商品研究商品研究1 ビジネスプリンター

概要

シンプル機構のレーザーは耐久性で優位
「印刷コスト」「消費電力」で勝るBIJ
  • 印刷の快適性は「大量印刷」ならレーザー、「少数枚印刷」はBIJ
  • レーザー方式はテキスト印刷に強く、BIJは鮮やかなビジュアル印刷が特徴
  • 「印刷コスト」と「消費電力」ともBIJが有利
  • 機構がシンプルなレーザー(LED方式)は耐久性が高く故障に強い

ビジネス向けプリンターや複合機には、大きく「レーザー(LEDタイプを含む)」と、業務利用を意識して設計開発された「ビジネスインクジェット(以下BIJ)」の2方式がある。

最近、BIJのラインアップが増えてきており、もともとの長所であるランニングコストの安さに加えて、基本性能が進化してきたことで注目度が高まっている。このため、レーザーとBIJの方式選びでは、「どちらが優れているか」といった声が漏れ聞こえてくるが、これはお門違いだろう。

レーザーとBIJを比べた場合、それぞれがメリットとデメリットを持っており、両方式は相補関係にあるからだ。方式の違いによる特徴を理解した上で、自社ニーズに合わせて適材適所で使い分けることが、結局は生産性アップやコスト削減につながる。

そこで、今回はプリンターや複合機に求められることが多いニーズとして、①素早く快適に印刷したい、②キレイに印刷したい、③コストを抑えたい、④長く安定して使いたい──この4点について、両方式のメリットとデメリットを解説しよう。

■レーザー&ビジネスインクジェット(BIJ)の用途別長短所比較

レーザー 用途 ビジネスインクジェット
連続印刷速度に優れるので、「大量印刷」に強い。枚数の多い資料をプリントする頻度が多い用途に向く 素早く快適に印刷したい 機構上、ウォームアップが不要で最初の1枚目(ファーストプリント)が速いので、「少数枚印刷」に強い
細かい描写に強く、黒文字のシャープさが魅力。特にLED方式は描画のスポット径が小さいので、高精細な印刷が必要な用途に適する キレイに印刷したい 光沢紙やフォト専用紙へのビジュアル印刷で、発色の鮮やかさに優れる。顔料系インクの採用などにより、普通紙への印字品質も大きく進化した
印刷の仕組み上、トナー定着に熱を必要とするため、稼働時やウォームアップ時の電力消費量が大きい コストを抑えたい ベース技術がインクジェットなので、印刷コストと消費電力とも大幅に抑えることができる
比較的構造がシンプルで、故障に強く耐久性に優れる。大量印刷や長時間のフル稼働に対する信頼性が高い 長く安定して使いたい インクジェットから進化してきたため発展段階。ただし、ハイエンド機では十分にビジネス品質が実現されている

素早く快適に印刷したい!

まず、①素早く快適に印刷したいというニーズは、「大量印刷」と「少数枚印刷」に用途を細分化できる。そして、結論からいうと大量印刷ならレーザー、少数枚印刷ではBIJが基本的に有利だ。

大量印刷の快適性を左右するのは連続印刷速度である。これは、周知のように一定時間でプリントできる最大枚数のことで、製品仕様では1分間の印刷枚数で示される。

レーザーとBIJの連続印刷速度のスペックを比べると、総じてレーザー機に高速モデルが多いことが、レーザーが有利という理由の1つ。

また、印刷速度の測定基準が両方式では異なるため、単純な比較はできないが、メーカー関係者の説明によると「カタログ上の連続印刷速度がほぼ同じ場合、レーザーの方がBIJよりも速い」という。これが、レーザーが有利な理由の2つ目だ。

連続印刷速度における両方式の差は、機構的な違いに起因する。レーザー方式は感光ドラムの回転により印字を行うため用紙の搬送もスムーズだ。これに対し、BIJはプリントヘッドを左右に可動させて印刷する仕組みのため、わずかだが1枚当たりの出力でレーザーより時間がかかる。

印刷枚数が増えるほど、この差が積み重なるため、大量印刷時にはレーザーが有利というわけだ。ただし、「プリントヘッドの機構改良によりもっと高速化できる」だけに、今後のBIJは大きな可能性を持つ。

一方、少数枚印刷では前述したようにBIJが有利だ。特に、省エネ意識の高まりからスリープなどの節電モードが多用されるようになり、この傾向が強まった。

1~2枚程度の少数枚をプリントする場合、印刷指示をかけてから最初の用紙が排出されるまでのファーストプリントタイムが速いほど快適だ。この点、BIJはレーザーと遜色ないスピードを持ち、印刷可能な状態へ復帰するプロセス(ウォームアップ)も要らない。印刷ジョブをかければ、すぐにプリント開始の動作に入れる。

レーザー方式は熱により印字を定着させるため、節電状態から印刷する場合にはウォームアップ動作が欠かせない。仮に、ファーストプリントタイムが同じでも、ウォームアップの時間だけBIJが有利なわけだ。

比較機種の性能によるが、「感覚的に5枚程度までならBIJが速い」(メーカー開発担当者)とのこと。これを参考に印刷枚数が多い用途にはレーザー機、多頻度少数枚プリントのニーズが高いならBIJと、使い分けるとよいだろう。

キレイに印刷したい!

②キレイに印刷したいという場合は、「印刷品質」が比較ポイント。これは「テキスト重視」と「ビジュアル重視」に用途を細分化できる。

テキスト重視なら、やはりレーザー方式のメリットが大きい。長くビジネス向けの主流として使われてきただけに、普通紙への印字品質は申し分ない。特に、レーザーでもLEDヘッドを採用したモデルは、一般的なレーザーよりも描画のためのスポット径が小さく、細い線なども高精細にプリント可能だ。

BIJでも、顔料インクが採用されるなど普通紙への印字品質が向上しており、課題とされた耐水性やにじみは解決されている。だが、両方式の印刷物を見比べると、黒文字のシャープさなどの点でレーザー方式がやや優れている印象を受ける。

ビジュアル重視は、いわば写真などの印刷品質のこと。この点、BIJは機構上、熱を使わないので光沢紙やフォト紙など様々な専用紙にプリントすることができ、発色の鮮やかさの点ではレーザー方式に勝ることは誰もが認めるところ。さらに、顔料系インクは耐候性などに優れるため、経年劣化の影響が少なく数十年の保存にも耐えられる。

レーザーでは、用紙の表面上に光沢処理を施したコート紙などに対応する機種も増え、以前よりも鮮やかなプリントが可能となっている。

コストを抑えたい!

ビジネス向けプリンターや複合機で、③コストを抑えたい場合は「印刷コスト」と「消費電力」がポイントである。これらの点ではBIJにアドバンテージがあり、同方式が注目されている最も大きな理由だ。

印刷コストを比べると、モノクロプリントでは両方式ともA4サイズ1枚当たり2円台から3円程度と、それほど大きな差はない。だが、カラー出力のコストではBIJがレーザーの半分から3分の2程度。カラーで印刷する機会が多く、印刷コストを重視する用途ではBIJが適しているといえるだろう。

レーザーとBIJとも、省エネを重視した設計により低消費電力化が進んでいるが、この点でも熱を使わない機構的な特徴からBIJが優れる。

BIJは、前述したようにウォームアップが必要なく、印刷時に必要な電力は数十W。これに対して、トナー定着に熱が必要なレーザー方式は印刷やウォームアップ時に数百ワットもの電力を消費する。

ただし、スリープモード時の消費電力は両方式とも変わらない。印刷時に稼働状態への復帰に少し時間がかかることを我慢できれば、それほど大きな差にはならないだろう。

長く安定して使いたい!

オフィス機器を使っていて困るのは故障だ。この意味で、④長く安定して使える(耐久性)ことは、印刷ボリュームが多い用途などでは大事なポイントとなる。

耐久性の点では、やはり「レーザーが優位」(メーカー関係者)といえるだろう。「ビジネス向けに業務を止めないことを強く意識して開発されてきたレーザーに対し、コンシューマー向けから進化してきたBIJは発展途上にある」(同前)からだ。加えて、レーザー方式でも特にLEDは機構がシンプルなので壊れにくい。

実際、両方式の高耐久モデルを見ると、レーザーの60万枚に対してBIJは30万枚とレーザー機の耐久枚数が高くなっている。

5年間の利用を想定した場合、BIJは月平均で約5000枚が出力上限となる。これを分岐点に、メーカーサポートなどのサービスも加味しながら、導入を検討したいところだ。