CES2017現地レポート音声認識対応機器が結集
主役に躍り出た!?「アマゾン・アレクサ」

LGエレクトロニクス、ワールプール、レノボ、ファーウェイ、フォード…。CES 2017では、世界の有力メーカーが相次いで、音声認識技術「アマゾン・アレクサ」の搭載機器を発表。その隆盛ぶりには、欧米のメディアから早くも「家庭用音声認識技術の大本命」との声があがるほど。アマゾン・アレクサとは何か!?

音声認識とOLED

CES 2017で、ひと際多くの注目を集めた製品・テクノロジーは「OLED(有機EL)テレビ」と「音声認識技術」の二つだろう。

まずOLEDテレビについてはこれまで、LGエレクトロニクスが商品化で先行していたものの、追随するメーカーはようやくパナソニックが昨秋、ヨーロッパでの発売を開始した程度。まだまだニッチな市場といえた。

だが、日本や中国のメーカー各社がCES 2017で、年内発売を前提としたニューモデルを相次ぎ発表。次世代テレビの核といわれて久しいOLEDテレビが、いよいよ普及の本格期に入ったことを感じさせるものとなった(OLEDテレビの詳細なレポートは本田雅一氏のレポートを参照)。

一方、音声認識技術はこれまでにも、各社がスマホなどの機能として発表している。

だがCES 2017はこの技術が、一般ユーザーの日常生活により密着した、多様な機器に組み込まれ始めたことを周知させる場となった。

各社が展示した音声認識対応機器からは、タッチなどの従来型インターフェイスにはない利便性や可能性が強く感じられた。言い換えれば、今までは言葉が先行傾向にあった「IoT」が、その具体像をかなり明確化させてきたともいえる。

CES 2017における音声操作技術の搭載分野はスマホやパソコンだけに止まらず、冷蔵庫や調理機器、テレビやデスクトップスタンド、そしてクルマなどと多岐に亘っていた。

現状でユーザーインターフェイスの主流であるタッチと比べた場合、音声操作には「ディスプレイを持たない機器にも搭載可能」や「両手がふさがっていても操作可能」といったメリットがある。

例えば部屋の灯りのオン・オフや明るさ調整を行う場合、専用リモコンを指で操作したり、スマホでタッチ操作するよりも、声で操作する方が早くて便利だと感じる人が多いのではないだろうか。

また料理の最中やクルマの運転中に、何らかの情報を入手する場合なども、声で操作できれば利便性や安全性が高いといえるだろう。

CES 2017には、こうしたメリットを現実のものとする機器が数多く展示されていた。

アマゾン・アレクサとは!?

音声認識技術の中でも、群を抜いて目立っていたテクノロジーがアマゾンの「Alexa(アレクサ)」だ。

アマゾン自体はCESに出展していないものの、LG電子やワールプール、レノボやフォードなどの名だたるメーカーがアレクサを自社製品に搭載。音声操作による新たな可能性や発展性を大きく訴求していた(一説ではCES 2017において、700以上ものアレクサ搭載端末・機器が発表されたとの情報もある)。

例えば冷蔵庫にアレクサを搭載したLG電子は、冷蔵庫に話しかけるだけで料理レシピの検索・呼び出しやタイマーのセット、音楽の再生、そしてAmazon.comへの注文などが可能だという。

しかもクラウド上に用意されているスキル(アレクサ専用のアプリのようなもの。開発プラットフォームが公開されており、現状ですでに6000以上ものスキルが用意されているという)を呼び出せば、Uberなど配車サービスの活用や、天気・渋滞などの各種情報を入手できる。

つまりアレクサを搭載することで冷蔵庫は、家庭内の情報サーバーのような位置づけに変わる。

しかも、両手がふさがっている料理中などでも簡単・確実に操作できる「ユーザーフレンドリーな端末」ということにもなる。

また、今や「コネクテッド」が合い言葉になっている自動車業界で、いち早くアレクサの搭載を発表したフォードは、車内からの音声操作を大きく訴求していた。

例えばナビの行き先指示や渋滞情報の入手などだ。他にも前述したスキルを使った各種情報入手などが可能となる。

さらには、家の照明の点灯やエアコンの電源オン、あるいは買い忘れた食材の発注などを、クルマの中から実行可能だ。

何よりアレクサは音声で操作でき、しかもテキストデータを音声変換する機能も有しているため、運転中のユーザーインターフェイスとしては最適といえよう。

もちろん家の中から、Amazon Echo(アマゾンが米国で発売中の家庭用アレクサ搭載端末)を通じてクルマへの指示も可能であり、フォードはエンジンのスタートやオイルのチェック、車内の温度調整などをアピール。さらにはドアロックのかけ忘れやライトの消し忘れなどにも、家の中から対応可能である。

アレクサによる音声対応の調理機器システムを全面訴求した「ワールプール」
香港のAV機器メーカー「SEIKI(Tongfang Global)」はアレクサ搭載4Kテレビを発表。価格は65インチで1000ドル未満

 

各社がアレクサを搭載する理由

アレクサ以外にも音声認識技術は多くのものが発表されており、現状では自社開発を行っているメーカーも少なくない。にもかかわらず有力メーカーがこぞってアレクサを採用している理由については、取材をまとめると次の三点が考えられる。

①アレクサは自社製品への応用やカスタマイズが容易なこと。

②アマゾン、並びにサードパーティが作成した「スキル」を活用できること。

③eコマース「Amazon.com」と連動していること。

まず①のカスタマイズだが、アレクサ搭載のスピーカー型デジタルアシスタントを発表したレノボによれば「アレクサはメーカーが独自に創意工夫できる余地の大きいことが魅力」といい「自社製品の搭載に当たって、必要な機能を自由に組み込むことができる」と話す。

現状で音声認識テクノロジーの代表格といえるのはアップルのSiri(シリ)だろう。だが、シリはiOSの使い勝手を高めることが前提。この技術が他社製品に組み込まれ、カスタマイズされることは考えにくい。

アレクサはこれとは正反対のコンセプトを持つオープンなテクノロジーであり、これが多くのメーカーの支持を得ている要因の一つといえる。

しかも、前述したスキルは開発プラットフォームが公開されているため、世界中のサードパーティやエンジニアが開発に着手。これをアレクサ搭載機器は自由に活用可能(②)であり、ユーザーは搭載機器を自分流にアレンジできる。

さらには③Amazon.comとの連動も、メーカーサイドには付加価値となっているようだ。ある関係者は「料理や運転の途中における食材や日用品、消耗品などの購入は、アマゾンが対応エリアを拡大している1時間配送サービスと組み合わせることで今後、大きく伸びるのではないか」と予測する。

こうした状況を受けて、欧米のマスコミの中には早くもアレクサを「スマートホームOSの勝ち組」とする報道も少なくない。その正否を判断するのは時期尚早といえるが、アレクサがCES 2017で、民生用機器における音声操作の可能性を明示し、IoTの方向性を具体化させたことは確かだろう。

アレクサはまだ日本語に対応していないため、日本の家電・ITメーカーからは搭載商品の発表はなかった。ただし「日本語対応は早ければ年内」との情報もあるだけに、今後、日本のメーカーが音声操作に、どう対応するのかが注目される。アレクサ陣営に加わるのか、それとも独自路線を貫くのか──。