必読!これがホントの“節税”講座確定申告の節税ポイント
その前提となる「青色申告」

寄稿:梅川 貢一郎(有限会社トライアングル 代表取締役・税理士・公認会計士)

http://www.umegawa.com/

年末に近くなると気になりだすのが所得税の確定申告です。毎年3月15日までに確定申告を行っている人は約二千万人。全国民の6分の1が行っている計算になります。

納税になる人と税金が還付される人の割合は、ほぼ半々です。確定申告をしなければならない人は、事業所得があるフリーランスはもちろんのこと、給与所得者であっても不動産収入など副収入のある方や住宅ローン控除を受ける方などです。

近年はネットを活用した副業を行っている方も多く、確定申告は「避けて通れない」関門となっています。

今回は、確定申告を行うにあたって無駄な税金を払わないためのポイントをご説明します。

青色申告の5大メリット

まずは青色申告。フリーランスなど個人事業の方には青色申告が絶対にお勧めです。これを利用しない手はない。おいしい節税方法のNo.1です。ところが青色申告に関しては、誤解されている方も多くいます。

「帳簿を付けるのが面倒」「面倒なわりにメリットがない」「青色申告にすると税務調査がくる」等々。

ちなみに青色申告とは、(詳細は後述しますが)簡単にいえば帳簿を記載し、帳簿の数字に基づいて所得税を申告する制度です。かつては申告用紙が青色であったため、この名称が残っています。

青色申告に対して白色申告は、かつては帳簿を付けずに、帳簿に基づかない数字から税金を計算して申告する方法でした。しかし今では白色申告でも帳簿が義務付けられたので、大きな差はなくなりました。

以下では、青色申告を行うメリットを紹介します。

1. 10万円以上の節税ができる。

所得税の計算は簡単にいえば、収入金額から、かかった経費の金額を差し引いた所得に対して、一定の税率をかけます。その際に青色申告を行っていれば最高65万円を所得から差し引くことができます(青色申告控除といいます)。

どれほどのメリットかというと、所得税率10%(所得が330万円以下)であれば、所得税が6万5000円、住民税もほぼ6万5000円と、合わせて13万円が節約できます。

65万円の控除は月割りではなく「年額」です。たとえ12月に開業したとしても申告時にはまるまる65万円の控除が使えます。

また、フリーランスの方は、健康保険に加入していますが、健康保険料も所得によって変動します。多くの自治体は、所得の10%を健康保険料に設定していますから、翌年の健康保険料も6万5000円ほど安く済むわけです。

2. 赤字を3年間繰り越せる。

所得税の計算は、原則その年度限りで完結します。その年度が赤字であれば、所得税も発生しませんから確定申告をする必要もありません。

ところが青色申告を選択していると、その年度が赤字であれば、その赤字額を最長3年間次年度に繰り越すことができます。

例えば、2016年100万円の赤字、2017年300万円の黒字である場合、2017年の課税所得は「300万円−100万円」の200万円となります。

何らかの原因で、ある年度に事業が不調で赤字になってしまっても、その赤字分を翌年の黒字から差し引くことができるわけです。

事業を行っていると何が起こるかわかりません。販売していた商品が突然売れなくなったり、主要取引先の倒産などで売り上げが大きく落ち込むこともあります。

事業の赤字分は当然自腹で穴埋めするわけですが、翌年黒字が出たときにまるまる税金で持って行かれてはたまったものではありません。

3. 家族に給料を払うことができる。

青色申告を行っていると、家族への給与(専従者給与といいます)を支払うことができます。

白色申告でも家族への給与は認められますが、配偶者は年間86万円まで、その他の親族は、年間に50万円までしか認められません。青色申告を行っていれば限度額がなく、事前に届け出た金額を給与として払うことが認められます。

家族に給与を支払うことのメリットは所得の分散です。所得税は課税所得が大きくなるほど税率も高くなる累進課税です。そのため所得を分散すれば、各々に低い税率が適用され、トータルの税金は安くなります。

例えば課税所得が500万円だと、所得税率が20%ですから税金は100万円です。ところが、二人で250万円ずつにすれば、税率は10%で済み、税金は各々が25万円ずつ。合計で50万円となり半額に節税できます。

ただし、配偶者に給与を支払うとその金額がいくらであっても配偶者控除(後述)を受けることができませんので注意が必要です。

4. 30万円未満の資産を購入した場合、全額を一括経費にできる。

パソコンや複合機など10万円以上の資産(減価償却資産といいます)を購入した場合、原則は減価償却という手続きを経て、購入した金額を耐用年数で割った金額のみが、その年の経費となります。

例えば、パソコンの法定耐用年数は4年です。1月に20万円のパソコンを購入しても、その年に経費として落とせる金額は「20万円÷4年」の5万円しかありません。しかも月割りになりますから、7月に購入していれば初年度はさらに12分の6の2万5千円しか経費になりません。

ところが青色申告の場合、30万円未満の資産はその全額をその年の経費にできます。月割りではないので12月に購入しても全額を経費として落とすことができます。

5. 経費として落とせる範囲がより広くなる。

明文で規定があるわけではありませんが、運悪く税務調査が入った場合や税務署から申告内容についてお尋ねがきた場合、青色申告でしっかり帳簿に記載してある経費は、否認を受けにくくなります。

白色申告の場合、自宅をオフィスとして活用している分の家賃や光熱費の一部などを経費として計上していると、否認を受けてしまうなどのリスクがあります。

税務署にしっかりと経費を経費として認めてもらうためにも青色申告は有効です。

青色申告の開始ステップ

次に青色申告を行うための手続きを説明します。

1. 税務署に青色申告申請承認書を提出します。

申請書は、事業を開始してから2カ月以内に所轄の税務署に提出する必要があります。ある年度に白色申告から青色申告に切り替える場合には、その年の3月15日までに所轄の税務署に提出する必要があります。

2. 10万円控除と65万円控除の2種類ありますが、迷わず65万円控除を選択します。

10万円控除と65万円控除の違いは、作成する会計帳簿が「簡易」の帳簿であるか否かです。65万円控除を受けるためには、簡易でない複式簿記による「正規」の帳簿を作成する必要があります。

簡易の帳簿は作成が楽ですが、白色申告でも簡易の帳簿を作成する必要があります。わずかな違いなので迷わずに節税メリットの大きい65万円控除を選択しましょう。

3. 複式簿記での会計帳簿を作成。

複式簿記での会計帳簿を作成する必要がありますが、市販の会計ソフトを利用すれば、それほど難しくはありません。

それでも領収書などを一枚一枚ソフトに入力していくのは、やはり手間がかかります。そのような場合は、私のような税理士へ丸投げしてください。もちろん費用はかかりますが、10万円以上の節税効果を考えれば安いものです。

4. 青色申告は毎年確定申告する必要があります。

白色申告の場合、所得がゼロ以下では確定申告をする必要がありません。しかし青色申告を選択したら、たとえ赤字でも毎年確定申告しなければなりません。ただしメリットでも述べましたが、その赤字は翌年以降に繰り越され、黒字が出れば相殺できますので無駄にはなりません。

では、青色申告にデメリットはないのでしょうか。あえていえば、会計ソフトに領収書や通帳を入力しなければならないことでしょう。

しかし、事業を行っている場合、経営状況を把握するために、誰しも使った経費や売り上げを何らかの形で記録するものです。

会計ソフトに経費や売り上げを入力すれば、毎月経営状態を把握できます。帳簿記録を付けることは必ずしもデメリットとはなりません。

また、青色申告にすると、税務調査が入りやすいという話を耳にすることがあります。しかし、まったくの都市伝説です。青色申告でも白色申告でも取引金額が一定以上になったり、金額に異常値が見つかれば税務署からお問い合わせがくることになります。

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税法上の扶養家族とは!?

055-001確定申告に際して節税上チェックしなければならない二つめのポイントは「扶養家族」です。

税金を節税するためにまずは、扶養家族を増やすことです。扶養家族がいれば「扶養控除」が適用されるからです。

扶養控除といえば、配偶者控除が昨今しばしば話題に上ります。妻がパートやアルバイトで働いても、年間の給与所得が103万円を超えると、配偶者控除が受けられなくなるため、年収を103万円以内に収めるよう働くことをセーブしてしまう。

そこで、女性にもっと働いてもらうために「配偶者控除を廃止しよう」との議論ですが、とりあえず配偶者控除の制度は継続されそうです。

廃止が検討されている配偶者控除ですが、配偶者の給与所得が103万円を超えてもいきなり控除がなくなるわけではありません。給与所得が103万円を超えてしまった方のために、配偶者特別控除という制度が設けられています。

配偶者特別控除とは、給与所得が103万円以上141万円未満まで、段階的に控除額が38万円からゼロ円まで認められるものです。配偶者の給与所得が141万円に達してようやく特別控除額がゼロ円になります。

扶養控除は、扶養する家族の年齢により上乗せはありますが、原則扶養家族一人当たり所得税は38万円、住民税は33万円の控除を受けることができます。控除額が38万円というのは大きいです。所得税率10%が適用される方であれば、扶養家族一人当たり、所得税、住民税合わせて約7万円の節税ができます。

しかし、同居家族は配偶者と子供しかいないという方は、親を含めた親戚一同を思い浮かべてください。実は税法上の扶養家族は、意外と範囲が広いのです。
「6親等以内の血族もしくは3親等以内の姻族」ですから、祖父母や甥、姪、いとこも対象です。現実的には退職した両親や年金暮らしの祖父母でしょうか。

ちなみに、税法上の家族は「戸籍上」の家族である必要があります。いくら何十年と同居していても「内縁の妻」のような関係の方は扶養家族にはなれません(蛇足ですが、なぜか健康保険では、同居人も扶養家族になれます)。

扶養家族の要件

扶養家族の要件は、「扶養していること」と「生計を一にしていること」。要は経済的に面倒を見ているということです。同居か別居は問いません。田舎の両親や、おじいちゃん、おばあちゃんでもOKです。

経済的に面倒を見ているというためには、少なくとも毎月いくらかの仕送りをする必要はあります。しかし、「いくら以上」という要件があるわけではありません。生活を支えている程度であればよいのです。

扶養家族の要件として、課税所得がないこと(所得が38万円以下)が必要です。課税所得がないという意味は、例えば給与所得者であれば、年間給与が103万円以下であれば、課税所得はゼロです。年金所得のある方は、公的年金の受給を受けている場合、65歳以上で年金収入が158万円以下であれば扶養家族となります。65歳未満の方は、108万円以下であれば扶養家族になります。

扶養している両親、あるいは祖父母が70歳以上であればさらに控除額が10万円上乗せされて48万円になります。70歳以上の両親を二人とも扶養家族にしてしまえば、控除額は合わせて96万円ですから、節税額は軽く20万円にもなります。

一方、子供の場合は16歳以上が扶養家族の対象となります。児童手当が中学生まで支給されるため、民主党政権時代に16歳以上の制限が設けられました。しかし、上限はありません。大学を卒業しても就職しないでアルバイト生活をしている子供も対象です。40歳の息子がリストラでプー太郎生活を余儀なくされていれば、もちろん扶養家族として控除の対象となります。

ただし気を付けなければならないのは、扶養家族を「二重」に申請してしまう場合です。例えば兄弟それぞれが、田舎の両親を扶養家族として申告してしまう場合です。今年から、扶養控除等申告書には扶養家族のマイナンバーを記載することが義務付けられました。二重の申告にはくれぐれも気を付けましょう。

生命保険控除の活用法

節税上のチェックポイントの三つめは生命保険控除です。

法人であれば、生命保険は節税商品の本命です。掛け捨ての定期保険であれば支払った保険料の全額が損金となり、支払った保険料の90%以上が戻ってくる逓増定期でも50%が損金として認められます。

一方、個人の場合、生命保険の保険料は支払った金額にかかわらず、所得から控除できる金額の上限が4〜5万円とかなり見劣りするように感じられます。しかし、決して侮ることはできません。

年間8万円の生命保険に加入していれば、所得税ならば4万円の控除が受けられます(平成24年1月1日以降に加入した保険)。税率10%の方であれば、住民税とあわせて6800円の節税です。ただし、8万円以上支払っていてもそれ以上の控除はありません。したがって年間8万円の保険料を支払えば節税上はベストといえます。
もちろん生命保険は、節税のために加入するものではありません。万が一の保障を得るためのものですから、税金の観点だけから保険を検討するのはお門違いかも知れません。

しかし、私個人的には、国の社会保障が充実している日本では、それほど高額の保険に入る必要性をあまり感じていません。できれば返戻率の高い貯蓄型の保険に加入するのがベストだと考えます。8万円の投資で年間6800円の利息が付くと考えればかなりお得な投資だからです。

生命保険料控除には、生命保険の他に、介護・医療保険控除、個人年金保険控除があります。控除が受けられる金額は、すべて同一で8万円の保険料に対して4万円が限度です。3種類の保険すべてに加入していれば、24万円の保険料に対して12万円の控除が受けられますから、税率10%の方は、合計で2万400円の節税が可能ということになります。

介護・医療保険に関しては、日本の充実した健康保険制度を考えると、最低限度の年額8万円程度の保険にとどめておくべきかと考えます。
個人年金保険の多くは元本保証の積み立てですから、年金として将来保険金を受け取るので有利な投資といえます。年間8万円ほどの負担ですから積極的に利用したいものです。

地震保険と確定拠出年金

次に、生命保険とならんで、是非加入を検討したいのが地震保険です。

かつては損害保険料控除というものがありましたが、現在は地震保険料控除に一本化されています。保険料5万円以下を支払えばそのすべてが控除額となります。5万円が限度額なのでそれ以上支払っても5万円までです。

日本はいわずと知れた地震大国。震度5以上の大地震が一度も発生しない年はありません。首都直下型地震が起こる確率は30年以内に70%ですから、自分が生きているうちに大地震に見舞われると想定して間違いありません。

地震保険は地震の被害のみならず、火山の噴火やそれらを原因とする津波の被害もカバーしてくれるので、年間5万円程度の保険への加入がお勧めです。
最後に、節税しながら将来に備える最強の金融商品が、確定拠出年金です。

確定拠出年金は、公的年金に上乗せして給付を受ける「私的年金」の一つです。もともと、企業年金が整備されていない企業に勤める方や自営業者のための年金制度でしたが、平成29年からは、公務員や専業主婦を含め基本的にすべての方が利用できるようになります。

確定拠出年金とは、現役時代に年金の掛け金を確定して納め、その資金を自己責任で運用して老後に受給を受けるという私的な年金制度です。企業年金がない会社に勤めるサラリーマンや自営業者は、掛け金の月額限度額が6万8000円です。

確定拠出年金の最大のメリットは、節税です。まず、掛け金はその全額が所得控除になります。毎月2万円ずつの掛け金でも、税率10%の方は、年間5万円近い節税です。

受け取るときも、通常の保険金は一時所得ですが、確定拠出年金は一時金として受け取れば退職金扱い、年金として受け取れば公的年金扱いとなり大きな控除が受けられます。

ただし、保険会社が扱う個人年金は基本的に元本保証で安全ですが、確定拠出年金は運用のリスクがあります。つまり、保険会社などに運用を任せるのではなく、銀行や証券会社などの管理会社が用意する金融商品を個人で運用するからです。

しかし低金利のこの時代ですから、他人任せにせず、株式などで運用するのも悪くないかもしれません。