CES2016現地レポートIoT機器の普及を側面支援
PanaとKDDIの革新的技術

概要

CES 2016

  • 会期:2016年1月6〜9日
  • 会場:米国ネバダ州
  • 「ラスベガス・コンベンション・センター」他
  • 入場者数:17万人以上
  • 出展社数:3600社以上

※イベント名は2016年から「CES」の表記に統一

いまだ発展途上のIoT機器

2016年1月に米国ラスベガスで開催された「CES 2016」は、家電IT業界の最新テクノロジー情報をいち早く発信する場として重要な見本市といえる。

今年のキーワードは「IoT」「ロボティクス」「U-HD(4K&8K)」「ドローン」など。
中でも注目すべきは「IoT」だろう。
CES 2016で発表されたIT機器や家電の大半が、インターネット接続(間接的な接続も含めて)を前提とした製品作りを行っていたからだ。

その意味でIoTとは、特定の製品ジャンルを表すのではなく、商品開発の新たな「方向性」や「指標」と解釈することが、より自然だろう。

ただしCES2016を見た限りでは、インターネットに接続することで得られる「ソリューション」や「ベネフィット」について、画期的と感じるものはなかった。
その多くは「情報の収集」や「コミュニケーション」、「クラウドへのアップロード」や「遠隔制御」など、すでにスマホで実現しているものが大半であった。

ここで決定的なソリューションが生み出されれば、IoTは大きな潮流となるはずだが、それにはまだ時間が必要なのだろう。
もっともIoTの普及拡大を下支えすることになりそうな、画期的な技術の公開はあった。個人的にはこれがCES2016の大きな収穫だったと感じる。
「Panasonic/ORA」と「KDDI+OSSIA/Cota」の2つである。
Panasonic ORAはIoT端末を統合制御する「総合無線ルーター兼ソフトウェアプラットホーム」であり、KDDIのCotaはIoT端末のワイヤレス給電システムである。

家庭内の総合ルーター「ORA」

パナソニックによれば平均的な米国の家庭には現状、インターネット接続可能な端末や機器が100台以上あるとのこと。

しかし、そのすべてがインターネット接続されているとは考えにくい。
また、100台ものIoT端末をすべて、スムーズに同時接続して活用できる大型無線ルーターを持つ一般家庭は非常に少数だろう。
IoTの普及拡大には、この課題を早急にクリアすることが不可避である。

Panasonic ORAは、これをクリアする可能性が高い技術として注目できる。
同技術はパナソニックの北米子会社「パナソニックコンシューマーエレクトロニクス社」が開発しているもの。
『総合型無線ルーター』としてその特性を見た場合、次の3点があげられる。

  • 多数の端末の同時接続が可能(同社資料では「家庭内にある100以上のIoT端末すべての統合が可能」としている)。
  • 他社製品でも、パナソニック製品と同様の簡単接続が可能。
  • Wi-Fiやブルートゥースをはじめ、DECT ULE(※1)やZ-Wave(※2)、ZigBee(※3)といった各種の通信規格に対応

パナソニックでは「ユーザーにとって大切なことは『インターネットに接続して、どんな楽しみや利便性が得られるのか』ということ。
そのプロセスである通信規格や接続方法などに興味はなく、つながればそれでいいはず。
Panasonic ORAは、これを実現する技術」としている。

では、インターネット接続を簡単に行った上で、パナソニックはどんなソリューションを提供しようとしているのか。
CES 2016では、その一例として「空調や照明の制御」「室内外のセキュリティ監視」「消費電力管理」などを実演した。

ここで重要な点は、ソリューションをパナソニック1社で開発するのではなく、提携企業とのコラボレーションで開発するとしていること。
パナソニックは同技術を、ユーザーに直接供給するBtoCではなく、提携企業の顧客へ供給するBtoBtoCとしている。
そしてソリューションは、提携企業が自社顧客に提供したいものを共同で企画・開発するとしている。

その第一弾として米国のエネルギー会社「エクセルエナジー社」との提携を発表。
両社の協業でソリューションを開発し、エクセルエナジー社が顧客にORAを供給する計画であり、早ければ年内にも実現する見通しとしている。

Panasonic ORA

ワイヤレス給電「Cota」

IoT機器の普及拡大を促す上では、バッテリー持続時間の長時間化も重要だ。
KDDIが米国ベンチャー企業OSSIA社と共同開発し、CES 2016で参考発表したワイヤレス給電システム「Cota」は、この課題を根本から払拭する可能性を秘めた技術として注目できる。

Cotaは給電機器を通じて離れた場所からIoT端末にワイヤレス給電する技術。
Wi-Fiと同じ2.4GHz帯の周波数を使用しており、チャージャー(送電)とレシーバー(受電)で構成。送信圏内(約10m)にある複数端末への同時給電が可能だ。

ワイヤレス給電技術については、すでに「電磁誘導方式」や「磁気共鳴方式」などの開発が進んでいるが、それらとの比較でCotaが優れているのは次の3点である。

  • 給電可能な距離が長いこと。Cotaは最大で約10m離れていても、最大1wまでの給電が可能(他方式は数メートルから数センチ)。
  • 複数のデバイスへの同時給電が可能なこと。
  • 給電機器とデバイスの間に障害物があったり、デバイスが移動している状態でも給電が可能なこと。

CES 2016では、スマートフォンと単3型リチウムイオン電池へのワイヤレス給電デモを行い、障害物実験や移動する端末への給電などを実証した。
これを見た限りではスムーズに給電されており、早期の実用化を期待させるものだった。

KDDIによれば「受電側のレシーバーは非常にローコスト。チップさえ組み込めば、どんなデバイスにも対応可能」とのこと。

実用化に向けた課題は「端末メーカーのチップ搭載意欲が未知数なこと」や「日本ではワイヤレス給電に関する法制度が手つかずなこと」など。
これらのクリアは、KDDIが今後、どれだけ大きな『ワイヤレス給電ムーブメント』を巻き起こせるかにかかっているだろう。

最大の懸案である人体への影響について、KDDIでは「制度化が進む米国FCC(連邦通信委員会)の規定をクリアしており、まったく問題ない」としている。
米国では2016年末に実用化する計画だ。実現すれば大きな話題となるはずである。

※1)DECT ULE:DECTはデジタルコードレス電話で主流の1.9GHz帯を使った通信規格。
DECT ULEはホームネットワーク向けに省電力性を高めた規格で、単三電池2本で最大10年間の稼働が可能。

※2)Z-Wave:低電力・長時間使用を求めるデバイス向けの低電力RF通信技術。照明コントローラーや各種センサーなどホームネットワーク向けに設計

※3)ZigBee:家電向けの短距離無線通信技術。省電力&低コストだがブルートゥースより低速で伝送距離が短い。

KDDI Cota