緊急レポート「FITの新たな改革」2017年夏「入札制度」がスタート
事業者から相次ぐ「拙速では」の声

FITの「入札制度」とは

 産業用太陽光発電のFIT(固定価格買取制度)で計画されていた「入札制度」の概要がまとまった。第1回の入札を2017年秋に実施し、第2回を2018年夏、第3回を同年末までに合計3回実施。その効果を見極めながら2019年度以降の制度設計を行うという。

 産業用太陽光発電の入札制度は、ドイツやフランスなどのヨーロッパ各国で先行実施されている。

 その手法は基本的に、国がその年の電力買取量を明示して、売電希望事業者を募集。売電希望事業者は売電量(出力)や希望売電単価を提示して応札する。国は売電単価の低い順に売電事業者を選出。その年の買取量に達した段階で、事業者選出を終えるというもの。

 日本の入札方式の詳細はまだ明らかにされていない。だが、「基本的にはヨーロッパと同様の方式だろう」(関係者)と予測されている。

 現段階で明らかになっていることは、入札対象が総出力2MW以上の新規の発電設備に限定されること。そして、1回目の入札が2017年10月をめどに実施される見込みということである。

 事業者にとっての最大関心事といえる現行20年の固定価格での買取期間や、売電事業者認定から運転開始までの期限(同3年)などは、今後の検討課題となっている。

 さらに、売電事業者にとって最も重要な「入札上限価格」の設定もまだ明らかにされておらず、様々な憶測が飛び交っている。

 仮に上限金額が低すぎればFITの事業としての旨みが減少。「応札する事業者が減少する」ことになりかねない。わざわざ2MW以上の大規模発電設備を構築するよりも、現行制度が継続される2MW未満のメガソーラーを選択する事業者が増えるかも知れないというわけだ。

 それだけに上限価格の設定は、入札制度の根幹を左右する重要な検討課題といえる。

 市場関係者の間では、現行の買取価格24円よりも低く設定される可能性が高いとの見方が支配的である。仮に上限価格が24円以上に設定され、応札事業者の指し値が24円以上で足並みが揃ってしまった場合、国としては入札制度を導入する意味が、まったくなくなってしまうことになるからだ。

 入札制度導入の一番の狙いは、「買取価格を引き下げて、電気料金に上乗せして徴収している賦課金の上昇を抑えること」だとされる。

 電力を使う一般家庭や法人に負担が義務化されている賦課金は、標準的な家庭の場合、FITがスタートした2012年度の月額66円から今は10倍強の月額675円まで急拡大している。

 この伸びを抑制することが入札制度を導入する一番の目的であるとすれば、上限価格が現行の24円よりも低い設定となると考える方が自然であろう。

放置されている内外価格差

 FITを軸とした再生可能エネルギーによる発電設備の増加が、賦課金の高騰につながっているのは日本だけではない。太陽光発電で先行するヨーロッパ各国も同じような状況に陥り、その対策の一環として進められているのが入札制度だ。

 そこでドイツやフランスの実績を踏まえつつ、日本流の入札制度の確立が進められている。だが、「ヨーロッパと日本では産業用太陽光マーケットの構造が大きく異なり、ほとんど参考にならない」との声が少なくない。

 その要因は産業用太陽光の「発電コストの内外価格差」と「システム全体の内外価格差」、そして「発電設備に関する内外価格差」などである。「これらを放置したまま欧州流入札制度の導入を推進するのはいかがなものか」というわけである。

 図1は太陽光発電の発電コストと買取価格を国際比較したもの。これによれば日本のFIT価格(買取価格)は、ドイツやフランスの2倍以上と高く、中国と比べても約1.5倍の高値となっている。

 しかしながら、発電コスト(図1の場合、発電量1MWHあたり何ドルのコストがかかるか)を見ると、日本はフランスや米国、オーストラリアなどの2倍以上のコスト、ドイツや中国との比較でも1.8倍以上の高コスト構造となっている。

 しかも運転維持費を見ても、日本が突出して高いことが分かる。ドイツやフランスと比較した場合で2倍以上、米国やオーストラリアとの比較では3倍以上、そして中国との比較では5倍以上もの高コストとなっている(詳細は図3参照)。

 これらを放置したままで、ヨーロッパに倣った入札制度の導入を推進することに、疑問の声が上がっても不思議ではないといえるだろう。

図1 産業用太陽光発電の発電コスト・買取価格の国際比較

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図3 運転維持価格の内外価格差

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市場の多段階制にメス!?

 このことはシステム価格も同様で、図2は産業用太陽光発電におけるシステム価格の内外価格差を示したもの。比較年度に若干のズレはあるが、2016年度の日本の平均システム単価は28万9000円/1kWであり、2014年度のヨーロッパの平均単価15万5000円/1kWを、13万4000円も上回っている。これは率にして80%以上も高い計算になる。

 その内訳を見ても、日本ではシステム価格の4割近くを占めるモジュール(太陽光発電パネル)単価がヨーロッパの1.5倍、同3割弱を占める設置工事単価が約2倍、そしてシステムの要といえるPCS(パワーコンディショナ)単価が2.5倍以上となっている。

 日本の場合、産業用のモジュールやパワコンは輸入品も多く、ここ数年の円安基調が内外価格差を拡げた一因であることは確かだろう。

 そうであっても、これだけの内外価格差に目を瞑ったまま制度施行を急ぐのであれば、国内の発電事業者の熱意が冷め、「再生可能エネルギーによるクリーンなエネルギーの普及拡大」という本来の大命題が、失速することになりかねないだろう。

 政府は内外価格差の要因の一つとして「日本の市場構造の多段階制」をあげている。例えば欧米ではメーカーが製造販売だけでなく、EPC(設計・施工)やO&M(維持管理)などをトータルで事業化しているケースも多く、それが低コスト要因の一つというわけである。

 自由競争の日本で、政府による事業領域の義務化などはあり得ない。だが、何らかの施策が必要なことは確かだろう。

 産業用太陽光発電のシステム単価削減目標としては「2020年:20万円/1kW」「2030年:10万円/1kW」が掲げられている。この目標を“絵に描いた餅”としないためにも、抜本的な制度改革が急務といえる。

図2 産業用太陽光発電システムの内外価格差

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