学校IT最前線岡山中学校・高等学校

概要

「コミュニケーション」のIT化タブレット端末/電子黒板

IT駆使して触れ合うきっかけづくり
生徒との絆や保護者との関係を育む

 

  • 授業はもちろん、休み時間や部活動、自宅でもタブレットをフル活用
  • 生徒の視線が前を向きコミュニケーションできる双方向型授業
  • 学校全体で生徒を見守る体制を、すべての教員による情報共有で実現
  • 評価の高い保護者との情報共有・連絡、生徒同士もタブレットで意思疎通

 

教員と生徒が授業中や休み時間はもちろん、放課後、部活動でもタブレット端末をフル活用して学習や校内行事に取り組む学校がある。私立の中高一貫校の岡山中学校・高等学校(鷹家秀史校長)だ。

例年、国公立医学部や海外大学に合格者を輩出する進学校だが、「授業形態は教員側からの一方的な情報伝達となりやすい講義形式。このためか、教員は学力を十分に伸ばし切れていないと感じていたことに加え、生徒は受け身になりがちで自分に自信が持てていない」(進路指導部長・明樂晃主幹教諭)という状況だった。

そこで2014年度から新任の鷹家校長の下、学習と学校生活の両面で生徒に自ら学ぶ意欲や姿勢を持たせるなど、「主体性」を身に付けさせることを喫緊の課題として、大規模な学校改革に乗り出す。

まず、着手したのが「教員と生徒で双方向にコミュニケーションできる環境を整え、お互いの絆を育み深めること」であり、これを実現するためにITを用いた授業や情報共有の仕組みを構築。具体的には、冒頭のタブレット端末や電子黒板機能を搭載したプロジェクター、Webによる授業・学校支援サービスを導入した。

クラウド型の授業・学校支援サービスに授業や生徒データなどの様々な校内情報を集約して一元管理し、それを教員や生徒がタブレット端末により活用している。

■岡山中学・高等学校が取り組んだ主な学校改革

項目 概要
授業改革 目的:一方向の講義形式の授業から脱却し、教員と生徒がコミュニケーションを取れる双方向型授業の実現
IT活用:資料をタブレットや電子黒板で共有し、板書とノートテイキングの作業を削減。空いた時間をコミュニケーションにあてる。また、タブレット上でのWebテストで生徒との接点を拡大
学校生活
指導の改革
目的:学年団の持ち上がりで一部の教員に固定化していた指導体制から、学校全体で個々の生徒を見守る体制への変革
IT活用:生徒情報をWebサービスに集約し全教員で共有。タブレットの携行により生徒の状況を時間や場所を問わず把握
保護者と情報共有 目的:定期考査の結果や連絡事項など保護者へ伝達すべき情報を、効率的に管理し確実に伝達する仕組みの構築
IT活用:Webサービスに集約した生徒情報を、保護者が家庭で閲覧できる体制の導入

タブレットで双方向型授業を実現

学習改革で、同校が目指したスタイルは、「授業中に生徒の顔が上がり前を向くことで、教員が生徒の表情を見てコミュニケーションを取りながら授業を進められる双方向の関係を築くこと」である。

授業中に生徒が下を向く大きな原因は、教員の板書を生徒が書き写すノートテイキングに時間を取られることだ。同校では、授業で使う資料やプリントをWeb上で生徒と共有。授業中は教員のタブレットをプロジェクター型電子黒板につないでスクリーンに投写しているので、自然と目線が前を向く。

そして、ノートテイキングを最小限にとどめることで生まれた時間をコミュニケーションに当て、例えば英語の授業ではタブレットで動画を見ながら洋楽を歌い発音の練習をするなど、授業の幅を広げたという。

また、確認テストなども紙ではなくタブレットを活用する。中学3年生の学年主任である林秀俊教諭は、「Webにミニテストをアップして生徒に配信し、生徒がタブレット上で解答すると採点も結果も自動で集計される」といい、「授業中だけでなく場所や時間に関係なく何度もやり直せるので、終礼時や休み時間などに気軽に取り組める」と話す。

勉強や学校行事などで使うことを前提に、休憩時間や放課後の使用や自宅に持ち帰ることも自由だ。
教員によっては、自宅での宿題をタブレットで行い終わった段階でメール連絡させるといった使い方に取り組む。宿題をやっていない生徒の把握や、コミュニケーションを取るきっかけづくりにも役立つ。

授業は5教科もあるだけに、プリントは膨大な量になる。これを紙で保存するとなると負担は大きいが、生徒はプリントファイルをオンラインストレージにアップロード。フォルダ分けや検索により管理が楽になり、Webにアップされたテストを、いつでも参照できる。「紙の時は紛失してしまうことも多かったが、タブレットになってからはその心配がない」と生徒にも好評だ。

学校全体で生徒を見守る

生徒指導については、もともと面倒見のよさが同校の魅力だった。これは学年団(同じ学年同士の学級担任によって構成された集団)が6年間持ち上がるという体制が背景にある。

中学入学から高校卒業まで生徒も教員もほぼ同じ顔ぶれのため、お互いに気心も知れる。教員は個々の生徒の考えや希望が言葉にされなくとも分かるため、先回りして手を差し伸べることができた。

だが、この手厚い指導や面倒見のよさが、逆に生徒から主体性を育む機会を奪っていたと判断。2014年度以降は新年度に学年団のほとんどを入れ替える方針に転換した。

「新しい先生と出会うことで、生徒は自分を表現する方法を模索するようになり、教員側も1年間が勝負と今まで以上に真剣に生徒の指導にあたるようになった」(明樂主幹教諭)。

とはいえ、教員が変わることで生徒との接点が希薄になり、同校の魅力でもあった面倒見のよさが軽減されてしまう懸念もあった。

この対策となったのが、Web上に作成した個人カルテだ。出欠、定期考査や模試の成績、部活動の実績、生活状況といった情報を全教員で共有し、学校全体で生徒を支援する体制を整えた。教員はひとり1台のタブレットを持ち歩いているので、どこでも生徒の状況を把握できる。

実際、「週末に行われた部活の大会翌日に、活躍した生徒があまり接点のなかった教員に声をかけられて、うれしそうな顔していた」など、生徒とのコミュニケーションがさらに取りやすくなったという。

Webテストは、成績が残り反復できると生徒に好評(左)。生徒同士や教員と生徒など、 コミュニケーションがタブレット上で行えるようになり、以前よりも接点が拡大したという(右)

 

保護者との情報共有・連絡

Web上に保護者用の画面を用意しており、ログインすると自分の子どもの個人カルテで出欠や時間割、定期考査の成績、提出物の提出状況などを閲覧できる。加えて、これまでは紙だった保護者への連絡や学年・学級だよりなどもWebを介して共有する。

明樂主幹教諭は「常に生徒や学校の情報が可視化されるため、保護者は家庭で状況を把握できる。以前ありがちだった生徒が親にプリントを渡し忘れて連絡が伝わらないといったミスもなくなった」といい、「保護者に最も好評な部分」と語る。

保護者は家庭のPCから情報にアクセスできるが、生徒が自宅に持ち帰ったタブレットを共有して状況を確認することも可能。親子でコミュニケーションを深めるきっかけにもなりそうだ。

また、生徒同士でもタブレットによるコミュニケーションが活発だ。Web上にグループを作成してSNSのように使える機能がある。これを利用して部活などのグループを作りコミュニケーションを行う。「教員よりも生徒の方がうまく使っており、それを学校が取り入れれば、さらによい使い方ができる」と明樂主幹教諭。教員同士の連絡も、今ではメールではなくグループ機能を使うことが多い。

同校の学校改革は、まだスタートしたばかり。「タブレットを活用した新しい教育スタイルを展開していきたい」というだけに、今後の取り組みが楽しみだ。