ブーム再燃!?「カセットテープ」ラジカセ新製品を各社が投入
新聞各紙も相次ぎ市場レポート

 先日のこと。某家電メーカーのエンジニア氏と話していて話題になったのは、カセットテープの“ブームの兆し”についてです。

 彼はテレビの音響技術を担当しており、当初の話題はテレビのハイレゾ対応についてでした。このメーカーはまだ対応テレビを発売しておらず、対応の必要性については十分に認識しているものの、コンテンツの揃っていない現状では「時期尚早」とも判断しているとのこと。

 その話の流れで、「最近はアナログレコードの人気が一層高まっており、カセットテープでさえブームの兆しがある。ユーザーの音への嗜好が多様化している中、高コストなハイレゾにテレビがどう対応するのかは慎重に見極めたい」ということでした。

 ここで「えっ?」と思ったのはカセットテープです。最近のアナログレコード人気については認識しており、個人的にも先日、新品のレコードプレイヤーを40年ぶりに購入したばかりです。しかしながら、カセットテープにブームの兆しがあることは、まったく認識していませんでした。

 確かに10代~20代前半にかけては、カセットテープは個人的なマスト・メディア。当時のカーステレオといえばカセットテープが当たり前でしたし、アナログのLP盤を裏返し作業をせずに一気に聴き通すために、お気に入りのレコードは必ずカセットにダビングしていました。

 しかし30年ぐらい前からは、その存在を完全に忘れ去っており、カセットテープといえば高齢者向け演歌の専用メディアぐらいにしか思っていませんでした。

 そんな話をした数日後に、今度はパナソニックから4月21日に発売開始するラジカセ新製品「RX-M45」のニュースリリースが届きました。重なるときは重なるもので、カセットテープの話題が立て続けになったこともあり、少し調べてみることにしました。

新聞各紙による「ブーム再燃」レポート

 まずはカセットテープに関連するニュースについて。日刊ゲンダイDIGITALが2017年1月6日付けで「若者需要が急増中『ラジカセ』人気再燃の意外な理由」との記事を掲載していました。

 これによれば「カセットテープ人気に再燃の兆しが出てきたのは3~4年ほど前。きっかけはシニア世代の稽古事やカラオケの練習用として」だったとのこと。ところが昨年あたりから、「若者を中心に急に需要が高まり、順調に売り上げを伸ばしている」そうです。

 そして、若者が支持する理由としてカセットテープは「自己表現のツールになっている」と解説しています。自己表現ツールというのは、よく分かりにくいのですが、記事によれば「デジタル時代にテープを介して伝わってくるアナログ独特の味わいを分かる俺って、個性的で恰好いいだろう」ということなのだそうです。

 また毎日新聞も2016年10月24日付けデジタル版で「カセットテープ/ブーム再び。メーカーが復刻版発売」と題するレポートを掲載しています。

 この中で、カセットテープ専門店ワルツ(東京・中目黒)を2015年8月にオープンした角田太郎氏のコメントを紹介。氏は「ハイレゾなど技術的に高音質というのと、耳に聞こえる心地よさはレベルの違う話」といい、「アナログの音が心地よく聞こえるのは、音の柔らかさやノイズ(雑音)も含めたリアリティにある」と分析しています。

 確かに個人的にも、最近復活させたアナログレコードを聴いていて思うことはリアリティです。リアリティを言い換えるとするならば、音が空気を伝わって耳に届いているということを、しっかりと実感できるということではないでしょうか。

 特にアナログで再現するウッドベースや管楽器、ピアノなどのアコースティック楽器の音は、本物の楽器と同じような空気感たっぷりの音として伝わってくるように感じます。

 同様のリアリティはハイレゾ音源でも感じることができますが、こちらはノイズを徹底的に排除した、いってみれば無菌室のような音。これに対してレコードはブチブチと聞こえるノイズが、かえって音の温かみや人間くささを醸し出しているように思います。

 今のカセットテープ人気の要因もこれと同様だとしたら、音にこだわる若者層が注目し始めているという話も納得できます。しかもカセットテープは録音用メディアとしての扱いも簡単。きちんと作動しているかどうかを目視できるメリットもあり、そういった機能性も再評価されているのかもしれません。

往年の大ヒットブランド「マクセルUD」復活!

 それならばということで、ラジカセの出荷実績を調べたのですが、JEITA(電子情報技術産業協会)が発表した「ラジオ受信機器」のメーカー出荷実績は105万台で前年比101.9%(2016年4月~12月)。ここにはカセットレコーダーを搭載していない機器も相当数含まれているはずですが、それにしても前年割れが多い音響機器の中でラジカセは、着実な成長分野に分類されていることは確かでしょう。

 次にカセットテープの出荷実績を調べたのですが、こちらは統計を取りまとめていた日本記録メディア工業会が2013年に解散しており、最新データを入手することは不可能でした。それでもカセットテープの製造を続けている日立マクセルが2016年11月から、70年代に大ヒットしたマクセル「UD」シリーズの復刻版を、冒頭の画像のように当時と同じデザインで発売開始するなど(数量限定)、ブームの兆しを感じさせる市場の動きは着実に現れてきています。

 しかも、楽曲を提供する側のアーチストも、松田聖子さんが2015年にシングル曲をカセットでも発売し、米国でもカセットでの発売を本格化するミュージシャンが増えてきているとのこと。これまでカセットテープといえば演歌一辺倒だったレコード業界にも、変化の兆しが現れてきているようです。

 果たしてこの動きは、本格的なブームと呼べるものにまで拡大していくのでしょうか。20代半ばまではアナログ音源のみで育ってきた筆者にとっては、非常に気になる話題であることは確かです。(征矢野毅彦)