必読!これがホントの“節税”講座 連載11増税(?)を前に考えておきたい小規模事業者の「消費税」対策

寄稿:梅川 貢一郎(有限会社トライアングル 代表取締役・税理士・公認会計士)

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今回は、消費税のお話です。来年に予定される消費税の増税が延期されるかどうか、本稿執筆時点では確定していませんが、世間の注目が集まっています。

確かに少子高齢化社会を迎え、年金や医療費、介護の支払い財源のため増税が待ったなしという理屈は理解できます。また、国がGDPの2倍という巨額の債務を抱えており、このままでは財政がパンクするという話もうなずけます。

おそらくいずれは消費税の増税もやむを得ないのでしょう。

しかし、増税の時期は本当に来年の4月からでいいのでしょうか。消費税の10%への増税は一度見送られたという経緯があります。来年の増税はすでに決定事項とはいえ、「リーマンショックや東日本大震災のような不景気ではないこと」という条件が設定されました。

現在の景気はどうでしょうか。景気がいいのは一部の上場会社など大企業のみ。街中の商店や中小零細企業は相変わらず不景気が続いている気がします。

確かに中国人などの爆買いや、2020年の東京オリンピック開催を前にして、景気の回復期待が高まっています。

しかし今の日本の消費者は相当賢いですし、楽観的でもありません。気分で財布のひもを緩めることなどありません。ユニクロが価格を10%程度値上げしただけで、売り上げが15%以上も減少してしまいました。「熊本大地震」も景気悪化の重大要因です。やはり来年の消費税増税は見直すべきでしょう。

消費税率がアップしたら?

もし消費税をアップしたら日本はどうなるのでしょうか。消費税が2014年に5%から8%にアップされて2年が経ちました。その間、消費の動向は、ほぼ予想通りでした。住宅や家電などの大型消費財は、駆け込み需要で増税直前の2014年3月まで各社は史上最高の売り上げを記録しました。

しかし、当然その反動が4月から現れ4~6月期の消費は大きくダウン。それ以降今日に至るまで低空飛行を続けています。今回も同様な現象が予想されます。

政府が、来年の4月の増税は「決定」と発表したら、やはり駆け込み需要が発生し、それが4月の増税とともに景気低迷に陥り、そのまま復活することはないのでは…。

では、消費税増税に向けてわが社の対策はどうするべきか。日本経済を論ずる前に、まずうちの会社はどうするのかという問題です。予想される売り上げの減少にどう対処するか。日本全体の消費動向と「個別企業」の売り上げは別問題です。

これも前回の8%への増税時にみられた現象ですが、消費の反動をまともに受けて、通年で売り上げを減らした企業が多くありました。一方では大した反動がなく、逆に売り上げや利益を伸ばした企業もあるのです。これは個別の企業の「努力・工夫」以外の何物でもありません。

あるビール会社は、チョイ高のプレミアムビールの販売に力を入れて売り上げをキープしたようです。スタバも付加価値の高いフラペチーノ系の売り上げを伸ばして利益を確保ました。

消費税が増税されれば、増税分売り上げが減ってもしようがない、などとグチを言っていては会社は存続できません。今からでも遅くはありません。まずは正攻法で付加価値アップを考えましょう。

消費税アップ分の価格転嫁

それでも自助努力には限界があります。そこで増税対策の第二は、「消費税の転嫁」。そもそも消費税が上がって2年が経つというのに、今だに消費税5%当時のままの価格表、メニューを出しているお店が少なくありません(驚くべきことに!)。

消費税アップ分を消費者に転嫁すると売り上げが減ってしまうというのは幻想です。消費税のアップ分はしっかりと値上げしてください。

この点、大企業を見習わなければなりません。フランチャイズ系の飲食店では、当然のように4月1日からメニューが変わります。できれば便乗値上げも(禁止はされているが)やりたいところです。そのためには、マイナーチェンジ、付加価値アップ、メニューの変更、新製品の導入などを同時に行うことも必要でしょう。中身は変えなくとも包装だけ新しいデザインにして値上げを断行してもいいのでは。

間違っても価格を下げて、消費者を呼び込もうなどという戦術はやめましょう。「消費税増税分は値下げします!」などという広告を見かけると悲しくなります。

くどいようですが、消費者は賢くなっています。安ければ売れるという時代はとっくに過去の世界。自信を持って、自社の自慢のサービス、商品を適正価格で販売しましょう。

増税対策の第三は資金繰り対策です。消費税は会社が負担するものではありません。売り上げが計上されたときに消費税を預かり、預かった消費税を国等に納税するだけですから、販売した事業者には何ら負担がありません。理屈から言えば、消費税の滞納などあるはずがない。

ところが実際は、消費税の滞納企業が相当数あるのが現実です。特に増税が行われた後は、消費税の滞納者に対する督促が厳しくなります。まるでサラ金の取り立て並みに、「借金してきてでも支払え!」といわれた経営者が多くいます。

国としては、消費増税が企業の資金繰り悪化の原因となり、税金の延滞を招いていることを絶対に認めません。本来は預かっている消費税ですが、多くの会社では売上代金と一緒に資金繰りに使われているのが実情です。お金に色がついているわけではありません。消費税分のみを除けておくのは難しいのです。

当然、決算後申告を行っても消費税を納税期限に支払えないということがおこっています。

そこで、絶対にお勧めなのが、消費税納税用の銀行通帳を作っておくこと。預かった消費税分をほかの売上代金と一緒にしてはだめです。毎月売り上げの10%を納税資金として別通帳に積み立てておく。正確には、納税する消費税は、預かった消費税から自ら支払った消費税を差し引いたネットの金額ですから、売り上げの5%も積み立てる必要はありません。

しかし、利益が出ていれば法人税も払わなければなりません。仮に消費税、法人税等を納税した後に納税資金用の通帳に残高が出れば、それはそれでラッキーです。ぜひ社員と飲み食いしましょう。

消費税制度の活用法

増税対策の第四は消費税の制度の活用です。消費税の計算方法には、原則課税の方法と簡易課税の方法があります。

消費税の計算は、売り上げに対して預かった消費税から、経費の支払いなどで自ら支払った消費税の額を差し引いた(仕入税額控除といいます)残りの消費税額を納めるというのが原則です。

相当ずぼらな社長でも売上高ぐらいは把握しています。したがって預かっている消費税の金額も把握は容易です。しかし経費となると、かなり大雑把な社長も珍しくありません。ましてや、消費税に関しては課税、免税、非課税、不課税などの区分があり知識のない人が会計帳簿を正確につけるのは結構困難です。

例えば電話など通信費でも国内通話は消費税が課税されますが、国際電話は課税されません。家賃も事務所の家賃は消費税課税ですが、社宅は非課税。そこで中小零細企業(売上高5千万円以下)の「事務負担軽減」のために作られたのが消費税の簡易課税制度です。

簡易課税制度は、預かった消費税の金額から差し引く仕入税額控除の金額を、実際に支払った金額ではなく、売上高に対する税額の一定割合をかけた金額にするというものです。この一定の割合のことをみなし控除率といいます。

簡易課税制度では、すべての業種を6種類に分けます。それぞれの業種別に売り上げの何%を消費税として納めれば良いかが決まっています。例えば飲食業を除くサービス業では、売り上げの50%は消費税のかかる経費とみなされます。したがって売り上げの50%x8%(現行)が納める消費税の金額です。

ちなみに、卸売業は売り上げの90%が消費税のかかる経費とみなされます。納める消費税は売り上げの10%x8%となり、かなりお得?

小売業は、売り上げの80%が消費税のかかる経費とみなされます。納める消費税は売り上げの20%x8%。建設業、製造業は、売り上げの70%が消費税のかかる経費とみなされ、納める消費税は売り上げの30%x8%。

これら「みなし控除率」はかなり信頼性の高い統計数値なはずです。実際に簡易課税制度を選択して、得になるのか損になるのかはシミュレーションを行って比較してみなければわかりません。もし得になるようであれば、選択しない手はないということです。

免税制度の概要

消費税の節税のための制度として見逃せないのが、小規模事業者に対する免税制度です。

資本金1千万円未満の株式会社は、原則として設立からの2年間は消費税が免税となります。消費税の納税義務が発生するかどうかは、2年前の課税売上高が1千万円を超えるかどうかで判断します。新設法人は当然過去2年というものが存在しないので、免税になるという理屈です。

個人事業者が法人化する1つの目安が、この売り上げ1千万円ということになります。1千万円を超えた年とその翌年は、セーフですが2年後からは消費税の納税義務が発生します。そのタイミングで法人化すれば、また原則として2年間は消費税が免除されるわけです。

法人化してからでもこの免税制度を「利用」することができます。それは分社化です。

売り上げが1千万円を超えたら2年後からは有無を言わさず消費税の納税が発生します。しかし、もし複数の事業を行っていたら、あるいは、ジャンルの違う商品を扱っていたならば、管理運営上の理由から会社を分けることも考えていいでしょう。

当然、複数の会社を運営するには管理コストも増大します。しかしそれ以上に消費税を「節約」できる場合もあるのです。ちなみにこれは「禁じ手」ですが、私の知人は2年ごとに個人事業と会社経営を繰り返しています。永遠に消費税は納税しないつもりでしょう。税務署に目をつけられないことを祈るばかりですが。

給与から外注費にシフト

「消費税払えないよ!」。ある社長から言われました。今年で設立3期目に入り、1期目から課税売上高が1千万円を超えているため、今年から消費税の免税から課税事業者となり来年からは消費税の支払いが発生します。

確かに消費税は、預かっている消費税を国に納付する税金。企業は何ら税金を負担するものではなく「払えことはあり得ない」ことはすでに書きました。理屈はその通りです。

しかし現実には多くの会社が決算までに預かっていたはずの消費税を使ってしまい、支払いができなくなっているのです。

その解決策としては、消費税の対象とならない「給与」を消費税の対象となる外注費に変えてしまうというものです。

言うまでもありませんが、赤字会社でも消費税の納税が発生するのは、原価を含む経費の約半分が人件費であり、給与も社会保険料も消費税分を控除することができないからです。

人件費をすべて外注費に変えてしまえば、赤字会社であれば消費税は還付になる可能性もあります。この方法は、対面営業、労働集約型の業種、例えば、美容室、エステサロン、保険代理店、対面ではありませんが、建築、建設、ソフト開発などでは特に有効です。

もちろん、給与を外注費に変えるためには、まず契約を雇用から委託契約に変えなければなりません。その際には従業員の同意が必要です。従業員は、給与所得者から個人事業者になるわけですから。

給与所得者と個人事業者のどちらが良いかは一概には言えません。それぞれメリット、デメリットがあります。一方、会社も従業員の管理形態、報酬の支払い形態も変えなければなりません。業務委託契約書を結ぶのは当然ですが、毎月の支払いも時給というわけにはいきません。残業代も当然ありません。

あくまでも委託した業務の成果に対する対価の支払いです。タイムカードも出勤簿もあり得ません。逆に請求書を作成してもらわなければなりません。極端な会社では、全従業員に会社を設立させ、会社対会社の取引にしてしまいました。

それにしても事業者にとってのメリットは大です。使用者に対する支払額は同じでも、その中から消費税分を控除することができます。社会保険にも加入させる必要がありません。業種によっては、源泉所得税も預かる必要がありません。

ただしその分、税務調査では必ず厳しいチェックを受けます。契約は業務委託となっていても、勤務実態が雇用のままでは否認を受けてしまいます。完璧な対策はあり得ませんが、ある程度しっかりした対策を行っておくことが絶対に必要です。

ちなみに「税金対策のため」、雇用から業務委託に変えたと言ったとたん否認です。税法的には、税金を減らすための行為はすべて「脱税」とみなされます。たまたま別の目的で行った行為が、「税金の減少になってしまった」が日本での建前です。ご注意を!

23-01
消費税にどう対応するか!?(ayutaroupapa)