制度改革小委員会が発足岐路に立つ産業用太陽光発電

概要

見直し議論が始まった「FIT」
狙いは健全な発電事業者の支援

制度改革小委員会が発足

2015年9月、経済産業省は固定価格買取制度(FIT)の抜本的な見直しを行うため、新たな有識者会議「再生可能エネルギー導入促進関連制度改革小委員会」(小委員会)を設置し、検討を開始した。

これは太陽光をはじめとした再生可能エネルギーを、持続可能な形で長期安定的なエネルギー源として導入拡大させるために、FITを含めた制度改革の検討を行うもの。11月11日までで4回が開催されており、今後も継続する方向だ。

これまでのところでは、主に産業用太陽光発電(出力10kW以上)に関する議論が多くなされている。周知のように産業用太陽光は、設備の実際稼働量と、経産省が認定した量とのかい離が甚だしく、そこが大きな課題となっている。

2015年7月末の段階で実際に稼働している太陽光発電は約18GWだが、認定した未稼働の設備容量は78GWにも及んでいる。

これは設備認定が、電力会社への系統接続の申込段階で行われたためだ(図1・現行)。発電事業者は費用等がほとんど発生しない設計段階での申し込みが可能なため、例え実稼働させる意思がない場合でも、認定を取得できた。

しかも、2014年度までは認定と同様に買取価格も、系統接続の申込段階で確定されたため、設備認定に拍車がかかることとなった。認定さえ取得しておけば、着工することなく「その権利を高く転売する」等の裏技が不可能ではなかったのだ。

現状の未稼働案件がすべて裏技を狙っているわけではないが、認定した設備の確実な稼働を実現することが、今回の制度見直しの大きな目的となっている。

例えば昨年終わりから年明けにかけて、大きな話題となった一部電力会社による系統接続の保留問題。これも設備認定された管内の発電所がすべて稼働した場合、管内の電力需要を大きく上回る発電がなされることになるため、その予防措置として行われたもの。

今後は確実に発電事業を行う設備だけを認定する方向に向かう。その一環として2015年4月からは、太陽光発電については買取価格の確定を、従来の系統接続申込段階から、系統接続契約の締結時へと改められている。契約締結のためには電力会社への工事負担金の払い込みなどが発生するため、裏技目的の抑制につながることとなろう。

今後のFITを推し量る目安

今回の小委員会ではこうした現状を打開し、再生可能エネルギー発電市場をより正しい方向へと導くために、制度の大幅な見直しを目指すもの。FITの改正についてさまざまな角度から検討がなされている。

図はその中から、新たに太陽光発電事業に取り組もうとするユーザーに関連する項目をまとめたもの。いずれも現段階では「案」であり、必ずそうなるとは限らないが、FITが今後目指す方向の概要を、把握するための参考にはなるだろう。

まず「設備の認定時期」(図1)だが、現行の系統接続申込段階から、後倒しとなり、系統接続契約の締結時とする案が有力視されている。本年4月から先行スタートした買取価格の決定時期と同じにすることで、認定設備を、実稼働させる可能性がより高いものに選別するわけである。

これについてある関係者は「異論はほとんどないようだ。そのまま決定となる可能性が非常に高い」と話している。

ところが買取価格の決定時期については、図2のようにさらに後倒しして、設備の稼働開始段階とする案が議論されている。これにより事業者に対して設備の早期稼働を促そうというわけだ。

ただし、これを実行する際は、必要要件として、数年先までの買取価格を予め明示することが必要との声が支配的となっている。

実稼働開始の時期が不透明で、しかも買取価格が決定していない状況では、現実問題として回収期間等の精緻なシミュレーション等が行えず、ファイナンスを組むことが困難になると予想されるからだ。

買取価格の決定方式

このこともあって政府が実施している、買取価格の金額決定方式についても議論されている。

現行方式は、発電事業運営に必要なコストを基礎にした適正な利潤を考慮した上で、公正中立な調達価格算定委員会が買い取り価格案を策定。経済産業大臣がこれを参考にして翌年度の買取価格を決定し、発表することとなっている。

これに対する見直し案は4つ(図3)。1案は「現行方式の厳格化」で、トップランナー方式を導入するというもの。その詳細は不明だが、メーカー関係者の一人は「最も低い買取価格で、利益を創出できる事業モデルを毎年想定し、買取価格をそこに合わせるのだろう」(関係者)と予測している。

これに対して2案は「一定比率で毎年価格を低減させる方式」だ。一定比率のため数年先の買取価格を予見することは可能だが、将来の市場実態に即した低減率を設定できるか、という問題がある。

また3案は「設備導入量に応じて価格低減率を変化させる方式」だが、これも適正な低減率が設定できるかという課題があり、しかも、事業者の予見可能性も低くなる。最後の4案は「入札」だ。事業者自らが買取価格を設定できることになるが、価格が合わずに落札されないリスクが生じる。

4つの案とも現状では「帯に短し、たすきに長し」といった状況であり、決定打に欠けていることは否めない。小委員会は今後も継続されるため、新たな案が浮上する可能性は高いだろう。いずれにして太陽光発電の市場が、混乱することなく、明るい方向へ突き進む見直しとなることを期待したい。