必読!これがホントの“節税”講座個人も法人も意外に多い「無申告」
たとえ赤字でも申告はしっかりと!

寄稿:梅川 貢一郎(有限会社トライアングル 代表取締役・税理士・公認会計士)

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サラリーマンにも申告義務

世の中には申告すべき所得がありながら、申告をしていない人がどれだけいるのでしょうか。サラリーマンは、問答無用で給料から所得税を源泉徴収されますから脱税のしようがありません。

しかし、家にあった「掛け軸」を骨董屋に売ったら100万円で売れた──。趣味で手を出したFXが思いのほか好調で1000万円儲かった──。ネットで始めた健康食品の販売が当たって毎年数百万円の利益が出るようになった──。

このような人、周りにいませんか?おそらく私たちの想像以上に、山のようにいるはずです。当然、その年に所得があれば確定申告を行わなければなりません。ところがこのような「特別の所得」を得た人が、どれだけその所得を申告しているのでしょうか。
もちろん税務署は、あの手この手で情報を収集して「お問い合わせ」や調査を行っています。公式には発表されていませんが、実際の「摘発率」は数パーセントと思われます。

そもそも法人は、黒字でも赤字でも存続している限り、法人税の申告を行わなければなりません。法人は必ず法務局に「登記」されますから、存在を隠すのも容易ではありません。

ところが個人は、個人事業者でない限り、基本的に申告すべき「所得があったとき」に申告をすることになっています。ということは、骨董屋に掛け軸を100万円で売った人も、その掛け軸はそもそも200万円で買ったものなのかもしれません。

であれば、所得はゼロ。所得税はかかりませんから申告の必要はありません。FX取引の利益も年間を通じてのトータルですから、たまたま1回の取引で1000万円儲けていても年間では負けているのかもしれません。FX業者からの情報提供がなければ、なかなか全貌を把握できないでしょう。

ネットで商売を行っている人は、さらに税務署としては所得の把握が難しいでしょう。危険ドラッグをネットで売っている業者が、正直に所得を申告しているとは思えません(ちなみに違法行為で得た所得も「所得」。税務署に申告して税金を納める義務があります)。

だからといって、個人は給与以外の所得があっても「ごまかしましょう」といいたいわけではありません。税務署がいつどこからやってくるか分かりません。無申告には「一か八か」の賭けをするほどのメリットがないからです。

無申告のまま税務調査が入ると…

では、個人であれ法人であれ無申告のまま、万が一税務署から調査が入るとどうなるのでしょうか。まず、過去5年分にさかのぼって税務申告を行うことが求められます。さらに、明らかに脱税のために申告していないと認められると、最長7年間さかのぼって調査が行われます。

調査の結果、算定された税額に対しては、「無申告加算税」を課されます。無申告加算税は、税額50万円までが15%、50万円以上部分には20%も課せられます。もちろん14.6%という『マチキン 』並みの高利の延滞金もしっかり取られます。

その際、過去の領収書などの資料が残っていないと、どうなるのでしょうか。「推定課税」というものが行われます。

推定課税とは、この業種でこれくらいの売上規模のある事業であれば、平均●●円ぐらいの利益があるはずだ、という「推定」のもと税務署が、税金を決めます。当然税務署は、なるべく税金を多くとれるように高めの税額をいっていきます。

では、無申告で調査が行われた結果、税務署がいうままの税金を支払わなければならないのでしょうか。税務署が申告を勧める税額に不服がある場合は、どうすればいいのでしょう。

基本的には、請求書、領収書などの「証拠」をもって反論する必要があります。しかし無申告の人は、そもそも確定申告を行うことなど「想定」していない人がほとんどです。残念ながら、領収書など保存していない場合が多いものです。

充分な反論ができないと、税務署は、「決定」という手続きを行います。これはその名の通り、「この税金で決定です。すぐにお支払ください」という命令です。決定されてしまったら、裁判を起こして税務署が主張する「所得」に反論する証拠を提出して争うしかありません。

私の過去の経験では、無申告の状態で税務調査に入られた場合、通帳などにより、売り上げは比較的正確に把握されるのですが、現金で仕入れた経費やその他の交通費、通信費、交際費などの領収書は、まず残っていません。まして、実際にアルバイトなどに支払った給与でも、証拠がなければそれも認められません。現金で支払っていれば、まず立証は不可能です。

会社の場合、役員報酬は毎月同額を支払うことが、経費として認められる条件ですから、その手続きを行っていないと税務上の損金になる役員報酬は一切認められません。

無申告で税務調査が入ると、少なくとも法人税、法人住民税、法人事業税、消費税など、1年分で数百万円、これが5年間さかのぼると、1000万円以上の追徴税額も珍しくありません。「うっかり申告を忘れた」では済まない事態に陥ってしまいます。たとえ赤字でも、しっかり申告だけはしておきましょう。

税務調査における「交渉の余地」

ちなみに蛇足ですが、税務署は無申告で調査に入った場合、申告すべき所得を発見すると、必ず自主的に「申告」をするように求めてきます。それもかなりシツコイです。

なぜか?

実は、税務署にとっては、伝家の宝刀である「決定」をくだすためには、内部的な手続きがかなり煩雑なのです。伝家の宝刀は裏を返せば、国家権力の強制的な行使です。日本は中国のような「一党独裁国家」ではありませんから、間違った国家権力の強制的行使は、マスコミ問題になるどころか、官僚や政治家のクビが飛ぶことにもなりかねないのです。

したがって、「決定」が行われるためには、お役所独特の厳重な稟議や審査を経て、最後は税務署長が印鑑を押すのです。ここに交渉の余地が出てきます。

もちろんしつこいようですが、私は「無申告」を推奨するものではありません。ただし、万が一、「誤解」からそのような事態に至った場合には、簡単に納得してはいけません。

確かに「無申告者」には必要な領収書がないなどの弱みもあります。しかし税務署側にも「申告すべき所得がある」との確かな証拠がない場合も多いのです。

しかも、税務署は「決定」をちらつかせてきますが、前述したように、サラリーマンである彼らにとって、決定はかなりハードルの高い手続きなのです。

もちろん税務署の調査官は、調査にきたからには、手ぶらでは帰れません。せっかく「無申告者」を発見したのに、上司に「何もありませんでした」とは報告できません。そこで「落としどころ」を探るのが「大人の交渉」というわけです。

領収書のない経費も交渉次第!?

結論をいえば、税務調査は最終的には「交渉」です。ここで税務署との「交渉」についてひと言。税務調査で、グレーゾーンが問題になるのはやむを得ません。節税を考えれば、やはりある程度の「グレー」も経費にせざるを得ないからです。

もちろん税務調査で指摘されたら「もめる」のは覚悟の上です。100%私用で使った領収書や、架空の領収書を経費として計上すれば明らかな「脱税」、黒判定です。しかし、税法はすべての領収書について個別具体的に経費か否かの規定を設けているわけではありません。そのような規定を儲けたら、条文が百科事典のようになってしまいます。

では領収書のない経費は、どうしたら経費として認めてもらえるのか──。一つの方法は、通常かかる経費をすべて洗い出して、通常業務を行っていれば必ずこれだけの経費がかかるはずだと主張することです。

「領収書」は、経費を使ったという直接的な証拠です。しかし、物的な証拠がなくても主張することはできます。例えば家賃。事業を行うには、必ず「場所」が必要です。場所(家?)で仕事をすれば、必ず光熱費がかかります。また、パソコンで仕事をすればネット料金もかかります。当然電話代や携帯代もかかるでしょう。

また、仕事の内容によっては、相手との打ち合わせや接待が必要なこともあるでしょう。自動車が必要な場合もあるかもしれません。

これらの経費は、証拠となる通帳や領収書、請求書などがなくとも、当然かかっていることが推定されます。タダで電気を使っている人などあり得ませんから。税務署は、当たり前ですが売り上げだけを強調して、経費についてはあまり積極的に認めようとはしません。

しかし、売り上げを上げるためにはそれなりの経費がかかるのが常識。それをいかに具体的に、理由をつけて多く認めてもらうか──。これが税務署との交渉です。

粘りが必要なことは確かです。しかしながら最初から諦めてしまい、税務署のいいなりになることだけは絶対に避けましょう。