代表取締役3人体制の発足から9カ月高齢化社会、Eコマース時代を見据え、 売り場改革を急ピッチで進めるヤマダ電機

売り場改革の象徴「LABI1なんば」

 2016年4月に代表取締役3人体制をスタートしたヤマダ電機。創業者の山田昇氏が代表取締役会長、一宮忠男氏が同副会長に就任。そして専務だった桑野光正氏が同社長に昇格した。

 3人体制の最大の特徴は、3人の役割分担を明確化したことだろう。山田会長は新規事業の開発・推進、一宮副会長が各種構造改革の強化・推進、そして桑野社長が既存ビジネスの強化を担当する。

 発足から約9カ月が経過したが、この間、ヤマダ電機は着実な変革を遂げつつあるようだ。

 何より顕著なことは桑野社長が担当する既存ビジネス(家電販売)の変革だろう。今期に入って都市型大型店のLABIを中心に、売り場の改革・改装を積極化している。その象徴といえる店が、この夏に大改装を行った大阪のLABI1なんば店だ。

 南海電鉄なんば駅から徒歩3分という典型的な大都市駅前立地ながら、5フロア7000坪もの広大な売り場に、取り扱いアイテム数80万点を展開。国内家電量販店の中でも屈指の大型店といえる。

 同店改装の基本コンセプトは「広い店内でゆったりと買い物できること」。一般的な駅前型の家電量販店といえば、狭い通路にうずたかく陳列された商品。混雑時ともなれば目的の売り場に辿り着くのも一苦労、という経験を持つ人も少なくないだろう。

 なんば店の改装は、この常識を覆そうというもの。例えば幅4~5mはあろうかという大型のメイン通路は、ベビーカーや車椅子などでもスムーズな往来が可能だ。しかも、商品展示台の高さを低く抑えており、店内の見通しにも気を配っている。初めての来店者でも目的の売り場を探すのに、それほど苦労することはないはずだ。

 また、各フロアに多数の休憩スペースを設けていることも大きな特徴である。一般に、家賃負担等の大きな都市型店では、店内への“非売り場スペース”設置を嫌う傾向が強いが、これとは正反対の店舗作りである。

 そして非売り場スペースの極めつけといえるのが、4階の「キッズアイランド」だ。120坪ものスペースに子どものための各種遊具施設を設置しており、平日は500円で時間無制限に利用できる。当初は主に、買い物に飽きた子どもたちのための施設であったが、今ではここを目的に来店する近隣の親子連れが増えているとのこと。

 というのもなんば周辺には、子どもたちが安心して遊べる公園などが少ないという地域事情があるからだ。キッズアイランドであれば係員が常駐しており、天候に関係なくいつでも安全に遊ぶことが可能。引率してきた親も2階のカフェからドリンクを出前するなどして、のんびりと過ごすことができる。これで500円なら安いもの、というわけである。

 また、なんば店では改装に伴って、店の外周環境の整備にも着手。半ば自転車置き場と化していた店舗前広場を、本来の公園然としたスペースに復元させている。これは同店が店である前に“地域の憩いの場であるべき”との考えに基づくもの。店長以下すべてのスタッフが交代で、自転車を止めようとしている顧客を粘り強く説得。本来の駐輪場への移動をお願いし続けた結果だという。

立川店のコンシェルジュ訪問サービス

 ヤマダ電機はこうした抜本的な改革・改装を今後、全国の店舗で随時実施する計画だ。

 そして現段階で、その集大成といえる店舗が、11月18日にオープンした「LABI LIFE SELECT立川」だ。JR立川駅北口に隣接した好立地に、約1300台の駐車場を確保した売り場面積2000坪の大型店である。

 基本コンセプトはなんば店と同様「ゆったりとした買い物ができる駅前店」である。幅広い通路や多数の休憩スペース、そしてキッズアイランドの設置などはすべて踏襲。その上で新たなサービスとして注目できるのが、ヤマダ電機独自の「コンシェルジュ訪問サービス」だ。

 これは大型テレビや冷蔵庫、洗濯機などの対象商品については、顧客が要望すれば配送時に専門のコンシェルジュスタッフが、配送業者と一緒に顧客宅を訪問。その機器の使い方や便利機能の紹介などを無料で行うもの。

 単に配送設置するだけでなく、専門スタッフによる丁寧な操作説明を付帯させることで、機械に詳しくない顧客でも、購入品をフルに使いこなしてもらおうというわけだ。特に高齢者などに向けては、最適なサービスといえるだろう。専門スタッフはどんな機器でも説明できるように、日常的な商品勉強を欠かしていないという。

 立川店のオープンに先立って行われた記者会見で一宮副会長は「お客様とのフェイス・トゥ・フェイス、ワン・トゥ・ワンのサービスやコミュニケーションの拡充に、徹底的にこだわった」と話している。

 そして「高齢化社会に家電量販店はどうあるべきか。Eコマース時代に店の役割は何なのか–。これをとことん議論してきた。その答えを見つけない限り、我われの生きる道はなくなるのではないか。コンシェルジュ訪問サービスは、こうした危機感から生まれたサービスの一つ」と語っていた。

 “ショールーミング”という言葉がもてはやされ、リアル店舗の劣勢が報道されることも少なくない。だが、この流れがどう変化するのかは未知数。実際、eコマースの雄アマゾンが、米国でリアル店舗の展開を開始するとの報道もなされたばかりだ。
 混迷する流通業界にあって、“リアル店舗ならでは”“対面接客ならでは”の販売手法・サービス施策を続々と打ち出すヤマダ電機。今後の成り行きが注目される。(征矢野毅彦)