本田雅一のスペシャルレポート2015年7月リリース「Windows10」

ライター:本田雅一(フリージャーナリスト)

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iOSアプリもサクサク動く!?
急速普及を狙うMSの『仕掛け 』

「7」以降のユーザーに無償提供

マイクロソフトは今年7月、Windows 10をリリースする予定だ。といっても、『発売 』するわけではない。Windows 10は最初の1年間、既存ユーザーに無償で提供されるからだ。現在、Windowsが動作するデバイスは、Windows Phoneやミニタブレットなども含め、全世界で15億台が稼働している。マイクロソフトはリリース後、2〜3年ぐらいかけてWindows 10搭載デバイスを10億台にまで拡大する計画だ。

ただし、Windows 10が無償提供されるのは、Windows 7以降の基本ソフトが動作しているパソコン/タブレットと、Windows Phone 8.1以上のスマートフォン。そして、Surface RT、Surface 2など、Windows RT向けのWindows 10は提供されない。

年末商戦を待たずに登場するWindows 10だが、その理由は品質や機能の向上が予想よりも早く進んだことに加え、パソコンメーカーに対するプリインストール版の提供方法が変化したことも理由だ。

従来のWindowsは、新バージョンをプリインストールしたパソコンが、一斉に店頭に並ぶよう、ある程度の移行期間を設けてきた。しかしWindows 10ではそうした施策が撤廃され、製品版が完成次第、インターネットを通じて既存ユーザーに提供。パソコンメーカーは、それ以前の試作バージョンを含めて検証を進め、最終的に動作確認を行った後、各社の判断で、出荷するパソコンの基本ソフトをWindows 10に切り替える。

このため8月の夏休みには、ヤマダ電機各店舗などでもWindows 10搭載パソコンを試用、比較検討する準備が整うだろう。ボーナス商戦にはやや遅いものの、年末商戦を見すえてWindows 10を検討している方には、ゆっくりと考える時間が与えられることになる。

もっとも、昨今、消費者向けのパソコンの売れ行きがグローバルで鈍っており、日本市場も例外ではない。本当にWindows 10が登場するだけでそんなに売れるの?という疑問を持つ読者は少なくないだろう。

前述したように、マイクロソフトはWindows 10搭載デバイスを10億台にすると話しているわけだが、そのために単に「新しいWindowsを用意しているだけ」というわけではない。この『10億台 』という数字は、これまで通りのWindows(パソコン/タブレット用)と、スマートフォン向けのWindows 10 for Phoneを合計した数字であることは留意すべきだが、その両方の普及について意欲的な施策を用意したのだ。

仕掛け1「ユニバーサルアプリ」

まず、Windowsに対応するソフトを増やすための仕掛けが用意された。

Windowsといえばパソコン業界を制覇した基本ソフト。対応ソフトには困らないはずだが、それは従来型PCで利用するデスクトップ画面向けのソフトでのみ通用する話だ。

例えばWindows 8以降ではタッチパネルに対応し、それに対応するタブレット向けのアプリが作れるようになった。しかし、iPadやAndroidタブレットとは比べられないほど、Windowsタブレット用ソフトの充実度は低い。

マイクロソフト自身が発売するSurfaceシリーズのような、タブレット型のパソコンを使っている人も、ほとんどの場合、純粋なタブレットではなく『パソコンとして 』キーボードなどと組み合わせて使っていることが多い。そしてWindows Phone用アプリの不足はさらに深刻だ。

Windows 10は、一つの基本ソフトでスマートフォン、タブレット、各種パソコンまでをサポートしている。そこで、どんなデバイスで使う場合でも、それぞれの画面に合わせて動作する『ユニバーサルアプリ 』という仕組みを前面に押し出してきた。

ユニバーサルアプリは、Windows 10が動く全ハードウェアで動作するプログラムの形式で、それぞれの画面サイズ、操作性に応じたユーザーインターフェイスが自動選択される。

ユニバーサルアプリの全面採用に伴い、アプリの検索とダウンロードを行うWindows Storeも一新され、スマートフォンからパソコンまであらゆるアプリが一つのストアに集約された。さらに、タッチパネル非対応のデスクトップ版アプリもストアで見つけることができる。『どんな種類のアプリ 』かを意識しなくとも、手持ちの端末でストアにアクセスすれば適切なアプリが見つかる仕組みだ。

そして1回、アプリを買えば(対応しているのであれば)デスクトップ型でも、ノート型でも、タブレットでもスマートフォンでも、それぞれ適切な画面デザインと操作性でコンピュータを利用可能になる。

仕掛け2「他社OSアプリとの互換」

もっとも、そうした理想的な状況になるには時間が必要だろう。そこでマイクロソフトは、即効性のある仕掛け作った。なんと、Windows StoreにAndroid用アプリ(APKファイル)を登録すると、Windows 10搭載のWindows Phoneでダウンロードし、そのまま動かすことが可能なのだという。互換性確認が取れたアプリだけがストアに登録されるため、全アプリというわけではないが、Windows Phone用アプリの急増が見込まれる。

また、iOS向けアプリにも対策を行った。iOS向けアプリの開発プロジェクトファイル(プログラムコードやデータをまとめたもの)を、マイクロソフト製の開発ツールで開いて実行ファイルを生成すると、これがそのままWindows 10で動いてしまう。若干の制限と書き換えがあるようだが、移植時の手間は大幅に省かれることになる。互換性レベルがどの程度かは未検証だが、Windows Phoneアプリやタブレットモード用Windowsアプリの不足を補うだろう。

Windows 10は従来と同じデスクトップ画面で使うWindowsとしても進化しているが、世の注目を集めるには、やはりタブレットやスマートフォンで使うソフトウェアの増加が不可欠だろう。文書作成やグラフィクス、動画などの制作を行うクリエイティブなツールは不足していないが、新たに生まれてくるサービスとのインターフェイスはiOSやAndroidが優先されるのが現状だ。

しかし、上記の施策でWindowsでも最新アプリがいち早く動作するようになれば、今度はスマートフォン/タブレットからパソコンまで幅広くカバーするWindows 10の良さが生きてくる。

独自の強み「Continuum」とは!?

例えばWindows 10は、スマートフォンやタブレットとして利用している時、画面サイズやキーボードなどの有無を検出。パソコンとしての利用を検出すると、デスクトップ画面用のユーザーインターフェイスに切り替わる『Continuum 』という機能を備えている。

Continuumは2-in-1パソコンや、クレイドル付きタブレットなどで有効な機能だが、実はWindows Phoneにも備わっている。Windows Phoneをディスプレイに接続すると、画面がパソコン的なユーザーインターフェイスに切り替わり、無線キーボードを使って文書などを作成できる。マウスの代わりにWindows Phoneのタッチパネルを使うこともできる。

マイクロソフトは流れるようなデモを、自社開発のOfficeで行っていた。確かに素晴らしいが、それは自社で優れたユニバーサルアプリを作ったからに他ならない。Windows 10は優れた機能を持っているが、対応アプリがWindows 10を活かしてくれないことには前へは進めない。

そこで重要となるのが、AndroidアプリやiOSアプリの移植というわけだ。いずれもタブレット用インターフェイスを持つアプリならば、それぞれをWindowsで動かすときにも、パソコンらしい使い勝手を実現できる。そうすれば、Continuumもより活きてくることになる。

果たして夏までに、どのぐらいのアプリが揃ってくるのか。その成果を評価できるのは年末になるだろうが、今年のマイクロソフトはここ数年とは違う。やっとソフトウェア業界の巨人が、新たなCEOの元で本領を発揮してくれそうだ。