学校IT最前線電子黒板とタブレットで授業を補助
アナログとの相乗効果で理解が深化

概要

学校IT最前線◎北海道千歳市立勇舞中学校
「理科授業」のIT化電子黒板/タブレット端末


ITは板書や実験を演出する補助道具
アナログとの相乗効果で理解が深化


■ITはアナログスタイルの授業を効率化する補助的なツール
■課題提示では、電子黒板のキャッチ効果を活用して集中力を喚起
■班学習と全体共有は、タブレットと電子黒板で作業を効率化
■肝となる実験ではタブレットを駆使して演出。振り返り学習にも活用

「IT機器は、板書とノートを中心とした従来スタイルの授業を補助するためのツールであり、アナログ授業の効率化や効果的な演出により、生徒達の理解を深める道具として位置づけている」。こう語るのは、千歳市立勇舞中学校で理科の授業を担当する大西智彦教務主任だ。

補助的な役割としてITを捉える理由は、重要なポイントを深く理解させるには「生徒自らが書いて考え、体験することが欠かせない」からである。

「教師の仕事は、勉強ができるようにして生徒を自宅へ帰すこと。このためには書いたり体験することが必要で、この点では今も昔も授業の本質は変わらない。ITをフル活用して面白い授業を行うことも大事だが、現時点では板書とノートを中心としたスタイルが効果的と感じており、これを支えるのが電子黒板でありタブレット端末だ」(同前)。

校内には、自治体予算で導入されたプロジェクター型、大学などの協力で揃えたスクリーン型やディスプレイ型といった様々な電子黒板が整備されている。その中、大西教諭が好んで使うタイプがタッチディスプレイ型で、授業を行う理科室にも設置されている。

これは、中学校では学ぶべき情報量が多く、板書をメインとする用途では黒板のスペースを確保することが必要なため。黒板の半分が隠れてしまうタイプよりも、板書をフル活用できるスタンドアローンのボードタイプが適しているからだ。

デジタル教科書の導入が授業スタイルを大きく変革

授業はアナログ中心でIT活用は控えめだが、大西教諭は地元の千歳科学技術大学やメーカーと提携し、様々な先端的なIT活用を模索してきた。そうした取り組みを経ながらも、現在は板書とノート中心の従来スタイルを大切にしている。

というのも、「電子黒板は提示や共有など全体で使うツールであり、タブレット端末は個人が思考や表現するための道具。この点で、電子黒板はほぼ完成されて いるが、タブレットはアプリの機能的にアナログを置き換えるレベルには、まだ十分に追いついていない」と考えているからだ。それならば、無理にITで置き 換えずとも、現状では「時間短縮や効率化ができる」「分かりやすくなる」といった効果が期待できる部分でメリットを単純に生かす使い方がよいという。

その一方、大西教諭が期待している学校IT化がデジタル教科書であり、関連コンテンツの充実だ。「生徒用のタブレットに多くのコンテンツが入ってくれば、 科目間の壁を越えた授業連携など、様々な可能性が見えてくる」と大西教諭。「その時には、授業スタイルは変わり、電子黒板やタブレットの使い方次第で授業 の成果はまったく違ったものとなる」。

来年度以降、デジタル教科書が本格的に学校現場に導入されてくる。これをどう活用していくのか。今後にも注目していきたい。

電子黒板のキャッチ効果を活用

実際の授業は一般的な協働学習スタイルで、課題提示に始まり個人思考や班学習を経て、全体共有、振り返りという流れで進む。授業内でITを使うポイントは、それを使うことで作業が効率化されたり、理解度が深められたりなど、効果が明らかなものだけ。必要以上には使わない。

具体的な活用方法について、「慣性の法則」(中学3年生の単元)を学ぶ授業を例に見ていこう(下図)。

まず、課題提示だ。授業で学ぶべき点や考えるべきポイント、図などは必ず板書する。大事な図についてはプリントとして配布すると共に、時間に余裕がある単元ではノートにもとらせる。いわば、従来の板書を中心とした進め方だ。

さらに、理解を徹底させたい場合に電子黒板の画面にも図や資料を表示しておく。露出度を高めることで、生徒の記憶に残すことが狙いだ。慣性の法則では、走る台車に乗った人がボールを離すと、どこに落ちるかを予想する図が示された。

ただし、電子黒板を使って説明するかどうかは状況次第だ。例えば、クラス全体がザワついている時には電子黒板が持つ高いキャッチ効果を利用して、集中力を喚起するツールとして活用する。

個人思考には、それほど時間はかけない。授業のポイントや図をノートに書きながら、課題を認識すると共に自分なりの意見を考えることができるからだ。実際の授業では、ボールが落ちる位置を3択で図に提示。選択肢ごとに挙手することで人数を集計し、それを黒板に書いてクラスメートの予想を全体で共有する。

タブレットと電子黒板で共有効率化

班学習と全体共有には時間をかける。班ごとに分かれて課題について話し合い、グループとしての予想をまとめるプロセスなわけだが、この時も基本は直筆だ。図や文字を駆使しながら、紙に班としての意見をまとめるのである。

だが、このままでは全体共有するには不便だ。そこで、この作業を効率化する道具として電子黒板とタブレットを活用する。紙にまとめたグループの見解をタブレットのカメラ機能で撮影し、その画像を電子黒板に送信して一覧表示。班ごとに予想と理由を発表する際には、ワンタッチで拡大表示して大画面で共有するわけだ。

全体共有のプロセスでは導入が増えている使い方だが、一般的にはタブレットにダイレクトに書き込むケースが多い。紙にまとめて撮影するスタイルを取り入れている理由は、「テキスト、図やイラストを描くにはタブレット画面よりも、紙の方が表現の自由度は高い」(大西教諭)こと。

とはいえ、紙の利用を強制しているわけではない。デジタルペーパーとしてタブレット画面に書き込むか、紙に書いて撮影するかは生徒の自主性に任せているが、ほとんどの生徒が紙を選ぶという。

タブレットの撮影機能で実験演出

理科の授業では、予想が合っているかどうかを確かめ、結論を導く方法として実験がある。「理科の授業は実験が肝」を信条に、大西教諭が最も重視していることでもあり、授業内で生徒による実験の時間をできるだけ確保する。

ここでは、実験を面白く演出し理解を深めるため、積極的にITを活用している。具体的には、生徒が乗った台車を仲間が押し、離したボールが落ちる場所を確認する実験で、その様子をタブレット端末で撮影する。この映像を振り返り(結論の確認)のプロセスで使うわけだ。

結論の確認ではスクリーンやディスプレイで映像を流して実験を再現すると共に、大西教諭がコマ送り機能などを使いながら、さらにかみ砕いてわかりやすく説明することで理解を深めることが可能となる。

最近はコンテンツ教材や動画サイトにアップされた関連映像などの充実を背景に、これらを見せて実験代わりとして結論を導く授業スタイルも増えている。確かに、出来合いの動画でも生徒達が撮った映像でも結論は同じだ。だが、「自分たちで取り組んだ実験を振り返るからこそ価値があり、それをコマ送りなどのアプリ機能を使って演出するから面白くなる。他人の実験映像を見せることは、教師の作業を楽にしても、生徒に理科を好きになってもらうことは難しい」。

まだまだ、アナログ主体の授業が全盛。この意味で、大西教諭の電子黒板やタブレットの使い方は、大いに参考になりそうだ。

プロセス 授業内容 IT活用
課題提示 ・課題、図や資料、ポイントを板書(大事な図はプリントとしても配布)
・択一式で個人の予想を聞き、挙手により数を集計して全体共有
・電子黒板にも図を提示し、状況に応じて集中力や興味の喚起ツールとして利用
・慣性の授業では台車の図を提示した
班学習&全体共有 ・グループで話し合い、班としての予想(意見)と理由を考える
・発表用資料と各自ノートにまとめる
・班ごとに発表。大西教諭の質問により考えを深める
・各班のツールとしてタブレット利用
・紙にまとめた発表資料をタブレットで撮影して電子黒板へ送信(タブレットへの直接入力も可)
・各班の発表資料を電子黒板に一覧提示。発表時には個別に拡大表示
実験 ・課題に対して生徒自らが実験を行い、結果を知る
・慣性の授業では実際に台車を走らせてボールを落とした
・実験の様子をタブレットで動画撮影
振り返り(結論確認) ・実験で得た結果を確認し、課題に対する結論を得る ・撮影した動画をスクリーンや電子黒板に表示して再生
・コマ送りなどのアプリ機能を利用