福島敦子のアントレプレナー対談 No.5450代半ばでの遅咲き起業
走りのおもてなし業にまい進

株式会社ランビー 服部 真社長

株式会社ランビー(東京都中央区)

略歴


1978〜1988年 株式会社バンダイ
1988〜2001年 株式会社トロイマー
2002〜2013年 株式会社レイアップ
2014年2月 株式会社ランビー設立

商品開発とインストラクション

福島 御社は「走りのおもてなしカンパニー」をスローガンに掲げています。
具体的な事業内容から教えてください。

服部 二つの柱があります。
一つはランナー向けの雑貨商品の開発・販売で、もう一つが走りたい人を教えるインストラクター事業です。
この2本柱を一人でやっています。

福島 今、お一人なんですか?

服部 はい。基本的には自分ですべてやっています。
Webの制作からチラシのデザインまで100パーセント自分一人です。
印刷会社やデザイナーさんなどには協力してもらっていますけど。

インストラクターの資格は三つの団体で取得しました。50代半ばから勉強を始めたんです。
マラソンが好きでずっと続けてきましたが、趣味の延長上でインストラクターをやって、お金をいただくのは難しいと思ったからです。

福島 ランナー向けグッズの企画・開発はどういうものですか。

服部 最初に出したのが、檜製の「メダルハンガー」です。

私、フルマラソンには36回出ていて、家にメダルが腐るほどあるんです。
これをタンスの肥やしにしておくのはもったいないので、それを飾るためのものを作ろうと思ったんです。
ランナー仲間に「そういうのがあったらほしい?」とインタビューして商品化しました。

ただ、あまりにもニッチな商品なので、なかなか置いてもらえなかった。
東急ハンズさんやスポーツオーソリティさんで扱っていただいたり、自社サイトでも販売しています。

また、今年の東京マラソンは第10回を迎えるのですが、そのオフィシャル商品にも選ばれました。
オフィシャルブースで販売していただけるんです。
「東京マラソンで採用された」というのをフックにしたいと思っています。

「はうつー手ぬぐい」(左)と「メダルハンガー」
「はうつー手ぬぐい」(左)と「メダルハンガー」

福島 他にも何か商品化されているものがありますか。

服部 もう一つがストレッチのやり方をプリントした「はうつー手ぬぐい」です。

インストラクターをしている時には、ストレッチの仕方も教えるんですけど、皆さん1回やっただけでは忘れちゃう。
それで、そのやり方をネコのイラストにして解説しています。

突然の役員退任勧告

07-01

福島 服部さんは資料を拝見しましたら、学校をご卒業後、大手玩具メーカーで商品開発をされていて、ずいぶんとヒット作も作られたそうですね。
その後もいくつかの会社で商品開発に携わられたということですが、なぜ56歳で起業しようと思ったのでしょうか。

服部 最後の会社では取締役だったんですけど、社長から「若返りを図りたい」という話が出て役員も一掃されたんです。

福島 若返りといっても、まだ50代半ばですよね。突然ですか。

服部 匂わせられていました。先輩役員もいなくなりましたので。
みんな自分の理由で辞めていくんですけど、「なぜ辞めるんだろ」と思っていたら、自分の番になって「あっ、こういうこと」みたいな感じで。
クビにされたわけじゃないんですよ。顧問になってくれといわれました。

顧問になると収入は下がるんですけど、「65歳まではいていいよ」と。
でも、いても目標もないし、窓際になっちゃうわけじゃないですか。

かといって65歳まで現役をやらせてもらえると思っていたので、起業は一切考えていませんでしたし…。
それで「どうしようか」と考えました。

福島 職探しはされたんですか。

服部 ハローワークへ行ったのですが、そこでパソコンを叩いても、自分に適した職は出て来ない。
「うーん」と思って、「自分でやれるかどうか分からないけど、起業してみようかな」と思ったんです。

そうはいっても、急にラーメン屋さんをやろうとしても無理。
やっぱり趣味とか、今までやってきたものづくりのノウハウを生かした仕事ができないかなと思ったんです。

2020年のオリンピックに向かって、スポーツ関係の市場は伸びていくだろうというのと、国が国民を健康にして、医療費を抑制するために、運動させて病気させないようにしようという動きがあったので、これに乗っていけば、健康云々関係でやれるかな、みたいな。

福島 マラソンのインストラクターは多いのですか。

服部 ランニングの世界ではオリンピック選手を養成するコーチは大勢いますが、一般の人たち、底辺の人を指導する人があまりいない。
私が講習を受けた協会の代表者は、「そういう人を創りたい」といっていたんです。
「それはありだな」と思って。

ですから今教えているのは、シューズの選び方とか、「東京マラソンが当たったのですが、どうすればいいですか?」という人たちだけを対象にしています。

決算書の作成も自力で

福島これまでのご経験で、商品企画から実際の商品化までのノウハウはお持ちだったということですけれども、やっぱり経営者となると、経営のいろんな知識やノウハウが必要になります。それはどういうふうに習得されたんですか。

06-02

服部 決算も全部一人でやっています。
ランナー仲間の税理士に聞いたり、仲間が大勢いるので教えてもらったのですが、自力でやれないこともないなと思いました。

決算や納税にしても、今、税務署に行けば、すごく懇切丁寧に教えてくれます。
「私、全然分かりません」といって白旗降って税務署へ出向いたんですが、本当に丁寧に教えてくれました。
担当の人が1回書いてくれたのを、私は横で見て真似するだけ。「この数字はこうで、合計はこう。はい、終わり」と。「えっ、終わり?」って。
30分ぐらいで終わって、判をピッと押してくれました。
だから、みんな自分で税務署に行けばいいと思いましたね。

それを知らないから、先入観で「難しいものだ」と。「税理士に頼まなきゃいけない」とか思ってしまうんですけど、自分でできちゃうんですね。
何億と儲かっていて節税しようと思ったら、その道のプロに頼むしかないでしょうけど、私、赤字だから節税する必要がないんです(笑)。

福島 今後の戦略は、どう思い描いていらっしゃるんですか。

服部 現状だと、自分だけの範ちゅうではマンパワーも経済的にも限界があるので、やっぱりお金を持っている企業とコラボしていかなきゃいけないなというのが分かってきたんです。

今期から他社と組んでスポーツ、健康云々のテーマで一緒にやっていく計画です。

福島 それは、すでに進んでいるお話ですか。

服部 そうです。もう決まっています。
私が今、こういう事業をやっているということをプレゼンし、「おたくの会社のカテゴリーに、こういう新しいものを加えませんか」と提案したんです。
で、一緒にやりましょうということになりました。

福島 アイデアは 服部さんが考えるんですね。

服部 アイデアは私が出します。
自分がもっとやりたい夢を実現するためには、もっとパワーのあるところ、お金のある会社さんとうまくコラボして、吸い込まれるのでなくて、企画ランビー、発売元は先方みたいな形が理想です。
自分の考えたものが世の中に出れば、私自身は納得できるので、発売元はどこでもいいんですよ。

福島 ベンチャーが大手と組む場合によく聞くことは、先ほどおっしゃったように、一歩間違うとのみ込まれてしまうリスクがあるということです。

服部 のみ込まれたって、それはその時ですよ。
パッと捨てられたらそれはイヤですけれど。
のみ込まれたら、のみ込まれたで、そこでまたゆっくり考えればいいかなと。

福島 それほど危惧されていないんですね。

服部 サラリーマン生活が長かったので、流されるのは得意(笑)。
長いものには巻かれろ、ですからね。

アイデア出しの秘訣

福島 うかがっていると、すごく活き活きと楽しそうにお話しされますね。
本当に独立してよかったという手応えを、感じていらっしゃるのだと思うのですけど。

服部 無駄にはなっていないでしょうね。
やってみないと分からないことを、今やっているということでしょうかね。
自分がどこまでできるのかを、自分自身で挑戦しているみたいに思います。

莫大なお金をかけてやっているわけでもなく、借金してやっているわけでもないので、自分の頭が、どこまでクリエイティブになれるかというところですよね。
市場マーケティングでどういうものを作り、どういうふうに買ってもらうか。
この歳で飛び込みにもいっぱい行ってますからね、小売店に。

福島 クリエイティビティを刺激させるというか、発想を豊かにするために、日頃から努力されていることはあるんですか。

服部 いろんな商品を見るとか、いろんな売り場へ行くとか、いろんな雑誌を見たりとか。
結局、自分がそこで経験するというか、体験することが大事だと思っています。今ヨガに凝っています。

今朝もヨガをやってきたんですけど、次の「はうつー手ぬぐい」は、ヨガをテーマにしようかと思っています。
最近はヨガブームじゃないですか。
ヨガってやってみたら、セルフマッサージなんですね。
自分自身の力で伸びなかったところをどんどん伸ばしていったり。
これとランニングとをうまくミックスさせて、走った後に「こういうポーズがいいよ」とインストラクションしたり、何か役立つグッズを考えたりしています。

福島 ご自身の実体験の中から、いろんなアイデアが浮かんでくるんですね。

服部 やっぱり、その渦中に入らないと分かりませんよね。

ランニングはずっとやっているから渦中にいます。
でも、ヨガは全然知らなかったので、ヨガの渦中に入って、いろいろと考えています。

ランニングでは必ずウォーミングアップとクールダウンが必要ですけど、それのやり方としてヨガがあるんじゃないかなと思っています。
「ヨガ&ラン」みたいな。逆にヨガのスクールと組んで、そこの生徒さんを走らせようとか。

あるスクールの社長さんからお話をいただいていまして、「うちと組もうよ」と。「ああ、ぜひ」みたいな。

福島 そこから、少しずつつながりができて、新しいビジネスに広がっていくわけですね。

服部 そうです。
行き着くところは「精神的な健康は肉体的な健康につながる」ということだと思います。

お茶をやっている人とも「今度組もう」という話になっていまして、走った後に○○茶を飲むと疲れが早くとれる、というようなセミナーをやろうと。
ランニング+ヨガ、ランニング+何か、という世界ですね。
ランビーと名付けたのも、ランビースポーツ、ランビートラベル、ランビーカフェなどと、ランにプラスαを生むためなんです。

08-01

東京五輪に絡みたい

福島 何歳になっても仕事をやりたいとか、社会と接点を持ちたいという方は今、非常に多いと思います。
同時に、でも「自信がない」とか「どうしていいか分からない」という方も多いでしょう。

まして起業となると、ちょっとハードルが高いという方が多いと思うのですけれども、ご自身の経験からどんな視点、考え方が大事だと思われますか。

09-01

服部 自分は何がやりたい、何が得意というのを明確に分かっていないと駄目だと思います。

「何かやりたい」といっても、「何が得意なのか」がはっきりしていないと、単にお金もらうためだけになってしまう。
「それって起業じゃないじゃん」という感じがします。

やはり起業する以上は、自分で1本の柱がきちんと見えていないとだめでしょう。
そこが決まっていないのに、とにかく起業して何かやろうといっても、長くは続けられないように思います。

儲かるか/儲からないかは、その次の問題。
儲かる・儲からないを考えてしまうと、やめたほうがいいということになっちゃいますよね。

そうではなく、自分の力でやれるか・やれないかということだけですね、他力本願でなくて。
いずれは他人の力を借りる必要が出てくるでしょう。でも、最初は自分で脚本を書けないと。

脚本を書いてから演じる人を探せばいい。まずはとりあえず、自分で脚本が書けないと、起業は難しいと思います。

福島 気持ちの中でだんだんと芽生えていくというか、こういうことをやりたいという思いが募っていくような感じですかね。

服部 そうですね。
まあ私の場合、もともと起業しようと思っていたわけではなく、急に「どうしよう?」というところから始まっているので、大層なことはいえないんですけど。

ただ、その時に1番分かりやすかったのが趣味としてやってきたランニングです。
しかも、2020年のオリンピックが決まっていたので、それがフックになりました。

福島 最後に今後の目標をお聞かせください。

服部 選手にはなれないけれど、東京オリンピックは絡みたいですね。
後になって「2020年の東京オリンピックに使われたものはあれだよ」みたいな。
「あそこに置いてあったのはランビーのだよ」とか、

福島 東京マラソンのメダルハンガーのように。

服部 そういう商品をオリンピック絡みで作りたいんです。
自分が死んだ後でも「この商品はランビーという会社が出したものだ」といってもらえ、ずっと残っていくみたいな。

「ランナーは必ずあれを持っているよね」とか「必ずみんな使うよね」という。
ランナーだけではなく、「最近はテニスプレーヤーも使ってるよね」といわれるような商品ができれば1番嬉しいですね。

モノに固執しているので、モノとしてちゃんと認知されて残るものを作り出したいと思っています。(敬称略)

服部 真(ふくべ・まこと)氏
- ジョギングインストラクター1級(一般社団法人日本ライフタイムスポーツ協会認定)
- ランナーズマイスター認定資格者(一般財団法人アールビーズスポーツ財団)
- 普通救命技能 認定者(東京消防庁)
- 日本少林寺拳法有段者
- スポーツ歴:走歴約20年以上、テニス歴約40年以上(軟式、硬式)、スポーツクラブ28年
- 参加レースは約150レース以上、フルマラソンは東京マラソン、ホノルルなど36レース完走
- 皇居ラン歴約20数年以上、隅田川テラス(10数年)
福島敦子(ふくしま・あつこ)
ジャーナリスト / 津田塾大学英文科卒。中部日本放送を経て1988年独立。NHK、TBSで報道番組を担当。テレビ東京の経済番組や週刊誌「サンデー毎日」でのトップ対談をはじめ、日本経済新聞、経済誌など、これまでに600人を超える経営者を取材。現在、BSジャパンの経済番組「マゼランの遺伝子」のキャスターを担当。経済・経営の他、環境、コミュニケーション、地域再生、農業・食などをテーマにした講演やフォーラムでも活躍。上場企業の社外取締役や経営アドバイザーも務める。島根大学経営協議会委員。1997年にはワインアドバイザーの資格を取得。主な著書に「愛が企業を繁栄させる」(リックテレコム)をはじめ、「それでもあきらめない経営」「ききわけの悪い経営者が成功する」「就職・無職・転職」「これが美味しい世界のワイン」などがある。
URL: http://www.atsuko-fukushima.com/