決算直前の節税対策に有効!「少額減価償却資産の特例」徹底指南30万円未満の減価償却資産が全額損金
フル活用したい年間300万円の上限額

賢く使おう「少額減価償却資産の特例」

年度末の3月となり、決算を控える事業者も多いのではないでしょうか。利益が出ている場合、悩ましいのが節税対策。毎年度、様々な減税策が講じられている中で、中小企業にとって節税効果の高い制度が「少額減価償却資産の特例」です。

使いやすい制度なので、ご存知の方も少なくないと思いますが、適用要件や手続きなどの概要を今一度しっかりと確認していきましょう。

減価償却資産は法定耐用年数に応じて減価償却費として損金処理することが基本とされていますが、少額資産については取得価額に応じて即時償却や一括償却が可能となっています(下表参照)。本則では、10万円未満は消耗品費として全額を必要経費として損金算入でき、10万円以上20満円未満の資産については3年間で均等償却(一括償却)することが可能です。

この本則に加え、中小企業などを対象とした減税策が少額減価償却資産の特例。30万円未満の減価償却資産について、年間300万円までを上限に全額を即時償却により損金として計上できる制度です。

例えば、3月末を決算月とする事業者が3月に25万円の減価償却資産を事業用に購入した場合、本則では損金算入できる費用は購入価格を耐用年数で割った1年分のうちのわずか1カ月分だけです。ところが、この特例を活用することにより、全額を損金として計上できるので、決算直前であっても大きな節税効果が期待できるわけです。

同制度は、経理担当者の少ない中小企業や小規模事業者、個人事業主にとって負担が大きい償却資産の管理負担を軽減すると共に、デジタル機器などの取得促進による事業効率化を目的に2003年(平成15年)度税制で創設された時限措置です。以降、延長が繰り返されて2016年度税制でも2年間の延長措置が講じられ(2018年3月末まで)ています。

税法区分 本則 本則 特例
資産の取得価額 10万円未満 20万円未満 30万円未満
損金算入の方法 即時償却 3年間均等償却
(一括償却)
即時償却
償却資産(固定資産)税 非課税 非課税 課税(合計150万円以上の場合)
確定申告時の明細 不要 必要 必要
備考 ―― ―― 上限は年300万円まで

適用事業者

同減税策では、適用事業者を「青色申告書を提出する中小企業者等」と規定しています。具体的には、「税法上の中小企業(資本金1億円以下)」「資本を有しない事業者のうち常時使用の従業員が1000人以下の法人」「常時使用の従業員数が1000人以下の個人事業者」「中小企業等協同組合、農業協同組合など」が該当します。

なお、資本金が1億円以下であっても大規模企業(資本金1億円超)の子会社は対象外。もちろん、法人や個人を問わず白色申告の事業者などは同減税策を活用することはできません。

対象資産と適用要件

対象となる減価償却資産は、前述した通り30万円未満の器具備品や機械・装置など。PCや複合機、プロジェクターといったIT機器や業務用機器からソフトウエア、特許権や商標権といった無形減価償却資産まで幅広く適用されることが特徴です。さらに、所有権移転外リース取引により賃借事業者が取得した資産、中古機器なども対象になるとされています。

ただし、適用の要件として当該事業年度内に使用を開始することが求められていますので、決算直前で同特例を活用する場合には注意が必要です。

また、消費税については事業者ごとの会計方法により異なり、税込経理方式で処理している場合は税込価格で、税抜経理方式の場合は税抜価格で30万円未満かどうかが判断されます。例えば税抜28万円の資産を購入した場合、税込価格では30万2400円となりますから、税込経理方式で処理を行う事業者は注意したいところです。

なお、消費税の免税事業者については税込みの購入価格により30万円未満かどうかが判断されます。

適用上限額

上限金額は年間で合計300万円まで。消耗品費などとして経費計上する10万円未満の資産と3年間均等処理による一括償却を選択した20万円未満の資産はこの金額には含まれません。

上限300万円までの意味は全額を損金にできるというわけではなく、例えば28万円のデジタル機器11台を購入した場合、即時償却できるのは10台分の280万円(28万円×10台)で、残りの1台については耐用年数に応じた減価償却により処理する必要があるわけです。

このため、特例を上限までうまく使うには決算時に即時償却する資産を選択して特例を適用する方法を勧める税理士が多いようです。

また、会社を設立したばかりで事業年度が1年以下の事業者の場合は、300万円を12で割り、当該事業年度の月数を乗じた金額が適用可能な上限となります。例えば、初年度事業期間が4カ月なら100万円(300÷12×4)を上限に適用できるというわけです。

適用手続き

この特例の適用を受けるには、確定申告時に「少額減価償却資産の取得価額に関する明細書 別表十六(七)」を確定申告書に添付して提出する必要があります。

●少額減価償却資産の取得価額に関する明細書。国税庁のHPなどからダウンロード可能

ただし、青色申告決算書「減価償却資産の計算」で「措置法第28条の2第1項」の規定を適用していること(摘要欄に「措法28の2」と明記)や特例適用資産の取得合計額を記入するなど一定の条件を満たしている場合は、明細書の提出を省略できます。なお、明細書は別途保管しておくことが必要とされています。

明細に関する詳細については、国税庁のHPを参照してください。

また、特例を適用して即時償却した資産は固定資産台帳に記載する必要があり、地方税である固定資産(償却資産)税の課税対象となります。他の償却資産も含めて150万円を超える場合には固定資産税がかかってくる点は頭に入れておくべきでしょう。

参考までに、一括償却資産として3年間均等処理を選択した資産は固定資産税の対象となりません。特例を適用するのか、一括償却資産を選択するのかを検討したい場合は税理士などに相談したいところです。

全額を損金算入できるからと無意味に原価償却資産を購入することは本末転倒ですが、来期に購入を予定していた機器など、節税対策を兼ねて前倒しで導入することも検討してはいかがでしょうか。(長谷川丈一)