本田雅一のスペシャルレポート採用メーカーが急増「Windows Phone」

ライター:本田雅一(フリージャーナリスト)

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採用メーカーが急増する理由
国内でも販売開始! 「Windows Phone」

先日、マイクロソフトはWindows 10に対して、最初の大きなアップデート版を提供した。同社はWindows 10に関して、これまでのような大規模なバージョンアップ版を長期にわたって開発、提供するという手法を改め、定期的に機能改善や必要な機能追加を行う方針を打ち出している。

今回の目玉はマイクロソフト以外のネットワークサービスとの接続性を高め、標準装備しているメールやカレンダーの互換性が向上しているほか、性能の低いプロセッサを搭載するコンピュータでの応答性や起動時間が向上している。

また、日本語に対応した音声認識機能付きの電子秘書機能「Cortana」をアップデート。ペン入力付きデバイスならば、メモを書き込むと自動的に電話番号やメールアドレス、住所などを認識して、ユーザーに通知する機能を備えた。

例えば「クリスマスに○○に電話」と書けば、クリスマス前に「メモを忘れないように」と通知する。まだ提供直後で、どこまで日本の地域情報やインフラと連動しているかは未知数だが、Cortanaは手書きやキーボードからのテキスト入力なども統合し、スマートフォン、タブレット、パソコンから横断的に利用できる機能とすることで、iOSのSiriとは異なる価値を創出しようとしている。

新ウェブブラウザのEdgeも高速化した上、タブプレビューが追加されている。現在表示中のページから離れなくても、開いている他のタブにマウスカーソルを合わせれば、そのタブの Web サイトの内容をプレビューできる。お気に入りやリーディングリストも自動的にWindows 10デバイス間で同期される。

日本でのサービスはまだ始まっていないが、ネットショッピング中に、各サイトの割り引きクーポンを検出、表示する機能も追加されており、今後のサービス拡充に期待したい。

採用メーカー急増の理由

さて、これと同じタイミングで始まったのが、パソコン以外へのWindows 10の提供だ。Cortanaの強化やEdgeの改善、各種サービスとの相性改善なども、パソコン以外の端末への展開を意識したものだろう。

マイクロソフトは即日にXbox OneへのWindows 10配信を始め、スマートフォン用Windows 10 Mobileの出荷用バージョンを、OEMメーカーへ供給開始した。

日本では長らく「Windows Phone」が提供されなかったが、Windows 10 Mobileを契機に再びWindows Phone端末が日本でも投入される。

マウスコンピュータが今年春にWindows Phone 8.1を発売していたが、それが一気に5社まで拡大する。コンシューマ向けに大手キャリアが販売する端末はなさそうだが、企業向けの引き合いが多いという。なぜ一気に日本での採用メーカーが増えたのか。大きく三つの理由がある。

まずWindows Phoneで使われる地図サービスがNokia MapからBing Mapに変更されたこと。

Nokia Mapの採用は、かつてのノキアとの提携(その後、端末部門を買収)の名残りだが、日本の地図情報がほとんど入っていなかった。前述のCortanaも日本市場未サポートだったものが、今回のアップデートで採用されたことも大きい。

また、総務省の意向もあり、端末のSIMフリー化に対する認知が広がり、モバイル回線サービス事業者の利用が広がったことで、メーカーが独自に端末を流通させやすい環境が整ってきたことも見逃せない。しかも、政府の意向もあって大手携帯電話キャリアが電話料金見直しを始めており、既存の大手キャリアユーザーがSIMフリー端末に投資しやすい事業環境になっている。

さらにはWindows Phone最大の弱点だった『アプリの少なさ 』に、解決の見込みが出てきたこともある。

Windows 10 MobileにはAndroidシステムとの互換性を提供する仕組みが組み込まれており、Android用に開発されたアプリケーションパッケージをWindows Phoneのアプリストアに登録すると、互換性検証などを行った後にWindows 10ユーザー向けにAndorid用アプリのまま配布できるようになるという。

iPhone用アプリも、そのままの流用はできないものの、マイクロソフトが提供する開発ツールでiOS用アプリのソースコードなどを読み込み、最小限の修正のみでWindows 10 Mobile向けアプリへと変換するツールの提供が開始されている。

無論、これでアプリ増加が保証されるわけではないが、マイクロソフトのアプリストアは他社に比べロイヤリティが安いとこともあり、Windows 10 Mobile向けにも提供しようと考える開発者は増えるだろう。

Windows Phoneの優位性とは

このようにWindows Phoneを販売することの障害がクリアになってきたことで、「本来持っている長所を活かせる」と考えるメーカーが増えてきたのが、今回の採用メーカー急増につながっている。

アプリ不足を除けば、Windows Phoneには技術的に優れた部分も多い。例えば少ないメモリでも快適性が高く、ハイエンドプロセッサ以外でも高い応答性が得られる。Androidに比べると同じプロセッサならば動作は軽い。

ユーザーインターフェイスも一貫性が高い。当初はスマートフォン向けとしていま一つ使いにくかった、タイルを並べたスタイルのホーム画面も、世代を重ねるごとに良い仕上がりになってきた。

さらに、パソコン、タブレット、ゲーム機などと同じ基本ソフトになることで、パソコン向けに開発された優れたセキュリティ設計や企業システムとの連動性をフルに活用可能になる。

パソコン業界はインターネット活用の進行と共に、ウィルスやワームなどとの戦いを長年続けている。セキュリティに敏感な企業を中心に、すでにノートパソコンでの実績やノウハウがあるWindowsを用いて、社員向けスマートフォンのリスク管理を行いたいという意図もある。

例えばパソコンメーカーのVAIOは、主に企業向け端末としてWindows Phoneの販売を計画しているという。マイクロソフトも『仕事の道具 』としての、Windowsプラットフォームの優位性を意識しており、それはWindows 10 Mobileの機能としても反映されている。

中でもContinuumと呼ばれる機能は、Windowsを使って仕事をしているユーザーにとって重要な機能となるだろう。外部ディスプレイを接続することでユーザーインターフェイスが自動的に変化し、Windows 10 Mobile用のOfficeなどを用いてパソコンと同様の文書編集を(外部キーボードとの組み合わせで)行えるようになる。

注目のトリニティ「NuAns NEO」

現在、日本市場向けにWindows 10 Mobile採用端末投入を表明しているのは、マウスコンピュータ、VAIOに加え、フリーテル、サードウェーブ、エイサー、トリニティだ。マウスコンピュータは、Windows Phone 8.1搭載で発売していたMADOSMAのWindows 10 Mobile版をすでに発表している。順次、各社端末が発表されるだろうが、実はトリニティが販売する「NuAns NEO」には、筆者も開発チームの一人として参加している。

執筆時点では未発表のため、あくまでも『予定 』ではあるが、8コアプロセッサのSnapDragon 917を搭載。Windows 10 MobileのContinuumは、搭載プロセッサによって利用可否が異なるが、予定通りにマイクロソフトがSnapDragon 917でのContinuum正式サポートを表明すれば、国内では初のContinuum採用機となる。

システムの中核となるNuAns NEO Coreの価格は4万円以下に抑える予定だ(利用時にはCore以外に好みのカバーを選ぶ必要がある)。

携帯電話キャリアでの販売はなく、SIMフリー端末として一般的なデジタル製品と同様に購入して利用する製品となるのは、他のWindows 10 Mobile機と同様だ。

まだ小さな一歩ではあるが、iPhone、Androidスマートフォンに加え、独自の地位を確保できるか。ほぼ『ゼロ 』からの挑戦となる。


2015年11月30日に発表!
注目のトリニティ「NuAns NEO」