ドローン/「国際展示会」レポート機体の性能向上、自動飛行技術も進化
ドローンが日常空間を行き交う日も間近

進むドローンの自動飛行化

3月23日~25日の3日間にわたり、幕張メッセでドローンに特化した「Japan Drone 2017」が開催されました。世界から150にも及ぶドローンメーカーや関連企業が集結する日本最大級のカンファレンスと展示会で、今回は2度目の開催となっています。

国内では、2015年12月に航空法が改正されドローンに関する飛行ルールが整備されたことを背景に、幅広い分野で業務に活用しようと様々な取り組みが進んでいます。展示会では、物流、農業、セキュリティなどのビジネスや映像クリエイター向けモデル、災害対策を想定した機体からパーソナル機まで多くの製品やサービスが並びました。

細かな技術に関する「へぇ~」はいくつもありましたが、個人的にはドローンの自動飛行化や画像活用のシステム化が進んでいることに驚きました。操縦者がコントローラーで操作するものと思っていただけに、なお更です。

飛行ルートをプログラムしAIを搭載した機体が障害物などを避けながら自律飛行し、空撮や高所の構造物の状態撮影、倉庫やオフィス内のパトロールを行って戻ってくるわけです。イメージ的にはロボット掃除機のドローン版といった感じでしょうか。

さらに、目を引いたのが日立システムズの「ドローン運用統合管理サービス」です。これは、同社の管理センターにアップロードされたドローンの撮影画像のプロジェクト管理やデータ加工、画像診断などを行うもの。企業のシステムとも連携が可能といい、例えば画像診断したデータを保険会社の損害調査システムと連携させることにより、自動車事故や自然災害などの調査が大幅に効率化されそうです。

自動飛行のドローンと組み合わせれば、撮影から調査結果のアウトプットまでシステム化できるとのことでした。「建設や鉱山・プラント、電力・ガスの業種については昨年にサービスをスタートさせており数社と話が進んでいる」(ブース担当者)そうです。

●日立システムズの「ドローン運用統合管理サービス」イメージ(展示パネルより)

主な分野の注目モデル

以下では、物流やセキュリティなどの分野ごとに気になった製品や技術を紹介していきます。

物流

商用ドローンでは、アマゾンなどに代表されるように物資輸送が注目を集めています。会場では、産業用小型ロボット事業を手掛けるenRoute(エンルート)が日本郵便などと共同開発に取り組むデモ機を展示していました。

2017年3月に福島県南相馬市にあるRTF(ロボットテストフィールド)での実証実験に成功しており、今後は山間部や離島間の物資輸送を想定したシミュレーションを行う予定とのこと。ドローン配送の現実味が増していると感じました。

●エンルートの物資輸送用デモ機。「Zion EX700」をベースにカスタム化。最大飛行時間:60分/最大飛行距離4万5000m/サイズ:1157×1157×201mm/重量:3.8kg(バッテリー含む)

セキュリティ

セキュリティ分野では、ドローンを活用したサービスを提供するブルーイノベーションと警備事業を手掛ける大成、NTT東日本が共同開発に取り組んでいるドローンによるオフィス内巡回システム「T-FREND」が目を引きました。

これは、GPSを使わずに自律飛行が可能なドローンが、警備員に替わってオフィス内を巡回するシステムです。セキュリティだけでなく、就業後にドローンがオフィスを飛行して社内に残っている社員に退社を促すことで残業を抑制するといった活用も提案していました。

巡回時間や飛行ルートはタブレット端末などから自由に行えるとのこと。複数ドローンを一括管理することもでき、「深刻な警備員不足の解消に期待を寄せている」(大成)そうです。

●ドローンによるオフィス内巡回システムのイメージ(大成の「T-FRENDドローンシステム」プレゼンより)

ドローンの自律飛行に不可欠な技術は、ドローン自身が位置(自己位置)を把握することで、一般的にはGPSが使われています。しかし、GPSは信号受信が不安定で測位の誤差が大きいためドローン墜落のリスクがあります。飛行経路上に予期しない障害物があった場合に避けることができません。

このため、GPSによる飛行システムでは建物近辺、橋下やトンネル内、屋内などでは目視による手動操縦が必要です。

この課題を解決するための技術開発も盛んで、展示会では東京大学とリコー、ブルーイノベーションが共同開発した非GPS環境下で障害物を自動回避しながら安定した飛行を実現できるドローンシステムが紹介されていました。

2つの超広角カメラにより飛行経路の3Dマップをリアルタイム生成して、予期しない障害物を検出するとドローンが自動回避。危険が伴う作業や目視が難しい場所での作業に貢献するシステムとして会場でも注目を集めていました。

●非GPS飛行システムを実現するカメラ部分。これをドローンに搭載するとのこと

農業

農業用途では、ドローンによる農薬散布の効率化などが期待されており、展示会にも同用途を想定した機体としてDJIの「AGRAS MG-1」やエンルートの「Zion AC940-D」などが展示されていました。

国内での活用はまだこれからですが、欧米などでは導入が進んでいるとのこと。将来的には「農薬散布にとどまらず、AIを搭載したドローンが生育状況などを判断して肥料や農薬などを最適な量で自動散布するシステムの開発も進めている」(DJI)といいます。

●DJIの「AGRAS MG-1」。日本向けにカスタマイズされているとのこと

施設点検・災害対策

施設や構造物などの点検、維持管理では太陽光発電パネルの点検をはじめとして、すでにドローンが活躍しています。

そうした中、西武建設と芝浦工業大学が共同開発により一歩進んだ機体を展示していました。橋梁やトンネルといった構造物の初期欠陥に対して、コンクリート補修材や水などを噴射できるドローンです。

業界初とのことで、実用化されれば人手の届かない場所の補修に加え、足場の設置や撤去などが不要となることによる工程短縮やコスト削減、作業の安全性向上などが期待されています。

●業界初となる「補修材吹付けドローン」

また、DJIは災害対策用ドローンを参考出品していました。主に薬などの物資を孤立した被災地に届けることを想定した機体で、車などに積んで移動できるよう小型化すると共に、折りたたむことも可能となっています。

ドローン本体の下部に装備したボックスに物資を入れ、目的地に着いたらふたが開いて物資が投下される仕組みです。あくまで参考品ですが、「問い合わせも多い」(ブース説明員)とのこと。災害や人名に関わるものは、早急に実現してほしいものです。

●DJIが参考出品した災害対策ドローン。7kgの薬品などを搭載した場合で最大17分の飛行が可能

パーソナルドローン

パーソナルモデルとして興味を引かれたのが、DJIの「MAVIC PRO」。2016年秋の発売ですが、実機を見るのは初めて。一番の魅力はコンパクトさです。飛行時も小型ですが、折りたたむとほぼ500mlペットボトルと同等の大きさ。重さも740g前後です。収納しようと思えば機体とコントローラーともバッグに入れて、どこでも持ち運べそうです。

それでいて3軸ジンバル(安定装置)を備えた4Kカメラと、ビジョン・ナビゲーションシステムを装備し、スマートフォンでも操作できるとのこと。スマホではWi-Fi接続となるので通信範囲は狭まりますが(最大約80m)、カメラ映像をディスプレイで見ながら空撮を行えます。

実売10万円代前半から中頃。1万円前後の玩具ライクなモデルも多数ありますが、本格的なパーソナルモデルとしては物欲をそそる価格帯だなと、実機を見てますます感じた次第です。

●DJIの「MAVIC PRO」。通信距離:最大7km(国内4km)/最大飛行時間27分

今回の展示会では、ドローンの技術進化や機体性能の向上などを強く実感しました。もちろんビジネスでの本格活用はこれからですが、そう遠くない将来には屋外やオフィス内などの日常空間を当たり前のようにドローンが飛び回るのかも知れません。何かSFの世界のようで怖さも感じますが、その活用の場と市場は確実に広がっているようです。(長谷川丈一)