2017年度中小企業関連「税制」ガイド積極的な設備投資に取り組む中小企業を手厚く支援!

「少額減価償却資産の特例」は継続
器具備品が「固定資産税特例」対象に

昨年末、自民党と公明党による2017年度(平成29年度)与党税制改正大綱がまとまった。

全体としては小幅な改正だが、「経済の好循環を促す」ことを目的に、中小企業や小規模事業者に対する設備投資や研究開発、賃上げ関連などの減税策が拡充される見通しだ。

なお、本稿は税制改正大綱ベースの解説のため、最終決定や詳細については通達や省令を確認すると共に、具体策は必ず税理士や会計士などに相談してほしい。

中小企業や個人事業者などに関連する2017年度税制では、大きな制度創設こそないが、減税対象となる設備の拡充などが盛り込まれており、製造業だけでなく商店や飲食店などの中小サービス事業者にとっても追い風となりそうだ。以下、前年からの継続制度も含めて概要やポイントを見ていくことにしよう。

■注目の減税制度

「少額減価償却資産の特例」:継続
「交際費課税の特例」:継続

中小企業や小規模事業者に使いやすくメリットが大きい減税策といえば、この2制度だろう。

特に、少額減価償却資産の特例(表2)はオフィス機器などを導入する際に適用でき、様々な制度の中でも利用率が高い。2016年度税制で2年間の延長措置が講じられ、2017年度も継続活用できる。

同制度では、30万円未満の設備を購入して年度内に事業用として使い始めることを要件に、年間で合計300万円まで全額を損金算入できる。すべての減価償却資産が対象とされているので、PCや複合機、プロジェクター、ソフトウエアなど様々な設備で適用が可能だ。

例えば、A3カラー複合機などでは20万円台で高性能モデルの購入が可能なだけに、この特例を使えば全額を即時償却できる。

同減税策の適用期間は2017年度いっぱい(2018年3月末)だ。その翌年度(2018年度)も延長されるかどうかは未定である。導入予定設備の価格を見極めながら、一括で買う必要がない場合は単品購入により特例を活用するなど、上限まで効果的に使いたい。

ただし、同税制を適用した機器などは償却資産税の対象となる点に留意しておくことが必要だ。

中小法人などの事業活動に不可欠な費用とされる交際費については、交際費課税の特例(表4)を2017年度税制においても継続して使うことができる。

基本的な減税措置は、「税法上の中小企業は定額控除限度額800万円までの交際費をすべて損金に算入できる」というもの。2014年度に創設された「支出した飲食費の50%を損金算入(上限なし)できる」制度も継続されるので、いずれかを選択して適用することが可能だ。

とはいえ、よほど交際費を使う慣例がある業種でなければ、基本的には前者で十分に減税効果を享受することが可能だろう。


■設備投資関連減税

「固定資産税の特例」:拡充
「中小企業経営強化税制」:創設
「中小企業投資促進税制」:延長
「商業・サービス業・農林水産業活性化税制」:延長
「グリーン投資減税」:継続

まず、固定資産税の特例は「中小企業が新規に取得する設備について、3年間は固定資産税を2分の1に軽減する」という制度だ(図1)。

2016年度改正で創設され、固定資産税では初めての設備投資減税策であるとして注目された。この特例が早くも2017年度税制で拡充される。

改正点は軽減対象となる設備だ。これまでは機械装置だけだったが、商店や飲食店、介護事業者などでの導入が多い器具備品(ルームエアコン/サーバー/介護用アシストスーツなど)や建物付属設備(空調設備/エレベーターなど)が追加され、より多くの設備で税負担を軽減できるようになる。

とはいえ、拡充措置はすべての中小企業に適用されるわけではない。地域と業種が限定されており、その指標とされているのが「最低賃金」と「労働生産性」だ。

追加特例をすべての業種に適用できるのは、最低賃金が全国平均(823円)を下回る地域で、東京/神奈川/千葉/埼玉/愛知/大阪/京都を除く40道県が該当するという。

この7府県であっても、労働生産性が全国平均未満の業種は適用対象となる見込み。業種選定では経済センサス(産業構造統計を明らかにする調査)が基準となり、小売業(衣服や飲食料品等)や宿泊業、飲食店、自動車整備業、理美容、社会保険・福祉・介護業、医療業(*1)などが対象となりそうだ。

器具備品が追加される以外、制度設計などは変わらない(図1)。根拠法となる「中小企業等経営強化法」に従って経営力向上計画書を作成し、主務大臣の認定を取得。同計画書に記載された経営力向上設備に対して固定資産税の軽減措置が適用される。

経営力向上設備とは、「年平均の生産性を旧モデルと比べ1%以上向上させ、取得年度から指定期間内に販売開始されたもの(詳細は図1参照)」。価額要件は機械装置が「単品160万円以上」、器具備品は「30万円以上」、建物付属設備は「60万円以上」といった要件となるようだ。

なお、生産性が1%以上向上するかどうかはメーカーの依頼により工業会が確認する。事業者はその証明書を手に入れて提出すればよいので実務負担は少ない。
この特例と同じく、中小企業等経営強化法をベースとした税制が、2017年度税制で創設される中小企業経営強化税制(表1)だ。

減税措置は、「対象設備に対し全額即時償却か税額控除を選択適用できる」こと。税額控除額は7%を基本とし、資本金3000万円以下の企業と個人事業主は10%を控除できる。

この制度を利用するには、経営力向上計画書を作成して中小企業等経営強化法の認定を受けることが前提となる。

対象設備は機械装置に加え、器具備品や建物付属設備、ソフトウエアなど幅広い。適用を受ける要件は、「生産性向上設備(A類型)」か「収益力強化設備(B類型)」のいずれかであること。前者は、固定資産税の特例で述べた経営力向上設備とほぼ同じもので、「生産性が旧モデル比で年平均1%以上改善する設備」をいい、その確認は工業会が行う。

収益力強化設備とは、「投資収益率で年平均5%以上を実現する投資計画に関連する設備」で、生産ラインやオペレーションを改善する投資全体が評価対象になるとのこと。経済産業局が確認する。

そして、固定資産税の特例は地方税で、中小企業経営強化税制は国税に関わる制度なので、同時適用できることがポイント。しかも、対象設備や適用要件がほぼ同じとなるように制度設計されているので併用しやすい。計画的に活用することで、大きな減税効果が期待できる。

また、両制度とも機械装置から器具備品まで幅広い設備が対象となっているので、製造業だけでなくサービス業も適用の検討が可能である。


中小企業投資促進税制は延長

投資関連の税制では、中小企業投資促進税制と商業・サービス業・農林水産業活性化税制が延長される。

中小企業投資促進税制は、「対象となる設備を導入した場合に、特別償却30%か税額控除7%を選択適用できる」措置だ(表1)。今改正では、2016年度までの上乗せ特例を廃止し、さらに対象設備となっていた器具備品を縮減した上で適用期限を2年間延長するという。

ほぼ全業種を対象としている税制だが、器具備品が外れることで製造業や建設業など向けの色合いが濃くなりそうだ。

これに対して、小売や飲食店などの個人店舗や小規模事業者などに適した制度が、商業・サービス業・農林水産業活性化税制(表2)だ。2017年度税制で2年間延長される。

単純延長なので、対象設備や減税内容、要件は現行制度と変わらない。商工会議所や認定経営革新等支援機関などの専門機関に相談の上、そのアドバイスに従い導入した設備に対し特別償却30%か税額控除7%(控除は資本金3000万円以下が要件)を選択適用できる。

同税制は、店舗などの魅力向上や効率化により経営を改善し、顧客満足向上や集客力アップを支援することが目的のため、対象設備は照明や冷暖設備、椅子といった「快適な空間やサービスにより集客効果を高められるもの」などが考えられる。

なお、実務では経営改善に効果的な設備であることを、申告時の提出書類で明確にしなければならない。

中小企業投資促進税制と商業・サービス業・農林水産業活性化税制は、根拠法の認定が不要で適用要件も比較的に緩やかな点で、前述の固定資産税の特例や中小企業経営強化税制よりも使いやすい。中小企業経営強化法に基づく減税制度にハードルの高さを感じるなら、こちらを活用することも1つの考え方といえる。

2017年度も継続適用できるグリーン投資減税は(表3)は、再生可能エネルギー設備などへの投資を重点的に支援する制度で、対象設備の取得に対して特別償却30%か税額控除7%のいずれかを適用できる。

2016年度に設備要件などが見直されており、太陽光発電設備は10kW以上/風力発電設備1万kW以上が対象で、太陽光発電設備はFIT(固定価格買取制度)の認定を受けていない自家消費用の設備であることが要件とされる。国や地方公共団体の補助金により取得した設備も対象外だ。

また、対象設備の取得から1年以内に使用を開始することも適用要件として求められる。

■研究開発・所得関連減税

「中小企業技術基盤強化税制(研究開発税制)」:拡充・延長
「所得拡大促進税制」:拡充

今改正では、様々な業種の研究開発を後押しすることを目的に研究開発税制(表3)が拡充・延長され、魅力的な制度となりそうだ。改正点はいくつかあるが、最も大きな拡充は「研究費の定義変更」だろう。

現行制度では、製品製造や技術の改良・考案・発明に関わる研究に要するものを試験研究費と定義し、同税制の適用対象としてきた。

これが、2017年度税制では従来のモノ作り型の研究開発に加えて、新たにIoT(モノのインターネット)やビッグデータ、AIなどを活用した新サービスの開発に要する試験研究費も対象となる。新ビジネスの創出に使えそうだ。

この他、控除率にインセンティブ型の仕組みを取り入れるなど、制度設計が見直される。その概要については図2と表3を参照してほしい。

賃上げを支援する所得拡大促進税制は、「国内に勤務する従業員の給与などを増加させると、増加額の10%を税額控除できる」制度だ。

要件は、基準事業年(2012年)度から一定割合以上で総支給額を増加させていることや、支給総額や平均支給額が同税制を適用する直前の事業年度を上回ることなど。2017年度税制では、中小企業の特例として、平均給与支給額を前年度比で2%以上増加させると、増加分について12%を上乗せして税額控除できる(図3)。

なお、基本給だけでなく、ボーナスや残業手当、アルバイトやパートの給与も含まれるので、経営状況を考えながら柔軟に調整できるだろう。


この他、2017年度税制では、年間800万円以下の所得金額に対して軽減税率15%(本則は19%)を適用する法人税率の特例が2年間延長される見通しだ。

新制度は召集中の通常国会(1/20~6/18)での可決を経て成立し、それ以降に詳細が明らかになる。

投資関連税制などは複数の制度があるだけに、事業計画に合わせて適切に使いわけることが効果的な活用につながる。

早めに税理士や会計士に相談すると共に、自らも関心を持つことが重要といえるだろう。

(*1)医療業、社会保険・福祉・介護業については東京を除く