福島敦子のアントレプレナー対談「女性の愛する心」を徹底的に応援
家事代行の産業化にまい進

株式会社ベアーズ 高橋ゆき専務

株式会社ベアーズ(東京都中央区)

●設立:1999年10月
●役員:代表取締役 高橋 健志、専務取締役 高橋 ゆき
●資本金:8,950万円
●従業員数:372名(うち正社員182名、契約社員・パートアルバイト190名)/登録スタッフ数:4,400名 ※2015年9月末時点
●業務内容:家事代行サービス、ハウスクリーニング、キッズ&ベビーシッターサービス、高齢者支援サービス(シニアサポートR60)、ホテル清掃サービス、マンションコンシェルジュサービス、オフィス・店舗・ビル清掃サービス
●所在地:〒103-0014 東京都中央区日本橋蛎殻町1-34-5
●TEL:03-5640-0211
コールセンター 0120-552-445(フリーダイヤル)
受付時間 9:00〜20:00 365日受付
URL http://www.happy-bears.com/

家事代行サービスとは!?

福島ベアーズの事業を一言でいえば「家事代行サービス」です。一般的にはハウスクリーニング中心の会社が多いと思うのですが、ベアーズは非常に幅広いサービスを提供されています。具体的にどんなサービスなのか教えてください。

高橋家事代行とハウスクリーニングの違いをご存じない方がほとんどだと思いますので、まずはそこからお話ししますね。
ハウスクリーニングは30〜40年前から日本にあります。例えば年の瀬に家一軒丸ごと大掃除してもらうとか、お風呂場の頑固な目地汚れや排水管のつまりをきれいにするとか。

あるいは床のワックスをはがしてきれいにするとか。専門の知識を持った人が専門の用具や洗剤を用いて、その箇所ごとを徹底的にきれいにすることをハウスクリーニングといいます。
では、家事代行とは何かというと、誰にでもある日常の暮らしの中の、掃除や洗濯、料理や買い物、または植物の水やりや整理整頓、収納、お子様のお相手とか。そういう家の中のことを、そのご家族の代わりに真心を込めて代行するサービスのことです。最初に家事代行と市場に銘を打ったのは私たちです。そして「家事代行サービス産業を創ろう」という想いで産声をあげたのが、株式会社ベアーズなんです。

福島ベアーズレディに登録されている方が今、約4400人いらっしゃるということですが、そうすると、オールマイティに何でもできないと、ベアーズレディにはなれないのですか。

高橋そんなことはありません。私は料理が得意とかお掃除が得意という方もいれば、私は整理整頓、収納が好きという方など、いろいろな方がいます。ただし、当社独自の研修を卒業しないと、ベアーズでは活躍できないルールになっています。ベアーズは採用基準や教育・トレーニングのノウハウなどが、すべての命だと思っています。

女性の笑顔が秘めるパワー

福島登録スタッフに何か傾向はあるのですか。
高橋いいえ、もう本当に様々です。というのも、私たちが目指すところが二つありましてね。まず一つが「新しい暮らし方の提案」です。
例えば福島敦子さんは、福島さんでなければできないことに一生懸命、全身全霊で打ち込んでくださいと。でも、もし自分じゃなくてもいいことを背負い過ぎて、愛する人に笑顔を見せられないのだとしたら、自分でなければいけないこと以外は、私たちがお手伝いをさせていただく。そうすることで、心にゆとりを持った暮らしや仕事が実現します。
女性の笑顔の価値というものは、ただならぬパワーとエネルギーを持っているという前提のもと、「女性の愛する心を応援します」というのが私たちの新しい暮らし方の提唱なんです。
もう一つは、「日本の雇用創造に貢献し続ける産業を創りたい」ということです。この両輪がないと、実は回っていかないんですね。 そう考えると、お客様の獲得も大事だけれども、まずは働き手がいかにイキイキと躍動感に満ちあふれているかが大切なんです。そのためにも職業地位の向上には、本気で取り組んできています。

この仕事は自分の家庭や暮らしを横に置いておいてでも、世のため・人のため・その家族の笑顔のために、心にも体にも汗をかく尊い仕事なんです。堂々とこの仕事をやっているという人を増やしてきたかったんですね、この国に。
なので、さっきの質問に戻ると、どんな人が働いているかというと、今はおかげさまで、大卒の方も来ますし、自分は若いけれどパソコンを使う仕事ではなく、こういう仕事を通じて人生を心豊かに生きていきたいという方も来てくれるようになりました。
そして主婦をやっていたけれど、人生のキャリアを丸ごと生かせる仕事だからといって、子育てが一段落した方もいらっしゃいます。

きっかけは21年前の香港

福島こういうサービスを提供する会社を起業しようと思われたきっかけはなんだったのですか?。
高橋きっかけは、1995年です。当時、20代後半だった私と夫の健志(ベアーズ社長の高橋健志氏)は夫婦で香港企業に採用されたんです。ところが、ワーキングビザが降りるか否かというタイミングで妊娠が発覚しまして。
日本の企業ではその当時、妊娠を報告すると、表では「おめでとう」といってくれるものの、裏では「後任どうする?」とか。そういうのを見て育った世代なので、自分の妊娠が分かった時もうれしい気持ちの一方で「こりゃ、まいったな」と。

せっかく香港に呼んでいただいたのに、ポジション降格か、最悪は帰国しろといわれるんじゃないかということで、妊娠を打ち明けられずにいたんです。

ところがある日、その会社の香港人の社長に「最近、幸せなの? ふくよかになってきたね」といわれました。それで「おかげさまで充実した毎日だから、赤ちゃんができました」と報告したところ、すごく喜んでくれましてね。「これで君はもっとビューティフルワークができる」といわれたんです。
でも意味がよく分からない。モアビューティフルワークとはどういうことか? そしたら社長が「あたりを見回してごらん。この国には僕たち香港人の暮らしの“縁の下の力持ち”がいるんだ」と。それがフィリピン人のメイドさんだったんです。
香港の20代、30代は母子ともに健康でありさえすれば、誰も妊娠、出産、育児で仕事を辞めたり、キャリアをあきらめる人はいないって言い切られたんです。

周りを見たら、確かに出産後、すぐに戻ってきて、課長職を目指したり、起業する女性がすごく多い。しかも「子どもはきちんと教育をして、心身ともに健康的に育てよう。二人ぐらい欲しい」なんて会話しているわけです。
これって、安倍政権が目指している世界ですよね。それが21年前の香港にはあったんです。その縁の下の力持ちをやっているのはフィリピン人のメイドさん。
私はすごくびっくりして「ああいうサービスは富裕層とか特別な職業の人しか使わないんじゃないですか」と聞きました。ところがまた笑われまして「何いっているんだ。香港は地代が高く住宅費が一番高いから、賃貸でもローンでも共働きが必須なんだ」と。共働きが当たり前だから、結婚を決めたら、住むところとメイドを探すというんです。それが普通なんだと。

これを聞いて私もメイドを雇うことにしました。そのメイドさんはものすごく献身的な姿勢で私たちをサポートしてくれました。最初は来てもらってもどう対処していいのか分からないと思っていたんですが、1カ月もしないうちに「なんというすばらしい存在なんだ」ということに気が付いたんです。
お掃除やお料理、洗濯、アイロン、全部やってくれます。でも、それは手段でしかない。それよりも彼女の存在そのものが、私の心の保険みたいな感じ。「全部、自分一人で頑張らなくていいんだ」ということに、あっという間に気付かされたんです。
家事代行を産業として日本に根付かせたいと思った原点はそこです。彼女に助けられた。助けられて楽だったというだけではなくて、心にゆとりができたので、夫には笑顔の妻でいられたし、息子にはお母さんとして心健やかに接することができました。

そして、身なりをきとんと整えて会社に行って仕事もやっていられました。それが21年前の香港にあったわけじゃないですか。
でも東京にはなかった。それどころか妊娠、出産、育児をしながら仕事に復帰して、家事も完璧になんてできないと泣いた夜もありました。
正直いって、これはどこから生じた使命感かは分からないのですけれど、これを産業として創っていかないと総理大臣が何人変わっても、日本は変われないのでは、と思ったんです。だったら私が産業としての家事代行を育んでいこう! そういう情熱と覚悟で1999年に夫とともに立ち上げました。

海外人材の活用を政府に提言

福島ベアーズの料金体系は、やはりサービス内容によって価格も異なりますよね。

高橋サービス内容に応じて各種用意していますが、一番ベーシックな商品は、1時間2,350円の2時間制(ライトB/隔週1回以上※1)です。このサービスは毎回同じスタッフが訪問する専任制ではなく、ベアーズのトレーニングを終えたスタッフが交互に訪問します。専任制ではありませんから不在宅への訪問はしておらず、お客様にご在宅いただくサービスです。
在宅のサービスは、お忙しい方には利便性に欠けます。そこで一番人気のサービスになっているのが、その一つ上のデラックスです。こちらは1時間3,300円(月2回以上/1回3時間〜※1)で専任制です。相性がお互いにいいということになれば、基本は同じ人が訪問します。専任制なので、不在宅も可能です。対応できるサービス内容も幅広いので、この商品が全顧客の7割以上を占めています。

福島今、議論されているのは家事代行の仕事をする外国人労働者の受け入れです。それについて、どう考えていらっしゃいますか。

高橋2008年から私たちベアーズは、こういった活動をやるべきだと国に提言してまいりました。2009年には想いがありあまり、かなり時期尚早でしたが、フィリピンに現地法人を設立したぐらいです。
海外人材をこの分野に受け入れないことには、日本の暮らしの新しいインフラにはなれないということをずっといってきています。
それが2014年の暮れに突然、国家戦略特区として海外人材を家事代行分野に検討しようという動きが出てきました。そして2015年にそれが可決され、今現在は神奈川県全域と大阪府大阪市が特区として解禁されています。もちろん、ベアーズも両特区ともやります。
まずこれは、私としては一つ目の歴史的第一歩ですね。この5年ぐらいですごい音を立てて、この日本は戦後初めてといってもいいぐらい、国民の暮らしそのものの対策を考えようと、さまざまに検証していることは間違いないと思います。

福島特区では外国人を、家事代行サービスを担う人材として派遣できるわけですね。

高橋そうです。ですから、制度に先駆けて、教官候補になる方を採用しました。1年前からベトナムも視野に入れていますし、ミャンマーとか、いろいろな国の人たちです。日本のご家族をケア、サポートしたいという人であれば、国籍は関係ないと思っています。
海外人材のハートと力を借りないと、日本人は心豊かに生きていけなくなると本気で思っているので、この分野に門戸を開いてくれという提案を2008年からずっと国にしてきました。近い将来の、日本の大人材難に向けて、我われの産業も、グローバリゼーションをしていかなければならないと思っています。

スーパーミラクルポジティブ!

福島これまでのいろいろな経験から、経営者として大切にされていること、あるいはたくさんの人を雇用されているわけですし、会社を倒産させずに持続的に成長させていくために必要なことなどに関して、どう考えていらっしゃいますか。

高橋“愛する心”だと思います。

福島それは働いてくれている方、お客様、社会、あらゆる人たちへの愛ということですか。

高橋全部です。自分自身にとってもそうですし、お客様にとっても、社員にとっても、そして商品においてもそうだと思います。また、ハプニング、プロブレム、アクシデントも、成長ができるチャンスだととらえています。これらには教えを被っているような気がするんですよね。だから、それも愛してる。そういうことも。

福島これまでのいろいろな経験から、経営者として大切にされていること、あるいはたくさんの人を雇用されているわけですし、会社を倒産させずに持続的に成長させていくために必要なことなどに関して、どう考えていらっしゃいますか。

高橋“愛する心”だと思います。

福島それは働いてくれている方、お客様、社会、あらゆる人たちへの愛ということですか。

高橋全部です。自分自身にとってもそうですし、お客様にとっても、社員にとっても、そして商品においてもそうだと思います。また、ハプニング、プロブレム、アクシデントも、成長ができるチャンスだととらえています。これらには教えを被っているような気がするんですよね。だから、それも愛してる。そういうことも。

福島すべてですね。

高橋はい。それがあるからこそ、人間力が身につくわけですし、それを避けて通るような人のところには、試練も降ってこないと思っています。
なので、私の座右の銘は「人生まるごと愛してる」という言葉です。「まるごと」はひらがな。「人生まるごと愛してるブログ」も書いておりますので、ぜひご覧ください。

福島高橋さんは本当にポジティブな方だと思いますよ(笑)。

高橋そうでしょう(笑)。でもね、確かにスーパーミラクルポジティブなんですけど、そういう人って他でもたまに見かけるじゃないですか。私はそういう人に出会うと、実は“スーパーミラクル苦労人”なんだろうなと思うんです。
よく「なんで、ゆきさんは、そんなに明るく天真爛漫なんですか?」とか「失敗も知らなそうだし、苦労もしてなさそうなのは何故ですか」って聞かれるのですけれど、「それは苦労をしたり、失敗をいっぱいしているからなんですよ」とお答えしています。
なので、それも含めて「人生まるごと愛してる」。私が40のときに自分の中から出てきた言葉であり、心に刻みこんだ言葉です。

AI時代だからこその「ヒト」

福島最後に、今後のベアーズの戦略をお願いします。目指す方向性や自社の近未来像などを、どう思い描いていらっしゃるのでしょうか。

高橋そうですね。やはりこれからは、AIというものが、どんどんと進んでいく世の中であることを前提に、経営を考えなければいけないと思っています。

福島人工知能ですか。

高橋ええ。人工知能がますます進化をして、近い将来はもっと高度なお掃除ロボットやロボット家政婦が出てくると思います。そういう中で私は“ヒト、モノ、カネ”の時代はもう終わったと思っていまして。これからは“ヒト、ヒト、ヒト”の時代が来るのではないかと思っています。
人工知能と共存共栄するためには、ヒトがヒトであるということが何より大事。AIが普及するからこそ、ヒトでなければできないサービスを、ぬくもりをもって提供する。そのことの価値が大きく問われてくるだろうと。我われ人間が人間社会においてやるべきことというのは、そこだと思うんです。
AIは人間ではない。では私たち人間は何かといったら“ヒト、ヒト、ヒト”だと思うんです。これは何かというと、やはり感情の部分が大きいでしょうね。

たぶん、次の段階に向けて人工感情といわれるロボットの開発がきっとされていると思うんです、この世の中のどこかで。でも、それが世の中に出てくるまでには、やっぱり少なくても5年とか10年はかかる。
ですから経営の方向性が、5年、10年のスパンを見据えたものである以上、もっとヒト、ヒト、ヒトというところを重視した上で、商品づくりでも社員教育でもしていくことが急務であり、最大の課題かなと思っています。

福島人間じゃなければできないサービス。心のこもった仕事ができるかどうか。そういう人を育て、そういう人を派遣していくことができるかどうかというところが、一番大事になってくるということですね。

高橋そうです。それが企業課題でもあります。同業者との闘いなんていう小さなところは、私は見ていません。そうではなくて、社会的な価値を創造できる会社であるかどうかに、生き残れるかどうかがかかっていると思っています。
できれば同業者にも同じように考えていただき、心健やかにこの業界を発展させたいですね。私たちは日本の暮らしの新しいインフラなのですから。互いがお客様を取り合うような小さなビジネスではない。
今ある業者全部がフル稼働しても間に合わない。それぐらいの需要があるよという状態を、私は自分が生きている間にこの国に創りたいと思っています。

(敬称略)

高橋ゆき(たかはし・ゆき)氏
家事代行サービスのパイオニアであり、リーディングカンパニーである株式会社ベアーズの専務取締役。
社内では主にブランディング、マーケティング、新サービス開発、人材育成を担当。
経営者として、各種ビジネスコンテストの審査員や日本能率協会「経営・マーケティング戦略コース」のコメンテーターをはじめ、講演会、セミナーへの登壇も多いほか、家事研究家としてもテレビ・雑誌などで幅広く活躍中。
2015年 には世界初の家事大学設立、学長として新たな挑戦を開始。
1男1女の母でもある。
福島敦子(ふくしま・あつこ)
ジャーナリスト / 津田塾大学英文科卒。中部日本放送を経て1988年独立。NHK、TBSで報道番組を担当。テレビ東京の経済番組や週刊誌「サンデー毎日」でのトップ対談をはじめ、日本経済新聞、経済誌など、これまでに600人を超える経営者を取材。現在、BSジャパンの経済番組「マゼランの遺伝子」のキャスターを担当。経済・経営の他、環境、コミュニケーション、地域再生、農業・食などをテーマにした講演やフォーラムでも活躍。上場企業の社外取締役や経営アドバイザーも務める。島根大学経営協議会委員。1997年にはワインアドバイザーの資格を取得。主な著書に「愛が企業を繁栄させる」(リックテレコム)をはじめ、「それでもあきらめない経営」「ききわけの悪い経営者が成功する」「就職・無職・転職」「これが美味しい世界のワイン」などがある。
URL: http://www.atsuko-fukushima.com/