経営の社長さんは、決算書の損益計算書はよく見ているようですが、貸借対照表はあまり見ていないようです。簿記に対する苦手意識からでしょうか。

しかし、貸借対照表はとても重要です。社長が一目見て会社の財産の状況が分かるようでなければなりません。会社がこれから稼いでいく源(資産)を確認することも重要ですし、もし余計な資産が載っていたら除かなければなりません。

最低でも年に一度、決算時には点検してください。余計なお金を払って節税するよりも、存在しない資産を除却する方が、よほど節税効果があります。

私は仕事がら会社の決算書を見る機会がとても多くあります。特に歴史の長い会社の決算書は、実にこまごまと少額の資産がいろいろな勘定科目で載っています。中には内容が不明確な勘定科目もあり、社長や経理担当者に聞いても「古い話なので分かりません」といわれる始末です。

本来、決算書の貸借対照表は会社の財産状況を示すものです。今後その会社がどれだけの利益を稼げるかのポテンシャルを現したり、財産を処分した場合にどれだけの現金になるかを知るための重要な情報源です。ところが意味不明の勘定科目の金額が、多額に残ったままでは肝心の情報を得ることができません。

本来は費用化すべき資産

ただし、見方を替えればこのような決算書は節税の宝庫といえます。本来は費用化しなければならない資産が、山のように残っているからです。例を示しましょう。

かつては携帯電話や自動車電話を契約すると、必ず加入権を購入しなければなりませんでした。だいたい5万〜10万円だったでしょうか。権利金ですから費用としては処理できず、加入権に事務手数料分を加えた金額を「電話加入権」という無形固定資産として貸借対照表に載せなければなりませんでした。

ところが現在は、携帯電話は当たり前のように無料で加入できます。これに伴い「権利金」の税務上の取り扱いも変わりました。

これまでは「電話加入権」という減価償却資産できない資産として計上しなければならなかったのですが、これが「電気通信施設利用権」と呼ばれる減価償却できる資産として取り扱われることになりました。

これにより携帯電話に加入するときに支払う経費は、すべて少額資産として一時に経費処理できるようになりました。もしも10年以上も前に携帯電話を会社で契約した方は、いまだにその時の費用が「電話加入金」として資産の部に残っているかもしれません。これはいつでもお金を出さずに費用にできる「節税」の材料です。

これはほんの一例に過ぎません。歴史の長い会社は会社の成長の度合いに応じて、何度も事務所を移転していると思います。その場合、往々にして以前の事務所の保証金や敷金、駐車場の敷金が貸借対照表に残ったままになっているのを良く見かけます。特に保証金は、退出時に現状回復費と相殺されて戻ってこない場合も多いので償却するのを忘れてしまうのでしょう。

決算書に載っている保証金や敷金が本当に今の事務所の契約書に記載されている「預り保証金」の金額と一致しているか調べてみてください。もし、余分な金額があればそれは過去の保証金の「残骸」です。すぐにでも償却しましょう。

その他、保証協会の保証付き融資を借りた時に支払った保証金。保証協会付の融資を受けると、融資金から保証協会の保証料を差し引かれた金額が銀行から振り込まれてきます。保証金は、融資金の返済と共に年々償却すべきものですが、これも残高が残っている場合があります。

融資金が完済された段階で保証金も0円にならなければおかしいです。よく見られる間違いは、当初の融資金に追加で融資を受けたり、新しい融資を受ける際に古い融資を返済して一本化する場合に見られます。

保証協会の保証金は融資金に対して一定の割合なので、計算すればあるべき残高は容易に分かるのですが、古い融資の保証金がそのまま放置されていたりします。

また、決算書に「出資金」が数万円から数十万円載っていませんか。この出資金は、信用金庫と取引を開始する際に支払う出資金です。最初は近所だったので利用したが、事務所を移転してもう使っていない。あるいは、今はメガバンクをメインで使っているので信用金庫はほとんど利用していない。そのようにもう使っていない信用金庫の出資も返還してもらいましょう。

あるいはもう通帳は解約して出資金も返戻ずみということもよくあります。この場合も出資金は、「実存しない」資産ですからお金をかけずに費用として処理できます。

不良債権を損金に!

お客様の決算書を見ると数年前の古い売掛金が載っていることがしばしばあります。確かに、何度催促しても一向に支払ってくれない「不良債権」は気を付けていても一定の割合で発生するものです。

債権の金額にもよりますが、督促する手間も費用もばかになりません。弁護士に依頼して法的な手段をとっても相手に資産が無ければ1円も回収できません。費用だけが多額にかかって徒労に終わってしまいます。

このような不良債権は、できれば早めに貸倒れとして損失処理するのが法人税の節税にもなりますし、消費税も控除ができます。それに回収できない不良債権を、いつまでも決算書に載せておくのは目障りではありませんか?
ところが日本の税法では、不良債権を損金で落とすには厳格な要件を定めています。

例えば、相手が会社更生法や民事再生法の決定を受けているか、財政状態が悪化して債権の全額が回収できないことが明らかな場合、さらに債務超過の状態が続いていてこちらから債権放棄をした場合などです。

しかし、現実問題として、経営状態が不振でも法的な整理手続きを取る会社は稀ですし、相手の財務状況を知ろうにも決算書を公開している中小企業などまずありません。

そこで、税務署の通達では、一定の要件を満たす事実上の不良債権については、損金に落とすことを認めています。

その要件とは、「売掛金などの債権が滞って取引を停止した相手が1年以上弁済しない場合」です。通常、取引の相手が代金の支払いを滞れば、当然それ以降の取引はやめにします。最後に入金があってから、1年が経過すればいつでも売掛金を損金で処理できます。

ただしその場合、備忘記録として、売掛金を1円だけ残しておきます。債権放棄をしたわけではないので、もし将来その債務者が代金を支払ってきた場合に、売掛金の存在を忘れずにしておこうというものです。

貸倒れ処理はもちろん債権を放棄したわけではないので、督促を続けた結果、何年か後に弁済されれば当然受け取ることができるわけです。

この「1年ルール」はとても要件が明快です。相手が法的な手続きにより整理する必要もないし、債務超過を確認するために決算書を入手する必要もありません。とにかく1年支払いがなければ貸倒れ処理できます。期末で余分な資産を購入して節税するより、よほどお得です。