緊急レポート変貌する太陽光発電市場

概要

新たな省令の交付で市場はどう変わる?

新省令公布の背景

1月22日、経済産業省は固定価格買取制度の運用見直しに関する省令を交付した。後述するように、出力制御に関する新ルールや、買取価格の決定時期の見直しなどが骨子だ。

今回の見直しが行われた背景には昨年9月、九州電力など複数の電力会社が、太陽光発電などについて「系統接続申込に対する回答保留」を行ったことがある(現在は再開)。

東京・中部・関西以外の電力会社は、管内の電力需要が大きくはなく、系統インフラ(電力配電網)の容量も小さい。にもかかわらず太陽光発電の系統接続申込量が、想定する接続可能量を大きく上回っていた。

このため、すべての申込を受理して稼働させた場合、「電力需要の小さな春先や秋口は、管内の需要量を供給量が上回って需給バランスが崩れ、電力の安定供給に支障が出る恐れがあった」(関係者)という。

電力の安定供給は国の根幹を支える生命線だけに無視できない。その一方で再生可能エネルギーのさらなる普及拡大が、低炭素エネルギー社会実現の切り札であることも確かだ。

この二律背反のテーマをどう両立するか──。今回の運用見直しは、これをクリアするための「現実的な第一歩」との声が多く聞かれる。

実際、経産省は省令の交付に際し「電力系統への接続に制約が生じる中、最大限の再生可能エネルギーを導入するには、実効的できめ細かな出力制御ルールの導入が不可欠。新たな出力制御ルールに基づき、きめ細かな出力制御を行うことで、再エネ電源の最大限導入を進め、『安定供給』と『再エネの導入拡大』との両立を図る」としている。

出力制御無制限の誤解

まず新たな「出力制御ルール」(表1)だが、これは太陽光発電の出力がピークに達し、電力供給量の過剰が見込まれる場合、電力会社の判断で太陽光の発電を抑制し、電力買取を中断するもの。

従来は出力500kW以上の設備に義務づけられていたが、その対象範囲が拡大された。表2のように、東京・中部・関西電力管内の50kW未満設備(住宅用&低圧設備)以外は、すべての設備が対象となった。ただし住宅用の出力制御は、10kW以上の制御後でも供給過剰が見込まれる場合に限るとの配慮がなされている。

そして、出力制御の上限について従来の年間30日から、年間360時間に改められた(360時間ルール)。

さらに「指定電気事業者制度」が盛り込まれた。これは北海道・東北・北陸・中国・四国・九州・沖縄の7電力会社を指定電気事業者と認定。各社が想定する接続可能量の超過後に接続申込が行われた設備については、前記360時間を超える出力制御が認められるもの(指定ルール)。

電力会社は契約設備が増加しても買取量を管理できるため、これが接続回答の再開に繋がったとされる。

だが、「電力会社の判断で出力制御を無制限に行える」とも解釈できるため、「今後の太陽光発電拡大を妨げる要因」との声が多い。実際の売電量が、大きくダウンする可能性があるからだが、これについては大きな誤解といえそうだ。

その理由は各電力会社が算定した接続可能量が、東日本大震災以前の30年間の設備利用率を用いているからであり、「原子力発電のフル稼働を前提とした算定方法」だからである。

ある関係者は「原発再稼働の不透明感が続く限り、指定ルール適用の設備でも、出力を制御されるほどの供給過剰となるケースは極めて少ないはず」と話す。

実際、無制限の出力制御を導入しているスペインでは、出力制御の実績は年間発電量の2%ほどだという。今回の出力制御については、多くの関係者が「出力抑制よりも、電力会社に回答再開を促すことが主眼だったのではないか」と語っている。

買取価格の決定時期

見直しのもう1つの柱となったのが「買取価格の決定時期」だ(表3)。従来は接続申込時に、その時点での買取価格が適用されたが、これが「接続契約時の価格」に変更された。

今回の見直しの発端となった過大な接続申込量は「年度内に申し込めば契約は次年度でも前年度の買取価格が適用される」という旧制度の盲点をついたもの。「契約の意思がなく、権利の売却だけを目的としたブローカーの急増を招いた」との批判が根強かった。また、設備価格の低下を見込んで施工を次年度に先伸ばすという手法も今後は使えなくなる。

その意味で今後の産業用太陽光市場は、正統的な再エネ発電事業者に収れんされるとの予測が多く、「急成長はないが、安定的で健全なものへと変貌するはず」との声が多い。

その一方で「買取価格の決定までに時間がかかり過ぎる」との新たな指摘もある。特に大型設備では、接続申込から接続契約までの期間が長引く傾向にあり、「平均して9カ月程度」との試算もある。

この場合、その年度の買取価格で設備稼働するためには、遅くとも7月頃までには申込む必要があり、それ以降の申込み分は次年度の価格が適用されることになりかねない。

この課題に対する経産省や電力会社の回答はまだ出ていない。「スムーズな制度運用のために早急にクリアすべき」との声は多いが、当面の対策としては「できる限りの早期申込」ということになる。

■表1 太陽光発電に関する新たな「出力制御ルール」

(1)出力制御の対象の見直し
・現状、500kW以上の設備に義務づけられている出力制御を、500kW未満の設備に拡大する(拡大の対象範囲は電力会社によって異なる。表2参照)。

(2)「30日ルール」の時間制への移行
・出力制御の上限を、現状の日数単位(30日/年)から時間単位(360時間/年)とする。(360時間ルール)

(3)「指定電気事業者制度」の活用
・接続申込量が接続可能量を超過した場合には、指定電気事業者制度を活用し、上限を超える出力制御を適用。(指定ルール)
・これらの出力制御を実効性あるものとするため必要な対応(制御可能な機器の設置等)もあわせて実施。
・10kW未満については、将来、必要が生じた場合に機器の設置等を行うことを約せば接続できるようにするなど柔軟な制度運用を行う。・住宅用(10kW未満)については、10kW以上の出力制御を先に行うなど、優先的に取り扱う。

 

※1)平成27年3月31日までの接続申込み案件は、出力制御の対象外。
※2)平成27年1月25日までの接続申込み案件は、30日を上限とした日単位の出力制御(30日ルール)の対象。
ただし、電力会社の系統の状況によっては、1月25日以前の接続 申込み案件であっても360時間ルールの対象となる場合もあるので、詳しくは各電力会社にお問い合わせください。
※3)平成27年1月25日までの接続申込み案件は、原則出力制御の対象外。
ただし、電力会社の系統の状況によっては、1月25日以前の接続申込み案件であっても、360時間ルールの対象となる場合もあるので、詳しくは各電力会社にお問い合わせください。
※4)北海道電力、東北電力、九州電力については、既存の接続申込量で接続可能量を超過しており、360時間ルールの対象案件が想定されない。
※5)いつ時点の接続申込み案件から「接続可能量超過後に接続申込みをしたと認められる案件」となるかについては、各電力会社にお問い合わせください。

■表3 固定価格買取制度の運用見直し