地方発!世界で活躍する会社もみ殻から作る燃料で、途上国の森林を守れ!

株式会社 トロムソ[広島県]

広島県尾道市因島重井町5265

代表取締役 橋本 俊隆

TEL. 0845-24-3344

URL. http://www.tromso.co.jp

もみ殻は廃棄物か、資源か?

アフリカでは今、爆発的な人口増加に伴い、凄まじい勢いで森林破壊が進行している。農地や居住地が急ピッチで拡大するのに加え、いまだに燃料として薪や炭を利用することが多く、日常的に森林が伐採されているからだ。

この深刻な環境破壊にブレーキをかけるべく、瀬戸内の小さな会社が立ち上がった。今までにないビジネスモデルの構築に挑んでいるのは、因島の機械メーカー「トロムソ」。今年72歳の橋本俊隆社長が会社の成り立ちを話す。

「因島は造船で成り立っている町。私も若い頃は造船会社に勤めていましたが、33歳の時、船の熱交換器を商品化して独立しました。10年前、その会社の代表をリタイアし、 “次の一手”を指してみようと立ち上げたのがトロムソです」

橋本の言う「次の一手」の鍵は、ユニークな発想による新エネルギー「モミガライト」。実際に商品を見せてもらうと、1960〜70年代に人気が高かった燃料「オガライト」にそっくりだ。オガライトは製材時に発生するおが屑を固めたもの。これに対しモミガライトは、ネーミング通り、もみ殻を利用して作られる。

「もみ殻は稲作によって大量に発生します。これを厄介者と見るか、資源と見るかで、価値は全然違ったものになる。今までは産業廃棄物的な扱いをされとりますが、これからは資源として利活用しようというのが、モミガライトの考え方です」

トロムソが独自に開発した機械「グラインドミル」でもみ殻をつぶし、熱し、固めることにより、モミガライトはどんどんできる。1台が1日8時間稼働すれば、1トンの製造が可能だという。

モミガライトの火力は薪と同等で、火持ちは薪よりも数倍良い。化石燃料と比べて、CO2の排出を大きく削減できるのもメリットだ。さらに、雨に当てなければ、5年、10年の保管が可能と、いいこと尽くめ。しかし、グラインドミルが商品化されるまで、構想から7年の長い歳月を必要とした。

稲作が盛んな途上国を目指せ

トロムソが社運を賭けて押し出す、モミガライト製造機グラインドミル。世に出るまで、なぜ長い助走期間があったのか?

「商品の価値というものは、社会的に求められるかどうかで変わってきます。グラインドミルを構想した当初は、何よりも効率と利便性を追求する時代だったので、もみ殻を資源として見るという方向性は受け入れられなかった。しかし、7年の間に時代が変わった。環境保全が重視され、バイオマス燃料も注目されるようになったことから、トロムソを立ち上げて商品化したんです」

橋本にとって、満を持しての新たな船出だったわけだ。以降、農業関連団体などに約70台を販売。加えて、大地震などの停電時でも使用できる備蓄燃料として、市町村などに売り込んでいる。

とはいえ、国内では市場が限られる。稲作が盛んに行われ、しかもガスや電気が未整備の発展途上国をターゲットとするのは自然な成り行きだった。

きっかけは2012年、国際協力機構(JICA)のケニア人研修員6人を受け入れたことだ。彼らの目の前でモミガライトを製造し、実際に燃やしてみると、「これはとても良い。ぜひ、うちの国に進出してくれないか」と大好評だった。

これで橋本はアフリカ進出を考えるようになった。とはいえ、何も分からずに現地に飛び、時間と金をかけて、手探りで販路を開拓するような余裕はない。そこで、政府開発援助(ODA)を活用した中小企業向けの海外展開支援に応募。アフリカでの「案件化調査」に採択される。案件化調査とは、その商品や技術が現地で役に立つのか、国の支援を受けて現地確認することだ。トロムソにとって、願ってもない話だった。

タンザニアで現地の状況を調査

案件化調査は2013年に2回、10日から2週間ほどの日程で行われた。当初はJICA研修員のつながりで、ケニアで行う予定だったが、現地の治安が悪化したことから、急きょタンザニアに変更した。

タンザニアは他のアフリカ諸国と同様、人口が爆発的に増加中だ。電化率はわずか13.9%(2009年)で、日々の調理の90%以上の熱源を薪と炭に頼っている。これに農地拡大の動きも加わり、年間約40万ヘクタールの森林が消えているという。

稲作については政府が強力に推し進めており、年間約130万トンの生産がある。もみの20%がもみ殻になるため、モミガライトの原料には事欠かない。仮に、すべてのもみ殻からモミガライトを作り、薪や炭の代替燃料にすると、計算上では年間約3.3万ヘクタールもの森林を保全できることになる。

「もみ殻はいっぱいあるのだから、これで煮炊きするようにしませんか、とデモンストレーションを行いながら説明しました。有名工科大学の敷地を借りて、政府要人や研究者、学生たちを集め、モミガライトを燃やしてバーベキューをしたところ、みな大喜びしてくれました」

キリマンジャロの麓の州でもデモンストレーションのイベントを行うと、州知事が参加するなど、こちらでも大歓迎された。

アフリカや東南アジアが注目

案件化調査で手応えを感じた橋本は、さらに先へと進むため、2014年にJICAの「普及・実証事業」に応募し、採択される。

この支援事業の目的は、中小企業の製品や技術が途上国で有効なことを実証し、普及を図ることにある。

そこでトロムソは、グラインドミル8台をタンザニアに送って、現地の委託先に提供。実際にモミガライトを製造・販売してもらうことにした。その結果、解決すべき一番の課題は生産コストだと判明。しかし、環境保全のためとはいえ、値段を下げ過ぎたら慈善事業になってしまう。突破口はあるのか? 橋本が目指す事業展開の形を話す。

「重要なコアパーツだけは当社で製造して輸出する。その他の部品については、図面を渡して現地で作ってもらう方法を考えています。我われはコアパーツで利益をあげ、現地ではモミガライトで儲けてもらうというビジネスモデルです」

公的支援を2回利用したことにより、途上国でのビジネス展開が大分見えてきた。実はタンザニア以外でも、ナイジェリアなどのアフリカ諸国、フィリピンやベトナム、タイといった東南アジアの国々などからすでに引き合いがあるという。

「着実に前へ進んでいます。いつ火がつくか、爆発するか。環境にはものすごくいいですからね。稲作を行う途上国では、モミガライトに優る燃料はないと思いますよ」

アフリカや東南アジアで、厄介者が大事な資源に換わる時代は、もう目の前に来ているのかもしれない。

(敬称略)