地方発!世界で活躍する会社宇和島発、関空経由の”BURI”が世界の"SUSHI"通を唸らせる

株式会社 ダイニチ[愛媛県]

愛媛県宇和島市寄松甲1385

代表取締役 玉留 一

TEL. 0895-27-3200

URL. http://www.dainichi-ff.co.jp

朝〆の魚が当日夜には米国へ

1980年代以降、日本では魚離れが止まらない。水産業を取り巻く環境は一見、厳しいように思えるが、グローバルな視点で見れば、話はまったく変わってくる。

近年、海外では一転して、魚介類の需要が大きく伸び続けているからだ。チャレンジ精神旺盛な企業にとって、いまは絶好のビジネスチャンス到来の時ともいえる。

こうした状況下、愛媛県宇和島市にある水産養殖会社ダイニチは、海外展開に積極的に取り組み、アメリカ西海岸をはじめとする地域に鮮魚を輸出してきた。現在、海外での販売額は全体の約7%。売り上げは年々伸びており、今年度もしくは来年度には10%に達する勢いだという。ダイニチの二代目、玉留社長が同社ならではの強みを語る。

「うちは宇和島だけではなく、和歌山県海南市にも加工・出荷のできるシーフードセンターを持っています。関西空港まで車でわずか30分。全国でも国際空港に最も近い水産物の加工工場だと思います」

ダイニチが魚を輸出するシステムは、次のような流れになっている。まず、日本有数の養殖集積地、宇和海にある生け簀から魚を揚げて、活魚のままトラックの水槽へ。これを和歌山のシーフードセンターまで輸送し、現地に40基余りある生け簀で蓄養する。

シーフードセンターは昼夜二交代制で稼働している。海外に向けて出荷する際は、早朝、生け簀から揚げて手早く加工。当日午前中の航空便に載せて輸出する。

「ロサンゼルスまでのフライトは約12時間ですから、その日の夜には到着します。宇和島から東京に向けてトラックで輸送するのと、実は時間的にそれほど変わりません」と玉留は明かす。

では、同業他社の輸出ルートはどうなのか。例えば、鹿児島や宮崎、熊本なども養殖業が盛んな地だが、魚を海外に向けて運ぶ場合、まずは福岡空港まで持っていく必要がある。となると、ダイニチのように当日朝まで活かしておくことは不可能。日本を発つ前日に、現地で加工せざるを得ないのだ。

「つまり、うちの魚は他社と比べて、1日分新しいわけです。冷凍せず、生のまま送るので、この1日の違いは、鮮度の面でとても大きいんですよ」

宇和島発、和歌山経由で海外へと送られるダイニチ自慢の鮮魚。この仕組みにより、ロサンゼルスの寿司バーでは、東京の寿司屋と変わらない新鮮さのネタを味わえるわけだ。ダイニチが海外で売り上げを伸ばしているのは当然かもしれない。

初の展示会参加は受注ゼロ…

ダイニチは潜水士だったという玉留の父が創業。養殖用の網や固形飼料を販売し、マダイやブリなどの養殖も手掛けて事業を拡大してきた。

玉留が入社した当時は、固形飼料の販売がメイン。その後、玉留自身が中心となって養殖魚の販売に力を入れるようになり、今ではこの事業が柱になった。海外進出へと足を踏み出したのは7年前のことだ。

「国内市場が伸び悩んでいたことから、自然と海外に目が向くようになりました。まず注目したのは、寿司をはじめとする日本食がブームになっていたアメリカです。まだ関空発の便は少なく、運賃も高かったのですが、将来をにらんで、とにかく開拓してみようと動き出しました」

当時、アメリカに進出していた水産会社は5社程度で、かなり早い段階での海外挑戦だった。勝負の場として最初に臨んだのは「インターナショナル・ボストン・シーフードショー」。シーフードでは世界三大展示会の一つとされる大規模な展示会だ。果敢にも単独ブースを設けてプレゼンテーションしたのだが……。

「お客さんはそれなりにきて、面白い商品だね、とはいってくれました。ただ、レストランのオーナーさんがいくら気に入ってくれても、それだけでは日本から運ぶのは無理。ロットの問題で、1回100キロ以上はないと運賃負けしてしまう。向こうでの流通ルートも持っていなかったし、成果はありませんでした」

本気で進出するなら、地道に流通ルートを探る必要があると、専任のスタッフがアメリカに駐在して営業に取り組む。鮮度で勝負するならロサンゼルスを中心に攻めるという方針を立て、協力してくれる問屋も開拓することができた。

「小口の注文でも、問屋さんを確保しておけば受けることができます。このルートがあるとないとでは大違いなんです」と玉留は話す。今ではアメリカのほかに、バンコクやシンガポール、ドバイなどにも輸出。これらの開拓には、愛媛県が主催する現地展示会に出展したことも効果的だった。

今後は冷凍加工品でも勝負!

展示会初出展から7年の間、着々と実績を積んできたダイニチ。その主力商品はブリだ。宇和島ではマダイの養殖が盛んで、全国生産量の60%近くを出荷しているが、「マダイでは世界に通用しない」と玉留はいう。マダイは地中海などにも生息し、ニュージーランド近海で獲れたものも多く出回っているからだ。一方、ブリは日本近海に多く棲む魚。海外ではほとんど獲れず、養殖しているのも日本だけなのだ。

「ブリに近い魚種のヒラマサなら、チリやオーストラリアで養殖されています。そのヒラマサよりも脂ののりがいいのがブリの強み。ブリは英名が“イエローテイル”といいますが、 “ブリ”“ハマチ”の方が、通りがいい。海外で日本名が通用する数少ない魚なんです」

ホーチミンでの試食会は大人気を博した

海外戦略の主役、ブリの新たな輸出先として、玉留が狙っているのはヨーロッパだ。ダイニチは2015年5月、水産庁による「対EU輸出水産食品取扱認定施設」に認定され、EUに向けた輸出が可能になった。この認定は、生産現場から加工、流通にいたるまで、EUの求める厳しい衛生条件を満たす必要があるので、非常に難しい。水産庁より認定されたのはダイニチが2社目。玉留のEU進出に対する強い思いがうかがえる。

「ヨーロッパの人はまだブリをあまり知らない。この3月にデュッセルドルフに行くので、チャンスを探ってきます。向こうの寿司レストランには、いい魚がなかなか集まらないところも多いと聞くので、ニーズは大いにあるはずです」

同じ3月、「インターナショナル・ボストン・シーフードショー」への2度目の出展も控えている。前回のような単独ではなく、アメリカ国内で取り引きのある問屋の協力を受けての出展だ。今回は三井物産などと立ち上げた新会社が扱う冷凍加工品をプッシュする。

「7年前のリベンジですか」と問いかけると、「そうですね」と玉留は笑う。「今は実際に、アメリカでうちの商品が流通しています。問屋さんと一緒の出展でもありますし、前回とはまるで違いますよ」

宇和島から世界各国に向かうグローバルな挑戦。以前から得意としてきた鮮魚に、多彩な冷凍加工品も加わり、ダイニチの世界戦略はさらに広がりを見せてきた。(敬称略)