学校IT最前線学校IT最前線 デジタル機器活用促進策

概要

電子黒板活用を促す3大ポイントは
課題の明確化、仕組み構築、環境整備

 

  • 学校全体としてデジタル機器の活用を促すには対策や仕組みが必要
  • ヒアリングなどを通じて、課題を明確化し活用促進対策を
  • 使うための仕組み作りは負担感をなくす工夫がポイント。時に外部の力も利用
  • 教師達を支える研修やサポートなどの環境整備は不可欠

 

文部科学省が、2020年の実現を目標に「教育の情報化ビジョン」を掲げていることは周知の通り。生徒1人にタブレット1台や全教室への電子黒板の導入、教科書のデジタル化などを内容とする計画に基づき、教育現場では急速にIT整備が進む。

だが、「国や自治体の予算で設置はしたものの、せっかく導入した機器が有効に使われていない」との声が漏れ聞こえる。機器導入を担当したメーカー関係者も、「保守で学校を訪問した際にホコリをかぶった電子黒板を見かけることも少なくない」という。

その一方で、これまで本誌でも紹介してきた事例のように、電子黒板をうまく活用している学校や教師も少なくない。

こうした学校が、必ずしも最初からデジタル機器を効果的に活用できたわけではない。例えば、ほとんどの教師達が電子黒板を活用している松阪市立三雲中学校(三重県)や箕面市立萱野小学校(大阪府)なども、段階を踏みながら少しずつ授業での活用に取り組んできた。

「普通の公立学校によるゼロからの挑戦」を掲げ、電子黒板とタブレット端末の活用を実現した三雲中学校では、「ほとんどITを利用していなかった状態から、約2年をかけ多くの先生が多少なりともデジタル機器を授業で使うようになった」。

ITに精通した特定の教師だけでなく、学校全体として電子黒板を活用できるようにするには、それなりの対策が必要だ。

この点で、成功している学校に共通していることは、①課題の明確化、②使うための仕組み構築、③環境整備の3点といえそうだ。以下、その詳細を見ていきたい。

課題を明確化し活用促進対策

まず、①課題の明確化とは、電子黒板などのデジタル機器を使う上で教師が抱えている不安や不満を明らかにすること。そして、課題を解決する対策を講じることでIT利用に対する障壁を着実に取り除いていくことがポイントとなる。

例えば、「操作が分からない」という課題には研修制度を充実させ、「授業中に機器が壊れた時に対処できない」との声には、それを支える仕組みを作る。また、「どう使ってよいのか分からない」となれば、共通の活用方法を検討してみるといった具合だ。

前出の三雲中学校では、IT活用に不安を抱く教師にヒアリング調査を実施。出された意見を10種類にカテゴライズした。

教師からは、ストレートに「やりたくない」という声もあったが、それだけでは対策は講じられない。「さらに落とし込んで、具体的な理由まで踏み込み、それを潰していくことでデジタル機器を使うことへの不安を払しょくしていった」。

使うための仕組みづくり

電子黒板の活用が進んでいない学校で、課題として上位に挙がってくる項目は「どう使えばよいか分からない」「操作が難しそうだ」など、共通点が多いという。これらを解決するための対策が、②使うための仕組み構築である。

この点については、各校で様々な取り組みが見られる。萱野小学校では基本的な使い方を覚えてもらうため、電子黒板の特長的な機能に焦点を当てて、それを活用することからスタートした。

例えば、画像などを大きく表示して部分的にクローズアップする拡大表示機能だ。「文章で強調したいポイントを拡大する」「絵画鑑賞で全体を見ているだけでは気づかない細部をクローズアップする」など、機能と利用シーンを具体的に結び付けて活用を促す。

これだけでも活用効果は高く、萱野小学校は、今や「全体と部分という二側面から物事を捉え、深く物事を考える力を育成する授業がうまい」と、箕面市の教育委員会からお墨付きをもらうほどまでに成長している。

また、三雲中学校は電子黒板導入の1年目に、ひたすら機器に触れて苦手意識をなくすことに取り組んだ。

その1つが、学校長による「朝のひと言」活動である。毎朝のホームルーム(HR)向けに、学校長が単語や短文を配信。クラス担任は、これをHRで電子黒板に表示することだけが義務付けられた。朝のひと言について話す必要はなく、話題がなければネタとして使ってもよいというルールとなっている。

これは意図的なもの。配信した「ひと言」を必ず話題にするとなると、強制感が生じる。だが、写すだけとなれば負担感は減少する。そして、電子黒板で表示するということは、様々な機器の操作や設定が必要。これを毎日繰り返すことで、デジタル機器が苦手な先生でも慣れる」わけだ。

思い切った手法を取り入れているのは、港区立青山小学校(東京都)である。「デジタル機器を使うことは授業を大きく変える可能性を秘めている」といい、「実際に授業で活用できるかどうかは教師が意識を変えられるかどうかがポイントになる」とのこと。そこで、意識変革を目的に外部の力を利用した。

具体的には、様々なIT授業の実践情報を発信。視察などを積極的に受け入れて授業を人目にさらすことにより、電子黒板の活用に取り組まねばならない仕組みを作り出している。

学校関係者だけでなく企業や文部科学省、マスコミなど多方面から視察に訪れる人々が後を絶たず、今や電子黒板活用の先進校の1つだ。

デジタル機器の活用を促すための3大ポイント

①課題の明確化

電子黒板やタブレットなどのデジタル機器を授業で活用する上で、教師が抱えている不安や不満がある場合、それらを明確にする


題課解決のための対策

②使うための仕組み構築

ITに対して苦手意識や不安を持つ教師が、自然にデジタル機器を使わざるを得ないような状況になる仕掛けや仕組みを導入する

③環境整備

研修制度やサポート体制などを整えることで、デジタル機器活用のスキルアップや意識向上、機器を使う上での不安感などの払しょくに取り組む

電子黒板のセッティングを嫌がる教師も少なくない。 導入の際に、簡単な設置や操作が可能なモデルを選ぶことも活用を促す1つの要素といえる

 

環境整備は不可欠

電子黒板に限らず、デジタル機器を活用していく上では研修やサポートなどが欠かせない。これを整えることが、いわば「環境整備」だ。

このうち、最も大事なポイントは研修体制の構築である。ITに精通した担当者がけん引してくれると楽だが、そうした人材が校内に不足しているケースも多い。電子黒板の活用促進に成功している学校では、例外なく地域連携をうまく利用して体制構築に取り組んでいる。

千歳市立勇舞中学校は、地元の千歳科学技術大学から支援を受け、様々な機器やアドバイス、人的協力を得ている。例えば、学生が教師になって生徒にITの使い方をレクチャーする総合の授業だ。教師は、それを見学しながら機器の使い方やノウハウを共有・蓄積し、学生にとっては研究と実践の場になるという。

連携先は大学に留まらず、企業や研究機関など幅広い。こうした協力を得るには「積極的に地域とコミュニケーションすることが大事。そこから紹介などによる連携の機会が生まれてくる」と、関係者は声を揃える。

校内の研修方法に工夫を凝らす例もある。三雲中学校は、ミニ研修会や雑談研修などを取り入れ、教師がデジタル機器の話題に触れる機会を増やしている。

日程や時間を固定せず、1週間単位で幅広く展開されるのがミニ研修会だ。堅苦しい研修会と異なり、都合に合わせて気軽に受けられることがメリットである。また、ITに詳しい教師が意図的に、離れた距離で電子黒板の活用などについて話し合うことを雑談研修と呼ぶ。

内容は職員室中に聞こえるため、他の教師の耳にも自然と入る。「これに触発されて話に加わってくれることを狙っている」とのこと。強制的な研修のような負担感や多忙感をなくすことで、敷居を低くしているわけだ。