法・制度/2017年度税制改正設備投資・経営体制強化を重点減税
個人所得税では「配偶者控除」見直し

2016年12月8日、自民党と公明党は2017年(平成29年)度の与党税制改正大綱をまとめた。減税による税収減や消費者・企業の負担増を回避する意識が強く、全体としては小幅な改正だが、中小企業や共働き世帯向け減税策の充実が目玉となりそうだ。

基本的に同大綱は政府案として2017年の通常国会に法案として提出され、審議と可決を経て正式施行となる。

ここでは12月に公表された大綱をベースに、注目しておきたい改正ポイントを速報的にレポート。SHANIMU第58号(2017年2月末発行予定)では詳細記事を掲載する予定なので、合わせて参照してほしい。

●自民・公明党がまとめた2017年度の税制改正大綱。総ページ139Pにも及ぶ

企業(経済産業)関連の税制改正ポイント

2017年度税制改正の企業向け施策のポイントについては、経済産業省が概要まとめている。大きくは、「①:第4次産業革命に対応した研究開発税制」「②:地域・中小企業向け『負担軽減パッケージ』」「③:『攻めの経営』の推進等の事業環境整備」「④:車体課税の抜本見直し」――の4つだ。

●経済産業関係の2017年度税制改正ポイント概要(経済産業省の資料より引用)

設備投資関連の減税が充実

このうち、SOHOや小規模事業者、中小企業が注目したい改正が「②:地域・中小企業向け『負担軽減パッケージ』」である。設備投資や経営体制の強化へ積極的に取り組む企業などを支援する減税策の創設や拡充措置が盛り込まれている。

設備投資関連の具体的な制度は、「固定資産税の軽減措置」「中小企業経営強化税制」「地域未来投資促進税制」など。

固定資産税の軽減措置は、「中小企業などが新規に取得する機械装置の固定資産税を3年間にわたり2分の1に軽減」する制度。2016年度改正で創設された特例で、固定資産税では初めての設備投資減税であり、赤字企業にも効果が期待できるなど注目施策だった。

2017年度改正では、この特例を拡充。商店や飲食店、介護事業者などの支援を目的に、中小サービス業で活用されることが多い器具備品などを対象設備として追加し、地域や業種を限定して重点支援するという。

●「固定資産税の軽減措置」の概要(経済産業省の資料より引用)

中小企業経営強化税制は、2017年度改正で新たに創設される制度。設備投資を促し、中小企業の生産性や稼ぐ力の向上を後押しすることを狙いとし、対象となる生産設備などの導入について即時償却や税額控除が適用される。

これまでの機械装置だけでなく、器具備品や建物に付属するものも含めて幅広い設備を対象とすることで、サービス業を含めて幅広い業種を支援する制度設計にする方向という。

●「中小企業経営強化税制」の概要(経済産業省の資料より引用)

設備投資関連では、地域未来投資促進税制も創設される。これは、地域に特有の技術や観光資源、農水産品などを活用して収益を生み出す新事業創出に取り組む企業を後押しする制度。事業に必要な設備投資(地域未来投資)について、特別償却か税額控除のいずれかを適用することが可能となる。

●「地域未来投資促進税制」の概要(経済産業省の資料より引用)

この他、設備投資関連の減税策については、「中小企業投資促進税制」と「商業・サービス業・農林水産業活性化税制」の2施策で延長措置が講じられる見通し。いずれも、要件を満たす設備投資に対して特別償却か税額控除を適用できる制度である。

様々な減税策で中小企業を優遇

設備投資以外でも、様々な制度において中小企業向けの減税措置が講じられそうだ。例えば、賃上げ促進を目的とした「所得拡大促進税制」では、中小企業向けに拡充の方向で見直される。

所得拡大促進税制は、国内に勤務する従業員の給与やボーナスなどの支給総額を一定割合で増加させると、増加額の10%を税額控除できる減税策だ。

基本的な要件は現行制度通りだが、2017年度に前年度比で2%を超える賃上げを行った中小企業に対しては、さらに12%の税額控除を上乗せして最大22%の減税となるよう改正される。これは「賃上げに伴う社会保険料の企業負担を上回る控除率になる」といい、「中小企業の賃上げを後押しすることで消費回復や経済の好循環を生み出す狙い」という。

同施策に伴う財源は、大企業の減税幅を縮小することにより確保。賃上げ率が2%に満たない大企業を同減税制度の対象から外す方向だ。

●「所得拡大促進税制」の概要(経済産業省の資料より引用)

また、現行制度では中小企業に対する特例として、「法人税の軽減税率」が適用されており、年間800万円以下の所得金額については税率15%に減税されている。2016年度末までの時限措置だったが、2017年度改正で適用期限が2年間延長される。

個人・家計関連の税制改正ポイント

一方、個人や家計関連の2017年度改正については、新聞などでも報道されている通り、配偶者がパートで働く世帯の所得税や、酒税、タワーマンションの固定資産税などが見直される。

パートの年収上限が150万円以下に

現行制度下、所得税の「配偶者控除」では、配偶者の年収が103万円以下の場合に世帯主の課税所得から最高38万円を差し引くことが可能。103万円を超えても、いきなり控除額がゼロになるわけではなく、141万円未満までは段階的に一定額を差し引ける「配偶者特別控除」が適用される仕組みだ。

これが、2018年からは38万円全額を控除できる配偶者の年収上限が「150万円」に拡大され、それに伴い配偶者特別控除の枠も「150万円超~201万円以下」にスライドする。

同改正により税収減となる部分については、高所得世帯に年収制限を設けることで税収を確保する。世帯主の年収が1120万円を超えると段階的に控除額を削減。1170万円までは最高26万円、1220万円までは同13万円となり、1220万円を超えると控除対象から外れることになる。

なお、財務省などが要望した「配偶者控除を廃止して『夫婦控除』を創設する」という案については、専業主婦世帯の反対が根強いとの判断から今改正では見送られた。また、所得税の生命保険料控除の拡充も見送りとなった。

タワマン課税見直しや、個人投資促進も

タワーマンションにかかる固定資産税が見直され、「高層階は増税、低層階は減税」となる。具体的には、マンションの中央階を基準(増減税なし)に、1フロア上がるごとに固定資産税は約0.25%ずつ増税となり、逆に1フロア下がるごとに同じ割合で減税となる方向だ。

現行、マンションの固定資産税は高さや階層に関係なく、1棟全体の価値評価から税額を算出し、床面積に応じて負担額が割り当てられている。だが、「購入価格は高層階ほど高くなるにも関わらず税額が階数に関係なく同じでは不公平だ」との批判があった。これを受け、2017年度改正では課税方法が見直されることになる。

ただし、既存のタワーマンションは適用外。2017年1月2日以降に完成する新築棟(基本的に高さ60メートル超、20階建て以上)から適用され、実際の課税は2018年度の固定資産税から行われる。

●税負担公平化の原則に従い見直されるタワーマンションの固定資産税

また、若年層の投資を促すことを狙いに、少額投資非課税制度(NISA)に関して「積み立て型NISA」を新設する。株や投資信託などの個人投資に対し年間40万円までを上限に、20年間は配当に課税されない。

現行のNISAでは年間上限120万円だが、課税が免除される期間が5年間と短いため利用者は60歳以上の高齢者が中心だったという。このため上限金額を抑え免除期間を長くすることで、長期にわたって資産形成を行いやすくし若年層の投資を促進する。

この他、医療費が一定額を超えた場合に確定申告を行うことで税金が還付される「医療費控除」では、申告書の提出時に義務付けられていた病院や薬局から受け取った領収書の提出を2017年度の確定申告時から不要とする。領収書は保存し、求めに応じて提示する必要がある。

子育て支援は企業主導で後押し

懸案事項の1つとされる待機児童対策では、企業が従業員向けなどに整備する認可外の「企業主導型保育所」の土地や建物に課税される固定資産税や都市計画税などを2分の1に軽減することで、その解消を後押しする。

その一方で、共働き世帯への子育て支援策として期待された、ベビーシッターを頼んだ場合の費用を控除して個人所得税を軽減する新制度の創設は「恩恵が高所得者にかたよる」との指摘から見送られた。また、社会貢献に熱心な篤志家による貧困家庭の子供への贈与に対する課税免除制度の新設も見送られている。 (長谷川丈一)