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寄稿:梅川 貢一郎(有限会社トライアングル 代表取締役・税理士・公認会計士)

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税務調査の基本的な性質とは

多くの社長にとって、税務調査は警察の捜査にも匹敵するほど嫌なものです。しかし、税務調査は「後ろめたい」社長以外は何ら恐れる必要のないものです。

ただし、税務調査に関する「正しい」知識を持っておくことは大切です。なぜならば、「節税」と「税務調査」は裏腹の関係にあるからです。せっかくの節税も税務調査であらぬ指摘を受け、税金を追徴されては元も子もありません。

まず、税務調査の基本的な性質を押さえておきましょう。ご想像の通り、税務調査はある程度の強制力を持って行われます。ただし、マルサと呼ばれる国税局の査察以外は、「捜査」ではありません。
マルサは裁判所から強制捜査のための令状を持ってやってきます。「犯罪捜査」と一緒ですから、拒むことはできません。それどころか勝手に住居に入ってきて、帳簿やパソコンなどの資料を段ボールに入れて持ち去っていきます。

これに対して、通常の税務調査はあくまでも「任意調査」なので、会社の同意がないと始められないという性質を持っています。通常の場合、税務調査に行く日を「予告」してくれます。税務署から日程を指定してくるわけですが、もし社長の都合が悪ければ日程を変更してもらうこともできます(準備に時間が必要な場合もあるかも)。

しかし、いくら任意調査とはいえ、会社に税務調査を拒む拒否権はありません。それどころか納税者は税務調査では、調査に協力しなければならない義務があります。

調査官が要求する資料(帳簿や領収書、通帳など)の提出を拒むことはできません。また、調査官の質問には「まじめに」答えなければなりません。「お答えできません。」はNG。会社には黙秘権はないのです(そういう意味では犯罪捜査よりも厳しいかも)。

すべての会話の録音も有効

以上のように、税務調査は任意調査であって強制捜査ではないという事実を、まずはしっかり押さえておきましょう。税務調査は、調査官と会社とが「協力し合って」行うものなのです。そのことが理解できると、(最近では少なくなりましたが)以下のような事態に遭遇しても冷静に対応できます。

  1. 調査官が、税理士の立ち会いを認めない(あるいは税理士のいないところで社長に強引に「脱税」を認めさせようとする)。
  2. 許可もなく勝手に会社の別の部屋に入って机や棚を開けて調べ始める。
  3. 会社のパソコンを勝手に見る。
  4. 恫喝をする(調査官の主張を認めないと査察に切り替わるぞ、重加算税の対象になるぞ、青色申告を取り消すぞ、毎年調査に来ることになるぞ、などなど)。

これらはいずれも違法であることが分かると思います。もし調査の現場で、おかしいと思ったら、「止めてください」というべきです。あるいは税理士がくるまで待ってほしいといって制止ししてください。

それでも勝手に、ガサ入れのような真似をする調査官がいたらすぐに税務署長に電話で苦情を入れてください。すぐに止めるはずです。

また、暴力的な発言をする調査官には会話内容を録音させてくれ、というべきです。録音機がなくてもスマホでも簡単に録音できます。

ちなみに、あらかじめ録音機をセットして「問題発言」を録音できれば、それを税務署長あてに送りつければ一発で調査は中止、問題調査官の上司がすぐに謝りにきます(問題の調査官はおそらく左遷です)。

私の友人の税理士は、税務調査の間、(調査官の了解のうえ)すべての会話を録音しています。これは調査官にかなりプレッシャーを与えるようです。もちろん録音は違法ではありません。

繰り返しになりますが、税務調査では調査に協力する必要はありますが、すべて調査官の「言いなり」になる必要はありません。また調査で質問されたことは「即答」する必要もありません。

今は、記憶があいまいなので後ほど改めてお答えします、とかわしておきましょう(答えられないと拒否してはダメ)。時間を稼いでその間に調べたり、準備して答えを考えることができます。

ちなみに私は、税務調査立ち会いの時は、社長には「申し訳ないが急な仕事があるので同席できません」といっていただいて欠席していただくようにしています。

大変失礼ながら、社長には饒舌な方が多く、聞かれたこと以上のことをしゃべってしまう傾向にあります。ベテランの調査官は、質問がとても巧みです。世間話から入っていつの間にか重要な「言質」を取ってしまうのです。一度発言したことは、後から取り消すのが難しいことはいうまでもありません。

税務調査の結果も交渉次第

税務調査のイメージには「怖い」「厳格」「必ずお土産が必要」「さんざん脅かされる」などいいものがありません。しかし、明らかな「脱税」さえしていなければ、税務調査は必要以上に恐れる必要はないのです。

誰にでもミスはあります。意図して売り上げをごまかすつもりがなくとも、期末の売上伝票が漏れることはあります。また、同じ備品を購入して、領収書とクレジットカードの明細で二重に経費を計上してしまうこともあります。

これは誰がどう見ても「誤り」ですから「黒」、どんなにごねても見逃してもらえることはありません(ただし、交渉次第では見逃してもらえることもあります)。

一方、制度として認められた節税法もあります。このシリーズでも紹介した、「小規模企業共済」や出張の「日当」、会社で契約した「社宅」、「中古のベンツ購入」などは代表的な節税法です。明らかに「白」ですから、運用方法さえ間違えていなければ問題になることはありません。

問題になるのはいわゆる白でもない黒でもない「グレーゾーン」です。

特に社長が「個人的に」遣った領収書や家族への支払いが問題になります。大型薄型テレビを会社の費用で購入しているのに社長の自宅に置いている。社長の奥さんを役員にして役員報酬を月30万円払っているが、どう見ても「役員としての仕事」をしている形跡がない、などなど。

グレーゾーンでは、納税者側でも経費となる確たる証拠を持っていませんが、税務署も経費を否認する確たる証拠を持っていません(だからグレーと呼ばれるのです)。後はいかに粘るかと「交渉」です。

感情的にならないこと

ここでちょっとした知識を。それは、税務署の調査官のノルマは「件数」であって「金額」ではないということです。もちろん、調査官にとっては追徴税金をたくさん取れれば、上司からの評価は良くなります。もしかしたら出世も早くなるかもしれません。

しかし、すべての調査官が「出世」を強く望んでいるわけではありません。普通にサラリーマン的に調査を長引かせることなく早く終わらせようとします。そこに「交渉」の余地があります。

5つの指摘事項があったら、そのうち2つは認める(修正申告に応じる)から今回の調査は終わりにしてほしい、などです。早く調査を終わらせて次の調査に取り掛からなければならない調査官は喜んで(?)交渉に応じてくれるでしょう。

もちろん、グレーゾーンでは「妥協しない」も十分にありです。時間と交渉が長引くことによる精神的苦痛が気にならなければ、あくまでも「修正申告に応じない」で押し通せます。その交渉の仕方については次回以降でご説明します。

ちなみに「交渉の例」ですが、私は先日高速道路で覆面パトカーを追い越してしまい、30キロ超オーバーで捕まってしまいました(スピード狂か?)。

これでは一発免停なのでダメもとで、「営業で車を使っているので免停だけは勘弁してほしい。なんとか15キロオーバー位にしてください」といったところ、「しようがないな。では、19キロオーバーにしておくよ。」ということで免停を免れました。

税務調査も同じです。たとえ「黒」であっても感情的にさえならなければ、調査官によっては意外と妥協してくれる場合があります。

会計検査院にはご注意を!

ただし、会計検査院には注意が必要です。会計検査院をご存知ですか? もちろん名前は聞いたことがあると思います。

会計検査院は、会社でいえば監査役のようなものです。税金が適正に使われているか、不正はないかなど公務員を監査しています。普通、民間の会社には関係のない機関ですから、その存在を気にすることもありません。

ところが先日のことです。税務署の担当官から電話がありました。去年、税務調査が行われた顧問先に関してです。

実はその会社、正直なところ、いろいろ問題がありました。指摘事項が5つぐらいあり、それもすべて言い訳のできない「黒」の判定。しかし業績が悪く、とてもすべての修正に応じて税金を支払える状況にはありませんでした。

すでに書きましたが、ここは税務調査の現場ではしばしば行われる駆け引きです。修正申告には速やかに応じるものの、指摘事項すべてについて修正申告はとても無理。○○円までは支払いますが、それ以上は勘弁してください。

書いてはいけないことですが、サラリーマンの調査官も人間です。日本特有のことかもしれませんが、すべてが法律通りというわけではありません。担当官との交渉で指摘された5つの事項のうち3つまでは飲みます(修正します)。

「その代わり、残りの2つは見逃してください」「しようがないけど仕方ありませんね」。これで決着できたと、妥協案を飲んでくれた調査官に感謝しつつ安心していました。
ところが何カ月もたって、当の調査官から連絡がありました。

「実は、会計検査院の監査が入り、例の事案が問題となりました。5つの指摘事項のうち、実際に修正いただいたのはそのうちの3つ。なぜ残りの2つの事項を修正させなかったのか。問題になっています」
「つきましては、今さらながらではありますが、残りの事項についても修正してください」

なるほど、そういうことか。私もサラリーマンの経験がありますのでよく分かります。所詮は担当者レベルでの交渉です。公のお墨付きを得たわけではありません。

しかし、「会計検査院」とは驚きました。残念ながらこのようなケースでは、アドバイスのしようがありません。

ただし、いえることは妥協が成立した時点で妥協内容を「文書」として作成し、担当者でもいいので署名してもらうことです。これは証拠になります。しかし現実問題。それに応じてくれる調査官は、いないかもしれませんが……。


グレーゾーン事項の指摘には交渉の余地あり!?