「法・制度」解説電子帳簿保存法追加改正により利便性がさらに向上
スマホなどでの記録運用も可能に!

オフィスで山積みされている国税関係書類のペーパーレス化促進を目的に、制度改正が行われていることをご存じだろうか。電子帳簿保存法に基づいたスキャナ保存制度がそれだ。

電子帳簿保存法とは。事業者がパソコンにより国税関係の帳簿書類を作成することを認める根拠法として1998年に施行された制度で、2005年には一部の税務関係書類をデジタルデータに変換して保存(スキャナ保存制度)できる改正が行われた。

これを機に、文書電子化の飛躍的な普及が期待されたが、実印に相当する電子署名添付や3万円以上の税務書類は電子化不可といった制度の厳格さから電子化は停滞した。

「国税書類の電子化を促すには要件の緩和が必須」との意見が日本文書情報マネジメント協会をはじめ、民間から提出されたことなどを受けて、2015年に電子帳簿保存法が大幅に改正され、様変わりした新しいスキャナ保存制度が今年の1月から適用されている。さらに、2016年には追加改正が行われる。

2015年スキャナ保存制度の概要

まず、2015年電子帳簿保存法の改正ポイントを確認しておきたい。なお、電子帳簿保存法と同法の2015年改正については、シャニム本誌第52号「複合機を使った電子保存が簡単・便利に」で解説しているので、関連記事として参考にしてほしい。

①金額要件の撤廃により、3万円以上の領収書や契約書などの証票類のスキャナ保存が可能
②スキャナ入力者の電子署名が不要となり、システムのID/パスワードで代用
③重要書類以外(資金やモノの移動に直結しない見積書や定型的な約款が定められた契約申込書など)について、大きさ情報が不要となり、カラー/グレースケールのいずれでも保存が可能
④関係帳簿の電子保存の承認要件が不要
⑤内部統制を担保するための社内法規整備と適正な事務処理が必要

改正概要のポイントは以上の通り。紙保存が原則の「帳簿と決算関係書類」を除く、すべての税務関係書類をスキャン保存できるようになり、負担の大きい電子署名が不要となるなど、大きく規制が緩和された。

ただし、使いやすくなった税務関係書類のスキャン保存を導入するには、新たに規定された「適正事務処理要件」として、相互けん制要件(入力や点検など手続きを行う担当者の職務分離)や定期的なチェック(定期検査要件:処理内容の確認・検査)などの体制整備が求められた。

2016年の追加改正のポイント

厳しい要件が大幅に見直された電子帳簿保存法には、さらなる利便性の向上を目的に2016年度税制改正大綱により新たに規制緩和が追加される。主な改正ポイントは下記の通りだ。

①記録(スキャン)装置の「固定型」要件を廃止
②受領者が記録(スキャン)する際の手続要件の見直し
③小規模事業者向けの手続要件緩和の特例措置

受け取った証票類を電子化するための装置について、現行制度では「固定型(原稿台と一体となったもの)」であることが要件とされており、いわば単体スキャナや複合機プリンターにより電子化を行う必要がある。この固定型要件を2016年改正で廃止。新たにスマートフォンやタブレットなどの携帯端末、デジタルカメラによる記録が可能となる(①)。

これに伴い見直されたのが、②受領者の手続き要件だ。契約書や領収書を受け取った受領者は事業所に持ち帰り、経理担当者などが原本を確認して電子化を行うのが現行の流れ。改正後、受領者は受け取った領収書などに署名した上で、スマートフォンなどの写真機能により記録して社内PCやクラウドにアップロード(タイムスタンプ付与)し、経理担当者などは画像を確認するという手続きに変更となる。なお、経理担当者などによる原本確認はいらない。

留意点は、証票類の受領後から3日以内(特に速やか要件)に電子化してタイムスタンプを付与することと、定期検査が終わるまでは原本を保存しておくことなどである。

また、現行では相互けん制や定期検査などのチェック体制のために、受領者に加えて内容確認やスキャンを行う担当者(経理担当者など)、事後に処理が適正かどうかを定期的に確認する検査担当者という最低でも3人体制が必要。

だが、従業員の少ない小規模事業者などには負担が大きい。そこで2016年の追加改正では、検査担当者が税理士などの場合には経理担当者などによる内容確認が不要となる。つまり、改正後は受領者がスマートフォンなどで記録した証票データを税理士が確認すればよく、受領者と税理士などの2人体制でもスキャン保存制度の導入が可能となるわけだ(③)。

運用可能となるのは2017年1月1日以降

2016年の追加改正は2016年9月末日の申請から適用され、3カ月後に自動的にみなし承認となり、2017年1月1日以降に受け取った領収書や契約書などの証票類から改正された新制度での運用が可能となる。

「社内文書の約半分は税務関係書類が占めており、業種によっては7割前後にもなる」(公益社団法人日本文書情報マネジメント協会)という。しかも、その保存期間は7年から10年にも及ぶ。ペーパーレス化による場所や輸送費、ファイリングに伴う人件費、管理費といった紙書類保存のコストや労力の削減、電子化ならではの優れた検索性など享受できるメリットは大きい。

一連の電子帳簿保存法改正によるスキャン保存制度の利便性向上は、「中小企業や規模の小さな事業者でもスキャナ保存を実現できるように配慮されている」(同前)だけに、これを機に導入を検討してはいかがだろうか。

制度細部については、国税庁ホームページに掲載されている「電子帳簿保存法Q&A」が詳しくお勧めだ。また、導入には必ず税理士など専門家に相談してほしい。