必読!これがホントの“節税”講座 連載10これだけは知っておきたい!税務調査への対応ポイント

寄稿:梅川 貢一郎(有限会社トライアングル 代表取締役・税理士・公認会計士)

http://www.umegawa.com/

税理士の立ち位置

今回は税務調査について、これだけは知っておきたいポイントを書きます。
まずは、税務調査に対する「税理士」の立ち位置です。

「うちの税理士は税務調査でまったく交渉してくれない。税務署の言いなりになっている」

実は社長様からよく聞く苦情です。
しかし、私も税理士登録している者として一言いいわけさせていただきます。
税理士の免許は、国税庁が発行しています。国税庁はいわずと知れた税務署の元締め。
「税理士は税務署の手先か」といわれますが、ある意味その通りなのです。

税理士は、顧問先の会社が脱税することを極端に嫌がります。
職業上の倫理観の問題ということもありますが、実をいえば税理士自らの保身の意味もあります。悪質な脱税が見つかると、関与する税理士は国税庁から徹底的に取り調べられます。

もし脱税に加担、あるいは知っていたのに放置していたのであれば、税理士も懲戒処分です。
脱税金額が大きく「きわめて悪質」ということになれば、税理士免許を取り上げられます。
実際、年間何人もの税理士が「免停」処分になっています。

税理士は報酬を顧問先会社からもらっているものの、税務署の意向に逆らうことができにくいのです。
やましいところがなければ、会社のために徹底的に戦うべきですが、そのようなインセンティブがありません。
会社が負担する税金が増えようが減ろうが、税理士の報酬は月額で決められているからです。

これでは、わざわざリスクを負ってまで、自らの殺生与奪権を持つ税務署と戦う気になれません。
一番好ましいのは社長自身が税務の知識を持って、税務調査官と対等に交渉すること。
しかし、忙しい社長にこれは現実的ではない。

そこで、本当に税理士に活躍してほしいと思ったら、その旨を伝え、その報酬を支払うことをお勧めします。
現実問題として、何もいわなければ税理士は税務申告書を作成するのが仕事。
税務調査で税務署と戦うことは仕事とは思っていません。

身内びいきといわないでください。
これが日本の税務体制なのです。
スペシャルなサービスを期待するならば、それなりの対価が必要です。

税務調査手続きの改正

次に修正申告を迫られた場合の対処です。
税務署は税務調査の結果、納税者に不利な処分(税金の増額など)をする時は、その理由を書面で説明しなければなりません(理由の附記)。
地味な話題なのであまりメディアでは報道されませんでしたが、実は昨年、税務調査に関する手続きの法律が大きく変わりました。

理由の附記はその代表的な一つです。
税務調査は国家権力の行使です。
拒否すれば罰せられますから、警察の捜査にも似たところがあります。
警察の捜査では、尋問という名の恐喝が行われ、えん罪が問題になっていますが、税務調査の現場でも似たようなことが行われています。

税務調査では「明らかな間違い」はまず問題にはなりません。
例えば金額を間違って記帳していた、売上伝票が漏れていた、源泉徴収を忘れていた、などです。
間違いが明らかなので「ごめんなさい」と修正申告するしかありません。

問題になるのは、解釈や判断が入るようなグレーな分野。
例えば税法では、過大な役員報酬は会社の経費にならないとしています。
会社に勝手に役員報酬を決めさせると、高い法人税を免れるために、社長が自分や奥様の役員報酬を高くして税額を調整してしまいます。
それに制限を加え、税金の減額を防ぐためです。

しかし、役員報酬が高すぎるかどうかには具体的な基準がありません。
税務署は「同規模の同業他社平均に比べて」などと主張しますが、それは法律ではないし、会社には個別事情がありますから当然争いになります。

そのような時、たちの悪い税務調査官は、修正申告しなければ「重加算税を課すぞ」とか「青色申告を取り消すぞ」などと恐喝まがいのことをいってくることがあります。
もちろんそのような脅しに屈する必要は全くありません。

役員報酬が高すぎるというのであれば、それを立証する責任は税務署側にあります。
このような場合、「指摘事項には納得できないので修正申告には応じられません。
更正してください」とだけいえばよいのです。

「更正」とは、税務署が税務署長の権限で行う「税金増額」の処分です。
これは国家権力の行使にあたり、今回の税制改正では「処分した理由」を書面で記載しなければならなくなりました。

これは税務署にとってかなりの負担。
「平均的な会社の役員報酬に比べて高い」などは「理由」ではありません。根拠条文の記載は当然ですが、さらにその条文を適用することに対して誰もが納得する具体的、合理的な理由を書かなければなりません。

警察の尋問もビデオで録画して証拠を示す時代です。今まであいまいだった税務調査も「近代的」になってきました。調査の結果に納得がいかなければ「つっぱる」ことも十分アリなのです。

重加算税の対象とは!?

次に、税務調査で間違いを指摘され場合の、気を付けるべきポイントについて述べます。

通常、税務調査が行われて否認を受けると、修正申告を行うことになります。
その場合、本来支払うべき税額の不足分である本税にプラスして、過少申告加算税と呼ばれるペナルティ10%と延滞税(利息分)が上乗せされます。これが重加算税となると、35%もの上乗せになります。

税務調査を経験した経営者の中には、調査官から「重加算税の対象」といわれた方もいるでしょう。
国税庁の統計では、修正申告の20%が重加算税の対象になっています。

何をすると重加算税の対象になるのでしょうか。その要件は法律には「仮装または隠ぺい」とあります。
仮装とは「架空の領収書の偽造」で、隠ぺいとは「売上や棚卸資産をなどごまかす」こと。悪質なので重いペナルティを課そうという主旨です。

ところが、明らかに単なる間違いや思い違いで修正申告に至った場合でも、税務署の調査官は「重加算税の対象」といいます。
誰にでも間違いはあります。例えばカードで経費を支払った場合。支払った時点で領収書をもらい、カードの決済の時に支払明細が送られてきます。
うっかりすると、領収書で経費の計上を行い、翌月、カードの支払明細が送られてきたときに、また経費の計上を行ってしまいます。

売上も、たまたま決算月末日の売上伝票が翌月1日の売上伝票に紛れてしまうことがあります。
これが意図的ならば「仮装、隠ぺい」に当たり、「脱税」として重加算税の対象となるのも致し方ありません。
しかし、繰り返しますが「うっかり」間違えたのであれば脱税とはいえません。

税務署調査官は最初から納税者を悪者扱いしますから、「うっかり」でも「意図的」として扱います。
重加算税を払いたくなければ、必ず「仮装、隠ぺい」ではない、単純なミスだと主張する必要があります。

ちなみに税制改正により、今年から重加算税を課す場合にも税務署に「理由の附記」が義務づけられました。
納税者が「うっかり間違えました」と主張しているのに重加算税を課すには、それなりの証拠を示す必要ができたということです。
税務署調査官の言いなりになってはいけません。調査官は巧みに専門用語を使います。
「これは売上除外ですね」。
このセリフは隠ぺいを意味し、「はい」と肯定したら脱税とみなされます。「手違いでうっかり売上伝票が翌月分に紛れてしまいました」と否定しなければなりません。
微妙ですが気を付けたいところです。

税務調査で狙われる会社

では、どんな会社が税務調査の対象として狙われるのでしょうか。
全法人数に対する税務調査の実施数割合は、年間約4%と発表されています。
100社のうち4社。ランダムに調査対象会社を選べば、25年に一度という頻度でしかありません。

しかし実際はそうではありません。税務署は最小の人員で最大の徴税をすることを使命としています。

「取れるところから取る」。何年も赤字続き、いつ廃業しても不思議ではない会社には、調査はまずありません。
優先順位としては、黒字会社がまず狙われます。

たとえ赤字でも、ある程度の企業規模があると、調査は入りやすくなります。
法人税では追徴できなくとも、取引金額が大きく、また従業員も多いため、消費税や源泉所得税、印紙税などいろいろな税目で税金を取れる機会が増えるからです。
また、現金商売は狙われます。「現金その場限り」。売り上げた現金を隠せば、簡単に脱税できてしまうので常に注視されます。

さらに国税庁には膨大なデータベースが存在します。
申告をした法人の決算書は、すべてデータベースに収まっています。
ある年、急に売上が増加したり、特定の費用(接待交際費や役員報酬など)が増加すると、すかさず警告がでます。

あるいは、税務署は各業種別の平均的な人件費率や利益率などのデータを持っています。
申告した決算書の原価率が標準より高い(利益率が低い)と、何かおかしいぞ、ということで警告が出ます。
このようにデータベースと照らして、決算書の内容に不審点のある会社がピックアップされ、そこから実際に調査する会社が選ばれます。
また、反面調査から税務調査に移行するケースもよくあります。
例えば私がある日、銀座のクラブで一晩に数百万円使ったとします。
私は領収書をもらい、接待交際費として計上します。

これを見つけた税務署は、そのクラブの帳簿を閲覧し、本当にその日に私が数百万円支払ったかどうか、これを売上として計上しているかどうかを調査します。
もし売上がなければ、私が嘘をついているか、その店が売り上げをごまかしているか。
大きな金額の領収書は、しばしば税務調査への足掛かりになるようです。

都市伝説の一つに「売上が3千万円を超さないと税務調査はない」というのがあるそうです。
しかし、まったくの誤り。
調査の基準は、必ずしも「売上高」ではありません。売上数百万円の個人でも「怪しければ」税務調査は十分きます。

調査対象のポイント

では、調査ではどのようなポイントが見られるのでしょうか。
税務調査で調査の対象となるポイントは、業種によって異なります。

現金商売のB to Cでは、売上のごまかしが問題になりますが、B to Bのビジネスでは売上のほとんどが銀行振り込みか手形で決済されますので、ごまかしようがないため、あまり問題になりません。

唯一、そして必ずチェックされるのが、期末の取引。3月決算で請求書を20日締めで出すような会社。
売上を請求書ベースで計上するのが普通ですから、3月21日から31日までの売上相当分は、売上に計上されていません。
翌月には売上に計上されるわけですから、売上をごまかしているわけではないのに、税務署は必ず指摘します。

もう一つは、意図的に31日の取引を翌月に延ばしている場合。
実際は、31日には納品が完了し検収が終わっているにもかかわらず、取引先に頼んで検収書の日付を1日にしてもらうケース。
「よくやるよ」というぐらい、税務署の職員は1日日付の取引にこだわります。
わざわざ取引先まで出向いて、本当に1日付の検収なのかどうかを確かめます。

また、IT関係の会社で問題にされるのが、期末の仕掛品です。
社長の思いとしては、支払った外注費、給与、経費はすべて会計上も費用になるというのが当然です。

しかし、税務署的には期末でまだ販売していない、制作中の製品(ソフト、ホームページなど)にかかった外注費や給与、経費などは税務上の費用にはならないのです。
販売が実現して初めて費用として認めるというスタンスです。

いずれの場合でも、売上や経費をごまかそうというものではありません。
いわゆる「期ずれ」といいますが、利益が今期に計上されるか来期に計上されるかの問題でしかありません。
しかし、これが税務署的には重要なのです。

売上のごまかしや経費の水増しなどの「脱税行為」をしていない限り、税務調査は決して怖い存在ではありません。
しかし不安のある社長は税務調査の通知がきたら、税務調査に強い税理士に相談した方がいいと思います。
時間の節約になりますし、精神衛生上もいいですから。

覚えておきたい「税務調査の対応ポイント」(keangs)