本田雅一のスペシャルレポートパッケージが先行するUHDコンテンツ
「HDR」が4Kテレビの魅力を倍加!!

ライター:本田雅一(フリージャーナリスト)

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BS4K放送は本年6月スタート

一昨年から売り上げが伸び続けている4Kテレビ。
当初は『4K解像度の液晶パネルを搭載するテレビ』だったが、CS衛星による4K商用放送をスカパー!が開始したこともあり、4K放送対応チューナーを内蔵するテレビが増加してきた。
スカパー!は4Kテレビ番組のさらなる充実を予告しており、パネル解像度だけでなく、実際に4Kの映像品位を持つコンテンツが増えていくことが期待されている。

しかし今年はさらに、二つの動きがある。

まず、次世代放送推進フォーラム(NexTV-F)は今年6月を目処に、BS衛星を使った4K/8Kの実験放送を開始する。
この放送は2018年には実用放送へと突入し、2020年の東京オリンピックを迎えるというシナリオだ。

もう一つは昨年発表されたUHD BD(Blu-ray Disc)のコンテンツが、いよいよパッケージ販売されるという動きである。
北米では2016年3月1日に15〜20タイトル程度が用意され、その後も毎月、数タイトルずつが追加されていくという。
それぞれの動向について、お伝えすることにしよう。

まずBS衛星を用いた4K放送だが、空きチャンネルとなっている17チャンネルを使い、NHKとNexTV-Fが同じチャンネルを共有する形で、4K放送と8K放送を切り替えながら実験放送する(8K放送時は2チャンネル分の4K放送を束ねて8K放送にする)。

内容に関しては商用放送ではないため、CS衛星における試験放送とよく似たものになるだろう。
ただし、過度に期待してはならない。
当面の間、BSによる4K放送チューナー内蔵テレビの発売が見込めないからだ。

CS衛星による放送は8K放送を予定しておらず、4Kのみの放送となるため技術仕様は完全に標準が決まっている。
しかし、BS衛星では8K混在放送が行われ、この最終仕様が決まっていない。このため実験放送で使うチューナーを、そのまま実用放送でも使えるのかどうかが、現時点では分からないのだ。

6月にBSで4K放送が始まるなら、年末あるいは来年早々にもチューナー内蔵テレビが発売されるかも…と思っての買い控えをしそうなタイミングだが、実際には今年はもちろん、来年末の商戦期にもBS対応4Kチューナー内蔵テレビは登場しない。
『登場しない製品を待つ』といった状況にならないよう、正しい知識を広げていく必要がある。

一方で、インターネットの映像配信事業が広がりつつあり、放送の技術仕様の固定化などに左右されることなく、引き続き事業者が増えていくと思われる。
UHD BDによるパッケージ販売とともに、次世代放送が本格化する頃には、テレビの楽しみ方そのものが変化している可能性もある。
そのため、あまりBS対応の4Kチューナーにこだわる必要はないだろう。

UHD Premiumソフトの動向

さて、そのUHD BDの最新動向についても触れておくことにしよう。
UHD BDタイトルの発売に積極的な映画スタジオは20世紀フォックス、ソニーピクチャー、ワーナーの3社。
ここにライオンズゲートなどの一部独立系映画会社が加わる。

映画会社や電機メーカーなどで構成するUHDアライアンスという団体が、一定基準をクリアする高品位映像ソフトに対し「UHD Premiumロゴ」の発行を発表しているが、この3社だけで年内100本を越えるUHD Premiumロゴを付けたパッケージソフトが北米市場に向けて発売される。

このロゴに対応したコンテンツは、すべてHDR(ハイダイナミックレンジ)対応となる。
HDRは画質を画期的なまでに向上させる技術で、フルHDと4Kの差(解像度の差)よりも大きな差として、誰もが認識できる差を生み出す。

HDRコンテンツを最適な状態で観るには、HDR表示に対応するテレビが必要。
前述のBS対応4Kチューナーを内蔵するかどうかよりも、HDRへの対応度が高いことの方が、テレビ選びをする上での重要度が、はるかに高い。

北米では米ドルビーが支援する形でHDR対応ソフトを増やしており、すでに米映像配信会社のVudoでは50タイトルほどのHDR対応映画が用意されている。

月額固定のNETFLIXへの配信は、彼ら自身のオリジナル作品+αに留まるが、Amazonも正式発表はしていないもののAmazonインスタントビデオでHDR対応を行う見込みだ。こちらには映画会社も新作の配信を行うだろう。
供給元の映画会社がHDR対応コンテンツを提供し始めたのだから、この流れは遠からず、日本にもやってくると考えていい。

当面は様子見の映画会社も

上記のハリウッド映画スタジオ3社は、それぞれが35タイトル前後を年内に発売する。
この中には旧作もあるが、多くは新作。すなわち、今年発売する主要な映画タイトルは、すべてUHD BDでも発売するということ。
かなり本気度の高い取り組みであることが想像できるだろう。

旧作もここ数年のデジタルシネマカメラを用いた作品はもちろん、4Kリマスターされたフィルム撮影作品もHDRで蘇らせる計画だ。
具体的なタイトルに関して詳細が発表されているわけではない。

だが、CES会場近くのスイートルームではフランシス・F・コッポラの一連の作品をUHD/HDRで観ることができた。
筆者が目撃したのは「ゴッドファーザーII」と「地獄の黙示録」のみだが、同監督の主要作品は基本的にすべてフィルムネガからHDRスキャンを行い、グレーディングやマスタリングをやり直すとのこと。

その効果は素晴らしいもので、地獄の黙示録のジャングルの場面において、闇の中で何かが微かにうごめいている…といったシーンで、しっかりと情景が見通せ、よい意味で別作品のように仕上がっている。
監督自身も目を通しているというから、期待したいところだ。

一方、気になるのはディズニー、ユニバーサル、パラマウントの状況だろう。

ユニバーサルはUHD BDソフトを売っていきたいと考えているようだが、現時点(つまり市場が立ち上がる前の状況)では様子を見ている状況のようだ。取材に対しても『近い将来に』と見送りを知らせる連絡がきた。

パラマウントは数本を出す可能性があるようだが、同社はグローバルでの家庭向けパッケージソフト販売をユニバーサルに委託する方針を示しており、日本での発売はその事業統合の方向に左右されるだろう。

一方、ディズニーの沈黙が少しばかり気がかりと思う読者がいるかもしれない。

実はディズニーはHDRに対して、もっとも積極的な映画会社の一つだ。
ただし『4K』に関しては、内部でも意見が分かれているという。
「顧客にはその時点で最高レベルの価値を提供すべきだ」との意見がある一方で、ディズニーの主力コンテンツであるフルCG作品を4Kで制作するには、従来の4倍の演算コストが必要になるためだ。

このため、ディズニー作品は4K撮影した一部作品は別にして「フルHD+HDR」という作品になる可能性がある。

これらの情報はあくまで『米国市場向け』であることも考慮しなければならないが、ワーナーは「各国で発売されるタイトルも同様」と話しており、日本発売タイトルは米国と同じようにUHD BDも加えていくという。
だが、ソニーピクチャーや20世紀フォックスは明言を避けており、一部作品だけの発売になるかもしれない。

なお、UHD BDに関しては、国内で再生できるブルーレイ・レコーダーが、現状ではパナソニックのDMR-UBZ1しか存在しないという問題もある。
こればかりは解決までに時間が必要だ。


2016年はHDRに対応したUHD BDソフトが拡充する方向にある


UHD BDに対応したパナソニック・ディーガ「DMR-UBZ1」