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概要

普及機クラスでマテリアルが進化
中空成形や可動品の造形も可能!

  • FDM方式向けに、進化した造形材料が続々と登場
  • これまでの課題を解決し、複雑な造形を実現できる「水溶性サポートマテリアル」
  • 中空構造や閉じ込め構造、ギアが回転する可動型の試作品などの作成に好適
  • 金属の質感を再現できる「メタルライク」や、軟性の高い「SB樹脂」

従来、熱融解積層(FDM)方式を採用する50万円前後以下の普及クラス帯のモデルでは、複雑な造形や質感に優れた立体物の作成は難しいとされてきた。

だが、造形用のマテリアル(材料/*1)が進化してきたことで、これまでにない立体物を作成することが可能となり、用途の幅も広がりそうだ。具体的には、「水溶性サポートマテリアル」や「メタルライク樹脂」といった材料が挙げられる。

複雑な試作造形が可能に

まず、水溶性サポートマテリアルとは、水に数十分から1時間程度浸すと一部が溶けて柔らかくなりはがれやすくなる性質を持つ材料のことだ。

デュアルヘッドやトリプルヘッドといった出力ヘッドを2つ以上搭載しているモデルが必要だが、同マテリアルを使うことで内部が空洞になった中空構造の造形物や歯車がかみ合った可動型試作品など、用途の広がりが期待される。

熱で樹脂を溶かして積み上げていくFDMのような方式では、横方向に大きく張り出した形状やボトムからではなく空中から作り始めねばならない形状を造形する場合、そのままでは作れない。出力中に崩れないように支え(サポート)が必要だ。

しかも、造形後にサポート材を除去する作業は手や工具などで物理的に力を加えて行う方法が一般的。手間がかかり、作業ミスにより造形物を壊す危険があった。

特に、複雑な立体物ほどリスクが高く、造形物の形状によっては取り除くことができないケースもあった。取り除いた後にバリが残り、造形物表面が粗くなるなど、造形品質が低下してしまうことも課題だったという。

そもそも普及機クラスのFDMモデル向けでは、サポート材がほとんど用意されていなかった。

こうした状況下で、新たに登場したのがFDM方式で使える水溶性サポートマテリアルというわけだ。本稿執筆時点では、国内メーカーのムトーエンジニアリングが「PVA(ポリビニールアルコール)」を、米国3Dシステムズが「INFINITYサポートマテリアル」などを用意している。

いずれも自社のFDM方式3Dプリンターで使用可能(対応機のみ)。水やお湯に一定時間浸して柔らかくなったサポート材をラジオペンチやピンセット、楊枝などで取り除ける。仕上げにブラシなどで磨くと、細かい部分も除去でき、造形物の表面もキレイに仕上がる。

ムトーエンジニアリングの「PVA」を使用した造形例。QRコードを読み取ると動画の閲覧が可能だ
メタルライク「真鍮(ブラス)」。出力後(左)は積層跡が目立つが、研磨により金属の質感を再現(右)できる
3Dシステムズの水溶性サポートマテリアル「INFINITY」を利用した造形例。サポート除去前 除去後の完成サンプル。このように以前は難しかった形状の出力も可能だ

質感にもバリエーション

また、普及クラスのFDM機で使える材料は限定的で、一部でナイロン素材なども用意されているが、多くの機種でABSやPLAがメインだった。

いずれも樹脂性で、ABSは強度と粘りがあって加工や塗装に適し、PLAは熱変性が小さいので、大きい造形物の作成に向いているなど、それぞれ特徴こそ持つが、見た目の質感はほとんど変わらない。

この点でも、新たなマテリアルの開発が進んでおり、例えば前述のメタルライク樹脂は注目度も高い。

メタルライクは、ムトーエンジニアリングが取り扱う材料で、文字通り金属的な質感を再現することが可能だ。同社のラインアップではブロンズ/銅(カッパー)/真鍮(ブラス)が用意されている。

もちろん金属ではない(*2)が造形物には重量感があり、表面をサンドペーパーで磨くことでメタルのような質感を再現できる。金属性部品などでは現物に近いイメージを持つ試作品を作成することが可能だ。

この他、軟性を特徴としたSB(スチレン/ブタジエン)樹脂など、曲げても折れにくい特徴を持つマテリアルもある。薄い造形物など、形状はやや限定されるが、柔軟性があるゴム感覚の立体物を作成するのに使えるだろう。

新しいマテリアルの登場で、これまでは高額な業務用モデルでないと難しかった造形物の作成が、FDM方式の普及機でも可能となってきた。

さらなる新材料の開発も期待されている。新規導入やリプレイス、追加設置の選択肢として、FDM機を検討しても損はないレベルまで進化しつつあるといえそうだ。